【R18】陰に堕ちる 〜優しい彼女より、狂った彼女に溺れました〜

いろは杏⛄️

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最終話 幸福の記録

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 《REC》

 カメラの小さな赤いランプが点灯する。
 フレームの中心にいるのは、白いワンピースを着た少女――浅葱澪。
 長い髪は軽く結ばれ、頬にはどこか柔らかな紅が差していた。

「……久しぶりですね、このレンズ越しに話すのは」

 澪は小さく微笑んで、手をそっとお腹に置く。
 丸みを帯びたそのお腹は、もう秘密ではいられないほど膨らんでいる。

「今日で……八ヶ月目です。ねえ、晶くん。覚えてますか? あの日、わたしが危険日って言ったの、ちゃんと伝わってたんでしょうか」

 口調は穏やかで、淡々としている。だが、その瞳の奥に揺れているのは、確かに満ち足りた確信だった。

「……あなたの顔、とても綺麗でした。あの瞬間の表情、わたし……一生忘れられないと思います」

 そっと髪をかき上げながら、澪はカメラに向けてさらに微笑む。
 まるで、それが世界で一番幸福な記録であるかのように。

    * * *

 レンズが切り替わる。

 視点の先には、やや俯いた少年――晶がいる。
 彼の顔はやつれているわけでも、取り乱しているわけでもない。ただ、どこか無防備で、澄んでいて、そして――空っぽだった。

 静かな部屋の中、木製の椅子に座る晶の目は、澪のお腹をじっと見つめていた。
 無言のまま、長い時間が流れる。

 やがて、澪が彼の隣に腰を下ろす。

「ねえ、晶くん」

 その声に、晶はゆっくりと顔を上げた。

「……幸せですか?」

 言葉は、ただそれだけだった。
 けれど、その一言が晶の心に深く届く。

 晶は少し考えて、ゆっくりと頷いた。
 それが正しいかどうかは分からない。
 けれど――これが現実で、今で、そして選んだ結果なのだと、彼はどこかで理解していた。

 そして、彼は微かに笑った。
 その笑みには、もはや迷いはなかった。

 画面がふっと暗転し、再び澪の顔が映し出される。

「……じゃあ、今日は、あなたにご褒美をあげましょう」

 澪は言う。まるで、あの時のように、囁くように。
 その声の温度に、晶の目がゆっくりと潤んでいった。

    * * *

 澪は椅子に座る晶の手をとり、ゆっくりと立ち上がった。
 白いワンピースの裾がふわりと揺れる。
 そのまま静かに歩き出し、窓際のベッドへと腰を下ろす。

「晶くん、こっちに来て」

 囁くような声。
 それは命令でも誘いでもない。どこかで甘えに近い響きがあった。

 晶は迷わず立ち上がる。
 誰かに背中を押されたわけじゃない。ただ――自然に、そこへ向かうしかないと、身体が理解していた。

 ベッドに座る澪の隣に、膝をつく。

 彼女は、静かにワンピースのボタンに指をかけた。
 ひとつ、またひとつと外れていき、やがてその奥から柔らかな胸元が現れる。
 膨らんだ乳房には、ほのかに色づいた乳輪と、わずかに滲む乳白色の滴。

 その光景に、晶の喉がごくりと鳴った。

「……張ってて、ね。とても、痛いの」

 澪が告げる。
 それは告白であり、誘いであり、赦しだった。

「だから……ねえ、晶くん。飲んでくれますか?」

 その言葉が、全てを決定づけた。

 晶は澪の胸に顔を寄せ、そっと唇を重ねる。
 最初は遠慮がちに吸い、やがて、空腹を満たす子どものように必死に求める。

 口の中に広がる、微かに甘く、どこか温もりを伴った乳の味。
 鼻腔をくすぐるのは、澪の髪と肌の香り。
 耳元で、小さく吐息が震えていた。

 澪は静かに晶の髪を撫でながら、柔らかく微笑む。

「おいしい……?」

 問いに、晶は言葉を返せなかった。ただ、強く、深く吸い込むことで応えた。

 その瞬間――晶の中で、何かがほどけた。

 罪悪感も、羞恥も、愛も、正義も。
 それらを包み込むように、澪の母性と官能が混ざり合い、彼の心を満たしていく。

    * * *

 しばらくして、澪は反対側の胸を晶の口元へ導いた。
 もう、晶に理性という名の枷は存在しなかった。
 ただ、澪の胸を飲むことが生きる意味であり、帰る場所だった。

 そして、澪はそっと囁く。

「晶くん、もう大丈夫。……あなたは、もうわたしのものですから」

 その言葉に、晶の目から涙がこぼれ落ちた。

 何が嬉しくて泣いているのか。
 何が悲しくて泣いているのか。
 もう、分からなかった。

 ただ、幸福だった。
 ただ、それだけだった。

 カメラのランプが消える。
 記録は終わった。

 でも、彼らの物語は――始まったのだった。

 ~Fin~
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