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chapter.01
黒と白の世界
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葛城の愛車・黒いポルシェに乗って連れて来られたのは、新木場の手前、辰巳にあるタワーマンション。その間これといった会話もなく、航の記憶に残ったのは、FMラジオで頻繁に流れていた誰かの新曲のサビくらいだ。
ふたりは無言のまま地下駐車場で降り、カードキーを使用する高速エレベーターで一気に39階まで昇る。高さにも十分驚いたが、居住階は42階まであった。
扉が静かにひらくと、目の前に現れたのは落ち着いた色調の空間。まるでホテルと見間違えるそこには、季節に合わせて秋色紫陽花も飾られていた。
(やっぱり、相当金持ってんだなこのオッサン)
葛城の背中を黙って追う。
奥にある角部屋が彼の住まいのようだ。
「入れよ」
ようやく航の顔を見た葛城が短い言葉でつぶやき、同じように短く電子音が鳴って部屋の施錠が解除された。
「お邪魔します」そんな小さな声の余韻を葛城の冷笑がかき消す。
白い壁紙の廊下を吸い込まれるようにして進めば──愛車と同じ黒を基調とした家具と、余分な装飾を省いたデザインの調度品が必要最小限に置かれている──二十帖以上はありそうな広々としたリビングに着いた。
「スゲェ……最高の眺めじゃないですか!」
嵌め殺しにされた大きなガラス窓から望んだ景色に、航は思わず感嘆の声を上げる。
眼下に流れる運河は真昼の日射しを受けてきらめき、青空を突き刺すようにして連なる近隣の高層マンションも異様ではあるが、独特な風情を航に感じさせた。
「眺めねぇ……一ヶ月もしたら飽きちまったよ。今度引っ越すんなら、インドネシア辺りでプール付きの家にするかな」
葛城は素っ気なくそう言ってすぐ、とある方角を指差す。
その先にはおそらく、浴室があるはずだ。
航はなんの反応も示さないまま、重い足を踏み出した。
*
熱いシャワーを浴びながら、強引に身体を火照らせる。
これから自分は、男に抱かれる。
葛城が欲する限りいつでも何度でも。
それが、ここで暮らす条件だった。
これで良かったのか?
自問自答を繰り返す。
例え今頃、茉莉花が許してくれていたとしても、いつかはあの部屋を出て行くつもりだった。だが、無職で天涯孤独を気取る自分にあてはない。
手持ちの金がなくなる前に、葛城と連絡が取れたのは幸か不幸か──いや、好機とポジティブに捉えて〝寄生〟することにした。
そう、これは自分の意思で決めたこと。
惨めでも哀れでもない。
次の段階に進むための道なのだ。
ふたりは無言のまま地下駐車場で降り、カードキーを使用する高速エレベーターで一気に39階まで昇る。高さにも十分驚いたが、居住階は42階まであった。
扉が静かにひらくと、目の前に現れたのは落ち着いた色調の空間。まるでホテルと見間違えるそこには、季節に合わせて秋色紫陽花も飾られていた。
(やっぱり、相当金持ってんだなこのオッサン)
葛城の背中を黙って追う。
奥にある角部屋が彼の住まいのようだ。
「入れよ」
ようやく航の顔を見た葛城が短い言葉でつぶやき、同じように短く電子音が鳴って部屋の施錠が解除された。
「お邪魔します」そんな小さな声の余韻を葛城の冷笑がかき消す。
白い壁紙の廊下を吸い込まれるようにして進めば──愛車と同じ黒を基調とした家具と、余分な装飾を省いたデザインの調度品が必要最小限に置かれている──二十帖以上はありそうな広々としたリビングに着いた。
「スゲェ……最高の眺めじゃないですか!」
嵌め殺しにされた大きなガラス窓から望んだ景色に、航は思わず感嘆の声を上げる。
眼下に流れる運河は真昼の日射しを受けてきらめき、青空を突き刺すようにして連なる近隣の高層マンションも異様ではあるが、独特な風情を航に感じさせた。
「眺めねぇ……一ヶ月もしたら飽きちまったよ。今度引っ越すんなら、インドネシア辺りでプール付きの家にするかな」
葛城は素っ気なくそう言ってすぐ、とある方角を指差す。
その先にはおそらく、浴室があるはずだ。
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*
熱いシャワーを浴びながら、強引に身体を火照らせる。
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例え今頃、茉莉花が許してくれていたとしても、いつかはあの部屋を出て行くつもりだった。だが、無職で天涯孤独を気取る自分にあてはない。
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次の段階に進むための道なのだ。
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