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第二章 英雄の力
2-12 悲劇再来
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アヴァルの街から出発して、四時間くらい、歩いたカチュア達。しかし、未だに目的地には着いていなかった。
「ところで、なんで、カチュアさんの顔が赤なっているんですか?」
「それは……聞かないでねぇ~」
「す、すみません。気になることがあると、つい周りが見えなくなってしまうのです」
カチュアとルナの顔が赤く染まっていた。
「わたしはだいじょぶよ~。もう慣れたから」
『慣れてはいけないと思うんだが』
「良かったら、また揉んで見る~?」
「そんなに進めるものではない気がします。でも、あの感触は癒されます。疲れている時に、また揉みたいですね」
(男性が羨む行為だな。これを見た発情した猿は、ルナに代わりたいと思うだろうな)
「あたしが、カチュアさんとルナちゃんと、離れている間に、何か、あったんですか?」
「何でもないです!」
即答だった。
「はうう……気になるんだよ」
「あ! それよりも……もう少しで、ロプ村に着きますよ。お二人さん」
(切り替えるの早い。さっきまで、カチュアのおっぱいに魅了されていたのに)
「そうなんだ! それじゃあ、走って……」
「走らないでください! ルナは、エドナさんの走るスピードには着いていけませんから!」
「はうう! ごめんなさい!」
ルナの注意を受けているエドナの横で、突然、カチュアが「くんくん」と匂いを嗅ぐ様な、仕草をし始めた。
「どうしたんですか? 匂いを嗅いで?」
ルナが不思議そうに尋ねた。
「どうしてかな? 嫌な予感かするような、気がするんだよ」
「どういうことですか? エドナさん?」
「ねぇ~。ロプ村って~。あの先かな~?」
「え? あ! はい、そうですよ。本当にどうしたんですか?」
カチュアが指で刺した方向に対し、ルナが答えた。
「あの方角に、目的地のロプ村があるですね」
「……だけど、そのロプ村から焦げた匂いがするのよ~」
「え?」
ルナも「くんくん」と、匂いを嗅いでみた。
「何も匂わないけど……」
「でも、カチュアさんは、匂いを感じ取れるんだよね? 焦げた匂いって焚火《たきび》をしている人が居るのかな?」
「こんなところで焚火なんかしたら、火事になりますよ」
突然、エドナがハッとした。
「……あれ? この感じは確か……」
「どうしたんですか? エドナさん?」
「急いで、ロプ村にいった方がいいですか? カチュアさん」
「そーね~。それに、何だか、嫌な予感がするのよ~」
「え!? 二人だけで納得しないでくださいよ! 何が、どうしたんですか!?」
「あたしにも分からないんだよ。だけど、今わかっていることは、急いでロプ村へ行かないとなんだよ!!!」
「よーし、行くよ~」
カチュアとエドナは、ロプ村のある方向に走り出した。
「ま! 待ってくださーい!」
ルナも、カチュア達の後を追い掛けるため、走り出そうとした。
ズリッ!!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
ドーーーーーーン!!!
エドナは滑って転んでしまった。
「うう! こんな時なのに、何をやっているんだろう、あたしは! また、派手に転んじゃったんだよ!」
「エドナちゃん~。落ち着いて、移動しようね~。ここ足場が悪いから、転びやすいわ~」
「はうう……。ごめんなさい……」
【ロプ村】
カチュアとエドナは、ようやくロプ村へ辿り着いた。
しかし。
「はうう! 嫌な予感は当たっていたんだよ!」
その光景は、悲惨なものだった。村内にある何件かの家が、壊されていたり、焼かれてもいた。
村内には、怪我を負った者や、遺体もあった。
「はああ……はああ……二人とも速いですよ……はああ……はああ……。……それとも、ルナが体力ないだけですか……?」
送れてルナが到着した。
ルナは、全力で走ったため、息を切らしていた。
「はああ……は! これは!? 悲惨過ぎます! 誰がこんなことを!?」
「はうう! あそこに怪我をした人が!」
惨劇の中に、鎧を付けた者が、怪我人を担いだり、怪我をしている者の応急措置をしたりと、救助活動をしていた。
エドナは、すぐさま、怪我人の元へ駆けつけていった。
「大丈夫ですか?」
「君は?」
「エドナなんだよ。それよりも、治癒術を掛けるんだよ!」
駆けつけたエドナは、怪我をしてる者の左足にある、傷口に目掛けて、手の平から光が放たれた。
その光は治癒術の光で、光を浴びた開いた傷が、見る見るうちに、塞がっていった。
「あれ!? 痛みがなくなった! 体も軽くなったし、ありがとう! お嬢ちゃん!」
怪我を負った者は、初めから怪我を負っていなかったかのように立ち上がった。
「よかったんだよ!」
ガッシ!!
「はう!?」
突然、ルナはエドナの右腕を掴んた。ルナは、エドナの右腕に付けている魔道具を見つめているようだ。
「はわわ!? どうしたの? ルナちゃん?」
「は?」
ルナは慌てて、エドナの腕を掴んでいた手を離した。
「いいえ……エドナさんの治癒術は凄いなーと思いました」
「もう! 掴まれた時は痛かったんだよ!」
「本当に、ごめんなさい」
(確信しました。やはり、エドナさんはあれでしたか。そうなると、エドナさんの命が危ないです。何とかして、エドナさんを守らないとです。しかし、エドナさんがあれなら、何で、堂々と街に入って来たのでしょうか?)
そんなカチュア達の元に、一人の鎧を付けた兵士が近づいてきた。
「なんだね、君達は?」
兵士はルナの顔を見ると。
「は! あなたは、ルナ殿でしたか!」
ルナの顔を見ると敬礼をした。
「そうです。あなた部下さんですね」
「その言い方だと、『部下』が名前見たいになっていますよ」
「すみません。部下さんの名前が個性的過ぎて、呼びにくいんですよ」
「それは、否定しません。この名前を付けた親を憎みたくなりますよ」
「それで、部下さんが、ここにいるなら、この村にいる兵達は、兄様が率いれている部隊ですよね? 何で、お兄様の部隊がここに? 確か、タウロの街に向かったと思ったんですが……」
「はい。確かに、我々は、アルヴス殿が所有している研究所のあるタウロの街へ向かっていたんです。しかし、その途中で、ロプ村が襲われていた報告を受けて、駆けつけたんです」
「そうですか……」
「ルナ殿はどうして、こちらへ? 確か、アルヴス殿に止められていたはずでは?」
「この方々のギルドの依頼の付き添いで、ロプ村まで薬を届ける依頼を受けていたんです」
「そうですか。では、私が、届けて置きます」
「それでは、お願いします。届け先は、ミカンという子の祖母さんです」
ルナは、持っていた薬を『部下』と呼ばれていた者に渡した。
「ところで、この状況は、何かあったんですか? ただ事ではないようですが」
「この村に、あの手配中のガイザックが現れたのです。そのガイザックが村を襲ったんです」
「何ですって!! あのガイザックが!!」
『ルナはかなり驚いているようだけど、その「ガイザック」っていうのは、人の名前だよな? 誰だろう?』
「は! 待ってください! そう言えば……」
ルナは、探し物を探しているかのように、辺りを見渡している。
「この部隊には、兄様の部隊ですが、兄様の姿が見えません。兄様は!?」
「アルヴス殿は……その……」
「早く言ってください!」
アルヴスの部下に圧を掛けるルナ。
「は! ア! アルヴス殿は、一人でガイザックを追いかけて……」
「なんですって! 今すぐに……」
ルナは、走りだそうとするが、すぐに足が止まり。
「いいえ」
大きく深呼吸をすると。
「エドナさんは、もう少し手伝ってくれますか? 皆の治癒をお願いしていいですか?」
「え? あっ! はい! いいですよ」
「部下さん。あなた方は、この村を死守と同時に、このお胸の大……エドナさんのサポートをお願いできますか?」
「あっ! はい! それは勿論」
(ルナ殿。今この子に対して、「お胸が大きい」と言いかけましたね。確かに、胸は大きいですけど。ついでに、フードを被った方も、マントで隠していますがチラチラと大きな胸が見えます。隠しても漏れてしまう程、大きいのですね)
「カチュアさんは、ルナと一緒に兄様の捜索をお願いしてもいいですか? 兄様が心配です」
「わかったわ~」
「ルナ殿! いけません! 危険です!」
アルヴスの部下が、ルナに対し制止を呼びかけた。
「そういえば……そのガイザックって、人の名前だよね? ルナちゃんの知り合いなんです?」
「あんなのが、知り合いにいたら、怖いですよ!! ガイザックは現在、手配中の勇能力を持つ男です! 英雄の力を、人々のためにではなく、悪事に使っているのです」
「あの……話を進めないでください」
そんな制止の呼びかけが聞こえなかったように、エドナがルナに問いただし、ルナがそれに対し答えた。
「奴は男性を殺して、女性は殺さない。だけど、女性は、精神が崩壊するまで玩具にするそうです。でも、分からないことがありまして、その『玩具』っていうのが、ルナには分からないんです」
「そのガイザックって人は、子供なの?」
「エドナさん? 何で、ガイザックを子供と思ったんですか?」
「だって、『玩具』にするとか何か言っていたから。でも、人を『玩具』にするってどういうことなの? 分からないんだよ!」
(エドナも意味は分からないみたいだ。記憶はないが、何となく「玩具」の例えは分かってしまった。これは、純粋の子には理解できないだろうね。ということは私の心は純粋ではないってことか。取り敢えず、深く考えないことを伝えないと)
『カチュア。しばらく借りるよ』
すると、カチュアの瞳の色が蒼色から赤色になった。
「エドナ。少なくっても『玩具』は、子供が遊ぶ『玩具』の意味ではないのよ」
「そうなの? じゃあ、どういう意味なの?」
「意味は知らなくっていい。でも、その男はクズ人間だという、認識でいればいいのよ」
「そうなんだ……」
(よし、伝えるだけ、伝えたから、戻ろう。ところで、カチュアの返事を待たずに、体を借りたけど大丈夫なのかな?)
カチュアの瞳の色は赤から蒼色へ戻った。
「それよりも、今は兄様の安否です! 兄様は、どこにいるのでしょうか……?」
ルナが悩んでいる中、カチュアは、大きな山のある方を眺めていた。
「そうなんだよ! カチュアさんなら、分かるんじゃないのかな?」
「どういうこと?」
「カチュアさんは、遠く離れたところでも、音を聴き取れるんだよ。もしかしたら、音を頼りに、ルナちゃんのお兄さんが、何処にいるのか分かるかもしれないんだよ」
「それなら……」
カチュアが、眺めていた方角へ指を刺した。
「あの先に、何かが、ぶつかる音がするわ~。多分、鉄同士ね~」
「そんなことが分かるんですか!? ありがたいことですが……」
「それじゃあ~早く行きましょ~。そこにいるのが、ルナちゃんのお兄さんかは、行ってみないと分からないわよ~」
「賭けるしかないようですね。行きましょう」
「いや、だからルナ殿! なりませんって! 奴は勇能力の持ち主です! 危険な相手で……」
アルヴスの部下が必死そうに訴えっていたが、途中でカチュアとルナが走り出そうとした。
(待てよ! ルナはともかく、カチュアはガイザックの情報はない。それに、さっきから話題にでる勇能力の詳細が未だに分かっていない)
「ちょっと、待って」
カチュアの足が急に止まった。立ち止まる、カチュアを見て、ルナの足も止まった。
「カチュアさん? どうしたんですか?」
「あ~。今はナギよ」
カチュアの瞳の色が赤くなっていた。
「ルナに、聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたんですか!? こんな時に!? 兄様が危ないんですよ!!」
「それは十分装置だ。だけど、ガイザックという奴と、やり合うなら、その勇能力のことをカチュア達に説明して貰っていいか? 今までの、カチュアの様子を見ている限りだと、その勇能力のことを全く知らないんだ。まあ、それは、私もだけど。まず、交戦する前に、相手のことを知らないと、全滅する可能性がある」
「あっ! そうですね……それは大事なことでした! これから戦うというのに、対象方法を知らないで、戦うのは、命取りです」
ルナは、大きく深呼吸した。
「あの~。ここは危険です。ルナ殿は……」
さっきから、アルヴスの部下は制止を呼びかけているが、ルナはお構いなく話を始め、全く耳に入らなくなってしまった。
「勇能力というのは、英雄の力と言われているのが一般的です」
「英雄の力? 英雄は、世界の危機を救う救世主のイメージがあるから、強力な敵に対抗できる程の力を持っているって、いいのかな?」
「そうです。……とはいっても、その力は個人差があります。個人によって、扱える能力は異なります。ですが、共通している勇能力の特徴を説明します。勇能力を持つ者の魔術は強力です。しかも、魔術は魔道具なしで魔術が使えます。それも複数の属性攻撃を。そして、勇能力者が扱う魔術の最大な特徴。それは無詠唱です。魔術は、基本、詠唱が必要で発動させるには時間が掛るんです。しかし、勇能力は詠唱なしで魔術が使えるため、発動が早いんです」
「え? 勇能力の持ち主は、詠唱する必要なく魔術が使えるんですか? 初めて知ったんだよ」
「あれ~? あれって~詠唱というのが、必要だったの~? エドナちゃんはそれっぽいことはした様子はなかったわ~」
カチュアの瞳の色が、蒼色に戻っていた。
「基本、詠唱を唱えるのは、頭の中で、念じればいいのです。口から詠唱を唱えることは、可能だったのですが、詠唱途中で舌を噛んで変な魔術を発動してしまうリスクがありますので、現在は口から詠唱を唱える方は、魔術の練習以外、まずいません」
「そう言えば、あたしも、昔よくあったんだよ」
(だろうね)
「詠唱を言い間違えて、家の中で竜巻を起こしたことがあったんだよ」
(想像以上に悲惨なことになっているよ)
「後は、自身の身体を強化する身体強化。自分の周りに見えない鎧を纏う障壁。後は覚醒と言われる、奥の手のがあります」
「まるで……反則、ズルだな。要素が盛り過ぎるだろ」
一瞬だけど、カチュアの瞳の色が赤くなっていた。そして、すぐに元の色へ戻った。
(やばい! 無意識に表に出てしまった)
「ルナ達に言わせればそうです。そうそう、障壁の詳細を説明しないとです。障壁というのは、体を見えない鎧見たいなもので守る力です。だからと、言って、無敵ではありません。障壁力といって、障壁を貼るためのエネルギーがあるんです。その障壁力がなくなると障壁が貼れなくなります。障壁力は攻撃をしていくとなくなっていきます」
「つまり、攻撃を与える続けると、いつかは障壁が壊れていく認識で、いいのかしら~?」
「はい、そうです。だから、障壁を貼れる間は、本体に刃が通らないものと思ってください」
「わかったわ~」
「さぁ、話が長くなっちゃいました。そろそろ、行きましょう」
「そーね~。こーしている間にも、ルナちゃんのお兄さんが心配だわ~。助けにいかないとだわ~」
「あの……だから……ルナ殿ー」
必死に制止するアルヴスの部下に対して、カチュアがアルヴスの部下に。
「いざとなれば、わたしがルナちゃんを守るわ~。だから、安心してね~」
「あっ! はい、では私は治癒術を使える、この大きな……じゃなかった、この方の護衛を!!」
「話が着いたみたい。よかったんだよ」
(いいのか、それで? もう少し粘れよ。てか、こいつ、カチュアのおっぱいをガン見していなかった? それにエドナのことを「大きなおっぱい」と言おうとしていなかった?)
「お二人さん気をつけてね!」
カチュアとルナは、アルヴスが居るかもしれない方向へ、向かって行った。
それを手を振りながら見送りをするエドナ。
「あたしも皆さんの治癒頑張らないと、なんだよ」
「あれ? ルナ殿ー。いけない、微かにマントの中から見える大きな胸に見惚れていたら……ルナ殿ー。戻ってきてくださ-い! ルナ殿ー!」
「ところで、なんで、カチュアさんの顔が赤なっているんですか?」
「それは……聞かないでねぇ~」
「す、すみません。気になることがあると、つい周りが見えなくなってしまうのです」
カチュアとルナの顔が赤く染まっていた。
「わたしはだいじょぶよ~。もう慣れたから」
『慣れてはいけないと思うんだが』
「良かったら、また揉んで見る~?」
「そんなに進めるものではない気がします。でも、あの感触は癒されます。疲れている時に、また揉みたいですね」
(男性が羨む行為だな。これを見た発情した猿は、ルナに代わりたいと思うだろうな)
「あたしが、カチュアさんとルナちゃんと、離れている間に、何か、あったんですか?」
「何でもないです!」
即答だった。
「はうう……気になるんだよ」
「あ! それよりも……もう少しで、ロプ村に着きますよ。お二人さん」
(切り替えるの早い。さっきまで、カチュアのおっぱいに魅了されていたのに)
「そうなんだ! それじゃあ、走って……」
「走らないでください! ルナは、エドナさんの走るスピードには着いていけませんから!」
「はうう! ごめんなさい!」
ルナの注意を受けているエドナの横で、突然、カチュアが「くんくん」と匂いを嗅ぐ様な、仕草をし始めた。
「どうしたんですか? 匂いを嗅いで?」
ルナが不思議そうに尋ねた。
「どうしてかな? 嫌な予感かするような、気がするんだよ」
「どういうことですか? エドナさん?」
「ねぇ~。ロプ村って~。あの先かな~?」
「え? あ! はい、そうですよ。本当にどうしたんですか?」
カチュアが指で刺した方向に対し、ルナが答えた。
「あの方角に、目的地のロプ村があるですね」
「……だけど、そのロプ村から焦げた匂いがするのよ~」
「え?」
ルナも「くんくん」と、匂いを嗅いでみた。
「何も匂わないけど……」
「でも、カチュアさんは、匂いを感じ取れるんだよね? 焦げた匂いって焚火《たきび》をしている人が居るのかな?」
「こんなところで焚火なんかしたら、火事になりますよ」
突然、エドナがハッとした。
「……あれ? この感じは確か……」
「どうしたんですか? エドナさん?」
「急いで、ロプ村にいった方がいいですか? カチュアさん」
「そーね~。それに、何だか、嫌な予感がするのよ~」
「え!? 二人だけで納得しないでくださいよ! 何が、どうしたんですか!?」
「あたしにも分からないんだよ。だけど、今わかっていることは、急いでロプ村へ行かないとなんだよ!!!」
「よーし、行くよ~」
カチュアとエドナは、ロプ村のある方向に走り出した。
「ま! 待ってくださーい!」
ルナも、カチュア達の後を追い掛けるため、走り出そうとした。
ズリッ!!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
ドーーーーーーン!!!
エドナは滑って転んでしまった。
「うう! こんな時なのに、何をやっているんだろう、あたしは! また、派手に転んじゃったんだよ!」
「エドナちゃん~。落ち着いて、移動しようね~。ここ足場が悪いから、転びやすいわ~」
「はうう……。ごめんなさい……」
【ロプ村】
カチュアとエドナは、ようやくロプ村へ辿り着いた。
しかし。
「はうう! 嫌な予感は当たっていたんだよ!」
その光景は、悲惨なものだった。村内にある何件かの家が、壊されていたり、焼かれてもいた。
村内には、怪我を負った者や、遺体もあった。
「はああ……はああ……二人とも速いですよ……はああ……はああ……。……それとも、ルナが体力ないだけですか……?」
送れてルナが到着した。
ルナは、全力で走ったため、息を切らしていた。
「はああ……は! これは!? 悲惨過ぎます! 誰がこんなことを!?」
「はうう! あそこに怪我をした人が!」
惨劇の中に、鎧を付けた者が、怪我人を担いだり、怪我をしている者の応急措置をしたりと、救助活動をしていた。
エドナは、すぐさま、怪我人の元へ駆けつけていった。
「大丈夫ですか?」
「君は?」
「エドナなんだよ。それよりも、治癒術を掛けるんだよ!」
駆けつけたエドナは、怪我をしてる者の左足にある、傷口に目掛けて、手の平から光が放たれた。
その光は治癒術の光で、光を浴びた開いた傷が、見る見るうちに、塞がっていった。
「あれ!? 痛みがなくなった! 体も軽くなったし、ありがとう! お嬢ちゃん!」
怪我を負った者は、初めから怪我を負っていなかったかのように立ち上がった。
「よかったんだよ!」
ガッシ!!
「はう!?」
突然、ルナはエドナの右腕を掴んた。ルナは、エドナの右腕に付けている魔道具を見つめているようだ。
「はわわ!? どうしたの? ルナちゃん?」
「は?」
ルナは慌てて、エドナの腕を掴んでいた手を離した。
「いいえ……エドナさんの治癒術は凄いなーと思いました」
「もう! 掴まれた時は痛かったんだよ!」
「本当に、ごめんなさい」
(確信しました。やはり、エドナさんはあれでしたか。そうなると、エドナさんの命が危ないです。何とかして、エドナさんを守らないとです。しかし、エドナさんがあれなら、何で、堂々と街に入って来たのでしょうか?)
そんなカチュア達の元に、一人の鎧を付けた兵士が近づいてきた。
「なんだね、君達は?」
兵士はルナの顔を見ると。
「は! あなたは、ルナ殿でしたか!」
ルナの顔を見ると敬礼をした。
「そうです。あなた部下さんですね」
「その言い方だと、『部下』が名前見たいになっていますよ」
「すみません。部下さんの名前が個性的過ぎて、呼びにくいんですよ」
「それは、否定しません。この名前を付けた親を憎みたくなりますよ」
「それで、部下さんが、ここにいるなら、この村にいる兵達は、兄様が率いれている部隊ですよね? 何で、お兄様の部隊がここに? 確か、タウロの街に向かったと思ったんですが……」
「はい。確かに、我々は、アルヴス殿が所有している研究所のあるタウロの街へ向かっていたんです。しかし、その途中で、ロプ村が襲われていた報告を受けて、駆けつけたんです」
「そうですか……」
「ルナ殿はどうして、こちらへ? 確か、アルヴス殿に止められていたはずでは?」
「この方々のギルドの依頼の付き添いで、ロプ村まで薬を届ける依頼を受けていたんです」
「そうですか。では、私が、届けて置きます」
「それでは、お願いします。届け先は、ミカンという子の祖母さんです」
ルナは、持っていた薬を『部下』と呼ばれていた者に渡した。
「ところで、この状況は、何かあったんですか? ただ事ではないようですが」
「この村に、あの手配中のガイザックが現れたのです。そのガイザックが村を襲ったんです」
「何ですって!! あのガイザックが!!」
『ルナはかなり驚いているようだけど、その「ガイザック」っていうのは、人の名前だよな? 誰だろう?』
「は! 待ってください! そう言えば……」
ルナは、探し物を探しているかのように、辺りを見渡している。
「この部隊には、兄様の部隊ですが、兄様の姿が見えません。兄様は!?」
「アルヴス殿は……その……」
「早く言ってください!」
アルヴスの部下に圧を掛けるルナ。
「は! ア! アルヴス殿は、一人でガイザックを追いかけて……」
「なんですって! 今すぐに……」
ルナは、走りだそうとするが、すぐに足が止まり。
「いいえ」
大きく深呼吸をすると。
「エドナさんは、もう少し手伝ってくれますか? 皆の治癒をお願いしていいですか?」
「え? あっ! はい! いいですよ」
「部下さん。あなた方は、この村を死守と同時に、このお胸の大……エドナさんのサポートをお願いできますか?」
「あっ! はい! それは勿論」
(ルナ殿。今この子に対して、「お胸が大きい」と言いかけましたね。確かに、胸は大きいですけど。ついでに、フードを被った方も、マントで隠していますがチラチラと大きな胸が見えます。隠しても漏れてしまう程、大きいのですね)
「カチュアさんは、ルナと一緒に兄様の捜索をお願いしてもいいですか? 兄様が心配です」
「わかったわ~」
「ルナ殿! いけません! 危険です!」
アルヴスの部下が、ルナに対し制止を呼びかけた。
「そういえば……そのガイザックって、人の名前だよね? ルナちゃんの知り合いなんです?」
「あんなのが、知り合いにいたら、怖いですよ!! ガイザックは現在、手配中の勇能力を持つ男です! 英雄の力を、人々のためにではなく、悪事に使っているのです」
「あの……話を進めないでください」
そんな制止の呼びかけが聞こえなかったように、エドナがルナに問いただし、ルナがそれに対し答えた。
「奴は男性を殺して、女性は殺さない。だけど、女性は、精神が崩壊するまで玩具にするそうです。でも、分からないことがありまして、その『玩具』っていうのが、ルナには分からないんです」
「そのガイザックって人は、子供なの?」
「エドナさん? 何で、ガイザックを子供と思ったんですか?」
「だって、『玩具』にするとか何か言っていたから。でも、人を『玩具』にするってどういうことなの? 分からないんだよ!」
(エドナも意味は分からないみたいだ。記憶はないが、何となく「玩具」の例えは分かってしまった。これは、純粋の子には理解できないだろうね。ということは私の心は純粋ではないってことか。取り敢えず、深く考えないことを伝えないと)
『カチュア。しばらく借りるよ』
すると、カチュアの瞳の色が蒼色から赤色になった。
「エドナ。少なくっても『玩具』は、子供が遊ぶ『玩具』の意味ではないのよ」
「そうなの? じゃあ、どういう意味なの?」
「意味は知らなくっていい。でも、その男はクズ人間だという、認識でいればいいのよ」
「そうなんだ……」
(よし、伝えるだけ、伝えたから、戻ろう。ところで、カチュアの返事を待たずに、体を借りたけど大丈夫なのかな?)
カチュアの瞳の色は赤から蒼色へ戻った。
「それよりも、今は兄様の安否です! 兄様は、どこにいるのでしょうか……?」
ルナが悩んでいる中、カチュアは、大きな山のある方を眺めていた。
「そうなんだよ! カチュアさんなら、分かるんじゃないのかな?」
「どういうこと?」
「カチュアさんは、遠く離れたところでも、音を聴き取れるんだよ。もしかしたら、音を頼りに、ルナちゃんのお兄さんが、何処にいるのか分かるかもしれないんだよ」
「それなら……」
カチュアが、眺めていた方角へ指を刺した。
「あの先に、何かが、ぶつかる音がするわ~。多分、鉄同士ね~」
「そんなことが分かるんですか!? ありがたいことですが……」
「それじゃあ~早く行きましょ~。そこにいるのが、ルナちゃんのお兄さんかは、行ってみないと分からないわよ~」
「賭けるしかないようですね。行きましょう」
「いや、だからルナ殿! なりませんって! 奴は勇能力の持ち主です! 危険な相手で……」
アルヴスの部下が必死そうに訴えっていたが、途中でカチュアとルナが走り出そうとした。
(待てよ! ルナはともかく、カチュアはガイザックの情報はない。それに、さっきから話題にでる勇能力の詳細が未だに分かっていない)
「ちょっと、待って」
カチュアの足が急に止まった。立ち止まる、カチュアを見て、ルナの足も止まった。
「カチュアさん? どうしたんですか?」
「あ~。今はナギよ」
カチュアの瞳の色が赤くなっていた。
「ルナに、聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたんですか!? こんな時に!? 兄様が危ないんですよ!!」
「それは十分装置だ。だけど、ガイザックという奴と、やり合うなら、その勇能力のことをカチュア達に説明して貰っていいか? 今までの、カチュアの様子を見ている限りだと、その勇能力のことを全く知らないんだ。まあ、それは、私もだけど。まず、交戦する前に、相手のことを知らないと、全滅する可能性がある」
「あっ! そうですね……それは大事なことでした! これから戦うというのに、対象方法を知らないで、戦うのは、命取りです」
ルナは、大きく深呼吸した。
「あの~。ここは危険です。ルナ殿は……」
さっきから、アルヴスの部下は制止を呼びかけているが、ルナはお構いなく話を始め、全く耳に入らなくなってしまった。
「勇能力というのは、英雄の力と言われているのが一般的です」
「英雄の力? 英雄は、世界の危機を救う救世主のイメージがあるから、強力な敵に対抗できる程の力を持っているって、いいのかな?」
「そうです。……とはいっても、その力は個人差があります。個人によって、扱える能力は異なります。ですが、共通している勇能力の特徴を説明します。勇能力を持つ者の魔術は強力です。しかも、魔術は魔道具なしで魔術が使えます。それも複数の属性攻撃を。そして、勇能力者が扱う魔術の最大な特徴。それは無詠唱です。魔術は、基本、詠唱が必要で発動させるには時間が掛るんです。しかし、勇能力は詠唱なしで魔術が使えるため、発動が早いんです」
「え? 勇能力の持ち主は、詠唱する必要なく魔術が使えるんですか? 初めて知ったんだよ」
「あれ~? あれって~詠唱というのが、必要だったの~? エドナちゃんはそれっぽいことはした様子はなかったわ~」
カチュアの瞳の色が、蒼色に戻っていた。
「基本、詠唱を唱えるのは、頭の中で、念じればいいのです。口から詠唱を唱えることは、可能だったのですが、詠唱途中で舌を噛んで変な魔術を発動してしまうリスクがありますので、現在は口から詠唱を唱える方は、魔術の練習以外、まずいません」
「そう言えば、あたしも、昔よくあったんだよ」
(だろうね)
「詠唱を言い間違えて、家の中で竜巻を起こしたことがあったんだよ」
(想像以上に悲惨なことになっているよ)
「後は、自身の身体を強化する身体強化。自分の周りに見えない鎧を纏う障壁。後は覚醒と言われる、奥の手のがあります」
「まるで……反則、ズルだな。要素が盛り過ぎるだろ」
一瞬だけど、カチュアの瞳の色が赤くなっていた。そして、すぐに元の色へ戻った。
(やばい! 無意識に表に出てしまった)
「ルナ達に言わせればそうです。そうそう、障壁の詳細を説明しないとです。障壁というのは、体を見えない鎧見たいなもので守る力です。だからと、言って、無敵ではありません。障壁力といって、障壁を貼るためのエネルギーがあるんです。その障壁力がなくなると障壁が貼れなくなります。障壁力は攻撃をしていくとなくなっていきます」
「つまり、攻撃を与える続けると、いつかは障壁が壊れていく認識で、いいのかしら~?」
「はい、そうです。だから、障壁を貼れる間は、本体に刃が通らないものと思ってください」
「わかったわ~」
「さぁ、話が長くなっちゃいました。そろそろ、行きましょう」
「そーね~。こーしている間にも、ルナちゃんのお兄さんが心配だわ~。助けにいかないとだわ~」
「あの……だから……ルナ殿ー」
必死に制止するアルヴスの部下に対して、カチュアがアルヴスの部下に。
「いざとなれば、わたしがルナちゃんを守るわ~。だから、安心してね~」
「あっ! はい、では私は治癒術を使える、この大きな……じゃなかった、この方の護衛を!!」
「話が着いたみたい。よかったんだよ」
(いいのか、それで? もう少し粘れよ。てか、こいつ、カチュアのおっぱいをガン見していなかった? それにエドナのことを「大きなおっぱい」と言おうとしていなかった?)
「お二人さん気をつけてね!」
カチュアとルナは、アルヴスが居るかもしれない方向へ、向かって行った。
それを手を振りながら見送りをするエドナ。
「あたしも皆さんの治癒頑張らないと、なんだよ」
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