魔王とは戦わず国王を捕まえる

颯馬

文字の大きさ
上 下
35 / 71

35話 銭湯

しおりを挟む
 僕とベラは見張りを始める。

「水浴びしなくてよかったのか? 丁度近くに川があるだろ」
「平気ですよ。常に浄化魔法で綺麗にしているので、水浴びをしなくても大丈夫ですよ」
「変わってるな。普通なら浴びると思ったがな」

「必ずしも水浴びが出来る訳ではありません。今回の場合は浴びた方がいいでしょう。ですが、浄化魔法で綺麗にしてるので。浴びる必要はありません」
「女だったら確実に浴びてるがな。女じゃなくても浴びてるがな」
「タクヤさんは浴びるのですか?」

「浴びるな。浴びた方がスッキリするからなぁ。今日は水浴びが出来たら、良かったぜ」
「いつの間・・・。危険は無かったのですか?」
「無かったな。そもそも男の僕を襲う人はいねぇだろ。男に飢えているなら別だが」

「タクヤさんの方が女性っぽいですね」
「アルセルにも言われたなぁ。そんなんに水浴びる事が不自然に思えるのか?」
「大体の男性は気にしないかと。浄化魔法を使えるのなら、更に気にしないかと」

「マジかよ・・・。常に風呂に入っていたから、それが普通なんだよ」
「タクヤさんの家では、風呂は普通にあるのですか?」
「ある。つかほとんどの家に風呂はあるな。格安物件じゃねぇ限りな」

「つまり風呂は一般家庭にあると?」
「そうなるな。なくても銭湯って言う、かねを払って風呂に入れる場所もあるな。知らねぇ人と入る事になるがな」
「そんな店もあるんですね。家に風呂が無い人たちにとっては、有難い事なのでしょう」

「有難い事なんだが。一般家庭に風呂はあるから、もう減ってる所が多いか。だが人気の銭湯もあるからな。僕は行った事無いけど」
「私にはよく分かりませんが。きっと楽しい所だと思いますよ」
「そうかもな」

 ベラと話していると、アルセルとアレアがこっちに来る。見張りを交代をして、僕とベラは別々のテントに入って、寝る。

 次の日。起きてテントから出る。朝ご飯を食べてテントなどを片付ける。片づけが終わったら、移動をする。

「何かシルビアは眠そうだね」
「最後の見張りだからな。皆が起きるまで見張りをするから、自然と寝不足になる」
「見張りの番になるまで時間があるから、かなり寝れると思うけど。それでも足りないんだ」

「良い感じに寝てる時に起こされるから、逆に眠くなるんじゃねぇのか?」
「そんな事があるのか? まぁ実際に眠いのから、そう言えなくもないか・・・」
「そこまで眠いなら、いっそ誰かに背負って貰えば?」

「おいアレア。あまりそう言う事を言うな。アディシアがマジでやりそうになる」
「私は構いませんが」
「ほら見ろ。アディシアがやる気満々になってるぞ」

「自分は大丈夫だ。背負られるのは流石に恥ずかしい」
「そうですか・・・」
「何で少し残念そうな顔になるんだよ」

「あ、ならボクを背負ってよ!」
「丁重にお断りさせていただきます」
「普通に断られちゃった・・・」

「そりゃそうだろ。流石に背負うのも恥ずかしいだろ」
「いえ。普通にアレアさんはまだ背負いたくないだけです」
「何か酷い事言われたような・・・。ならアルセルやタクヤも?」

「アルセルさんもまだ背負いたく無いですが、タクヤさんならいいです」
「俺は駄目でタクヤなら良いんだ」
「もしかして差別?」

「普通は誰構わず背負う訳ねぇだろ。こう言うのは時間の問題だろ」
「時間の問題なんだ。いつか背負いってくれる?」
「その日が来たら、背負いますよ」

「アレアは何でそこまで背負われたいんだ?」
「何となく」
「そんな理由で背負われたいのかよ・・・。アルセルにやってもらえ」

「ええええええそんなの恥ずかしいよぉ~。恥ずかし過ぎて、ボク倒れちゃうよ・・・」
「俺も恥ずかし過ぎて出来ないぜ・・・」

 何だコイツら。本当に恋人同志か? 恋人同士なら出来るだろ。

「恋人同士なら出来るのでは?」
「恋人同士でも、恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ」
「そう言うものなのか? 恋人同士なら大体は平気だと思うが」

「彼氏彼女がいないから、そう言う事とが言えるんだよ。彼氏彼女が出来たら、俺達みたいになるぜ」
「それは人によるのでは?」
「そうだけど。とにかく恥ずかしいものは、恥ずかしんだよ。彼氏彼女が出来たら絶対に分かるって」

「自分は作る気は無いがな」
「そう言っている奴ほど。気付いたら出来てるんだぜ」
「タクヤは作る気か? タクヤの彼女になる奴は可愛そうに思えるが」

「どう言う意味だ。僕だって作る気はねぇよ。つかここで作ってたまるか」
「え?」
「何でアディシアが驚く?」

「い、いえ。何でもありません。私も当分作りませんね」
「でもシスターって、彼氏作っていいの?」
「見習いシスターなら問題は無いですが。シスターの場合は禁止されてますね。シスターを辞めれば話は別ですが」

「じゃあ彼氏を作る時は、シスターを辞めるのか?」
「その時はすぐにでも辞めますね」
「行動力があるね・・・」

「まぁ好きな人の為なら、そこまでやるんだろうな」
「僕は好きになった人が、悪人や屑じゃねぇ事を祈るぜ」

 僕たちはシュトレイ街に向かう。
しおりを挟む

処理中です...