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chapter.01
稼げる仕事
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ある日の午後、コンビニの帰り道に一匹の仔猫が鳴いていた。
周囲を見渡してみるが、姿はどこにも見あたらない。だが、たしかに鳴き声は聞こえる。
母猫とはぐれただけだろうか?
その場を去ろうとする航に、またもや仔猫が鳴き声を上げる。なぜか気になってしまい、民家に停めてある車の下や塀の隙間を覗き込む。けれども、仔猫を見つけられない。
あきらめて帰路につく航の背中に、仔猫は鳴き声を上げ続けていた。
部屋へ戻ると、スマートフォンから短い着信音とバイブレーションが鳴り響く。
LINEの通知だ。
『今夜は少し遅くなりそうだから、お菓子でも食べて待ってて。夕飯は一緒に食べようね』
茉莉花からのメッセージに手早く返信をする。
『うん。茉莉花の秘蔵のポテチを喰い尽くして待ってるから』
すぐに既読の表示がつき、ウサギのキャラクターが怒っているスタンプが返された。
航は無表情のまま、トーク画面をネット検索に変えて仕事を探す。
いろんなサイトで探してはいるが、希望に合った職はなかった。
航の年齢は二十一歳。まだ若いことと、寝食に困ってはいない現状から、おかしな余裕が彼にはあった。それ故、仕事探しも退屈な作業と同じような心持ちでダラダラと日々こなしていた。
何気なしに〝稼げる仕事〟と検索エンジンに入力する。
どれも胡散臭い内容のサイトばかりだったが、そんな中でひときわ異彩を放つスレッドがあった。
『求む、優良男子。愛人契約しませんか?』
男の愛人契約……聞き慣れないその言葉に、どうせ年増の有閑マダムの男漁りだろうと考えた航は、興味本意でひらいてみると、書き込みのすべてが男たちのものだった。
(どんだけホモ野郎がいるんだよ……)
同性の過激なコメント内容の数々。
強い嫌悪感を抱くのと同時に、ふと、例のフランス人を──唇と舌の感触を思い出す。
あのとき、抵抗はした。
すぐに拒絶と怒りの感情が脳内を中心に渦を巻き、しっかりと反応した握り拳で男の顔面を破壊した。
したのだが、果たしてそれは相手の愚行に対しての怒りなのか、同性に襲われた屈辱感からなのか、今となっては正直わからなくなっていた。
(ん? こいつは随分と紳士的な奴だな)
破廉恥極まりない書き込みの中で際立つそれは、丁寧な言葉遣いで出会いを求めている中年男性のものだった。
自身の年齢と提示された一回分の料金から察したかぎり、その男は人生においてかなりの成功者なのかもしれない。いや、セックスライフを除いては。
航はなぜか、この男に興味を持った。
実際に会ってみて、お互いが気に入らずに行為が行われなくとも同額を支払うと書かれてあったからでもある。
(もしものときは、また殴り倒せばいいか……)
ほどなくして、スマートフォンの画面にショートメールの作成ページが表示された。
周囲を見渡してみるが、姿はどこにも見あたらない。だが、たしかに鳴き声は聞こえる。
母猫とはぐれただけだろうか?
その場を去ろうとする航に、またもや仔猫が鳴き声を上げる。なぜか気になってしまい、民家に停めてある車の下や塀の隙間を覗き込む。けれども、仔猫を見つけられない。
あきらめて帰路につく航の背中に、仔猫は鳴き声を上げ続けていた。
部屋へ戻ると、スマートフォンから短い着信音とバイブレーションが鳴り響く。
LINEの通知だ。
『今夜は少し遅くなりそうだから、お菓子でも食べて待ってて。夕飯は一緒に食べようね』
茉莉花からのメッセージに手早く返信をする。
『うん。茉莉花の秘蔵のポテチを喰い尽くして待ってるから』
すぐに既読の表示がつき、ウサギのキャラクターが怒っているスタンプが返された。
航は無表情のまま、トーク画面をネット検索に変えて仕事を探す。
いろんなサイトで探してはいるが、希望に合った職はなかった。
航の年齢は二十一歳。まだ若いことと、寝食に困ってはいない現状から、おかしな余裕が彼にはあった。それ故、仕事探しも退屈な作業と同じような心持ちでダラダラと日々こなしていた。
何気なしに〝稼げる仕事〟と検索エンジンに入力する。
どれも胡散臭い内容のサイトばかりだったが、そんな中でひときわ異彩を放つスレッドがあった。
『求む、優良男子。愛人契約しませんか?』
男の愛人契約……聞き慣れないその言葉に、どうせ年増の有閑マダムの男漁りだろうと考えた航は、興味本意でひらいてみると、書き込みのすべてが男たちのものだった。
(どんだけホモ野郎がいるんだよ……)
同性の過激なコメント内容の数々。
強い嫌悪感を抱くのと同時に、ふと、例のフランス人を──唇と舌の感触を思い出す。
あのとき、抵抗はした。
すぐに拒絶と怒りの感情が脳内を中心に渦を巻き、しっかりと反応した握り拳で男の顔面を破壊した。
したのだが、果たしてそれは相手の愚行に対しての怒りなのか、同性に襲われた屈辱感からなのか、今となっては正直わからなくなっていた。
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自身の年齢と提示された一回分の料金から察したかぎり、その男は人生においてかなりの成功者なのかもしれない。いや、セックスライフを除いては。
航はなぜか、この男に興味を持った。
実際に会ってみて、お互いが気に入らずに行為が行われなくとも同額を支払うと書かれてあったからでもある。
(もしものときは、また殴り倒せばいいか……)
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