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第16話キャウリー目線
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「本当に、そんな事を言われたのですか?」
シャーリーが食堂を出るのを確認し、私はハザードにシャーリーの荷物をサヴォワ家に取りに行かせた事を説明すると、眉間に皺を寄せ、苛立つ声を上げた。
気持ちは分かる。
「ワンに行かせたが、かなり厳しい言い方をされ追い返されたと報告を受けた。それも、あのような女の子と家族と思われるなんて心外だわ、見てわかるでしょう?と、同じ顔の女性に言われたと言っていた。つまりシャーリーの姉だ。これが、シャーリーの姉か、と怒りの顔で報告を受けた」
「では、あの痣は本当にご家族からのものですね!ああ、腹が立つ!共に過ごせる家族がいるだけでも幸せなのに、それを大切にしないなど本当に馬鹿だわ!!」
ガン!とまた、コーヒーカップを置いた。
勿論また零れ、ハザードの手の甲に雫が飛んだ。
言葉遣いが戻っている、とは、あえて突っ込むのはやめておこう。ハザードが怒ると、つい昔の口調に戻るが、今の気持ちは痛いほどに理解できる。
共に過ごせる家族。
いや、元々家族は共に過ごすものなのだ。
そんな些細で、至極当然を、
ハザードは、
手に入れれなかった。
「心配するな」
近くにあったナプキンで、ハザードの手を拭いた。
「熱くはなかったか?大丈夫か?」
「大丈夫でございます」
私の声に落ち着いたようで、ナプキンを取り自分で拭いた。
良かった。
「シャーリーの身の回りの全てをこちらで用意する方が都合がいい。こう言っては何だが、あの程度の家の品物を身につけてもらっては、恥ずかしいからな」
「それが宜しいですね」
ハザードは何度も深呼吸し、いつもと同じ、綺麗に背筋を伸ばした。
完全に冷静を取り戻したようだ。
「シャーリーが来てから直ぐに調べたが、あの家と関わることは無さそうだし、私の事も本当に知らないようだ。つまり、その程度だ」
「それなら、安心です」
コーヒーカップを持ち上げると、今回は零れたコーヒーを拭いてくれた。
「シャーリーがいたいだけここにいればいい。私も、都合がいい」
「そうでしょうね。御友人達が、ご主人様の為に色々な女性を紹介して来ますものね」
ハザードの声に、少し皮肉が混じっている。
「余計なお世話だ。私は今のまま悠々自適の生活でいいんだ。跡取りもいるのだから」
「養子、ですがね」
棘があるな。
ハザードは養子という立場を、どこか気にしている節がある。それは、ノーセットの将来を案じているのだろう。
「それで、シャーリー様のダンスの手ほどきはどうされるのですか?」
話題を変えたな、と気づく。ハザードはいつもこうだ。言いたいことは言うが、それ以上は追求しない。
「勿論、サーヴァントに誰か紹介してもらう。これから少し話をする予定になっているから、王宮に向かう。お互い色々相談する事があるからな。騎士達の指導についても話をしなければならん」
「あら、やっと引き受ける気になったのですか?」
意外そうに驚いた。
いや、驚いたふりをしている。ハザードは既に気づいているはずだ。私が心変わりした理由を。
「・・・ノーセットのこれからもあるからな。地盤を固めるには仕方ないだろう」
渋々答えると、くすくすと可笑しそうに笑いだした。
「お二人にカッコイイ所でも見せたいと、年甲斐もなく思ったのでしょう?」
やはり、見抜いていたか。
「・・・君にはすべてお見通しか」
ふうとため息をつき、苦笑いが出る。
同じ歳で、この屋敷で40年以上ももいれば私の全てを知っている。
そう、全てを、だ。
隠し事など、できはしない。
「あの二人はキラキラしてますものね。影響を受けて気持ちが若返るのは、良い事です」
そこで、言葉を切ると、少し戸惑ったような、それでいて、覚悟を決めたような顔をした。
ハザードの表情が変わった。真剣な目だ。
「忙しくなりますね」
ハザードが、昔、戦場に行く前日に言った、同じ言葉、同じ笑みを浮かべた。
あの時と同じだ。
覚悟を決めた顔だ。
「いや、君がいる。何も変わりはしない」
あの時と、同じ言葉が、自然に出た。
目と目が合い、また、あの時と同じようにハザードは仕方なさそうに笑った。
「では、馬車の準備をして参ります」
「宜しく頼む。それから、君の方で少し探ってもらえるか?」
一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに表情を引き締め、懐かしい黒い微笑みを見せた。
あの鋭い眼光。
「分かりました。では、失礼致します」
ハザードは一礼し出ていった。
その背中を見送りながら、頼もしく思う。
懐かしい、そして、二度と起こしてはならない戦争の記憶が脳裏に浮かぶ。
私は若く、腕が立った。
武将と呼ばれ、軍勢を統率し、襲いかかる敵を薙ぎ倒していた。
血と泥にまみれた日々。
仲間の死。
勝利の歓喜と、失った者への悲しみ。
だが、もう遠い昔話なのに、その時の戦友であったサーヴァントが、王宮の騎士達の師として指導を頼みたいと、前々から懇願していた。
だが、師となれば否応無く戦を思い出す。私としては、二度と思い出したくない、いや、消し去りたい過去だった。
それなのに。
あの二人を見ていると、穏やかな気持ちで、若き者達に指導するのも私の役目かもしれん、と思えた。
不思議なものだ。
残ったコーヒーを飲んだ。
冷めて不味かった。
これも、温かい方が、美味しい、という事だな。
シャーリーの言葉を思い出し、口元が緩む。
不思議な子だ。奇想天外な現れ方をしたかと思えば、たった一日で屋敷の皆から受け入れられた。
オドオドしているが、幸か不幸か家族に邪険に扱われていた分、人を嫌な気分にさせない雰囲気と物腰が備わっている。
母君の育て方も良かったのだろう。
気品は失われず、瞳に宿る煌めきは芯の強さを秘めている。
そして、あの料理の腕。
ただの令嬢ではない。
何か、秘めたものがある。
なかなか面白いものをくれたな、サヴォワ伯爵。
意図せず、だろうがな。
そして、ハザードにまた頼る形となった。
だが、ハザードは嫌な顔一つせず、引き受けてくれた。
本来ならこのような事をするべき人間ではない、とわかっているのに、彼女は天性かのように動いてくれる。
いや、
生きる為にもがいた結果なのかもしれない。
「さて、着替えるか」
あのころのギスギスした気持ちではなく、楽しさに血が湧き上がった。
久しぶりに、生きている実感がする。
立ち上がり、窓の外を見る。
青い空が広がっている。
いい天気だ。
シャーリーが食堂を出るのを確認し、私はハザードにシャーリーの荷物をサヴォワ家に取りに行かせた事を説明すると、眉間に皺を寄せ、苛立つ声を上げた。
気持ちは分かる。
「ワンに行かせたが、かなり厳しい言い方をされ追い返されたと報告を受けた。それも、あのような女の子と家族と思われるなんて心外だわ、見てわかるでしょう?と、同じ顔の女性に言われたと言っていた。つまりシャーリーの姉だ。これが、シャーリーの姉か、と怒りの顔で報告を受けた」
「では、あの痣は本当にご家族からのものですね!ああ、腹が立つ!共に過ごせる家族がいるだけでも幸せなのに、それを大切にしないなど本当に馬鹿だわ!!」
ガン!とまた、コーヒーカップを置いた。
勿論また零れ、ハザードの手の甲に雫が飛んだ。
言葉遣いが戻っている、とは、あえて突っ込むのはやめておこう。ハザードが怒ると、つい昔の口調に戻るが、今の気持ちは痛いほどに理解できる。
共に過ごせる家族。
いや、元々家族は共に過ごすものなのだ。
そんな些細で、至極当然を、
ハザードは、
手に入れれなかった。
「心配するな」
近くにあったナプキンで、ハザードの手を拭いた。
「熱くはなかったか?大丈夫か?」
「大丈夫でございます」
私の声に落ち着いたようで、ナプキンを取り自分で拭いた。
良かった。
「シャーリーの身の回りの全てをこちらで用意する方が都合がいい。こう言っては何だが、あの程度の家の品物を身につけてもらっては、恥ずかしいからな」
「それが宜しいですね」
ハザードは何度も深呼吸し、いつもと同じ、綺麗に背筋を伸ばした。
完全に冷静を取り戻したようだ。
「シャーリーが来てから直ぐに調べたが、あの家と関わることは無さそうだし、私の事も本当に知らないようだ。つまり、その程度だ」
「それなら、安心です」
コーヒーカップを持ち上げると、今回は零れたコーヒーを拭いてくれた。
「シャーリーがいたいだけここにいればいい。私も、都合がいい」
「そうでしょうね。御友人達が、ご主人様の為に色々な女性を紹介して来ますものね」
ハザードの声に、少し皮肉が混じっている。
「余計なお世話だ。私は今のまま悠々自適の生活でいいんだ。跡取りもいるのだから」
「養子、ですがね」
棘があるな。
ハザードは養子という立場を、どこか気にしている節がある。それは、ノーセットの将来を案じているのだろう。
「それで、シャーリー様のダンスの手ほどきはどうされるのですか?」
話題を変えたな、と気づく。ハザードはいつもこうだ。言いたいことは言うが、それ以上は追求しない。
「勿論、サーヴァントに誰か紹介してもらう。これから少し話をする予定になっているから、王宮に向かう。お互い色々相談する事があるからな。騎士達の指導についても話をしなければならん」
「あら、やっと引き受ける気になったのですか?」
意外そうに驚いた。
いや、驚いたふりをしている。ハザードは既に気づいているはずだ。私が心変わりした理由を。
「・・・ノーセットのこれからもあるからな。地盤を固めるには仕方ないだろう」
渋々答えると、くすくすと可笑しそうに笑いだした。
「お二人にカッコイイ所でも見せたいと、年甲斐もなく思ったのでしょう?」
やはり、見抜いていたか。
「・・・君にはすべてお見通しか」
ふうとため息をつき、苦笑いが出る。
同じ歳で、この屋敷で40年以上ももいれば私の全てを知っている。
そう、全てを、だ。
隠し事など、できはしない。
「あの二人はキラキラしてますものね。影響を受けて気持ちが若返るのは、良い事です」
そこで、言葉を切ると、少し戸惑ったような、それでいて、覚悟を決めたような顔をした。
ハザードの表情が変わった。真剣な目だ。
「忙しくなりますね」
ハザードが、昔、戦場に行く前日に言った、同じ言葉、同じ笑みを浮かべた。
あの時と同じだ。
覚悟を決めた顔だ。
「いや、君がいる。何も変わりはしない」
あの時と、同じ言葉が、自然に出た。
目と目が合い、また、あの時と同じようにハザードは仕方なさそうに笑った。
「では、馬車の準備をして参ります」
「宜しく頼む。それから、君の方で少し探ってもらえるか?」
一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに表情を引き締め、懐かしい黒い微笑みを見せた。
あの鋭い眼光。
「分かりました。では、失礼致します」
ハザードは一礼し出ていった。
その背中を見送りながら、頼もしく思う。
懐かしい、そして、二度と起こしてはならない戦争の記憶が脳裏に浮かぶ。
私は若く、腕が立った。
武将と呼ばれ、軍勢を統率し、襲いかかる敵を薙ぎ倒していた。
血と泥にまみれた日々。
仲間の死。
勝利の歓喜と、失った者への悲しみ。
だが、もう遠い昔話なのに、その時の戦友であったサーヴァントが、王宮の騎士達の師として指導を頼みたいと、前々から懇願していた。
だが、師となれば否応無く戦を思い出す。私としては、二度と思い出したくない、いや、消し去りたい過去だった。
それなのに。
あの二人を見ていると、穏やかな気持ちで、若き者達に指導するのも私の役目かもしれん、と思えた。
不思議なものだ。
残ったコーヒーを飲んだ。
冷めて不味かった。
これも、温かい方が、美味しい、という事だな。
シャーリーの言葉を思い出し、口元が緩む。
不思議な子だ。奇想天外な現れ方をしたかと思えば、たった一日で屋敷の皆から受け入れられた。
オドオドしているが、幸か不幸か家族に邪険に扱われていた分、人を嫌な気分にさせない雰囲気と物腰が備わっている。
母君の育て方も良かったのだろう。
気品は失われず、瞳に宿る煌めきは芯の強さを秘めている。
そして、あの料理の腕。
ただの令嬢ではない。
何か、秘めたものがある。
なかなか面白いものをくれたな、サヴォワ伯爵。
意図せず、だろうがな。
そして、ハザードにまた頼る形となった。
だが、ハザードは嫌な顔一つせず、引き受けてくれた。
本来ならこのような事をするべき人間ではない、とわかっているのに、彼女は天性かのように動いてくれる。
いや、
生きる為にもがいた結果なのかもしれない。
「さて、着替えるか」
あのころのギスギスした気持ちではなく、楽しさに血が湧き上がった。
久しぶりに、生きている実感がする。
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