蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第九章 渓谷の発明少女

9-11 ナギパート

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「あー。日差しが眩しいー」

 カチュア達はロランス聖国の国都マティアへ戻ってきた。

「あー。かったるー。日差し眩しー」

 この暗い、雰囲気を出しているのは、デカい犬人形に入っているミラだ。セルフもボー読みになっている。あの威勢がいい隊長みたいな喋り方はどこにいったのか?

「ミラちゃん、どーしたんの~? 元気がないわね~」
「あの日差しが、ミラの体内の水分を吸い上げているのです」
「大変なんだよ。水を……」

 エドナは街の水路へ向かおうとすると。
 
 ツルーーーン!

 エドナは足を滑らせてしまった。

 この街、いや、この国は綺麗に掃除をしているため、綺麗な街が多いらしい。タイルの床が綺麗に磨かれている。そのため、滑りやすくなっているんだ。転ばない日を見たことがないエドナにはある意味、優しくない国だ。

 エドナは水路へ落ちて行った。

「あー。まずいですー。助けないとー」

 「助けないと」と言う割にはボー読みだ。後、全く、動こうとしない。もしかして、日差しに弱いのか? あの渓谷は日が入りにくいからか?

「そう言うなら、助けないとだろ?」



「はうう。びしょ濡れなんだよ……」

 水路に落ちたエドナを助けることはできた。全身びしょ濡れでシャツが透けて、豊満なお胸が丸見えだ。今着ているシャツも入り切らなくって、第一、第二ボタンが外れて谷間が見えているが。
  
「はうう。濡れた服が引っ付いて、気持ち悪いんだよ。服を絞りたいんだよ」

 ここ街中ですよ。

「あ! カチュアさんですわ!」

 そこにはユミルの姿が。

「あら~。ユミルちゃんだわ~。怪我している人の治癒は終わったかしら~」
「はい。大変でしたけど、何とか、終わりましたわ」
「……あれ? そこにいるのは~」

 ユミルの後ろに、見覚えのある猫目の女の子の姿があった。

 それはルナだった。

「あら~、ユミルちゃんの後ろにいるのはルナちゃんだわ~。どーしてここに~」
「ある程度は調べ終わったから、来ました。それと……」

  ルナが言いかけようとすると。

「よかったッス! 無事で」

 スイレンが現れた。

 ルナがスイレンとレオの顔を交互に見つめた。

「もしかして、ロランスのお姫様です?」
「そうッス」
「それと、気にはなっていましたが、そちらの獣人族の方の耳を見ると、猫とは違いますね。獅子かな? ダグザでは獅子系の獣人族が王位を即位しますが、もしかして王女様方ですか?」
「まあ、一応。で、この猫目の女の子は? カチュア達の知り合い?」
「ルナちゃんよ~」
「初めまして。ルナです。よろしくお願いします」

 ルナがお時期をした。そして今度は、ミラが入っている犬の人形を見つめていた。

「もう一つ、気にはなっていましたが、その大きい犬は?」

 あれ? ルナの様子がおかしい。何だが、震えているような?

「人形だ。この中に小人族が入っている」
「人形ですか。よかったです」

 ほっとして息を吐いた。震えていたからだが落ち着いていた。

「て!? え!? 本当に見つけられたんですか?」
「あー。初めましてー。ミラでーす」

 挨拶ぐらいちゃんとしろよ。

「なんか、暗いね」
「よくわからないんだ。威勢がいい時もあれば、人見知りが入ったように、もじもじしたり……」
「余計に分からなくなりました」
「取り敢えず、落ち着けるところで話しませんか?」
「じゃあ、私のお部屋を使うッス……ところで、何でエドナちゃんは、びしょ濡れッスか?」
「はうう。さっき水路に落ちちゃって……」
「相変わらずですね」

 ルナの目が細くなっていた。ジト目という奴か。うん、きっとそうだ。

「私の服を貸して、あげますよ」
「いや~、サイズが合わないじゃないか? ゴリラと……」

 レオの口から「ゴリラ」と単語が出れば、スイレンはレの胸ぐらを掴かんだ。

「誰がゴリラッスか!? ああ!?」
「ルナがいない間に変な人達が集まりましたね。スイレンさんって、清らかな人魚族と聞いていましたのに」
「まあ、なれますよ。僕も小さい頃、ユンヌ姉ちゃんには苦労させられましたから。あの頃はツッコミしまくっていたが、今では、滅多に突っ込みなんて、しなくなりましたから」

 フォローしているつもりだが、フォローになっていないよ、アイラさん。

 変わった人たちとの接触で、感覚が麻痺したのか?


 
 スイレンのお部屋に入ってから、ルナにカチュア達と別行動しいてからの近況報告を行った。

 ちなみにエドナは着替え中だ。

 スイレンとレオの出会いに、魔人族の戦い、そしてミラの出会いと、谷底で出会った怪しい連中のこと。

 話を聞いていたルナは段々と疲れた表情になっていた。

「……ということです」

 ミラは犬の人形から出て、私をカチュアから出せる方法を教えた。

「あなた、外で話した時と全然違いますね?」
「ミラは日差しが苦手で、後は人話すのは苦手なんです……、目を合わせなければ、喋れます……」

  だから、性格変わっていたのか。日差しが当たっている時、日差しが当たっていない場合は、人形に入っていると、人形から出ている時とで。

「話戻しますが、スライム石ならアヴァルのルナの研究所にあったはずです」
「結構速めに手に入りそうだな」
「そー言えば~。ルナちゃんはどーしてここに?」
「そうだ、カチュアさん達にお願いがありまして」

 ルナは一旦、深呼吸をした。深刻な事態なのか?

「また、戦いが始まるんです」
「え?」
「今度は南側にある傭兵の国へルディアです」

 初めて聞く国だな。

「攻めてきのかしら~?」
「正確には抗議です。でも、結果的には戦争に発展しそうです」
「どういうことですか?」
「そのへルディアで甚大の被害が起きていて、その原因はコルネリアにあるらしいのです。それを突き付けても、コルネリアは取り合ってくれず、へルディアの方は痺れを切らしそうで、このままでは……」

 そんな、これから、只事じゃない話が始まるところで。

「あの……」

   着替え終えた、エドナが話を遮るように現れた。

「スイレンさん、お洋服貸してくれたのはありがたいんだよ」
「昔のお洋服が着れてよかったッス」
「あたしにはちょっと派手なんだよ」

 スイレンのお姫様だから、村娘のエドナには豪華だよな。

「とても、可愛いわ~、エドナちゃん~」
「ありがとうなんだよ。……でも」

 エドナは胸元に両手を乗せる。

「サイズがきついんだよ」
「私がエドナちゃんくらいの身長の頃はそんなに胸は大きくはなかったッスから。だから、もう少し大きめの服にしたッスが、ギリギリッスね」
「はうう……」




第九章   渓谷の発明少女 完

『ちょっと! これから、大事な話が始まるのに、ここで終わり!?』
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