27 / 36
chapter.03
獣たちの夜(1)
しおりを挟む
夜会とはなにか?
その答えは、体験した者にしかわからない。
それは、酒池肉林の地上の楽園であり、獣たちが欲望を剥き出しにして荒れ狂う地獄でもある。
主催者は輪番制のようで、今宵の宴は航の御主人様の会長だった。
食事をすべて出し終えると、堤が純銀製の呼び鈴を振り鳴らす。すると大客間の扉が静かにひらき、裸の若い男女が続々と入室してきた。
彼らは終始無言のまま、招待客たちの席の傍らに直立不動で並び立つ。そのなかにはもちろん、航の姿もあった。
「えーっ、これより皆様お待ちかねの夜会の本番が始まるわけですが……あんまり人様の家を汚すんじゃねぇーぞテメェら」
同朋を睨みつける会長の大げさな仕草に笑いが巻き起こる。航を含めた裸の男女と堤、そして帆波だけはなにも反応を示さなかった。
「それでは……どうぞごゆっくりと」
その言葉を合図に、場の空気が一変する。
誰もなにひとつ喋ってはいないのだが、意思の疎通は成立していた。
ひとりの男が「勃たせろ」とつぶやけば、両隣にいた裸の女たちがテーブル下へと潜り込む。
早々に離席した老女のあとに続くのは裸の男女ふたりだ。おそらく寝室のひとつで楽しむのだろう。
似たような光景がこの屋敷の敷地内の至る場所で、屋内外で、招待客が飽きるまで、何度でも朝まで繰り広げられる。
それが夜会。
人間の皮を被った獣たちの宴だ。
そして航は、あの拝島の隣に立っていた。
だが、拝島は指一本触れるどころか視線すら合わせない。
理由は実に単純。
堤と同じく、航は会長の所有物だからである。
主催者の許可なくして所有物には触れられない。
それが夜会唯一の秩序だった。
「浩哉、オメェなにもしないのか?」
堤に車椅子を押させながら、笑みを浮かべて会長が話しかける。
「笑えない。特別扱いされるのには慣れてるけど、これって冷遇なんじゃないのか?」
拝島は両性愛者なのだが、そばには航ひとりしかいなかった。プライドが高いこの男が他者の近くに立つ男女に自分から触れることなど有り得ない。それを知った上での、会長なりの配慮である。
「はっはっは! 蛇の生殺しならぬ龍の生殺しってか? まあアレだ、たまには虐めさせろや、へっへっへ。その代わり、堤も付けてやるからよ」
「本当か?」
拝島は堤を見上げると人知れず広角を上げ、次いで航の裸体を横目で見た。
「アオイは前も格別なのか?」
「ヘッ! 自分でたしかめろや。あとから堤と行くからよ……おい帆波、部屋までお連れしろ」
「はい、かしこまりました」
会長に命ぜられるまま、帆波は拝島と航を二階寝室へと先導する。
まさか、帆波も性接待をするのだろうか──メイド服の後ろ姿を見つめながら、このとき航は思った。
けれども、部屋の扉を開けた帆波は「それではお楽しみくださいませ」とだけ言い残し、御辞儀をしてから去っていったので、その考えは杞憂に終わる。
ここの寝室のベッドはキングサイズ。
幾度も堤を受け入れた場所で、今度は新しい男の慰み物になる。寝取られることを望まれるパターンはめずらしくもないが、この場合は少々……いや、かなり特殊だろう。
「おまえだけ裸なのは公平じゃない。かといって、俺は脱ぐつもりはない。さあ、どうする?」
挑発的な鋭い眼差しが航の瞳を射抜く。
その答えは、ただひとつ。
航は無言のまま拝島の腰に手をまわすと、ネクタイの結び目に噛みついた。
その答えは、体験した者にしかわからない。
それは、酒池肉林の地上の楽園であり、獣たちが欲望を剥き出しにして荒れ狂う地獄でもある。
主催者は輪番制のようで、今宵の宴は航の御主人様の会長だった。
食事をすべて出し終えると、堤が純銀製の呼び鈴を振り鳴らす。すると大客間の扉が静かにひらき、裸の若い男女が続々と入室してきた。
彼らは終始無言のまま、招待客たちの席の傍らに直立不動で並び立つ。そのなかにはもちろん、航の姿もあった。
「えーっ、これより皆様お待ちかねの夜会の本番が始まるわけですが……あんまり人様の家を汚すんじゃねぇーぞテメェら」
同朋を睨みつける会長の大げさな仕草に笑いが巻き起こる。航を含めた裸の男女と堤、そして帆波だけはなにも反応を示さなかった。
「それでは……どうぞごゆっくりと」
その言葉を合図に、場の空気が一変する。
誰もなにひとつ喋ってはいないのだが、意思の疎通は成立していた。
ひとりの男が「勃たせろ」とつぶやけば、両隣にいた裸の女たちがテーブル下へと潜り込む。
早々に離席した老女のあとに続くのは裸の男女ふたりだ。おそらく寝室のひとつで楽しむのだろう。
似たような光景がこの屋敷の敷地内の至る場所で、屋内外で、招待客が飽きるまで、何度でも朝まで繰り広げられる。
それが夜会。
人間の皮を被った獣たちの宴だ。
そして航は、あの拝島の隣に立っていた。
だが、拝島は指一本触れるどころか視線すら合わせない。
理由は実に単純。
堤と同じく、航は会長の所有物だからである。
主催者の許可なくして所有物には触れられない。
それが夜会唯一の秩序だった。
「浩哉、オメェなにもしないのか?」
堤に車椅子を押させながら、笑みを浮かべて会長が話しかける。
「笑えない。特別扱いされるのには慣れてるけど、これって冷遇なんじゃないのか?」
拝島は両性愛者なのだが、そばには航ひとりしかいなかった。プライドが高いこの男が他者の近くに立つ男女に自分から触れることなど有り得ない。それを知った上での、会長なりの配慮である。
「はっはっは! 蛇の生殺しならぬ龍の生殺しってか? まあアレだ、たまには虐めさせろや、へっへっへ。その代わり、堤も付けてやるからよ」
「本当か?」
拝島は堤を見上げると人知れず広角を上げ、次いで航の裸体を横目で見た。
「アオイは前も格別なのか?」
「ヘッ! 自分でたしかめろや。あとから堤と行くからよ……おい帆波、部屋までお連れしろ」
「はい、かしこまりました」
会長に命ぜられるまま、帆波は拝島と航を二階寝室へと先導する。
まさか、帆波も性接待をするのだろうか──メイド服の後ろ姿を見つめながら、このとき航は思った。
けれども、部屋の扉を開けた帆波は「それではお楽しみくださいませ」とだけ言い残し、御辞儀をしてから去っていったので、その考えは杞憂に終わる。
ここの寝室のベッドはキングサイズ。
幾度も堤を受け入れた場所で、今度は新しい男の慰み物になる。寝取られることを望まれるパターンはめずらしくもないが、この場合は少々……いや、かなり特殊だろう。
「おまえだけ裸なのは公平じゃない。かといって、俺は脱ぐつもりはない。さあ、どうする?」
挑発的な鋭い眼差しが航の瞳を射抜く。
その答えは、ただひとつ。
航は無言のまま拝島の腰に手をまわすと、ネクタイの結び目に噛みついた。
20
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる