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とある昼下がり、店に暖簾は掲げられていない。カウンターには、三人の男。店主に、ナナフシ。そして、いまや大タヌキの名を返上した『細タヌキ』だ。
「どうだい。来々軒新作の『あっさりラーメン』は」
ナナフシが、店長を讃え感嘆の声を漏らす。
「いや、さすがです店主。『こってりラーメン』とベクトルが違うこそすれ、その絶妙な味のバランス感覚は十二分に発揮されている」
対して、細タヌキはどこか不満げだ。
「あーあー大将よお。すっかり丸くなっちまって。いや確かにうめえよ。全盛期の俺なら替え玉5玉はいけただろうよ。だけど、俺は『こってりラーメン』のほうが食いてえんだ。あのパンチ力のある味に恋い焦がれてるんだ」
「パンチ力ねえ……」
「だめですよ、もう少しの辛抱なんですから我慢してください。それに、店長は病み上がりの貴方に負担をかけないためにわざわざこの新作を作ってくれたんですよ。感謝こそすれ、文句を垂れるとは何様ですか」
ナナフシに諭され、細タヌキは拗ねた子供のようにそっぽを向く。
「でも、ありがとうよ大将」
照れくさそうに感謝の意を告げる細タヌキを前に、店主がニヤリと口角をあげ厨房の奥へと引っ込んだ。しばらくして、戻ってきた店主の手には透明な小瓶が握られていた。カウンターにコトリと置かれた小瓶の中には、灰色の粉末がいっぱいに詰まっている。細タヌキとナナフシが、驚いて顔を見合わせた。
「おい大将……こいつはコショウじゃねえか」
「どういうつもりですか。客には何もかけさせないのが雷来軒のルールでは?」
「まあ、命をかけられるよりはマシってもんさ」
卍卍卍卍卍卍卍
おわり
卍卍卍卍卍卍卍
とある昼下がり、店に暖簾は掲げられていない。カウンターには、三人の男。店主に、ナナフシ。そして、いまや大タヌキの名を返上した『細タヌキ』だ。
「どうだい。来々軒新作の『あっさりラーメン』は」
ナナフシが、店長を讃え感嘆の声を漏らす。
「いや、さすがです店主。『こってりラーメン』とベクトルが違うこそすれ、その絶妙な味のバランス感覚は十二分に発揮されている」
対して、細タヌキはどこか不満げだ。
「あーあー大将よお。すっかり丸くなっちまって。いや確かにうめえよ。全盛期の俺なら替え玉5玉はいけただろうよ。だけど、俺は『こってりラーメン』のほうが食いてえんだ。あのパンチ力のある味に恋い焦がれてるんだ」
「パンチ力ねえ……」
「だめですよ、もう少しの辛抱なんですから我慢してください。それに、店長は病み上がりの貴方に負担をかけないためにわざわざこの新作を作ってくれたんですよ。感謝こそすれ、文句を垂れるとは何様ですか」
ナナフシに諭され、細タヌキは拗ねた子供のようにそっぽを向く。
「でも、ありがとうよ大将」
照れくさそうに感謝の意を告げる細タヌキを前に、店主がニヤリと口角をあげ厨房の奥へと引っ込んだ。しばらくして、戻ってきた店主の手には透明な小瓶が握られていた。カウンターにコトリと置かれた小瓶の中には、灰色の粉末がいっぱいに詰まっている。細タヌキとナナフシが、驚いて顔を見合わせた。
「おい大将……こいつはコショウじゃねえか」
「どういうつもりですか。客には何もかけさせないのが雷来軒のルールでは?」
「まあ、命をかけられるよりはマシってもんさ」
卍卍卍卍卍卍卍
おわり
卍卍卍卍卍卍卍
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