21 / 22
21 エピローグ 英雄たちの後日譚
しおりを挟む
あれから三日経った。
ヴェルテ、それからシシリアの死は異形によるものだと、国民にはディラの口から報告された。
シシリアの精神を混濁させる魔法が強力すぎて、あのとき実際に観客として俺たちのやり取りを見ていた住民たちですら、その言葉を信じた。曖昧な記憶を補完するのに、英雄であるディラの言葉は十分すぎる説得力を持っていたのだ。
その衝撃で凱旋パレードに騒ぎ立っていた王都は一瞬にして喪に服し、空気が一転。
だが、結局国民たちは英雄たちの活躍に感謝するよりも、ただお祭り騒ぎをする機会が欲しかったようで、すぐに元の日常には戻った。
異形たちはバレンの指示でそれぞれ暮らしていた場所に帰り、それ以来人前に姿を見せていない。
今後も、人の目を忍んで慎ましく暮らしてくれることだろう。
……たまに耳鳴りのような頭痛がすることがあり、もしかしたらあの上級異形が鳴いているのかもしれないが、襲われでもしない限りは決してあの力を使うことは無いと信じている。
そして俺は今、ディラの研究所に二人でいる。
何の研究をしているかというと、俺の異形じみた肌を人間のものにするためのものだ。
「ありがとな、ディラ。お前が裏切らないでくれて俺は嬉しかったよ」
休憩に入り、横で俺が渡した難解なパズルを解くディラを見て、中々言えなかった感謝を告げる。
「はあ? ……まあ、当たり前だろ? 魔法を特別なもので無くしたことについては不服だけど、僕はヴェルテを普通に尊敬してたしね。そして、お前に謝りたいことがある」
「謝りたいこと?」
思い当たる節はないが……
「お前の今の肉体。親友の妹だったか? になってしまった理由は、僕が『最初に喰った人間の姿になれる』という魔法を人造異形に組み込んだからだ」
「……やっぱりそうだったのか」
シシリアの『入れ替わり』とは違う性質の魔法が行使されたものだと思っていたが、やはりディラが用意したものだったか。シシリアはそんな魔法を組み込んでないと言っていたし、消去法でディラしか考えられない。
「もしも計画通りに事が進んでいたのなら、異形となったお前がヴェルテを殺し、その死体をお前が捕食することで、結局はヴェルテの肉体を取り戻せるって仕組みだったんだけどな」
ディラはそう語りながら、パズルを完成させたようで一息ついた。また新しいパズルを作ってやらないとな。
「……今は感謝してる。その魔法がなかったら、俺は未だに王都にも辿り着けずにのたれ死んでいたはずだ。その魔法の存在をシシリアに秘密にしといてくれたのも助かった」
ニアを殺してしまったことは悔やんでも悔やみきれない。しかし、そのことをずっと引き摺ることは、他でもないニアが許さないはずだ。
「ふん。驚かせようと思ってたからね。そういえばなんだが。その姿になった時、記憶が混濁していたりしなかったか?」
「記憶の混濁……? ああ、言われてみればバレンに関する記憶が無くなっていたような」
思い出せなかったことを思い出す。てっきりシシリアがやったことだと思っていたが。よく考えてみれば、すぐに俺を殺す予定だったシシリアが記憶をどうこうするのは矛盾しているか。
「どうやって記憶を取り戻した?」
「俺が王都まで乗ってきた異形がいただろ? 彼に言われたんだ。お前は魔王の妹だって。それで思い出した」
「なるほど。記憶については軽くしか弄ってなかったからな」
「なんでそんなことを?」
「お前が異形の体と入れ替わったとして。僕はその後、ヴェルテの死体を君に喰わせるつもりだった。そんなの、正気でやらせる訳にはいかないだろ? だからお前の精神性が肉体に引っ張られるようにした。だけど異形は魔王には攻撃しない。つまり、想定通りに理性を失ったお前がヴェルテの死体を喰う保証は無い。だからお前が異形と入れ替わった直後だけ、魔王に関する記憶を消すような設定にしたんだ。正確にいえば、魔王と僕たちが対峙したあの瞬間の記憶だけ、かな。僕が弄れる記憶は『僕が知っている記憶』だけだから」
「そんなこと……できたのかよ」
『英雄』の埒外な思考回路に目を回しそうになった。
「見たかったな、僕の造った異形がヴェルテの死体を喰う姿」
「最悪な思考してんな」
本当にコイツを英雄と呼んで良いのか疑問視したい程の危険思想だ。
「話は変わるがその姿、中々可愛いじゃないか。口調を女の子っぽく改めたらどうだ?」
魔力の過剰分を制御するためか、バチバチと何やら手のひらの上で錬成しながら、ディラはそんなことを言ってきた。
色恋沙汰の類にはまるで興味がないと思ってたので、まさかディラの口から『可愛い』なんて言葉が出るとは意外だ。よし、ちょっと色仕掛けをしてみるか。
「……そう? 分かったわ。ウフフ」
完全に決まった!
あざとく両手に顎を乗せ小顔効果を狙った上での上目遣い。
自分で言うのもなんだがこの姿は可愛いが過ぎるし、これで落ちない男なんていないはずだ!
「やばい、中身がヴェルテだと分かっているからか、悪寒がした。もうやめろ。普通に胃の中の物が込み上げてきた」
「お前が言い出したんだろ!」
やれやれと首を振ったその時、バン! という音が響いて勢い良く研究室の扉が開けられる。
「師匠! 訓練三つ目が終わったよ! 次は何をすればイイ?」
短剣をぶんぶんと振り回したルシカが入ってきた。
短剣を振った勢いで風の刃が飛ばされ隠れ家の天井が破壊された時のことを思い出しながら、
「危ないから振り回すのはやめろ」
と言ったが、ルシカに聞く耳はない。
「仕方ない、訓練その四を伝授してやろう」
訓練その四は、精密な魔力制御。俺の姿をしたバレンがやったように、残像を作り出す魔法の訓練だ。
俺は弟子を取るのは初めてだったから、この『ただ難しい魔法を教える』という方法が教育に良いのかは分かっていない。今は俺自身に魔力がない状態だから、実践して見せてやることもできないしな。
正直、人を襲う異形がいなくなった世界で、戦闘の実力をつける意味はあまりない。
それこそ、戦争に駆り出さてしまうとか。そういった欠点の方が大きい。
それでもルシカが強くなろうとしているのは、単純に俺を尊敬しているがゆえ、俺の使えた魔法を使えるようになりたいからだろう。
「訓練その四が終わったら、出かけるぞ」
色々とひと段落ついたので、俺は出かける準備を整える。
「どこ行くの?」
「俺が生まれた村だ。……もう一度、バレンの墓を拝んでおきたくてな」
「えー、また?」
ルシカは面倒臭そうに言って短剣をぶんぶんと振り回す。
バレンの墓は三日前、俺がバレンを刺殺した後の遺体を埋める際に行ったばかりだった。
余談だが、その際にガレイを助けたあの街に寄った。そして俺を街に入れてくれた門番に俺お手製のヴェルテグッズを渡したのだが……なんと、あの門番はルシカの父親だった。
なんとなくそんな予感はしていたし、驚きはしなかった。しかし、ルシカの父親は傷心していた。なぜならば、あの街ではルシカが大罪人になっていたからだ。
そうなった理由は明白である。
ルシカは、異形に味方した。その際にルシカがボコボコにした処刑人が、街じゅうの掲示板にルシカを大罪人として張り出していたのだ。
その現状をなんとかするため、俺はすぐにディラを街に呼び出した。ルシカは悪人。そんな『噂』が、ディラの「ルシカは英雄の弟子だぞ」という一言によって覆ったあの瞬間は、本当に気持ちが良かった。
それはいいとして。再度、墓参りに行く理由だが……
「なんでか分からないが、無性に行きたくなってな」
バレンに呼ばれているような、名状し難い感覚が俺を駆り立てている。
「しょーがないな。じゃあ行こ!」
訓練その四を伝授する前に、ルシカは研究室を出て行ってしまった。
やれやれ、じゃあすぐ向かうとするか。
「というわけで俺はしばらく離れる。じゃあな」
「ああ、行ってこい。……新しいパズルの作成は怠るなよ?」
「へいへい」
ディラは破格の速度で俺が作成したパズルを攻略している。俺の着想が尽きるのも時間の問題だ。
──こうして研究所を出た、俺とルシカ。
馬車に四時間ほど揺られて、今はなき故郷の村へと辿り着く。
村人たちの死体は埋めてやったが、まだ壊れた家屋なんかは残っている。いずれここも綺麗にせねばなるまい。
そのまま全てが始まったサリア大森林に向かう。
しばらく森の中を歩き、開けた場所に着く。
俺が肉体を奪われたこの場所に、苔むした墓標は相変わらず俺を待ち構えるように立っていた。
しばしの間それを眺める。
「…………」
続く静寂が、なんとも心地よい。
何分、そうしていただろうか。時間の経過を、吹き始めた穏やかな風が知らせてくる。
ざわざわと木々の葉が擦れる音が周囲を支配し、甘美なそのさざめきに耳を傾ける。
ルシカが叫んだ。
「あれ!」
ルシカが指差す方に、人影が二つ見える。
一つは小さく、一つは大きい。
見紛うはずがない。
ニアと、バレンだった。
二人は俺たちを見て、柔らかな笑みを浮かべている。
俺はすぐに叫ぶ。叫ばなければならない。
「ニア! ごめん……俺は、ニアのこれからを、奪って──、」
『あいつを倒してくれてありがとう。ヴェルテお兄ちゃん』
それだけ言って亡霊は──消えた。
風が作り出した残像、贈り物だった。
風が贖罪の機会をくれたのだ。
「ああ、ぅ、あ……」
呻く俺の頬に一滴の水が伝う。それを拭い取って、願い、誓う。
どうか生まれ変わっても、彼らが兄妹であれますように。
そして必ず、この平和な世界を保ち続けてみせる。
ヴェルテ、それからシシリアの死は異形によるものだと、国民にはディラの口から報告された。
シシリアの精神を混濁させる魔法が強力すぎて、あのとき実際に観客として俺たちのやり取りを見ていた住民たちですら、その言葉を信じた。曖昧な記憶を補完するのに、英雄であるディラの言葉は十分すぎる説得力を持っていたのだ。
その衝撃で凱旋パレードに騒ぎ立っていた王都は一瞬にして喪に服し、空気が一転。
だが、結局国民たちは英雄たちの活躍に感謝するよりも、ただお祭り騒ぎをする機会が欲しかったようで、すぐに元の日常には戻った。
異形たちはバレンの指示でそれぞれ暮らしていた場所に帰り、それ以来人前に姿を見せていない。
今後も、人の目を忍んで慎ましく暮らしてくれることだろう。
……たまに耳鳴りのような頭痛がすることがあり、もしかしたらあの上級異形が鳴いているのかもしれないが、襲われでもしない限りは決してあの力を使うことは無いと信じている。
そして俺は今、ディラの研究所に二人でいる。
何の研究をしているかというと、俺の異形じみた肌を人間のものにするためのものだ。
「ありがとな、ディラ。お前が裏切らないでくれて俺は嬉しかったよ」
休憩に入り、横で俺が渡した難解なパズルを解くディラを見て、中々言えなかった感謝を告げる。
「はあ? ……まあ、当たり前だろ? 魔法を特別なもので無くしたことについては不服だけど、僕はヴェルテを普通に尊敬してたしね。そして、お前に謝りたいことがある」
「謝りたいこと?」
思い当たる節はないが……
「お前の今の肉体。親友の妹だったか? になってしまった理由は、僕が『最初に喰った人間の姿になれる』という魔法を人造異形に組み込んだからだ」
「……やっぱりそうだったのか」
シシリアの『入れ替わり』とは違う性質の魔法が行使されたものだと思っていたが、やはりディラが用意したものだったか。シシリアはそんな魔法を組み込んでないと言っていたし、消去法でディラしか考えられない。
「もしも計画通りに事が進んでいたのなら、異形となったお前がヴェルテを殺し、その死体をお前が捕食することで、結局はヴェルテの肉体を取り戻せるって仕組みだったんだけどな」
ディラはそう語りながら、パズルを完成させたようで一息ついた。また新しいパズルを作ってやらないとな。
「……今は感謝してる。その魔法がなかったら、俺は未だに王都にも辿り着けずにのたれ死んでいたはずだ。その魔法の存在をシシリアに秘密にしといてくれたのも助かった」
ニアを殺してしまったことは悔やんでも悔やみきれない。しかし、そのことをずっと引き摺ることは、他でもないニアが許さないはずだ。
「ふん。驚かせようと思ってたからね。そういえばなんだが。その姿になった時、記憶が混濁していたりしなかったか?」
「記憶の混濁……? ああ、言われてみればバレンに関する記憶が無くなっていたような」
思い出せなかったことを思い出す。てっきりシシリアがやったことだと思っていたが。よく考えてみれば、すぐに俺を殺す予定だったシシリアが記憶をどうこうするのは矛盾しているか。
「どうやって記憶を取り戻した?」
「俺が王都まで乗ってきた異形がいただろ? 彼に言われたんだ。お前は魔王の妹だって。それで思い出した」
「なるほど。記憶については軽くしか弄ってなかったからな」
「なんでそんなことを?」
「お前が異形の体と入れ替わったとして。僕はその後、ヴェルテの死体を君に喰わせるつもりだった。そんなの、正気でやらせる訳にはいかないだろ? だからお前の精神性が肉体に引っ張られるようにした。だけど異形は魔王には攻撃しない。つまり、想定通りに理性を失ったお前がヴェルテの死体を喰う保証は無い。だからお前が異形と入れ替わった直後だけ、魔王に関する記憶を消すような設定にしたんだ。正確にいえば、魔王と僕たちが対峙したあの瞬間の記憶だけ、かな。僕が弄れる記憶は『僕が知っている記憶』だけだから」
「そんなこと……できたのかよ」
『英雄』の埒外な思考回路に目を回しそうになった。
「見たかったな、僕の造った異形がヴェルテの死体を喰う姿」
「最悪な思考してんな」
本当にコイツを英雄と呼んで良いのか疑問視したい程の危険思想だ。
「話は変わるがその姿、中々可愛いじゃないか。口調を女の子っぽく改めたらどうだ?」
魔力の過剰分を制御するためか、バチバチと何やら手のひらの上で錬成しながら、ディラはそんなことを言ってきた。
色恋沙汰の類にはまるで興味がないと思ってたので、まさかディラの口から『可愛い』なんて言葉が出るとは意外だ。よし、ちょっと色仕掛けをしてみるか。
「……そう? 分かったわ。ウフフ」
完全に決まった!
あざとく両手に顎を乗せ小顔効果を狙った上での上目遣い。
自分で言うのもなんだがこの姿は可愛いが過ぎるし、これで落ちない男なんていないはずだ!
「やばい、中身がヴェルテだと分かっているからか、悪寒がした。もうやめろ。普通に胃の中の物が込み上げてきた」
「お前が言い出したんだろ!」
やれやれと首を振ったその時、バン! という音が響いて勢い良く研究室の扉が開けられる。
「師匠! 訓練三つ目が終わったよ! 次は何をすればイイ?」
短剣をぶんぶんと振り回したルシカが入ってきた。
短剣を振った勢いで風の刃が飛ばされ隠れ家の天井が破壊された時のことを思い出しながら、
「危ないから振り回すのはやめろ」
と言ったが、ルシカに聞く耳はない。
「仕方ない、訓練その四を伝授してやろう」
訓練その四は、精密な魔力制御。俺の姿をしたバレンがやったように、残像を作り出す魔法の訓練だ。
俺は弟子を取るのは初めてだったから、この『ただ難しい魔法を教える』という方法が教育に良いのかは分かっていない。今は俺自身に魔力がない状態だから、実践して見せてやることもできないしな。
正直、人を襲う異形がいなくなった世界で、戦闘の実力をつける意味はあまりない。
それこそ、戦争に駆り出さてしまうとか。そういった欠点の方が大きい。
それでもルシカが強くなろうとしているのは、単純に俺を尊敬しているがゆえ、俺の使えた魔法を使えるようになりたいからだろう。
「訓練その四が終わったら、出かけるぞ」
色々とひと段落ついたので、俺は出かける準備を整える。
「どこ行くの?」
「俺が生まれた村だ。……もう一度、バレンの墓を拝んでおきたくてな」
「えー、また?」
ルシカは面倒臭そうに言って短剣をぶんぶんと振り回す。
バレンの墓は三日前、俺がバレンを刺殺した後の遺体を埋める際に行ったばかりだった。
余談だが、その際にガレイを助けたあの街に寄った。そして俺を街に入れてくれた門番に俺お手製のヴェルテグッズを渡したのだが……なんと、あの門番はルシカの父親だった。
なんとなくそんな予感はしていたし、驚きはしなかった。しかし、ルシカの父親は傷心していた。なぜならば、あの街ではルシカが大罪人になっていたからだ。
そうなった理由は明白である。
ルシカは、異形に味方した。その際にルシカがボコボコにした処刑人が、街じゅうの掲示板にルシカを大罪人として張り出していたのだ。
その現状をなんとかするため、俺はすぐにディラを街に呼び出した。ルシカは悪人。そんな『噂』が、ディラの「ルシカは英雄の弟子だぞ」という一言によって覆ったあの瞬間は、本当に気持ちが良かった。
それはいいとして。再度、墓参りに行く理由だが……
「なんでか分からないが、無性に行きたくなってな」
バレンに呼ばれているような、名状し難い感覚が俺を駆り立てている。
「しょーがないな。じゃあ行こ!」
訓練その四を伝授する前に、ルシカは研究室を出て行ってしまった。
やれやれ、じゃあすぐ向かうとするか。
「というわけで俺はしばらく離れる。じゃあな」
「ああ、行ってこい。……新しいパズルの作成は怠るなよ?」
「へいへい」
ディラは破格の速度で俺が作成したパズルを攻略している。俺の着想が尽きるのも時間の問題だ。
──こうして研究所を出た、俺とルシカ。
馬車に四時間ほど揺られて、今はなき故郷の村へと辿り着く。
村人たちの死体は埋めてやったが、まだ壊れた家屋なんかは残っている。いずれここも綺麗にせねばなるまい。
そのまま全てが始まったサリア大森林に向かう。
しばらく森の中を歩き、開けた場所に着く。
俺が肉体を奪われたこの場所に、苔むした墓標は相変わらず俺を待ち構えるように立っていた。
しばしの間それを眺める。
「…………」
続く静寂が、なんとも心地よい。
何分、そうしていただろうか。時間の経過を、吹き始めた穏やかな風が知らせてくる。
ざわざわと木々の葉が擦れる音が周囲を支配し、甘美なそのさざめきに耳を傾ける。
ルシカが叫んだ。
「あれ!」
ルシカが指差す方に、人影が二つ見える。
一つは小さく、一つは大きい。
見紛うはずがない。
ニアと、バレンだった。
二人は俺たちを見て、柔らかな笑みを浮かべている。
俺はすぐに叫ぶ。叫ばなければならない。
「ニア! ごめん……俺は、ニアのこれからを、奪って──、」
『あいつを倒してくれてありがとう。ヴェルテお兄ちゃん』
それだけ言って亡霊は──消えた。
風が作り出した残像、贈り物だった。
風が贖罪の機会をくれたのだ。
「ああ、ぅ、あ……」
呻く俺の頬に一滴の水が伝う。それを拭い取って、願い、誓う。
どうか生まれ変わっても、彼らが兄妹であれますように。
そして必ず、この平和な世界を保ち続けてみせる。
0
あなたにおすすめの小説
汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!
虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん><
面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる