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14:プラネタリウムデート
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――11月。
早川くんの高校は、東京都の地区大会で優勝した。
12月の全国大会の出場切符を手に入れた早川くんは、すごく嬉しそうだった。
――渋谷のラブホテル。
ガラス張りの大きなバスルームのある、少し高い部屋。
セックスのあと、ふたりで一緒にお風呂に入った。
外国映画みたいな、ブクブクと泡の浮かぶ浴槽。
膝を抱えて座ったぼくを、長い手足を伸ばした早川くんが、後ろから抱きしめてくる。
「今度の日曜――どっか行かない?」
ぼくの濡れた髪を撫でつけながら、早川くんは聞く。
「監督の結婚式で1日休みになったんだ。だから、ずっと一緒にいられる」
ほのかに香る、ラベンダーのシャンプーの香り。
「映画とか――なんか見たいの、ある?」
「……プラネタリウム――」
「え?」
「プラネタリウムがいい――」
振り返り、ぼくは言った。
「満天の――星空が見たい」
☆☆☆
私服で会うのは、水族館以来だった。
早川くんは、黒のトレーナーにGジャン、紺のジョガーパンツ姿だった。相変わらずモデルみたいで、ラフな着こなしがさまになっている。
「……なんでプラネタリウムなんだ?」
歩行者天国の人混みを歩きながら、早川くんは聞く。
「……星が――好きで――」
ぼくは答える。
「昔、家族でランカウイ島に行ったとき、星空を見るツアーに参加したんだ。夜光虫の光る川でボートに乗りながら、見上げた空が忘れられなくて――まるで牛乳をひっくり返したみたいに真っ白でキレイな天の川だったんだよ」
「ふぅん……」
早川くんのGジャンの手首に光る、ぼくが贈った黒の革のブレスレット。
館内は、カップルや家族連れでいっぱいだった。
プログラムは、冬の星座の話だった。
美貌の青年オリオンと恋に落ちた少女アルテミスは、交際を反対する兄のアポロンにだまされ、間違ってオリオンを弓で射って殺してしまう。
海面から浮かび上がる、血で染まったオリオンの死体。
絶望したアルテミスは、もう二度と恋はしないと誓う。もう、二度と――。
星空に、両手で顔を覆い、悲しみにくれる女神の絵が映し出される。
最愛の人を自分の手で殺してしまうなんて――昔の神話は、なんて残酷なんだろう。
愛する人が目の前で死んでしまう。そんなことが起きたなら――。
そのとき、早川くんの手が、膝の上に置いていたぼくの手に触れた。
暗くて、表情はよく見えない。
早川くんは、ぼくの手をギュッと握った。
はっとしたぼくは、一瞬ためらってから、その手を思いきって握り返した。
すると早川くんは、指と指をしっかり絡める、いわゆるカップルつなぎで、強く握り直してきた。
その瞬間――ぼくの胸は熱くなった。
じんわりとした感動が全身を包み、頭のてっぺんから爪先まで、甘い陶酔で満たされていく。
プログラムが終わり、館内が明るくなった。
と同時に、早川くんはぱっと手を離した。
「――行こう」
何事もなかったかのように立ち上がり、出口に向かう。周囲のカップルは、歩きながら手をつないで話をしている。
ぼくは、すぐ前を歩く早川くんの大きな背中を見つめた。
……あんなふうに、あたりまえのように手をつないで歩けたら、どんなにいいだろう。
「――あれぇ――?」
プラネタリウムを出て、ビル内の下りのエスカレーターに向かって歩いていたとき、
「……早川じゃね?」
7、8人の高校生グループが、ぼくらに近づいてきた。
早川くんの高校は、東京都の地区大会で優勝した。
12月の全国大会の出場切符を手に入れた早川くんは、すごく嬉しそうだった。
――渋谷のラブホテル。
ガラス張りの大きなバスルームのある、少し高い部屋。
セックスのあと、ふたりで一緒にお風呂に入った。
外国映画みたいな、ブクブクと泡の浮かぶ浴槽。
膝を抱えて座ったぼくを、長い手足を伸ばした早川くんが、後ろから抱きしめてくる。
「今度の日曜――どっか行かない?」
ぼくの濡れた髪を撫でつけながら、早川くんは聞く。
「監督の結婚式で1日休みになったんだ。だから、ずっと一緒にいられる」
ほのかに香る、ラベンダーのシャンプーの香り。
「映画とか――なんか見たいの、ある?」
「……プラネタリウム――」
「え?」
「プラネタリウムがいい――」
振り返り、ぼくは言った。
「満天の――星空が見たい」
☆☆☆
私服で会うのは、水族館以来だった。
早川くんは、黒のトレーナーにGジャン、紺のジョガーパンツ姿だった。相変わらずモデルみたいで、ラフな着こなしがさまになっている。
「……なんでプラネタリウムなんだ?」
歩行者天国の人混みを歩きながら、早川くんは聞く。
「……星が――好きで――」
ぼくは答える。
「昔、家族でランカウイ島に行ったとき、星空を見るツアーに参加したんだ。夜光虫の光る川でボートに乗りながら、見上げた空が忘れられなくて――まるで牛乳をひっくり返したみたいに真っ白でキレイな天の川だったんだよ」
「ふぅん……」
早川くんのGジャンの手首に光る、ぼくが贈った黒の革のブレスレット。
館内は、カップルや家族連れでいっぱいだった。
プログラムは、冬の星座の話だった。
美貌の青年オリオンと恋に落ちた少女アルテミスは、交際を反対する兄のアポロンにだまされ、間違ってオリオンを弓で射って殺してしまう。
海面から浮かび上がる、血で染まったオリオンの死体。
絶望したアルテミスは、もう二度と恋はしないと誓う。もう、二度と――。
星空に、両手で顔を覆い、悲しみにくれる女神の絵が映し出される。
最愛の人を自分の手で殺してしまうなんて――昔の神話は、なんて残酷なんだろう。
愛する人が目の前で死んでしまう。そんなことが起きたなら――。
そのとき、早川くんの手が、膝の上に置いていたぼくの手に触れた。
暗くて、表情はよく見えない。
早川くんは、ぼくの手をギュッと握った。
はっとしたぼくは、一瞬ためらってから、その手を思いきって握り返した。
すると早川くんは、指と指をしっかり絡める、いわゆるカップルつなぎで、強く握り直してきた。
その瞬間――ぼくの胸は熱くなった。
じんわりとした感動が全身を包み、頭のてっぺんから爪先まで、甘い陶酔で満たされていく。
プログラムが終わり、館内が明るくなった。
と同時に、早川くんはぱっと手を離した。
「――行こう」
何事もなかったかのように立ち上がり、出口に向かう。周囲のカップルは、歩きながら手をつないで話をしている。
ぼくは、すぐ前を歩く早川くんの大きな背中を見つめた。
……あんなふうに、あたりまえのように手をつないで歩けたら、どんなにいいだろう。
「――あれぇ――?」
プラネタリウムを出て、ビル内の下りのエスカレーターに向かって歩いていたとき、
「……早川じゃね?」
7、8人の高校生グループが、ぼくらに近づいてきた。
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