専属契約 ~俺はおまえの愛玩奴隷~

黒巻雷鳴

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chapter.03

獣たちの夜(1)

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 夜会とはなにか?
 その答えは、体験した者にしかわからない。
 それは、酒池肉林の地上の楽園であり、獣たちが欲望を剥き出しにして荒れ狂う地獄でもある。
 主催者は輪番制のようで、今宵の宴は航の御主人様の会長だった。
 食事をすべて出し終えると、堤が純銀製の呼び鈴を振り鳴らす。すると大客間の扉が静かにひらき、裸の若い男女が続々と入室してきた。
 彼らは終始無言のまま、招待客たちの席の傍らに直立不動で並び立つ。そのなかにはもちろん、航の姿もあった。

「えーっ、これより皆様お待ちかねの夜会の本番が始まるわけですが……あんまり人様の家を汚すんじゃねぇーぞテメェら」

 同朋を睨みつける会長の大げさな仕草に笑いが巻き起こる。航を含めた裸の男女と堤、そして帆波だけはなにも反応を示さなかった。

「それでは……どうぞごゆっくりと」

 その言葉を合図に、場の空気が一変する。
 誰もなにひとつ喋ってはいないのだが、意思の疎通は成立していた。
 ひとりの男が「たせろ」とつぶやけば、両隣にいた裸の女たちがテーブル下へと潜り込む。
 早々に離席した老女のあとに続くのは裸の男女ふたりだ。おそらく寝室のひとつで楽しむのだろう。
 似たような光景がこの屋敷の敷地内の至る場所で、屋内外で、招待客が飽きるまで、何度でも朝まで繰り広げられる。
 それが夜会。
 人間の皮を被った獣たちの宴だ。
 そして航は、あの拝島の隣に立っていた。
 だが、拝島は指一本触れるどころか視線すら合わせない。
 理由は実に単純シンプル
 堤と同じく、航は会長の所有物だからである。
 主催者の許可なくして所有物には触れられない。
 それが夜会唯一の秩序だった。

「浩哉、オメェなにもしないのか?」

 堤に車椅子を押させながら、笑みを浮かべて会長が話しかける。

「笑えない。特別扱いされるのには慣れてるけど、これって冷遇なんじゃないのか?」

 拝島は両性愛者なのだが、そばには航ひとりしかいなかった。プライドが高いこの男が他者の近くに立つ男女に自分から触れることなど有り得ない。それを知った上での、会長なりの配慮・・である。

「はっはっは! 蛇の生殺しならぬ龍の生殺しってか? まあアレだ、たまには虐めさせろや、へっへっへ。その代わり、堤も付けてやるからよ」
本当マジか?」

 拝島は堤を見上げると人知れず広角を上げ、次いで航の裸体を横目で見た。

「アオイは前も格別なのか?」
「ヘッ! 自分でたしかめろや。あとから堤と行くからよ……おい帆波、部屋までお連れしろ」
「はい、かしこまりました」

 会長に命ぜられるまま、帆波は拝島と航を二階寝室へと先導する。
 まさか、帆波も性接待をするのだろうか──メイド服の後ろ姿を見つめながら、このとき航は思った。
 けれども、部屋の扉を開けた帆波は「それではお楽しみくださいませ」とだけ言い残し、御辞儀をしてから去っていったので、その考えは杞憂に終わる。
 ここの寝室のベッドはキングサイズ。
 幾度も堤を受け入れた場所で、今度は新しい男の慰み物になる。寝取られることを望まれるパターンはめずらしくもないが、この場合は少々……いや、かなり特殊だろう。

「おまえだけ裸なのは公平フェアじゃない。かといって、俺は脱ぐつもりはない。さあ、どうする?」

 挑発的な鋭い眼差しが航の瞳を射抜く。
 その答えは、ただひとつ。
 航は無言のまま拝島の腰に手をまわすと、ネクタイの結び目に噛みついた。

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