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夢を叶える魔法少女
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どうやら自分は眠っていたようだ。
摺木千弥は強張ってしまった身体の痛みを感じつつ、座卓にあずけていた上半身を起こして傍のスマートフォンを手に取る。ロック画面の時刻は、午前四時を少し過ぎていた。
年代物の座卓に視線を戻す。冷めた汁に乾燥ネギが浮かんだカップ麺、食べかけのツナおにぎり、手つかずのプロテインバーがそこにあった。
畳の上では、最新号の青年マンガ雑誌のグラビアアイドルが〝おはよう〟の笑顔を向けてくれている。
今夜はたまっていた録画でも観て、夜更かしをしようと決めてはいたのだが、どうやら疲れて眠ってしまったようだ。
「まいったな……」
座卓に突っ伏して熟睡する計画は想定外。しかも、アルコールを一滴も飲んではいないのに、だ。よほど疲れていたのか、それとも、歳をくってしまっただけなのか──そろそろ三十路になってしまうことを思い出した千弥は、電気を消して居間から寝室へと移り、長年愛用する煎餅布団で寝直すことにした。
両手の指を絡ませて背伸びをしながら廊下へ出ると、気のせいか、玄関扉をたたく音が聞こえたような気がした。
このあたりは農業地帯なので、田畑や雑木林が否応なしに目立つ。隣の民家までは三百メートルほど離れているし、千弥は最近引っ越してきたばかりで、こんな時間帯に訪ねて来る人物に心当たりなどない。千弥は誰に見せるわけでもなく、ひとり小首をかしげていた。
コンコン、コンコン。
今度は、聞き間違えではなかった。
不審に感じながらも、短い廊下を足早に進んで玄関へ向かう。古びた引き戸に映しだされる人影が、薄闇のなかで妖しく際立っていた。けれども、不思議と恐怖心は微塵も感じられなかった。
「はーい、いま出ます!」
千弥は手さぐりで明かりのスイッチを入れ、なにも警戒することなく、玄関扉を開けた。
立っていたのは、ひとりの小柄な少女。
腰まで伸びる空色のツインテールの髪型には、星の形をした黄色い髪留めが宝石のように輝きを放つ。丈の短いフリルドレスの愛らしい衣装が、日曜の朝に放送されているテレビアニメのヒロインを彷彿とさせた。さらに少女は、両手で玩具の魔法ステッキを大切そうに握っているではないか。
「えーと……お嬢ちゃん、なにかようかな?」
「おかしな時間に来てしまって、ごめんなさい。あなたのピュア・エナジーが、どうしても必要なの」
「えっ? なんだって?」
「あなたのなかにある、ピュア・エナジーが必要なの」
少女は上目遣いで身勝手な用件を伝え終えると、こちらの反応を無表情のままうかがう。
その瞳は鮮血のように真っ赤で、千弥の怪訝そうな表情が小さく映り込んで見えた。
摺木千弥は強張ってしまった身体の痛みを感じつつ、座卓にあずけていた上半身を起こして傍のスマートフォンを手に取る。ロック画面の時刻は、午前四時を少し過ぎていた。
年代物の座卓に視線を戻す。冷めた汁に乾燥ネギが浮かんだカップ麺、食べかけのツナおにぎり、手つかずのプロテインバーがそこにあった。
畳の上では、最新号の青年マンガ雑誌のグラビアアイドルが〝おはよう〟の笑顔を向けてくれている。
今夜はたまっていた録画でも観て、夜更かしをしようと決めてはいたのだが、どうやら疲れて眠ってしまったようだ。
「まいったな……」
座卓に突っ伏して熟睡する計画は想定外。しかも、アルコールを一滴も飲んではいないのに、だ。よほど疲れていたのか、それとも、歳をくってしまっただけなのか──そろそろ三十路になってしまうことを思い出した千弥は、電気を消して居間から寝室へと移り、長年愛用する煎餅布団で寝直すことにした。
両手の指を絡ませて背伸びをしながら廊下へ出ると、気のせいか、玄関扉をたたく音が聞こえたような気がした。
このあたりは農業地帯なので、田畑や雑木林が否応なしに目立つ。隣の民家までは三百メートルほど離れているし、千弥は最近引っ越してきたばかりで、こんな時間帯に訪ねて来る人物に心当たりなどない。千弥は誰に見せるわけでもなく、ひとり小首をかしげていた。
コンコン、コンコン。
今度は、聞き間違えではなかった。
不審に感じながらも、短い廊下を足早に進んで玄関へ向かう。古びた引き戸に映しだされる人影が、薄闇のなかで妖しく際立っていた。けれども、不思議と恐怖心は微塵も感じられなかった。
「はーい、いま出ます!」
千弥は手さぐりで明かりのスイッチを入れ、なにも警戒することなく、玄関扉を開けた。
立っていたのは、ひとりの小柄な少女。
腰まで伸びる空色のツインテールの髪型には、星の形をした黄色い髪留めが宝石のように輝きを放つ。丈の短いフリルドレスの愛らしい衣装が、日曜の朝に放送されているテレビアニメのヒロインを彷彿とさせた。さらに少女は、両手で玩具の魔法ステッキを大切そうに握っているではないか。
「えーと……お嬢ちゃん、なにかようかな?」
「おかしな時間に来てしまって、ごめんなさい。あなたのピュア・エナジーが、どうしても必要なの」
「えっ? なんだって?」
「あなたのなかにある、ピュア・エナジーが必要なの」
少女は上目遣いで身勝手な用件を伝え終えると、こちらの反応を無表情のままうかがう。
その瞳は鮮血のように真っ赤で、千弥の怪訝そうな表情が小さく映り込んで見えた。
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