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第5話夕食作り1
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しまった、寝過ごしてしまった。
何年かぶりにまともな、それも美味しい食事を頂いた上に、シャーリー様残り物ですから幾らでもどうぞ、デザートもありますよ、
とまるで貴族のような扱いをされたから遠慮なく食べてしまった。
それも、とても美味しい物ばかりだった。
チキンの香草焼きに、色とりどりのサラダに、野菜のスープ。
デザートはフルーツがふんだんにのったタルト。
どれも素材を活かした、素晴らしい料理だった。
恐らく、お父様や御義母様、お姉様が普段食べている食事よりも、いい物だと、食べながら思った。
あまりに美味しくて、残り物であとは捨てるだけですから、と言われて、勿体なくて本当に遠慮なく食べてしまった。
お腹いっぱいになると、眠たくなり、つい甘えて寝てしまったら、もう16時30分になっていた!
急いで貰ったメイドの服に着替え身支度を整え、部屋を出た。
夕食の準備はもう始まっているはずだ。あれだけお願いします、と頭を下げて無理やり働かせてもらえるようになったのに、
ううううう・・・ごめんなさい・・・。
少し歩いて気づいた。
しまった……調理場を知らない。
というよりも、急いで部屋を出てしまって、自分がどこにいるかも分からなくなった。
前を見て後ろを振り返る。
何処からか声はするが、姿が見えない。
廊下に迷い出て、改めて屋敷の豪華さに息を呑んだ。
天井が高い。サヴォワ家の倍はあるだろう。
そこから吊り下げられたシャンデリアが、夕方の光を受けて優雅に煌めいている。
廊下の両脇には、大理石の柱が等間隔に並び、その間に飾られた絵画や彫刻が、まるで美術館のようだ。
絨毯は深い赤色で、足を踏み入れるたびに柔らかく沈む。
こんな廊下を、私が歩いていいのだろうか。
窓からは、手入れの行き届いた庭園が見える。
噴水が優雅に水を吹き上げ、その周りを色とりどりの薔薇が囲んでいる。
遠くには、白い東屋も見えた。
サヴォワ家も伯爵家だから立派な屋敷だけれど、ここまでではない。
キャウリー様は子爵なのに、どうしてこんなに立派な屋敷を持っているのだろう。
壁に飾られた肖像画の人物が、私を見下ろしているような気がして、少し怖くなった。
キョロキョロと誰かいないか、と周りを見ていると、前からソバカスが似合う可愛らしい女性が私に近づいてきた。
栗色の髪を後ろでひとつに結んでいて、その髪が歩くたびに弾むように揺れている。
鼻の周りから頬にかけて、まるで星を散りばめたようにソバカスがたっぷりとあって、それがチャームポイントのように見える。
二十代前半だろうか、丸い目がくりっとしていて、笑うと八重歯が覗く。
その表情は明るくて、屈託がなくて、まるで太陽のようだった。
軽快な足取りで近づいてくる姿は、元気そのもの。
こんな風に生き生きとしている人を見るのは、久しぶりだった。
「シャーリー様、厨房をお探しですか?」
何故か私の名前を呼んだ。
その声も、明るくて、弾んでいる。
「す、すみません!そうなのです・・・」
「こちらですよ」
にっこりと笑って、道を示してくれる。
その笑顔が、眩しかった。
「すみません・・・ありがとうございます・・・」
「・・・いえ・・・」
その女性は、アンナと名乗り、厨房に着くまで話をしたが、何故か私が答える度に、悲しそうな顔をしていた。
さっきまでの明るい表情が、少しずつ曇っていく。
私、答え方もおかしいかもしれない。そういえば最近、家族とルーンとしかまともに話をしていないから、変な言葉になっているのかもしれない。
もしかしたら、トンチンカンな返事をしているのかもしれない。
「どうされました?」
私の足が重たくなりゆっくりになってしまい、アンナと距離が離れた為、不安そうに急いで私の側に来てくれた。
心配そうな顔で覗き込んでくる。そのソバカスだらけの顔が、優しい。
「あ、いえ。何でもありません。御屋敷が広くて、素敵過ぎて、ついよそ見をしてしまったのです。その、すみません!ついていけない訳じゃないんです。少しゆっくりしただけで、あの、すみません!」
アンナはとても痛々しそうな顔を一瞬したが、直ぐに笑い手を出した。
その表情の変化が早くて、まるで空に一瞬だけ雲がかかったような感じだった。
「そんなに謝らないで下さい。私もここに来た時は珍しくて色々見てしまい、何度も迷子になりました。そうだ、手を繋ぎましょうよ。そうしたらシャーリー様と一緒に歩けますし、迷子になりませんよ」
手を、繋ぐ?
差し伸べられる手に、正直戸惑った。
アンナの手は、働き者の手だった。少し日に焼けていて、健康的で。
こんなに堂々と優しくされるのは、何年ぶりだろう。
私に手を差し伸べる人は限られている。
ルーンが、時々そっと握ってくれた手の温もり。
お母様が生きていた頃、優しく包んでくれた手の記憶。
それ以外、私の手を握ってくれる人なんていなかった。
それなのに、今出会ったばかりで知りもしない人が、当然のように手を差し出してくれている。
その手を取ったら、何か変わってしまうような気がした。
怖い。
でも、その怖さが何なのか、自分自身知っている。
優しくされることが、怖い。
慣れてしまったら、いつかそれを失った時に、もっと辛くなる。
お母様が亡くなった時、とても辛くて私も死にたかった。
1度優しさを知ったら、無くした時は、何十倍も辛くなるし、
私を助けたと知られたら、困るかもしれない。
だから、私はその手を見て、立ち尽くしてしまった。
「あ、あの、私を助けて、誰かに叱られませんか?」
素直にそう聞くと、アンナはとても驚き、そして、少し悲しそうな目をした。
次の瞬間、彼女は私の手を、優しく、でもしっかりと握ってきた。
温かい。
アンナの手は、少しだけ私より大きくて、働いている人の手だった。
でも、その手のひらから伝わる温もりが、じんわりと私の中に広がっていく。
怖いけれど、嬉しい。
矛盾した感情が、胸の中で渦巻いた。
「そんな事誰もしません。逆にシャーリー様を助けなかったら、叱られます」
呆れ顔で言われ、肩を竦めた。
でも、その呆れ顔も、優しかった。
「私を?」
「そうですよ。ご主人様の大事なお客様なのですからね。さあ行きましょう。早くしないと夕食の準備が終わってしまいます」
アンナは私の手をぎゅっと握りしめて、歩き出した。
その握り方は、決して離さない、という意思が感じられた。
私が怖がっているのを、分かっているのだろうか。
だから、こんなに優しく、でも強く、握っていてくれるのだろうか。
何か気に触る事を言ってしまったのだろうか、ととても不安だったが、アンナが話しかけているその顔はとても優しかった。
ソバカスだらけの頬が、笑うと上がって、目が細くなる。
でも素直にその優しさを受け止められなかった。
私、ダメな人間だな。
それでも、繋がれた手の温もりだけは、確かにそこにあった。
ぎゅっと握られた手が、少しずつ、私の凍りついた心を溶かしていくような気がした。
暇を見て屋敷の中を覚えないといけない。皆優しく見えるけど、心の中では、嫌な気分にさせて迷惑だと思ってるはずだ。
サヴォワ家のように厄介者になっちゃダメだ。只でさえ私はお父様の借金のかたとして、ここに置いてもらうのに、役に立たなかったら、
もしかしたら、
もしかしたら、
家に帰される?
寒気が襲い、体が震えた。ただ、ただ、頑張らないと、しか浮かばなかった。
でも、アンナと繋ぐ手は、何故かとても暖かく感じた。
握られた手のひらから、勇気のようなものが、少しずつ伝わってくる。
大丈夫、と言われている気がした。
一人じゃない、と。
そう思うと、涙が出そうになって、私は慌てて下を向いた。
何年かぶりにまともな、それも美味しい食事を頂いた上に、シャーリー様残り物ですから幾らでもどうぞ、デザートもありますよ、
とまるで貴族のような扱いをされたから遠慮なく食べてしまった。
それも、とても美味しい物ばかりだった。
チキンの香草焼きに、色とりどりのサラダに、野菜のスープ。
デザートはフルーツがふんだんにのったタルト。
どれも素材を活かした、素晴らしい料理だった。
恐らく、お父様や御義母様、お姉様が普段食べている食事よりも、いい物だと、食べながら思った。
あまりに美味しくて、残り物であとは捨てるだけですから、と言われて、勿体なくて本当に遠慮なく食べてしまった。
お腹いっぱいになると、眠たくなり、つい甘えて寝てしまったら、もう16時30分になっていた!
急いで貰ったメイドの服に着替え身支度を整え、部屋を出た。
夕食の準備はもう始まっているはずだ。あれだけお願いします、と頭を下げて無理やり働かせてもらえるようになったのに、
ううううう・・・ごめんなさい・・・。
少し歩いて気づいた。
しまった……調理場を知らない。
というよりも、急いで部屋を出てしまって、自分がどこにいるかも分からなくなった。
前を見て後ろを振り返る。
何処からか声はするが、姿が見えない。
廊下に迷い出て、改めて屋敷の豪華さに息を呑んだ。
天井が高い。サヴォワ家の倍はあるだろう。
そこから吊り下げられたシャンデリアが、夕方の光を受けて優雅に煌めいている。
廊下の両脇には、大理石の柱が等間隔に並び、その間に飾られた絵画や彫刻が、まるで美術館のようだ。
絨毯は深い赤色で、足を踏み入れるたびに柔らかく沈む。
こんな廊下を、私が歩いていいのだろうか。
窓からは、手入れの行き届いた庭園が見える。
噴水が優雅に水を吹き上げ、その周りを色とりどりの薔薇が囲んでいる。
遠くには、白い東屋も見えた。
サヴォワ家も伯爵家だから立派な屋敷だけれど、ここまでではない。
キャウリー様は子爵なのに、どうしてこんなに立派な屋敷を持っているのだろう。
壁に飾られた肖像画の人物が、私を見下ろしているような気がして、少し怖くなった。
キョロキョロと誰かいないか、と周りを見ていると、前からソバカスが似合う可愛らしい女性が私に近づいてきた。
栗色の髪を後ろでひとつに結んでいて、その髪が歩くたびに弾むように揺れている。
鼻の周りから頬にかけて、まるで星を散りばめたようにソバカスがたっぷりとあって、それがチャームポイントのように見える。
二十代前半だろうか、丸い目がくりっとしていて、笑うと八重歯が覗く。
その表情は明るくて、屈託がなくて、まるで太陽のようだった。
軽快な足取りで近づいてくる姿は、元気そのもの。
こんな風に生き生きとしている人を見るのは、久しぶりだった。
「シャーリー様、厨房をお探しですか?」
何故か私の名前を呼んだ。
その声も、明るくて、弾んでいる。
「す、すみません!そうなのです・・・」
「こちらですよ」
にっこりと笑って、道を示してくれる。
その笑顔が、眩しかった。
「すみません・・・ありがとうございます・・・」
「・・・いえ・・・」
その女性は、アンナと名乗り、厨房に着くまで話をしたが、何故か私が答える度に、悲しそうな顔をしていた。
さっきまでの明るい表情が、少しずつ曇っていく。
私、答え方もおかしいかもしれない。そういえば最近、家族とルーンとしかまともに話をしていないから、変な言葉になっているのかもしれない。
もしかしたら、トンチンカンな返事をしているのかもしれない。
「どうされました?」
私の足が重たくなりゆっくりになってしまい、アンナと距離が離れた為、不安そうに急いで私の側に来てくれた。
心配そうな顔で覗き込んでくる。そのソバカスだらけの顔が、優しい。
「あ、いえ。何でもありません。御屋敷が広くて、素敵過ぎて、ついよそ見をしてしまったのです。その、すみません!ついていけない訳じゃないんです。少しゆっくりしただけで、あの、すみません!」
アンナはとても痛々しそうな顔を一瞬したが、直ぐに笑い手を出した。
その表情の変化が早くて、まるで空に一瞬だけ雲がかかったような感じだった。
「そんなに謝らないで下さい。私もここに来た時は珍しくて色々見てしまい、何度も迷子になりました。そうだ、手を繋ぎましょうよ。そうしたらシャーリー様と一緒に歩けますし、迷子になりませんよ」
手を、繋ぐ?
差し伸べられる手に、正直戸惑った。
アンナの手は、働き者の手だった。少し日に焼けていて、健康的で。
こんなに堂々と優しくされるのは、何年ぶりだろう。
私に手を差し伸べる人は限られている。
ルーンが、時々そっと握ってくれた手の温もり。
お母様が生きていた頃、優しく包んでくれた手の記憶。
それ以外、私の手を握ってくれる人なんていなかった。
それなのに、今出会ったばかりで知りもしない人が、当然のように手を差し出してくれている。
その手を取ったら、何か変わってしまうような気がした。
怖い。
でも、その怖さが何なのか、自分自身知っている。
優しくされることが、怖い。
慣れてしまったら、いつかそれを失った時に、もっと辛くなる。
お母様が亡くなった時、とても辛くて私も死にたかった。
1度優しさを知ったら、無くした時は、何十倍も辛くなるし、
私を助けたと知られたら、困るかもしれない。
だから、私はその手を見て、立ち尽くしてしまった。
「あ、あの、私を助けて、誰かに叱られませんか?」
素直にそう聞くと、アンナはとても驚き、そして、少し悲しそうな目をした。
次の瞬間、彼女は私の手を、優しく、でもしっかりと握ってきた。
温かい。
アンナの手は、少しだけ私より大きくて、働いている人の手だった。
でも、その手のひらから伝わる温もりが、じんわりと私の中に広がっていく。
怖いけれど、嬉しい。
矛盾した感情が、胸の中で渦巻いた。
「そんな事誰もしません。逆にシャーリー様を助けなかったら、叱られます」
呆れ顔で言われ、肩を竦めた。
でも、その呆れ顔も、優しかった。
「私を?」
「そうですよ。ご主人様の大事なお客様なのですからね。さあ行きましょう。早くしないと夕食の準備が終わってしまいます」
アンナは私の手をぎゅっと握りしめて、歩き出した。
その握り方は、決して離さない、という意思が感じられた。
私が怖がっているのを、分かっているのだろうか。
だから、こんなに優しく、でも強く、握っていてくれるのだろうか。
何か気に触る事を言ってしまったのだろうか、ととても不安だったが、アンナが話しかけているその顔はとても優しかった。
ソバカスだらけの頬が、笑うと上がって、目が細くなる。
でも素直にその優しさを受け止められなかった。
私、ダメな人間だな。
それでも、繋がれた手の温もりだけは、確かにそこにあった。
ぎゅっと握られた手が、少しずつ、私の凍りついた心を溶かしていくような気がした。
暇を見て屋敷の中を覚えないといけない。皆優しく見えるけど、心の中では、嫌な気分にさせて迷惑だと思ってるはずだ。
サヴォワ家のように厄介者になっちゃダメだ。只でさえ私はお父様の借金のかたとして、ここに置いてもらうのに、役に立たなかったら、
もしかしたら、
もしかしたら、
家に帰される?
寒気が襲い、体が震えた。ただ、ただ、頑張らないと、しか浮かばなかった。
でも、アンナと繋ぐ手は、何故かとても暖かく感じた。
握られた手のひらから、勇気のようなものが、少しずつ伝わってくる。
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