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第六章
85. この世界に来た意味
視界を瞬時に奪う程の眩い光が決して広くはない儀式の部屋を包み込み、儀式が無事進行していることを告げている。
六人の加護持ちで儀式を行うと、僅かな時間だけ神々の次元を訪れることができる。
七人の加護持ちで儀式を行うと、神々の次元にいる神をこちらの世界に召喚することができる。
その認識は正しいようで、光の収束と共に俺の視界に映ったのは白一色の空間ではなく、魔法陣の中央で驚いた顔を見せるベルフェリオだった。
「再度儀式を行ったか…!加護持ち全員を犠牲にしたのか?」
ベルフェリオは焦ったように独りごちながら、辺りを見回している。
俺はその姿を見て表情には出さなかったが安堵した。
もしも、召喚したベルフェリオが余裕を隠さなかったら?
すぐに神々の次元に戻れるような魔力を有していたら?
…俺の覚悟と犠牲は全て無駄になる。
その点、このベルフェリオの焦りようは彼にとって想定外な事態が起きた事を如実に示していた。
ベルフェリオの周囲には加護持ち達とリレイティアが眠っておりその中でもサティス、フォーミュラ、カーミュラの三人はピクリとも動かない。
まだ半信半疑な自分がいた。
今すぐ三人に駆け寄って体温を確認したい自分がいた。
だが今はそんな三人に託された意志を込めた剣をベルフェリオに向けなければならない。
何か行動を起こされる前にベルフェリオを葬らなければならない。
俺がこの世界に来た意味。
今目の前にいる存在はもはや魔王を超えた存在、魔神だ。
魔法の世界で自分の魔法を使えない俺が、最強の魔神を討伐する。
──この世界に来た時には考えられない夢物語じゃないか?
まだ神々封殺杖剣に魔力はある。
まったく笑ってしまう程すごい武器だ。
俺がこの世界に来てから何度も助けてもらったし、この武器を完璧に扱いきれていたとは言い難いがもうすっかり手に馴染んでいる。
本当に俺なんかが持っていていいのかと今でも思う。
もはや体の一部となってしまった神光支配を見に纏わせ、小さく息を吸ってバクつく心臓を落ち着かせながらベルフェリオの首筋に剣を向ける。
まだ生きた人間に剣を向けるこの感覚は慣れない。
──刹那、祝福の外套の魔法により、少し先の未来が見えた。
ベルフェリオが紋章を展開し、この空間を異形で満たし全てを喰らい尽くす、そんな未来が。
どうもこの未来視の魔法は扱いが難しい。
自分の意思で未来を視るというよりは、ふとした瞬間に危機的な未来の光景が脳に流れ込んでくるといった感じだ。
サイディスは使いこなしていたようだったし、使っている内に慣れてくるものなんだろうが──この戦いが終われば、俺にはもう必要ない。
俺はベルフェリオに魔法を使われる前に、その首筋目掛けて剣を突いた。
至近距離での攻撃。
決して避けられるような代物ではなかったと思うが…ベルフェリオは刀身を手で掴むことによって対応して見せた。
このまま俺が全力で力を込めれば、ベルフェリオの喉を何の抵抗も無く切り裂くことができるだろう。
それが分かってか、ベルフェリオは命乞いのように言葉を漏らす。
「いいのか?私が死ねば…この世界から魔力が完全に消失するぞ?」
「魔力も何も、お前を殺さないとこの世界に生きる人間全てが死ぬんだろ?」
俺の指摘に口を噤むベルフェリオ。
ベルフェリオの命乞いは全く取引になっていなかった。
魔力は人間がいてこそのものだ。
その人間が滅んだのならばそもそも魔力が蘇ったとて意味がない。
俺はその喉元に向けた剣に入れる力を込める。
このまま突き刺せば、終わる。終わるのだが──、
思ったよりも剣を抑え込むベルフェリオの力が強く、動かなかった。
思い出す。
俺がこの世界に来てから一ヶ月が経って、ゼレス大迷宮の最下層に石板を探しに行った時のことを、
今この瞬間はまるで、レオールドに肉体を乗っ取られたリリシアに剣を向けた時のようだった。
あのリリシアの太陽のような精一杯の笑顔。
フォーミュラの隠れ家でたった一ヶ月修行しただけの俺の慢心を破壊した、あの笑顔はまだ鮮明に思い出せる。
もう一度会いたいがそうもいかないだろう。
死者を蘇生するなど、結局は妄言だった。
ここで神光支配を全出力して最大の力を解放すれば、たとえ神の力を持つ腕力だろうとも打ち砕くことができるはず。
──と思った時だった。
ベルフェリオが少しだけ長く目を瞑ったかと思えば、人相が変わったかのように微笑んだ。
雰囲気もまるで違う。もはや目の前の存在はベルフェリオではなく──、
「久しぶりだね。レヴィオン」
レヴィオンの最愛の恋人、ヤルダだった。
ベルフェリオがヤルダに精神を返したのか、それともベルフェリオがヤルダを演じているのかはわからない。
だが、ベルフェリオが俺との攻防を諦めてレヴィオンの情に訴えかけようとしているという浅はかな考えは見え透いていた。
「ヤルダ…ヤルダなの⁉︎」
しかしその考えが浅はかだとは、ヤルダと何の関わりもない俺だから言えることだ。
レヴィオンにとっては…ヤルダは三千年もの間追い求めた存在なのだから取り乱すのも仕方ない。
さっきはヤルダが意識を取り戻す間も無くベルフェリオに肉体を奪われていた。
だからこの展開はレヴィオンにとっても俺にとっても予想外。
…頼むから…サティスたち三人の死を無駄にするようなことはしないでくれよ、レヴィオン。
そんな俺の考えを汲み取ってか、ヤルダは衝撃的な言葉を続けた。
「うん。そして…さよなら。本当に愛してるよ」
ヤルダはそれだけ言って、喉元にあった神々封殺杖剣を…自分の意志で深く深く突き刺した。
溢れ出る鮮血。
生暖かいその赤い液体が俺の顔面に飛び散り、その事実を残酷に伝えてくる。
ヤルダはベルフェリオに乗っ取られていた間にも意識があったらしい。
ベルフェリオの意思が揺らいだこの瞬間、ヤルダは魂を取り戻したのだ。
しかし、再びベルフェリオに意識を奪われる可能性も分かっていた。
…だからって、そんな、愛してるなんて言葉を言える相手に…こんな顔をさせるような死に方って、あるか…?
俺は横で茫然自失と涙を流すレヴィオンを見る。
やり場のない怒りと悲しみに満ちて、まるでヤルダの後を追って自死を選ぶのではないかなんて思えてしまうほど危うげな表情をしている。
倒れ込むヤルダを俺は受け止める。
鮮血が純白の祝福の外套を赤く染め上げていく。
器を失ったベルフェリオがこれから復活できるのかどうかはわからない。
それにしても呆気ない最後だったように思う。
「レヴィオン…大丈夫か?」
冷たくなったヤルダを丁寧に地面に置いてやりレヴィオンの元に駆け寄る。
まさか最後の最後にヤルダが意識を取り戻すなんて思っていなかったのだろう。
レヴィオンはその綺麗な顔がぐちゃぐちゃになるくらい涙を流している。
かける言葉が見当たらなかった。
俺だってサティスとフォーミュラとカーミュラを失っている。
それなのに、俺はレヴィオンの傍から動くことができなかった。
──そんな状態で数秒経った時だった。
世界が崩落したかと錯覚してしまう程の地鳴りが、この城を襲った。
いったい、何が。
「レヴィオン、外に出るぞ!」
明らかな緊急事態。
蹲るレヴィオンを何とか立ち上がらせて抱き抱え、俺は城の外まで走る。
そこに広がっていた光景は、まさしく世界の終わりとでもいうような凄惨なものだった。
肉塊。
そうとしか言えないベルフェリオが生み出した魔物の集合体が、全長三十メートル程はありそうな巨人を形成して街を踏み潰していた。
ベルフェリオを殺したとて、あの魔物群は消えなかったらしい。
それはヨウトを殺してもヨウトが生み出したシグルズが消えなかったことからも納得できる。
にしても気色の悪い見た目だ。
巨人には顔がない。というよりも無数の顔のようなものが集合して人の形を取っている。
不気味で、悍ましくて、地獄の生物と言われても差し支えない。
その足元ではショウたちが無意味に剣を突き刺したりしている。
だが、巨人の鋼のように堅固な肉体には全く通用していない。
巨人はそんなショウたちの抵抗などまるで気にせず文明を破壊している。
すぐに止めなければ一瞬でこの街が、世界が終わるだろう。
真の最終決戦が始まろうとしていた。
この世界で魔法を使えるのは、もはや神が封じ込められた古代秘宝を持つ俺だけとなった。
果たして神々封殺杖剣の力だけであの凶悪な巨人を屠れるかどうかは対峙してみないとわからない。
だが戦う前からあの神の力を宿した巨人に俺の剣が通用しないだろうことは感じられた。
何故なら既にあの巨人と戦っているショウやデューレの剣が一切通用していないから。
例え魔力が無くなったとしても、身体能力が低下したわけではないのだ。
一切剣が通用せず、魔法も使えない。
──しかし勝ち筋はある。
それは…古代の代理人の本拠地では見つけることが出来なかったが、確かにこの世界に存在しているはずの武器。
世界の大陸を二つに分断し、魔族亜人族間の軋轢を加速させたと言っても過言ではない代物、終焉魔杖。
俺の脳は、もはやそれでしかこの世界は救えないと決めつけてしまっていた。
まだそれが本当に存在するのか、どこにあるのかの検討すらもついていないのに。
「なあレヴィオン、ハーマゲドンの谷を作り上げた武器のこと、わかるか?」
レヴィオンは三千年前の古代、ハーマゲドンの谷が作られて時のことを知っているはず。
淡い希望を抱いたまま、俺は俺の腕の中で呆然としているレヴィオンに尋ねる。
そしてそれに対するレヴィオンの回答は、驚くべきものだった。
「あの魔道具のこと…?あれは禁忌の魔道具。城の地下に封印されているはずだけど」
「本当か!?」
「本当よ。だけど絶対に取り出すことはできないわ。……ちょっと恥ずかしいから降ろしてくれる?」
落ち着いた様子で話していたレヴィオンだったが、俺の両腕で抱き抱えられているという状況に気がついて顔を赤らめていた。
緊急事態だったとはいえ魔王にこんな格好をさせたのはまずかったか?
それよりも。
「取り出すことはできない?それはどういう意味だ?」
もしも物理的に手が届かない場所にあるのだとしたら、完全に詰みだ。
「封印されていると言ったでしょう?封印の勇者レイヴが私をメルクリア大迷宮に封印した時よりも厳重で堅固な封印が何層にも施されている。もちろん私は自分の魔法が如何に強力なのかを確かめる為に、その封印が破壊できないか試した。だけど、ダメだった。神々の英気で強化された私の魔法でも傷一つつかないような封印よ?例え神々封殺杖剣があったとしてもあれを破壊するのは──、」
「今この世界からは魔力が無くなっている。封印を維持していたのも魔力なんじゃないのか?」
「…っ!」
早口で語るレヴィオンの言葉を遮った俺の推測が正しいのかどうかはわからない。
だが、レヴィオンの反応からして実際に確認してみるまでわからないことは分かった。
「案内してくれないか」
「…分かったわ」
レヴィオンは含みがある言い方をして、魔王城へと踵を返した。
魔力が無くなったということは、魔道具に宿っている魔力も無くなっているということでもある。
つまりハーマゲドンの谷を作った魔道具、終焉魔杖を手に入れられたとして使える可能性は限りなく低い。
それを口に出さなかったのは、レヴィオンの優しさ故だろうか?
一方的に世界を壊す巨人と、それに抗う英雄たち。
彼らの攻防を尻目に、俺はレヴィオンの背中を追った。
※
階段を三階分ほど降りたところだろうか。
レヴィオンが示す先に、その異質な空間はあった。
魔法陣に魔力や封印を強化する効果があるのかどうかは知らない。
だが、その部屋には狂ったように幾何学的な魔法陣が幾重にも幾重にも描かれていた。
中央には重厚な石の台座。
そしてその台座に刺さっていたのは…長さ二メートル程の、シンプルな木造りの錫杖。
その錫杖は神々封殺杖剣のように神々しい見た目をしているわけではない。
しかし手に取るのが恐れ多く憚られるような威圧感を放っている。
それを見て、レヴィオンは心底驚いていた。
「本当に封印が無くなっている…」
どうやらこの部屋には元々結界が張ってあって、ここまで内部には入れなかったようだ。
それにしても、
「なんでこんな所にこれが封印されていたんだ?」
単純な疑問。
てっきり古代の代理人が管理しているものだと思っていたが…
「ハーマゲドンの谷を作ったのが初代魔王だからよ」
レヴィオンはそんな意外な理由を口にした。
ハーマゲドンの谷を作ったのは古代人ではなく初代魔王?
「なんの為に谷を作ったんだよ」
「力を誇示する為に決まっているでしょう?」
さも当然かのように語るレヴィオンだったが、力を誇示する為とはいえあんな大陸を分断するような魔法を使うなんて馬鹿げている。
威力を知らずに使ってしまったようにも思えてしまう。
古代人はこの終焉魔杖を脅しに使うことで神々を捕らえることに成功したという。
もしかしたら初代魔王も、何か終焉魔杖を使わざるを得ない事情に襲われたのかもしれない。
「取ってもいいよな?」
一応確認をとりつつ、錫杖の元まで歩みよる。
近くで見るそれはあまりに素朴で迫力も何も無く、本当にこれで世界を変えれるほどの魔法を放てるかなんて疑問を抱いてしまう。
「いいわよ。使えるかどうかはわからないけど」
レヴィオンから了承を得たことで俺は錫杖に手をかけた──途端に溢れ出す──瘴気のようなドス黒いオーラ。
まるで数万人の悲痛な魂の叫びが俺の脳を侵食して蝕むような、そんな狂気じみた痛みが錫杖から右腕を通じて流れ込んでくる。
瞬時に手を離してその場に蹲ったが、もう二度とこれを手にできないような悍ましさを存分に感じ取ってしまった。
これは魔道具なんかではない。
まさしく、呪具だ。
この魔道具を作るのに犠牲になった何万人もの亜人の怨念が込められた、呪いの塊なのだ。
心底、王都魔剣術学校地下でログリアが企てた、『終焉魔杖の生成』という計画が失敗して良かったと思う。
そして──俺がこれを使いこなさければ皆死ぬ。世界が終わってしまう。
「どうしたの…?大丈夫?」
心配するように蹲る俺の顔を覗き込んできたレヴィオンだったが、なんとか笑顔を作り大丈夫な旨を伝える。
もしかしたら終焉魔杖の魔法を使ったら俺は廃人になってしまうのかもしれない。
そんな予感を感じながらも、恐る恐る再び錫杖を握る。
激しい頭痛がした。
まるで目の奥を小さな針で何度も突かれるような、そんな頭痛が鳴り止まない。
だがそれをレヴィオンに悟られないように気を保ちながら、なんとか言葉を紡いだ。
「行くぞ…!」
例えこの杖の魔法が使えるとして、街の中央にいる巨人に放つことはできない。
どうにかして巨人を移動させなければ、それこそ壊滅的な被害を俺の手によって出すことになる。
それを考えなければいけないのが、一番の面倒事だった。
「それで…どうやってあの巨人を街から遠ざけるかだが…思いつくか?」
再び街を見下ろせる場所まで移動した後で俺が意見を促し、レヴィオンは顎に手を当てて考えている。
巨人は『魔族』というこの世界にとっての異常を排除するべく動いている。
ならば大量の魔族を集めれば、そこに巨人を誘導できるのではないかと思っている。
が、今尚散り散りに逃げ惑っている魔族の人々を一箇所に集めることなんて不可能に等しい。
「あの巨人は魔族を狙っているのよね?聞く耳を持っているようには思えないけれど、提案してみようかしら」
「提案?」
俺の純粋な疑問を掻き消して、レヴィオンは巨人に向かって叫んだ。
「私は原初の魔族であり魔族の王、レヴィオン=ヴァルフォール!魔族の民を殺す前に、まず私を殺せ‼︎」
清廉で儚いレヴィオンから想像できないほど、まるで拡声器を使ったかのような場を支配する声が放たれた。
それにより、一瞬で静まり返る戦場。
やはりレヴィオンにはカリスマ性がある。
人々を支配し、人々の上に立てるような人望が、ある。
レヴィオンの懸念に反して巨人には言葉を理解できるだけの脳があったようで、レヴィオンの叫びを聞いて立ち止まった。
無数にある小さな顔のような突起を全てこちら側に向け、まるで真の標的を見つけたとでも言わんばかりに口のような器官をケタケタと動かしている。
通用しなかったらその行為は滑稽以外の何者でもなかったが、レヴィオンは巨人が真っ先に殺すべきと判断するくらいには魔族の王なり得ていたようであった。
それにしてもここからどうするというのか。
巨人をこちらに誘き寄せたとて、まだ魔法を放てるような安全圏にいる訳ではない。
しかもまだこの杖を使ってあの巨人を跡形も無く葬り去れるような魔法が放てると確定したわけでもない。
──神光支配の譲渡で僅かながらに錫杖が反応したのは確認済みだが…早計だと言わざるを得ない。
そしてまだつんざくような頭痛は続いている。
声を張ったレヴィオンは満足げに微笑んで、俺に指示を出した。
「ワタル。貴方は山を降りなさい。そして、山を登ってきた巨人を下から穿ちなさい」
「…そんなことをしたら、魔王城も…お前すらも巻き込んでしまうぞ」
「大丈夫。私は魔王よ?こんな所で死んでいられないわ。だから貴方は儀式の部屋で寝ぼけている加護持ちたちを連れて山を降りなさい。すぐに」
「加護持ちだけでいいのか?他に人はいないのか?」
魔王城は外見だけ見るとそれほど大きいようには思えない。
魔王城にいるであろう給仕などを逃すなら今のうちだが、
「城には私と魔王護六将校くらいしかいないから。今はマゼアも出払っているし、丁度いい。彼女には、この結末が見えていたのかもしれないけど」
「マゼア?」
「今は関係ないわ。とりあえず加護持ちだけを助け出せばいいの。早く行きなさい。巨人は既にこちらへ歩みを進めている」
見ると、確かに巨人はゆっくりと平坦になった街を更に踏み鳴らしながらこちらへ向かってきていた。
あと数刻もすれば、あの巨体がこの山を登り切って最大のチャンスを逃してしまうことになる。その前に俺は準備を整えなければならない。
にしてもレヴィオンは考えたな。
もしもこの杖がハーマゲドンの谷を作れるような埒外の魔法を放てるとして。
俺がこの場所から城下町めがけて打ったらそこに暮らす人々全てを殺し街を消し炭にすることになる。
だが、下から上めがけて打てば直線的な魔法の行き先は空になるわけで、被害を最小限に抑えることができる。
しかしそれはレヴィオンが囮になることで達成できるわけであり、調整が難しいだろう初めて使う魔法で巨人だけをうち抜くなんて芸当もできると思えなかった。
だから、
「レヴィオン、お前を、俺は──」
「いいから早く行きなさい!」
俺の躊躇いは、レヴィオンの怒声を引き出す以外の何も生まなかった。
歯を食いしばり、喉元まで出かかった言葉を飲み込み、俺は再び何度目かも忘れた魔王城の荘厳な入り口の扉を走り抜ける。
儀式の部屋は入り口からそう遠くない場所にある。
すぐに辿り着いたそこには、相変わらず意識を失った──リレイティアだけは目覚めていたが──加護持ちたちがいた。
……二度の儀式によってサティスは、フォーミュラは、カーミュラは、息絶えていた。
俺が殺したも同義だ。
たとえ三人から頼まれたことだとしても、俺は一生心に蟠りを抱えて生きていくことだろう。
ベルフェリオの加護持ちに至っては名も知らぬまま殺してしまった。
生きている加護持ちはユナ、マサキ、それからアーラヤとハザンだけ。
ヴィライダルも床に転がっている。
リレイティアは神ということもあって目覚めているし、五人ぐらいならなんとか抱えて山を降りれるか。…ちょっとキツイかもしれないが。
「リレイティア。逃げるぞ」
「それは『終焉魔杖』⁉︎…魔力が無くなったことで封印が解けてしまったのですか⁉︎」
部屋に入ってきた俺を見るなり、俺が手に持つ終焉魔杖を見て取り乱すリレイティア。
リレイティアはそれで全てを悟ったようだった。話が早くて助かる。
「お前は自分の足で逃げてくれ。俺はコイツらを担いでくから」
「神に対する扱いが酷いですね…わかりました」
リレイティアは立ち上がり、俺は五人を抱え、儀式の部屋を後にする。
サティスたち三人も抱えて行きたかったがそれは欲張りだ。
それで折角レヴィオンが作ってくれたチャンスを失くすことは許されない。
再び外に出ると、巨人は驚くべきほど城に肉薄していた。
それほど長い時間離席したわけではなかったが、思ったよりも巨人の足は速いようだ。
「山を駆け降りるぞ」
レヴィオンが巨人を待って仁王立ちしているのを横目に、俺はリレイティアと共に山の斜面を眺めている。
斜面はそれほど急ではない。
だが、ショウたちのように駆け降りるには多少の勇気がいるぐらいには凹凸が激しかった。
横にいるリレイティアは本当にこれ降りるの?と蒼白している。
構わず俺は地面を蹴った。
加速、加速、加速していく中で背中でおぶる四人の重さが俺の足をもつれさせる。
特にマサキは百キロ越えの巨漢だ。
レベル制限が撤廃された身体能力を持っていても、神光支配がなければかなりキツかっただろう。
足を取られながらも、なんとか平地と化してしまった城下町まで辿り着く。
リレイティアは未だ恐る恐るといった感じで山を降りているが、既に巨人は山を登り切ろうとしていた。
四つん這いで、地を這う蚯蚓のように山を登るその姿は気色が悪い以外の感想が出てこない。
後はなんとかして終末の魔杖の魔法を引き出すだけだが──、
「クソが…」
そんな悪態が溢れるほどの頭痛と悪寒が全身を支配し始めていた。
呼吸が荒くなり、神光支配を練り上げる繊細さが欠け、思わず眠るマサキを地面に放り投げてしまうくらいの疲労感が襲ってくるが、ユナ、アーラヤ、ハザン、ヴィライダルの四人はなんとか地面に寝かせる。
てかよく俺こいつら運べたな。
…本当に急がなければならない。
それなのにノロノロと斜面を降るリレイティアを見てイライラが最高潮にまで達していく。
ひとまずはそんなリレイティアを無視して、俺は終焉魔杖に神々封殺杖剣の魔力…神光支配を分配して使えないか試してみた。
神光支配は他人に魔力を譲渡することができる。
それは先の儀式によって確認済みだ。
だから魔道具にも魔力を分け与えられるはずなのだ。
しかし生半可な出力では僅かしか終焉魔杖は反応してくれない。
全身に纏っていた分も全て集約させ、全霊を込めた出力を試しているが、それでも殆ど反応がない。
──もしかして取り返しのつかないミスを犯しているのか、俺は。
焦燥が激しい頭痛を増させていき、練り上げる神光支配の出力を揺るがせてしまう。
これ以上はもう限界だ。
諦めかけた、その時だった。
『ワタル。私の魔力も使いなさい』
脳内で語りかける女性の声が、俺の頭痛を和らげた。
初めて聞いた声。
だと言うのにその正体は分かった。
──俺の母親。未来視の勇者、ミサキだ。
祝福の外套に宿る俺の母親の意識が俺に語りかけてきている。
俺の目から、思いがけず涙が滲み始めた。
「お母…さん」
物心がつく前からいなかった俺の母親。
写真でしか見たことが無い、うろ覚えだったはずのその姿。
それが…今は目を瞑ると鮮明に浮かび上がってくる。
その幻想にも似たミサキの幻影は、尚も俺に話しかけてくる。
『今から私の魔力全てを神光支配に転換する。だからもうワタルとは会えない。あまり一緒にいられなくてごめんね』
ミサキは微笑み、初めて聞くその凜とした声と優しい表情で俺の感情を揺さぶった。
俺の錯綜して混沌と化した脳内はそれにより鮮明になっていき、終焉魔杖の怨念によって乱された精神を統一させるには十分な体調を取り戻す。
魔法を放つのは今この瞬間しかない。
ミサキの言った通り、祝福の外套の莫大な魔力が神光支配に転変され、今までの最高出力の二倍は超えるであろう量の神光支配が終末の魔杖を覆い始める。
そして──終焉魔杖はその魔法を放つに値する魔力を獲得した。
今にも動かないレヴィオンを捕食しようと腕を伸ばす巨人と、ようやく街へ辿り着き息を切らすリレイティア。
そんな光景には目もくれず、俺は終焉魔杖の魔法陣を展開させた。
その魔法陣は数万の紋章が合わさったかのような半径十メートル程の巨大なもので、まるでブレーキが壊れた車を運転するかのような、死を覚悟する恐怖感が俺を襲う。
こんな矮小な人間がそれを扱っていいのかと思われる程、その魔法陣の巨大さと異質な雰囲気は常軌を逸していた。
『愛してるよ、ワタル』
「───っ!!」
消え去り行くミサキの幻影とその声を見送りながら、声にならない雄叫びをあげ、巨人めがけて放つ。
魔法陣と同じサイズで突き進んだ神速の光線は、山の岩肌を刈り取りながら、巨人の巨躯全てを飲み込み、暫く空を突き進んだ後──やがて霧散した。
曇天を作っていた分厚い雲は終焉魔杖の光線で掻き消され、太陽の光を世界に齎す。
薄暗かった世界に、僅かに光が差し込んで、戦いの終わりを告げている。
周囲には唖然と口を開くクラスメイトたちと、魔王護六将校の三人。
そしてかろうじて生き延びていた魔族の住民たちが、灰と化した巨人と魔王城の姿を呆然と眺めている。
神々封殺杖剣と祝福の外套の魔力全てを使い切った俺は、その場にへたりこんで──最後に俺を助けてくれた母親の姿をいつまでも脳裏で噛み締めていた。
六人の加護持ちで儀式を行うと、僅かな時間だけ神々の次元を訪れることができる。
七人の加護持ちで儀式を行うと、神々の次元にいる神をこちらの世界に召喚することができる。
その認識は正しいようで、光の収束と共に俺の視界に映ったのは白一色の空間ではなく、魔法陣の中央で驚いた顔を見せるベルフェリオだった。
「再度儀式を行ったか…!加護持ち全員を犠牲にしたのか?」
ベルフェリオは焦ったように独りごちながら、辺りを見回している。
俺はその姿を見て表情には出さなかったが安堵した。
もしも、召喚したベルフェリオが余裕を隠さなかったら?
すぐに神々の次元に戻れるような魔力を有していたら?
…俺の覚悟と犠牲は全て無駄になる。
その点、このベルフェリオの焦りようは彼にとって想定外な事態が起きた事を如実に示していた。
ベルフェリオの周囲には加護持ち達とリレイティアが眠っておりその中でもサティス、フォーミュラ、カーミュラの三人はピクリとも動かない。
まだ半信半疑な自分がいた。
今すぐ三人に駆け寄って体温を確認したい自分がいた。
だが今はそんな三人に託された意志を込めた剣をベルフェリオに向けなければならない。
何か行動を起こされる前にベルフェリオを葬らなければならない。
俺がこの世界に来た意味。
今目の前にいる存在はもはや魔王を超えた存在、魔神だ。
魔法の世界で自分の魔法を使えない俺が、最強の魔神を討伐する。
──この世界に来た時には考えられない夢物語じゃないか?
まだ神々封殺杖剣に魔力はある。
まったく笑ってしまう程すごい武器だ。
俺がこの世界に来てから何度も助けてもらったし、この武器を完璧に扱いきれていたとは言い難いがもうすっかり手に馴染んでいる。
本当に俺なんかが持っていていいのかと今でも思う。
もはや体の一部となってしまった神光支配を見に纏わせ、小さく息を吸ってバクつく心臓を落ち着かせながらベルフェリオの首筋に剣を向ける。
まだ生きた人間に剣を向けるこの感覚は慣れない。
──刹那、祝福の外套の魔法により、少し先の未来が見えた。
ベルフェリオが紋章を展開し、この空間を異形で満たし全てを喰らい尽くす、そんな未来が。
どうもこの未来視の魔法は扱いが難しい。
自分の意思で未来を視るというよりは、ふとした瞬間に危機的な未来の光景が脳に流れ込んでくるといった感じだ。
サイディスは使いこなしていたようだったし、使っている内に慣れてくるものなんだろうが──この戦いが終われば、俺にはもう必要ない。
俺はベルフェリオに魔法を使われる前に、その首筋目掛けて剣を突いた。
至近距離での攻撃。
決して避けられるような代物ではなかったと思うが…ベルフェリオは刀身を手で掴むことによって対応して見せた。
このまま俺が全力で力を込めれば、ベルフェリオの喉を何の抵抗も無く切り裂くことができるだろう。
それが分かってか、ベルフェリオは命乞いのように言葉を漏らす。
「いいのか?私が死ねば…この世界から魔力が完全に消失するぞ?」
「魔力も何も、お前を殺さないとこの世界に生きる人間全てが死ぬんだろ?」
俺の指摘に口を噤むベルフェリオ。
ベルフェリオの命乞いは全く取引になっていなかった。
魔力は人間がいてこそのものだ。
その人間が滅んだのならばそもそも魔力が蘇ったとて意味がない。
俺はその喉元に向けた剣に入れる力を込める。
このまま突き刺せば、終わる。終わるのだが──、
思ったよりも剣を抑え込むベルフェリオの力が強く、動かなかった。
思い出す。
俺がこの世界に来てから一ヶ月が経って、ゼレス大迷宮の最下層に石板を探しに行った時のことを、
今この瞬間はまるで、レオールドに肉体を乗っ取られたリリシアに剣を向けた時のようだった。
あのリリシアの太陽のような精一杯の笑顔。
フォーミュラの隠れ家でたった一ヶ月修行しただけの俺の慢心を破壊した、あの笑顔はまだ鮮明に思い出せる。
もう一度会いたいがそうもいかないだろう。
死者を蘇生するなど、結局は妄言だった。
ここで神光支配を全出力して最大の力を解放すれば、たとえ神の力を持つ腕力だろうとも打ち砕くことができるはず。
──と思った時だった。
ベルフェリオが少しだけ長く目を瞑ったかと思えば、人相が変わったかのように微笑んだ。
雰囲気もまるで違う。もはや目の前の存在はベルフェリオではなく──、
「久しぶりだね。レヴィオン」
レヴィオンの最愛の恋人、ヤルダだった。
ベルフェリオがヤルダに精神を返したのか、それともベルフェリオがヤルダを演じているのかはわからない。
だが、ベルフェリオが俺との攻防を諦めてレヴィオンの情に訴えかけようとしているという浅はかな考えは見え透いていた。
「ヤルダ…ヤルダなの⁉︎」
しかしその考えが浅はかだとは、ヤルダと何の関わりもない俺だから言えることだ。
レヴィオンにとっては…ヤルダは三千年もの間追い求めた存在なのだから取り乱すのも仕方ない。
さっきはヤルダが意識を取り戻す間も無くベルフェリオに肉体を奪われていた。
だからこの展開はレヴィオンにとっても俺にとっても予想外。
…頼むから…サティスたち三人の死を無駄にするようなことはしないでくれよ、レヴィオン。
そんな俺の考えを汲み取ってか、ヤルダは衝撃的な言葉を続けた。
「うん。そして…さよなら。本当に愛してるよ」
ヤルダはそれだけ言って、喉元にあった神々封殺杖剣を…自分の意志で深く深く突き刺した。
溢れ出る鮮血。
生暖かいその赤い液体が俺の顔面に飛び散り、その事実を残酷に伝えてくる。
ヤルダはベルフェリオに乗っ取られていた間にも意識があったらしい。
ベルフェリオの意思が揺らいだこの瞬間、ヤルダは魂を取り戻したのだ。
しかし、再びベルフェリオに意識を奪われる可能性も分かっていた。
…だからって、そんな、愛してるなんて言葉を言える相手に…こんな顔をさせるような死に方って、あるか…?
俺は横で茫然自失と涙を流すレヴィオンを見る。
やり場のない怒りと悲しみに満ちて、まるでヤルダの後を追って自死を選ぶのではないかなんて思えてしまうほど危うげな表情をしている。
倒れ込むヤルダを俺は受け止める。
鮮血が純白の祝福の外套を赤く染め上げていく。
器を失ったベルフェリオがこれから復活できるのかどうかはわからない。
それにしても呆気ない最後だったように思う。
「レヴィオン…大丈夫か?」
冷たくなったヤルダを丁寧に地面に置いてやりレヴィオンの元に駆け寄る。
まさか最後の最後にヤルダが意識を取り戻すなんて思っていなかったのだろう。
レヴィオンはその綺麗な顔がぐちゃぐちゃになるくらい涙を流している。
かける言葉が見当たらなかった。
俺だってサティスとフォーミュラとカーミュラを失っている。
それなのに、俺はレヴィオンの傍から動くことができなかった。
──そんな状態で数秒経った時だった。
世界が崩落したかと錯覚してしまう程の地鳴りが、この城を襲った。
いったい、何が。
「レヴィオン、外に出るぞ!」
明らかな緊急事態。
蹲るレヴィオンを何とか立ち上がらせて抱き抱え、俺は城の外まで走る。
そこに広がっていた光景は、まさしく世界の終わりとでもいうような凄惨なものだった。
肉塊。
そうとしか言えないベルフェリオが生み出した魔物の集合体が、全長三十メートル程はありそうな巨人を形成して街を踏み潰していた。
ベルフェリオを殺したとて、あの魔物群は消えなかったらしい。
それはヨウトを殺してもヨウトが生み出したシグルズが消えなかったことからも納得できる。
にしても気色の悪い見た目だ。
巨人には顔がない。というよりも無数の顔のようなものが集合して人の形を取っている。
不気味で、悍ましくて、地獄の生物と言われても差し支えない。
その足元ではショウたちが無意味に剣を突き刺したりしている。
だが、巨人の鋼のように堅固な肉体には全く通用していない。
巨人はそんなショウたちの抵抗などまるで気にせず文明を破壊している。
すぐに止めなければ一瞬でこの街が、世界が終わるだろう。
真の最終決戦が始まろうとしていた。
この世界で魔法を使えるのは、もはや神が封じ込められた古代秘宝を持つ俺だけとなった。
果たして神々封殺杖剣の力だけであの凶悪な巨人を屠れるかどうかは対峙してみないとわからない。
だが戦う前からあの神の力を宿した巨人に俺の剣が通用しないだろうことは感じられた。
何故なら既にあの巨人と戦っているショウやデューレの剣が一切通用していないから。
例え魔力が無くなったとしても、身体能力が低下したわけではないのだ。
一切剣が通用せず、魔法も使えない。
──しかし勝ち筋はある。
それは…古代の代理人の本拠地では見つけることが出来なかったが、確かにこの世界に存在しているはずの武器。
世界の大陸を二つに分断し、魔族亜人族間の軋轢を加速させたと言っても過言ではない代物、終焉魔杖。
俺の脳は、もはやそれでしかこの世界は救えないと決めつけてしまっていた。
まだそれが本当に存在するのか、どこにあるのかの検討すらもついていないのに。
「なあレヴィオン、ハーマゲドンの谷を作り上げた武器のこと、わかるか?」
レヴィオンは三千年前の古代、ハーマゲドンの谷が作られて時のことを知っているはず。
淡い希望を抱いたまま、俺は俺の腕の中で呆然としているレヴィオンに尋ねる。
そしてそれに対するレヴィオンの回答は、驚くべきものだった。
「あの魔道具のこと…?あれは禁忌の魔道具。城の地下に封印されているはずだけど」
「本当か!?」
「本当よ。だけど絶対に取り出すことはできないわ。……ちょっと恥ずかしいから降ろしてくれる?」
落ち着いた様子で話していたレヴィオンだったが、俺の両腕で抱き抱えられているという状況に気がついて顔を赤らめていた。
緊急事態だったとはいえ魔王にこんな格好をさせたのはまずかったか?
それよりも。
「取り出すことはできない?それはどういう意味だ?」
もしも物理的に手が届かない場所にあるのだとしたら、完全に詰みだ。
「封印されていると言ったでしょう?封印の勇者レイヴが私をメルクリア大迷宮に封印した時よりも厳重で堅固な封印が何層にも施されている。もちろん私は自分の魔法が如何に強力なのかを確かめる為に、その封印が破壊できないか試した。だけど、ダメだった。神々の英気で強化された私の魔法でも傷一つつかないような封印よ?例え神々封殺杖剣があったとしてもあれを破壊するのは──、」
「今この世界からは魔力が無くなっている。封印を維持していたのも魔力なんじゃないのか?」
「…っ!」
早口で語るレヴィオンの言葉を遮った俺の推測が正しいのかどうかはわからない。
だが、レヴィオンの反応からして実際に確認してみるまでわからないことは分かった。
「案内してくれないか」
「…分かったわ」
レヴィオンは含みがある言い方をして、魔王城へと踵を返した。
魔力が無くなったということは、魔道具に宿っている魔力も無くなっているということでもある。
つまりハーマゲドンの谷を作った魔道具、終焉魔杖を手に入れられたとして使える可能性は限りなく低い。
それを口に出さなかったのは、レヴィオンの優しさ故だろうか?
一方的に世界を壊す巨人と、それに抗う英雄たち。
彼らの攻防を尻目に、俺はレヴィオンの背中を追った。
※
階段を三階分ほど降りたところだろうか。
レヴィオンが示す先に、その異質な空間はあった。
魔法陣に魔力や封印を強化する効果があるのかどうかは知らない。
だが、その部屋には狂ったように幾何学的な魔法陣が幾重にも幾重にも描かれていた。
中央には重厚な石の台座。
そしてその台座に刺さっていたのは…長さ二メートル程の、シンプルな木造りの錫杖。
その錫杖は神々封殺杖剣のように神々しい見た目をしているわけではない。
しかし手に取るのが恐れ多く憚られるような威圧感を放っている。
それを見て、レヴィオンは心底驚いていた。
「本当に封印が無くなっている…」
どうやらこの部屋には元々結界が張ってあって、ここまで内部には入れなかったようだ。
それにしても、
「なんでこんな所にこれが封印されていたんだ?」
単純な疑問。
てっきり古代の代理人が管理しているものだと思っていたが…
「ハーマゲドンの谷を作ったのが初代魔王だからよ」
レヴィオンはそんな意外な理由を口にした。
ハーマゲドンの谷を作ったのは古代人ではなく初代魔王?
「なんの為に谷を作ったんだよ」
「力を誇示する為に決まっているでしょう?」
さも当然かのように語るレヴィオンだったが、力を誇示する為とはいえあんな大陸を分断するような魔法を使うなんて馬鹿げている。
威力を知らずに使ってしまったようにも思えてしまう。
古代人はこの終焉魔杖を脅しに使うことで神々を捕らえることに成功したという。
もしかしたら初代魔王も、何か終焉魔杖を使わざるを得ない事情に襲われたのかもしれない。
「取ってもいいよな?」
一応確認をとりつつ、錫杖の元まで歩みよる。
近くで見るそれはあまりに素朴で迫力も何も無く、本当にこれで世界を変えれるほどの魔法を放てるかなんて疑問を抱いてしまう。
「いいわよ。使えるかどうかはわからないけど」
レヴィオンから了承を得たことで俺は錫杖に手をかけた──途端に溢れ出す──瘴気のようなドス黒いオーラ。
まるで数万人の悲痛な魂の叫びが俺の脳を侵食して蝕むような、そんな狂気じみた痛みが錫杖から右腕を通じて流れ込んでくる。
瞬時に手を離してその場に蹲ったが、もう二度とこれを手にできないような悍ましさを存分に感じ取ってしまった。
これは魔道具なんかではない。
まさしく、呪具だ。
この魔道具を作るのに犠牲になった何万人もの亜人の怨念が込められた、呪いの塊なのだ。
心底、王都魔剣術学校地下でログリアが企てた、『終焉魔杖の生成』という計画が失敗して良かったと思う。
そして──俺がこれを使いこなさければ皆死ぬ。世界が終わってしまう。
「どうしたの…?大丈夫?」
心配するように蹲る俺の顔を覗き込んできたレヴィオンだったが、なんとか笑顔を作り大丈夫な旨を伝える。
もしかしたら終焉魔杖の魔法を使ったら俺は廃人になってしまうのかもしれない。
そんな予感を感じながらも、恐る恐る再び錫杖を握る。
激しい頭痛がした。
まるで目の奥を小さな針で何度も突かれるような、そんな頭痛が鳴り止まない。
だがそれをレヴィオンに悟られないように気を保ちながら、なんとか言葉を紡いだ。
「行くぞ…!」
例えこの杖の魔法が使えるとして、街の中央にいる巨人に放つことはできない。
どうにかして巨人を移動させなければ、それこそ壊滅的な被害を俺の手によって出すことになる。
それを考えなければいけないのが、一番の面倒事だった。
「それで…どうやってあの巨人を街から遠ざけるかだが…思いつくか?」
再び街を見下ろせる場所まで移動した後で俺が意見を促し、レヴィオンは顎に手を当てて考えている。
巨人は『魔族』というこの世界にとっての異常を排除するべく動いている。
ならば大量の魔族を集めれば、そこに巨人を誘導できるのではないかと思っている。
が、今尚散り散りに逃げ惑っている魔族の人々を一箇所に集めることなんて不可能に等しい。
「あの巨人は魔族を狙っているのよね?聞く耳を持っているようには思えないけれど、提案してみようかしら」
「提案?」
俺の純粋な疑問を掻き消して、レヴィオンは巨人に向かって叫んだ。
「私は原初の魔族であり魔族の王、レヴィオン=ヴァルフォール!魔族の民を殺す前に、まず私を殺せ‼︎」
清廉で儚いレヴィオンから想像できないほど、まるで拡声器を使ったかのような場を支配する声が放たれた。
それにより、一瞬で静まり返る戦場。
やはりレヴィオンにはカリスマ性がある。
人々を支配し、人々の上に立てるような人望が、ある。
レヴィオンの懸念に反して巨人には言葉を理解できるだけの脳があったようで、レヴィオンの叫びを聞いて立ち止まった。
無数にある小さな顔のような突起を全てこちら側に向け、まるで真の標的を見つけたとでも言わんばかりに口のような器官をケタケタと動かしている。
通用しなかったらその行為は滑稽以外の何者でもなかったが、レヴィオンは巨人が真っ先に殺すべきと判断するくらいには魔族の王なり得ていたようであった。
それにしてもここからどうするというのか。
巨人をこちらに誘き寄せたとて、まだ魔法を放てるような安全圏にいる訳ではない。
しかもまだこの杖を使ってあの巨人を跡形も無く葬り去れるような魔法が放てると確定したわけでもない。
──神光支配の譲渡で僅かながらに錫杖が反応したのは確認済みだが…早計だと言わざるを得ない。
そしてまだつんざくような頭痛は続いている。
声を張ったレヴィオンは満足げに微笑んで、俺に指示を出した。
「ワタル。貴方は山を降りなさい。そして、山を登ってきた巨人を下から穿ちなさい」
「…そんなことをしたら、魔王城も…お前すらも巻き込んでしまうぞ」
「大丈夫。私は魔王よ?こんな所で死んでいられないわ。だから貴方は儀式の部屋で寝ぼけている加護持ちたちを連れて山を降りなさい。すぐに」
「加護持ちだけでいいのか?他に人はいないのか?」
魔王城は外見だけ見るとそれほど大きいようには思えない。
魔王城にいるであろう給仕などを逃すなら今のうちだが、
「城には私と魔王護六将校くらいしかいないから。今はマゼアも出払っているし、丁度いい。彼女には、この結末が見えていたのかもしれないけど」
「マゼア?」
「今は関係ないわ。とりあえず加護持ちだけを助け出せばいいの。早く行きなさい。巨人は既にこちらへ歩みを進めている」
見ると、確かに巨人はゆっくりと平坦になった街を更に踏み鳴らしながらこちらへ向かってきていた。
あと数刻もすれば、あの巨体がこの山を登り切って最大のチャンスを逃してしまうことになる。その前に俺は準備を整えなければならない。
にしてもレヴィオンは考えたな。
もしもこの杖がハーマゲドンの谷を作れるような埒外の魔法を放てるとして。
俺がこの場所から城下町めがけて打ったらそこに暮らす人々全てを殺し街を消し炭にすることになる。
だが、下から上めがけて打てば直線的な魔法の行き先は空になるわけで、被害を最小限に抑えることができる。
しかしそれはレヴィオンが囮になることで達成できるわけであり、調整が難しいだろう初めて使う魔法で巨人だけをうち抜くなんて芸当もできると思えなかった。
だから、
「レヴィオン、お前を、俺は──」
「いいから早く行きなさい!」
俺の躊躇いは、レヴィオンの怒声を引き出す以外の何も生まなかった。
歯を食いしばり、喉元まで出かかった言葉を飲み込み、俺は再び何度目かも忘れた魔王城の荘厳な入り口の扉を走り抜ける。
儀式の部屋は入り口からそう遠くない場所にある。
すぐに辿り着いたそこには、相変わらず意識を失った──リレイティアだけは目覚めていたが──加護持ちたちがいた。
……二度の儀式によってサティスは、フォーミュラは、カーミュラは、息絶えていた。
俺が殺したも同義だ。
たとえ三人から頼まれたことだとしても、俺は一生心に蟠りを抱えて生きていくことだろう。
ベルフェリオの加護持ちに至っては名も知らぬまま殺してしまった。
生きている加護持ちはユナ、マサキ、それからアーラヤとハザンだけ。
ヴィライダルも床に転がっている。
リレイティアは神ということもあって目覚めているし、五人ぐらいならなんとか抱えて山を降りれるか。…ちょっとキツイかもしれないが。
「リレイティア。逃げるぞ」
「それは『終焉魔杖』⁉︎…魔力が無くなったことで封印が解けてしまったのですか⁉︎」
部屋に入ってきた俺を見るなり、俺が手に持つ終焉魔杖を見て取り乱すリレイティア。
リレイティアはそれで全てを悟ったようだった。話が早くて助かる。
「お前は自分の足で逃げてくれ。俺はコイツらを担いでくから」
「神に対する扱いが酷いですね…わかりました」
リレイティアは立ち上がり、俺は五人を抱え、儀式の部屋を後にする。
サティスたち三人も抱えて行きたかったがそれは欲張りだ。
それで折角レヴィオンが作ってくれたチャンスを失くすことは許されない。
再び外に出ると、巨人は驚くべきほど城に肉薄していた。
それほど長い時間離席したわけではなかったが、思ったよりも巨人の足は速いようだ。
「山を駆け降りるぞ」
レヴィオンが巨人を待って仁王立ちしているのを横目に、俺はリレイティアと共に山の斜面を眺めている。
斜面はそれほど急ではない。
だが、ショウたちのように駆け降りるには多少の勇気がいるぐらいには凹凸が激しかった。
横にいるリレイティアは本当にこれ降りるの?と蒼白している。
構わず俺は地面を蹴った。
加速、加速、加速していく中で背中でおぶる四人の重さが俺の足をもつれさせる。
特にマサキは百キロ越えの巨漢だ。
レベル制限が撤廃された身体能力を持っていても、神光支配がなければかなりキツかっただろう。
足を取られながらも、なんとか平地と化してしまった城下町まで辿り着く。
リレイティアは未だ恐る恐るといった感じで山を降りているが、既に巨人は山を登り切ろうとしていた。
四つん這いで、地を這う蚯蚓のように山を登るその姿は気色が悪い以外の感想が出てこない。
後はなんとかして終末の魔杖の魔法を引き出すだけだが──、
「クソが…」
そんな悪態が溢れるほどの頭痛と悪寒が全身を支配し始めていた。
呼吸が荒くなり、神光支配を練り上げる繊細さが欠け、思わず眠るマサキを地面に放り投げてしまうくらいの疲労感が襲ってくるが、ユナ、アーラヤ、ハザン、ヴィライダルの四人はなんとか地面に寝かせる。
てかよく俺こいつら運べたな。
…本当に急がなければならない。
それなのにノロノロと斜面を降るリレイティアを見てイライラが最高潮にまで達していく。
ひとまずはそんなリレイティアを無視して、俺は終焉魔杖に神々封殺杖剣の魔力…神光支配を分配して使えないか試してみた。
神光支配は他人に魔力を譲渡することができる。
それは先の儀式によって確認済みだ。
だから魔道具にも魔力を分け与えられるはずなのだ。
しかし生半可な出力では僅かしか終焉魔杖は反応してくれない。
全身に纏っていた分も全て集約させ、全霊を込めた出力を試しているが、それでも殆ど反応がない。
──もしかして取り返しのつかないミスを犯しているのか、俺は。
焦燥が激しい頭痛を増させていき、練り上げる神光支配の出力を揺るがせてしまう。
これ以上はもう限界だ。
諦めかけた、その時だった。
『ワタル。私の魔力も使いなさい』
脳内で語りかける女性の声が、俺の頭痛を和らげた。
初めて聞いた声。
だと言うのにその正体は分かった。
──俺の母親。未来視の勇者、ミサキだ。
祝福の外套に宿る俺の母親の意識が俺に語りかけてきている。
俺の目から、思いがけず涙が滲み始めた。
「お母…さん」
物心がつく前からいなかった俺の母親。
写真でしか見たことが無い、うろ覚えだったはずのその姿。
それが…今は目を瞑ると鮮明に浮かび上がってくる。
その幻想にも似たミサキの幻影は、尚も俺に話しかけてくる。
『今から私の魔力全てを神光支配に転換する。だからもうワタルとは会えない。あまり一緒にいられなくてごめんね』
ミサキは微笑み、初めて聞くその凜とした声と優しい表情で俺の感情を揺さぶった。
俺の錯綜して混沌と化した脳内はそれにより鮮明になっていき、終焉魔杖の怨念によって乱された精神を統一させるには十分な体調を取り戻す。
魔法を放つのは今この瞬間しかない。
ミサキの言った通り、祝福の外套の莫大な魔力が神光支配に転変され、今までの最高出力の二倍は超えるであろう量の神光支配が終末の魔杖を覆い始める。
そして──終焉魔杖はその魔法を放つに値する魔力を獲得した。
今にも動かないレヴィオンを捕食しようと腕を伸ばす巨人と、ようやく街へ辿り着き息を切らすリレイティア。
そんな光景には目もくれず、俺は終焉魔杖の魔法陣を展開させた。
その魔法陣は数万の紋章が合わさったかのような半径十メートル程の巨大なもので、まるでブレーキが壊れた車を運転するかのような、死を覚悟する恐怖感が俺を襲う。
こんな矮小な人間がそれを扱っていいのかと思われる程、その魔法陣の巨大さと異質な雰囲気は常軌を逸していた。
『愛してるよ、ワタル』
「───っ!!」
消え去り行くミサキの幻影とその声を見送りながら、声にならない雄叫びをあげ、巨人めがけて放つ。
魔法陣と同じサイズで突き進んだ神速の光線は、山の岩肌を刈り取りながら、巨人の巨躯全てを飲み込み、暫く空を突き進んだ後──やがて霧散した。
曇天を作っていた分厚い雲は終焉魔杖の光線で掻き消され、太陽の光を世界に齎す。
薄暗かった世界に、僅かに光が差し込んで、戦いの終わりを告げている。
周囲には唖然と口を開くクラスメイトたちと、魔王護六将校の三人。
そしてかろうじて生き延びていた魔族の住民たちが、灰と化した巨人と魔王城の姿を呆然と眺めている。
神々封殺杖剣と祝福の外套の魔力全てを使い切った俺は、その場にへたりこんで──最後に俺を助けてくれた母親の姿をいつまでも脳裏で噛み締めていた。
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