ヤンデレヤクザの束縛愛に24時間囚われています

秋月朔夕

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1巻

1-2

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「にしても色気のない服と下着だ」

 床に打ち捨てられた服は、着古したパーカーとロングスカート。どちらも動きやすさを重視したもの。下着の上下は揃っていたけれど、誰にも見せることはないとたかを括っていたそれらに、性的な興奮を煽る役割はない。

「……後でお前に似合いそうな服を贈ってやるか」

 頬をするりと撫でられる。じっくりと身体を見られると、その視線を尚更意識してしまう。

「お願いですから、そんなに見ないでください……」

 弱々しい声で訴える。しかし彼はそれを受け入れてくれるつもりはないようだ。

「自分の情人を見て何が悪い」

 外気に触れた胸の先は緊張からか、少し尖っていて、そこにやましさはないはずなのに、なんだかいやらしく見える。

「触る前から少し硬くなっているな」
「……ぁ……っ」

 丸みを帯びた場所が彼の手によって形を変えていく。硬い指先で、胸の先端をねられると、くすぐったさと、ゾワゾワとした感覚に乱されて、吐息をこぼす。

「ゃ……ぁ」
「なんだ。初めてだというのに随分と反応が良い。指の腹で乳首を転がされるのが、気に入ったか?」

 円を描くように指の腹でくすぐられると、直接的ではなくなった刺激がもどかしいように思えて、腰が揺れ動いていた。

「これだけじゃ足りないのか?」

 わたしの反応を見た男がふっ、と笑って、胸の先端を柔らかく引っ掻いた。

「ぁ、んっ……」
「指の腹で転がされるのと、このまま爪の先で引っ掻かれるのとどちらが好きだ? それとも舌で舐めてやろうか?」

 どの責め方が良いか。楽しそうに彼がわたしを問い詰める。

「そ、んなの……分か、りませんっ」

 卑猥な質問に答えたくなくて首を横に振った。しかし彼はニンマリと人の悪い笑みを浮かべた。

「なら分かるまで試してやろう」

 耳元で囁かれた彼の声は本気だった。

「や。むり、です……」

 彼に触れられるたびに身体が快楽を覚えようとしている。吐息は乱れ、しっとりと肌が汗に濡れていく。

(胸だけでこんなに感じるだなんて)

 友人達の話では胸を揉まれたくらいではそんなに感じないと聞いていた。 それなのに、わたしはこんなにも乱されている。

(わたしがいやらしいってこと?)
「何が無理だ。感じているくせに」

 ピン、と長い指に弾かれる。痛いようなむず痒い感覚にうまく対処できなくて身体を捻れば、お尻の辺りに硬い感触があることに気付いた。

(コレって……)

 その感触がなんなのか。分からないほど、無知ではない。
 抱かれるのだ。あの硬い感触のものが、わたしのナカに挿入れられる。

(怖い)

 そう思ったのは瓜を破られる恐怖からだけではない。
 胸だけで感じているのに、他の場所を刺激されたらどうなってしまうのか……
 いやらしい自分の本性を知りたくなかった。
 情人なんて、彼の良いように抱かれて終わるのだと思っていた。淡白な関係になるんだろうと。欲望を発散させるための道具なのだろうと思っていたのに。

「や……だぁ」

 こんなにも乱されるだなんて思いもしなかった。いっそ道具のように扱われていた方が楽だったのかもしれない。

「『嫌』じゃなくて『良い』だろう?」

 彼が少し触れるたびにビクビクと背中を仰け反らせる。その結果、胸が突き出てしまい、これではもっと触れて欲しいと強請ねだっているようなものだった。

「なんだ……可愛い反応をする」

 喉を仰け反らせて、喘ぐ。
 彼の思うがままに、抱かれようとしている。ついさっきとはいえ覚悟を決めたのに、その快楽の強烈さにどうして良いのか分からない。

「ひ……んっ」

 長い舌が耳朶じだを悪戯に突いては、ついばんでいく。時折そこを噛まれるとゾクゾクと下腹部が甘く疼いた。

(これはなに……?)

 初めての感覚を知るのが怖かった。

「や、だぁ」

 少しで良い。休んで、冷静になりたい。
 そう思っているのに、指の腹で胸の尖りを転がされるとジンとした甘い痺れが指先にまで伝わる。

「……あぁ、っ」

 初めて受ける愛撫に、どうしたら良いのか分からなくて、逃げ出したくなる。

「感じやすいんだな」

 すっかり立ち上がって硬くなった胸の先を摘まれては、柔らかく引っ掻かれる。弄ばれているのだと分かっているのに、快楽を覚え始めた身体は強張こわばっていた力が抜けて、くたりと彼の腕にもたれかかる。

「ひっ、ああっ……ん」

 丹念に時間を掛けて施された愛撫によって、身体は心を置き去りにしたまま、与えられた快楽に声をあげて悦んでいた。

「いやらしいな」

 咎める声はどこか甘い。
 硬い指先が秘めた場所に触れた。彼が指を少し動かせば、濡れた音が連動して響く。それはわたしが胸だけで感じてしまった証拠なのだろう。
 そっとソファーに押し倒されて足を広げられても、抵抗しようと思う余裕もない。果てのない快楽に翻弄されている。
 いっそこのまま意識がなくなれば、眠っているうちに抱いてくれるのではないか。
 しかし御堂さんはそんな甘い人ではないらしい。
 現実から逃避しているうちに、彼の端整な顔が秘部に近付いて、柔らかく息を吹きかけられた。秘めた場所が彼の目に暴かれようとしている。その事実にわたしは今度こそ逃げたくなった。

「や、ぁっ!」
「……もう濡れてきている」 
「ひっ、ん。そんなところで、喋らない、で」

 赤く充血したそこに息を吹き掛けられるとくすぐったくて、ピクピクと脇腹が反応する。

(まだ今日はお風呂にも入っていないのに)

 ついさっき会ったばかりの男性にそんな場所を晒しているのだと思うと、堪えようのない羞恥に苛まれる。

「やっ、おねがいですから……」
「こら。今更暴れるな」

 せめて少しでも彼の視線から逃れたくて足を閉じようとしても、離してはくれなかった。それどころか更に彼の顔が近付く。

「だめっ! だって、そんなの汚いっ!」

 彼が今からしようとしていることが分かって、慌てて声をあげても、無意味な抵抗に終わる。
 赤い舌でゆっくりと秘裂をなぞられて背徳感に押し潰されそうになる。

「汚いものか」

 必死に言い募って彼の慈悲を乞う。しかしわたしが抵抗する分だけ、彼はより執拗に責め立てた。
 舌で舐られ、じゅるじゅると音を立てて吸い上げられると、耳から犯されているような気分になる。

「あ、ああっ……!」

 快楽の波が激しくうねる。声にならない悲鳴をあげれば、犬歯で柔らかく陰核を噛まれ、その強い刺激に目の前が真っ白になっていく。

「ひぃ、ぁあ、んっ」

 喉を仰け反らせての絶叫。大きな快楽に浮かされて、お腹の奥が苦しいくらいにヒクヒクと痙攣している。

「イったか」
「イ、く?」

 身体を弛緩させて、ボンヤリと彼の言葉を反芻する。言っている意味が理解できなくて、荒い息を吐き出しながら、ただ音を繰り返した。

「ほのかが気持ち良いと思った証拠だ」

 彼の声がどこか遠くに聞こえる。凄まじい快楽を体験した倦怠感からか、さっきから瞼が重くて仕方がない。うとうととした眠気。その流れに身を任せられたらどんなに楽だろう。

「まだ終わりじゃないぞ」

 しかし御堂さんはそれを許さないといわんばかりに陰裂をなぞってから、ゆっくりとナカに指を挿入れていく。

「ん、ん……」

 異物感に眉根が寄る。彼の長い指先はこれまで触れることを誰にも許さなかったその場所を暴こうとしているのだ。少しずつ奥へと侵入する彼の硬い指先。陰核を親指の腹で擦られると、イったばかりの身体が大袈裟なくらいに跳ねる。

(初めてなのに、なんでこんなに感じちゃうの?)

 身体だけの関係なのだから、適当に挿入して終わらせてくれたら良いのに。
 そうすれば、好きでもない相手に感じてしまう自分の淫らな本性を知らなくて済んだ。
 貪欲に腰を揺らして悦ぶ自分の浅ましさ。指が深く侵入するごとに、くちゅくちゅといやらしい音が増して、羞恥に責め立てられる。

「初めてのくせに美味しそうに俺の指を咥え込むな。ほら、俺が指を引き抜こうとしたら、ナカのヒダがうねって絡み付く」

 上機嫌に説明する彼の言葉は、わたしを浅ましいと責め立てているように聞こえた。

(泣いたら駄目なのに……) 

 借金を返すために我慢しなければと思っていた。けれどここ最近、あまりに色々なことがあったせいで、心も身体も疲弊していた。それが涙の粒となって、頬を伝う。


(こんなタイミングで泣いてしまうだなんて) 

 これでは彼を拒んでいるみたいじゃないか。 せめてこれ以上泣かないようにと唇を噛み締めて、さりげなさを装って顔を背けようとした。
しかし、それよりも早く御堂さんが気付いてしまう。 

「どうして泣いている?」

 痛いのか、という問いに首を振る。 ゆっくりと慣らされたからか今のところ痛みはない。耐えられないのは心を置いてけぼりにして快楽に浸ろうとする自分の身体。痛くないと答えれば、ほんの一瞬だけ彼の顔が強張った。

「……俺に抱かれるのは嫌か?」

 泣かれて迷惑なはずなのに、彼は労わるように指の腹でゆっくりとわたしの涙を拭いとる。その仕草に甘えたくなったのはどうしてなんだろう。

(甘えたいだなんて……わたしは何を考えているの?)

 彼がわたしを選んだのは、ただ単に自分の欲を好き勝手に発散できる相手が欲しかったから。
 それにわたしだって不特定多数の男に抱かれたくないという理由で彼を選んだに過ぎない。

(ちゃんとしなきゃ……)

 いくら心が弱っていたとしても、初対面の男に甘えたいだなんてどうかしている。
 けれど、彼に触れられるのは不思議と嫌悪感がなかった。それどころか、気持ち良いとさえ思っていたのだ。

「嫌じゃありません」
「……そうか。なら良い」

 御堂さんは立ち上がると、ダイニングボードの引き出しから茶封筒を取り出して、中身をわたしに差し出す。渡されたのは帯に纏められた分厚い現金だった。

「このお金は?」
「お前の労働の対価だ」
「でも、御堂さんは……その」

 取り決めでは三十万円だったのにこれでは多過ぎる。それにあなたは最後までわたしを抱いていない。そう言いたいのに、直接的な言葉を口にできなくて濁す。

「どうせこの金で借金を返すんだろう」

 つき返そうとしたお金を受け取ることなく、彼は背を向けて部屋を出ていこうとする。

「御堂さん」

 呼び止めたくせに、何を言えば良いのか分からない。
 わたしが口篭くちごももったままでいると、振り返った御堂さんは苦笑した。

「用事があるからしばらく外に出る。部屋の中は好きに使って構わない。腹が減ったら冷蔵庫の中の物を食べても良いし、風呂に入っても良い。その代わり、外に出るな。できるか?」

 彼の言葉に頷き返す。
 借金を返すまで、逃げるわけにはいかない。
 御堂さんはわたしが大人しく従う様子を見て、柔らかく口の端を綻ばせる。

「良い子だ」

 その笑顔はあまりに鮮やかで、見惚れそうになった。



  幕間一 side龍一


 ほのかが居る部屋を出て、階下の仕事部屋に入る。
 このマンションはいくつか持っている不動産の一つで、都合良く使っている場所だった。
 ここなら組の連中が部屋の前をうろついてもなんの問題もない。ほのかが逃亡を企てても、組の連中がそれを阻む。
 逃がす気はなかった。
 たとえこの先、全てを知った・・・・・・彼女が泣いて嫌がろうと、離してやる気はない。

(みっともない男だ)

 人払いをした仕事部屋で、だらしなく椅子の背凭せもたれに背中を押しつけ、顔を覆って天井を仰ぐ。
 こんな格好悪い姿、ほのかには見せられない。

「……随分と怖がらせてしまったな」

 あれだけ露骨に脅して、自分の情人になるように迫ったのだ。その挙句、まだ気持ちの整理がついていないほのかを強引に抱こうとして、泣かせてしまった。

(いっそのこと俺に抱かれるのは嫌だと抵抗したなら、そのまま犯してやれたのに)

 拒絶されて、逃げられるくらいならば、無理矢理にでも繋ぎ止める。
 そのための手段はいくらでもある。
 けれど、ほのかが嫌ではないと答えたものだから……つい心が揺らいだ。
 ――もしかしたら俺が本当に欲しているものを手にできるのではないか。
 そう思ってしまった。

(とんだ我欲だ)

 苦い感情が胸に込み上げる。『愛』に溺れた者の末路なぞ碌なものではないと知っているくせに。
『御堂』の血を引く人間は想いを寄せた異性にひどく執着してしまう。
 愛、といえば聞こえがいい。
 しかしそれは呪いみたいなものだ。
 たとえば、そう……。俺の両親は『愛』に狂って死んでしまった。

(愛されたいと思うからこそ苦しむことになるんだ)

 であれば、最初から不相応な夢を見なければいい。
 両親の二の舞になりたくないのであれば、これから先、自分を律しなければならない。

(……俺にできるのか? ついさっきだって強引にほのかを抱こうとしたのに)

 長い間、彼女に妄執を抱いてきた。
 彼女のことを思えば、遠目から見て満足するべきだったのだ。

(愚かな選択をしてしまった)

 本当に彼女を愛しているのならば、ほのかの知らないうちに借金をなかったことにしてやれば良かったのだ。
 そうすれば彼女があれだけ追い詰められることもなく、今まで通り平々凡々な人生を歩めていけただろう。
 だが、彼女を手に入れる口実ができたと悪魔が囁いた。

(闇金なんかに関わらなければ、この先も『見守る』だけで済んだのに)

 ほのかの前に姿を現した時に覚悟を決めた。一生彼女から愛されない覚悟を。
 しかしたとえ愛されなくても、身体だけは自分のものだ。

(……ほのかも、誰彼構わず人に優しくするからこうなるんだ)

 もし『あの時』、彼女が見て見ぬふりをしていれば、こんな厄介な男に好かれることはなかったのに。
 ほのかは俺に気付いてはいない様子だったし、今更彼女に過去のことを尋ねようとも思わない。
 長い月日の間にすっかり燻ってしまった恋情。
 ほのかも災難だ。事情も明かされないまま、出会ったばかりの、それもカタギではない男の情人になるだなんて、不運この上ない。

(だが、俺はほのかと違ってお人好しじゃない。金で縛り付けただけの関係とはいえ、手放してなどやるものか)

 可哀想に。
 これからほのかは借金を返すために俺に抱かれなくてはいけない。
 彼女の泣き顔を思うとなけなしの良心が疼くが、そんなことで彼女を解放する気はない。

(ほのかはきっと借金を返し終えたら自由を得られると思っているだろうが……)

 たとえ彼女が本当に返済したとしても、離してやる気はない。
 一生縛り付ける気はない、だなんて彼女に自分を選んで貰うための詭弁に過ぎなかった。
 もし返し終えたとしても別の弱みを握るか、新たな借用書を用意するだけだ。

(相手が悪かったな)

 彼女が借りていた金貸し屋達よりも、自分の方がずっとタチが悪い。
 だが、何年俺が指を咥えて見てきたと思う。欲しくて、欲しくて、ずっと見てきた相手を囲える。そこにほのかの気持ちがなくても、もう今更関係ない。
 自分が抱く一方的な恋情の焔。苛烈な執着心は年々燃え盛るばかり。
『あの時』から、俺は彼女を愛している。
 厄介な男に捕まったほのかに同情するが、手放す気はない。
 逃げ出すような真似をするようであれば、容赦はしない。
 四肢を鎖に繋いで、心身ともに、俺がいないと生きていけないように教え込んでやる。



  第二章


 御堂さんが帰ってきたのは日付が変わる頃だった。
 彼はリビングに居るわたしを見つけると目を細め「何か食べたか」と尋ねた。

(せっかく用意してもらったけど……)

 冷蔵庫に入っていたのは有名な料亭のお弁当と、デパ地下のお惣菜。その他に、パンやおにぎりがダイニングの机の上にあった。
 けれど初めての『仕事』に失敗したことに落ち込んでいて、食欲が湧かなかった。結局わたしが口にしたのは冷蔵庫に入っていたペットボトルの水だけ。
 用意されていた物に手をつけなかった気まずさから、ぎこちなく首を横に振った。

「昼間、俺の部下が甘いもんを持ってきただろう? それにも手を付けなかったのか?」
「……すみません」
「謝罪を聞きたいわけじゃない。用意した食事が気に入らなかったか?」

 眉間に皺を寄せた御堂さんは長い足でわたしとの距離を詰める。当たり前のようにソファーの隣に座った彼に緊張して、うつむく。

「食いたい物がなかったか? もしそうなら今から用意させるが……」

 わたしが怯えたことに気付いたのか、彼の口調がゆっくりなものに変わる。その声に釣られて、のろのろと視線を上げる。

「せっかく用意して頂いたのに、手を付けずにすみません。最近あまり食事を取れていなかったからか、食欲がすっかり落ちていて……」
「なんだ。俺の情人になるのが嫌で、ハンガーストライキでもしているのかと思ったが……全く食べないのは問題だな。何か消化が良さそうなものを選んで買って来させるか?」

 膝に乗せられて、髪を撫でられる。まるでペットみたいな扱いだけど、彼にとって実際わたしはそうなのだろう。香水と煙草の匂いが鼻をくすぐる。煙草の匂いが昼間のことを思い出させるものだから、どうにも落ち着かない。

「……あの、重いですから」
「折れそうな腕をしておいてよく言う。腹も薄いし、もう少し肉を付けても良いくらいだ」
「……ふ……っ」

 不用意にお腹を撫でられるとくすぐったくてくぐもった声がもれる。
 彼もそれに気付いたのか、脇腹を指先で突いて弄び始めた。

「随分と良い反応をする」
くすぐったいの、苦手っ……なんです……」

 身を捩って逃れようとすれば脇腹を撫でられる。薄い皮膚で覆われた場所を責められると、途端に息が乱れていく。

「そういえば、首と耳も弱かったな」

 耳に息を吹き込まれると覚えたばかりの甘い快感が身体を駆け巡る。

「……ぁ」

 耐えようと背中を丸める。しかしそれを許さないとばかりにまた脇腹を大きな手でこしょこしょとくすぐっていく。

「……やっ、ほんと、に……むりっ……!」

 身を捩って逃れようとしても、御堂さんは離してくれない。
 だから止めるように訴えたというのに、全く止める様子がない。それどころかガッチリとわたしの身体を抱きかかえ、うなじを舌で甚振いたぶりはじめた。

「ひっ、あ……あぁ」

 首筋をなぞるようにして舐められる。ぬめぬめとした感触はまるで生き物のようで、わたしが色濃く反応する場所を見つけてはそこを重点的に責める。

「み、どう……さんっ」

 時折吸い付いたかと思うと、官能を誘うように舌先で撫でていく。

「ひ……ぅ」

 溜まった唾液が口の端からこぼれようとするのを懸命に耐えながら、なんとか飲み込めば、脇腹をくすぐっていた手が胸元へと伸びた。
 やわやわと胸を揉まれると、未だ上がったままの息が熱く湿ったものに変わっていく。

「みど、さん……」

 今から彼がするのは昼間の続きなのだろう。くすぐられたことで身体はすっかりと弛緩し、強張こわばることはなかった。

「悪い。少しやり過ぎたか?」

 こてりと彼に身体を預けて、生理的な涙が溜まった瞳でぼんやりと彼の方を見つめる。


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