何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫

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第21話街へ2

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「ノーセット?」
ふいに至福の時間を現実に戻すような冷静な声が聞こえた。
「んっぐ・・・、カルヴァン様ではありませんか」
ノーセットが口に入っていたのを無理やり飲み込み、私の肩越しに誰かを見ながら名を呼ぶ。
カルヴァン様?
振り向くと、無表情な顔の美しい青年が立っていた。
誰?
でも、一目で分かる。
この人は、格が違う。
年齢は私と同じくらいか少し上、という感じの雰囲気だ。
紺碧の髪が、陽の光に深く輝き、短く整えられていて、きちんとしている。
端正な顔。
高い鼻筋。
切れ長の目。
そして銀色の、まるで、月光のような瞳の色。
冷たく、美しく、神秘的だ。
その瞳が、こちらを見つめていた。
美少年、という言葉がぴったり。
でも、華奢ではない。
肩幅が、しっかりしていて体つきで、引き締まった体。
きっと、剣の訓練をしているんだろう。
貴族の男性なら、当然のことだ。
服も、質素に見えるが、生地が違う。
仕立てが違う。
一目で分かる、高級品だ。
そして、その後ろに立つお付きの人。
その目が、鋭い。
まるで、鷹のような眼差しで、周囲を常に警戒している。
ただの護衛じゃない。
相当な腕を持っている人だ。
ちらりと私を見ると、カルヴァン様が会釈した。
「初めまして、カルヴァンと申します」
名前、だけか。つまり、お前のような怪しい奴には、家名も爵位も教えません、という事だ。
にっこりと微笑み、立ち上がる。
それで結構です。私も、根掘り葉掘り聞かれて困るもの。
「シャーリーと申します」
裾を軽く持ち、微笑んだ。
「カルヴァン様、シャーリーは御義父様の知り合いの少し変わった伯爵令嬢なんです」
ノーセットが、もぐもぐと食べながら説明した。
もぐもぐと食べながらなんて、失礼だが、頬を赤らめ美味しそうに食べる姿は憎めない。
が、その言葉で、カルヴァン様の目つきが変わった。
銀の瞳が、鋭くなる。
「・・・ウィンザー子爵様の?」
様、と呼ぶのね。つまり、この方にとって、キャウリー様は目上の方というわけか。
「はい。キャウリー様の屋敷に今ご厄介になっています」
キャウリー様と呼んだのに、目尻が上がった。
まるで、試すような目。
ふうと、表に出さず息をついた。キャウリー様って結局何なのだろう。この方は、明らかに質の違う貴族だ。来ている服も、質素を装っているが、元の生地から違うし、立ち居振る舞いも気品がある。何より、お付きの者の雰囲気の射抜くような眼差しが、それ相応の修羅場をくぐり抜けてきた証拠。そんな人を側に置くということは、この人がそれだけ大事なのだ。
私の周りにいなかった、上級貴族だ。
自分の観察力に、少し嫌気が差す時がある。お姉様やお父様に叱られないように、細心の注意と配慮と、人間分析が癖になっていた。
結局はいつも叱られるのだが、それでも、昔よりは減った。
関わりたくないな、と素直に思い、ノーセットを見ると、カルヴァン様を尊敬するかのように見上げていた。
「そうか。君が、か。少し御祖父様から話を聞いている」
御祖父様?
ということは、カルヴァン様の祖父が、キャウリー様?
いや、違う。
キャウリー様に子供はいないはず。
ということは、別の誰か。
キャウリー様の知り合いの、高位の貴族か。
「・・・はい」
何を聞いているか知らないが、いい話てはないな。
私が、お父様の借金のかたで来ている、という話だろう。
「ところで、その菓子は? ノーセットがとても美味しそうに食べているが」
カルヴァン様の銀の瞳が、揚げ餅に向いた。
「シャーリーが教えてくれた、揚げ餅というものです。すごく美味しいですよ。如何ですか?」
ノーセットが、自分の串を差し出した。
「ノーセット、自分が食べている物をそのまま勧めるのは失礼よ。それに、カルヴァン様は偶然お会いしただけですもの、ご用事があるのでしょう?邪魔しては申し訳ないわ」
カルヴァン様を見る。こう言えば、相手も変に気を使うことなく、その場を去れる。実際お付きの人は安心した顔になり、さあ、と声をかけていた。
さっさと去っていって欲しい。
「・・・上手く言うね。それ、俺も食べたいから、どうしたらいい?」
あからさまにお付きの方の、顔が曇った。
「カルヴァン様、如何わしいものを口に入れてはなりません」
その通りです。
「シャーリー嬢、気にするな。俺は食べたいんだ。どうしたらいい?」
嬢、ととりあえずは呼んでくれるのね。
カルヴァン様の銀の瞳が、真剣で、本当に、食べたいみたい。
「・・・では、私が買ってきます」
下手に断って食い下がられても面倒だし、それなら、買って渡してさようなら、がいい。
ただ、こんな怪しいもの食べさせて、と逆鱗にでも触れたら、キャウリー様に迷惑がかかる、というのが心配だ。
私は、また揚げ餅の屋台に向かった。
「待て、シャーリー嬢。俺も行く」
「え? いえ、お待ちになっていてください」
「いや、行く。どうやって買うのか見たい」
カルヴァン様が、ついてきた。
お付きの方が、慌てて後を追う。
「二つください」
屋台の前で言うと、カルヴァン様が聞いてきた。
「二つ?」
「カルヴァン様のお付きの分です。毒味が必要でしょう?」
「ああ、そういうことか。気が利くな、シャーリー嬢」
「それは、なんだ?」
私がお金を渡していると、また聞いてきた。
「ありがとう。さ、行きましょう」
おばさんから揚げ餅を受け取って、店を離れる。
「お金です。物を買う時には必要なんです」
少し店を離れてから説明した。店の前で答えたら、貴族だとすぐ分かってしまう。後をつけられ人攫いに連れていかれるだろう。まあ、そのために強そうな護衛を連れているんだろうから、心配いらないんだろうけど、ここで騒ぎを起こされたら面倒くさい。
「そんなもの渡したことがない」
カルヴァン様が、不思議そうに言った。
当然だろう。
上級貴族が、自分では買い物なんてしない。
「それは、お付きの方が渡しているのです。もしくは屋敷の方に請求が来ます」
「では何故シャーリー嬢は自分で払ったんだ? あの男が払えばいいだろう。あの男は二人の護衛だろう?それに何故あの男はついてこない」
なんだこの人は、面倒な人だな。
「先程の紹介で少し変わった令嬢だとノーセットが説明した通りです。自分で払いたいし、あの護衛は二人ではなく、ノーセットの護衛です」
「変わっている、か。確かに変わっているな」
カルヴァン様が、くすりと笑った。
その笑顔が、少し優しい。
「変わっていることは、悪いことではないぞ、シャーリー嬢」
「・・・はぁ」
何を言っているんだろう、この人は。
ベンチに戻ると、ノーセットとバインが待っていた。
「さ。どうぞ」
カルヴァン様には椅子に座るように促し、二つとも揚げ餅をお付きの人に渡した。あとは、そっちで判断して食べてください。
「ノーセット、そろそろ行きましょうか。お邪魔になるしね」
「はい」
「待て」
カルヴァン様の声が、響いた。
「・・・なんでしょうか・・・、カルヴァン様」
なぜ呼び止めるの? 揚げ餅をお付きの方から貰って、蓋を開けたのでしょう? だったら、食べる事に集中してください。
「どうやって食べる」
「・・・は?」
いや、一緒に竹串が入ってるの見えてますよね? そんな、真面目な顔で、そんな基本的な事を質問しないでください。
けれど、カルヴァン様の顔が、本当に真剣だ。
銀の瞳が、私を真っ直ぐ見つめている。
眉一つ動かさず。
「お付きの方に教えてもらえば宜しいかと思いますよ」
絶対この人面倒な人だ。早く去りたい。
「カルヴァン様、私が」
「いや、シャーリー嬢に聞いているんだ」
だから、そんな速攻でお付きの方を断り、そんな真面目に言わないでください。
「シャーリー教えてあげたら。冷めたら固くなるんでしょ?」
ノーセットが、無邪気に言った。
うっ・・・。
さすが子供だ、優しい心で空気が読めない。現に、バインはあーあ、という顔になっているもの。
「隣に来いよ、シャーリー嬢。教えてくれ」
カルヴァン様が、自分の隣を軽く叩いた。
はぁ……。
「・・・分かりました」
座っているのに上から目線の言い方に、ムッときたが、渋々、勿論顔には出さず微笑みながら、隣に座り串を抜いた。
近い。
カルヴァン様との距離が、近い。
紺碧の髪が、すぐそこにある。
銀の瞳が、私を見ている。
「シャーリー嬢の分は?」
「もう、食べました。これでこの串を」
「では、もう一つ買ってくればいい。俺が払おう」
「いえ、そんな幾つも食べられません。それで、この串を揚げ餅ちに刺して」
「シャーリー嬢は、あまり食べないのか? もっと食べた方がいい」
「ですから同じ物ばかり食べるものではありません。ホラ、こうやって串に揚げ餅を刺したら」
「では、」
「ちょっと黙ってもらえない。冷めたら固くなるから先に食べて。はいこれ!」
串をぐい、と顔の前に差し出した。いちいちうるさい人だな。
「・・・分かった」
カルヴァン様が、少し驚いた顔をした。
銀の瞳が、わずかに見開かれる。
多分、こんな風に言われたことがないんだろうけど
本気で鬱陶しい。
「シャーリー嬢は、面白いな」
串を受け取ると、食べ始めた。
一口。
カルヴァン様の銀の瞳が、大きく見開かれる。
「うまい」
顔がほころび、食べ方が分かったようで次々と自分で食べてくれた。
その顔が、子供みたいだ。
無邪気で、幸せそう。
さっきまでの無表情が嘘みたい。
銀の瞳が、キラキラと輝いている。
ちなみにお付きの方はとっくに食べ終わっている。
「初めて食べた。こんなものがあるんだな」
カルヴァン様が、満足そうに言った。
それはそうでしょう、こんな庶民の食べ物自体を知るはずないし、知る機会も本当ならないはずだ。
「シャーリーは色々知ってるんだよ」
得意気なノーセットに、カルヴァン様は微笑んだ。
その笑顔が、優しい。
さっきまでとは、別人みたい。
紺碧の髪が、風に揺れ、銀の瞳が、柔らかく細められる。
「シャーリー嬢、他にも美味いものを知っているのか?」
カルヴァン様が、私を見た。
「え? ええ、まあ・・・」
「それは良いことを聞いた」
カルヴァン様が、嬉しそうに笑ったが嫌な予感しかししません。
「では、私達はこれで失礼致します。カルヴァン様も御用事があるかと思いますので。行きましょう、ノーセット」
立ち上がり、ノーセットに声をかけた。
「いや、何も無い。俺もついて行こう」
カルヴァン様が、立ち上がった。
だから、この人も、空気を読んでよ。何で普通に立ち上がるの?
「あのですね、はっきり言わせて頂きますが、たとえキャウリー様の屋敷にご厄介になっている身の上とはいえ、先程、カルヴァン様とは出会ったばかりの、素性も知らない怪しい女です。そんな女とご一緒するとは、貴族なら有り得ませんよね。もし何かあっては、とお付きの方も不安ですよね!」
そうですよね、とお付きの方を見る。
「その通りです。カルヴァン様、一度屋敷に帰りこの方の素性を調べてからでないとなりません」
お付きの方が、真剣な顔で言った。
そうです。
「では、また次回お会いする事があれば、その時に」
失礼致します、と会釈した。
「いや、俺もついて行く」
カルヴァン様が、きっぱりと言った。
銀の瞳が、真っ直ぐ私を見つめている。
だから、なんでよ!?
「別にいいんじゃない? 皆で食べたら美味しんだよね、シャーリー。それに、まだいっぱい美味しいのあるんだよね?」
ノーセットが、無邪気に言った。
「まだ、美味いものがあるのか?」
カルヴァン様の銀の瞳が、キラキラと輝いた。
「シャーリー嬢、教えてくれ」
何このふたり・・・。餌を上げた犬かのように、とても。目がキラキラしてる・・・。
カルヴァン様まで、子供みたいな顔をしている。
さっきまでの気品のある顔は、どこへ行った。
銀の瞳が、期待に満ちている。
何故だか負けた気分になる顔だった。
「もう・・・。とりあえず歩きましょうか」
「うん!」
ノーセットが、元気に答えた。
「では、行こうか、シャーリー嬢」
カルヴァン様が、嬉しそうに言った。
紺碧の髪が、陽の光に揺れる。
「・・・はぁ・・・」
バインが諦るしかありませんよ、と仕方なさそうに首を振るのが見えた。
結局諦めて、皆で街を歩くことになった。
本当は、服とか、靴とか見たかった。キャウリー様に作ってもらった服は、仕立てが良すぎて勿体ない。もっと簡素で安いのでいいから、それを街で見ようと思ったのに・・・。
「シャーリー嬢、次は何を食べる?」
カルヴァン様が、隣を歩きながら聞いてきた。
「 そうですね、生搾りの果汁は如何でしょうか」
「生搾りの果汁?」
「はい。果物を絞った、甘い飲み物です」
「それは美味いのか?」
「とても美味しいですよ」
「では、それを」
カルヴァン様が、嬉しそうに頷いた。
それから、生搾り果汁の飲み物を飲んだ。
オレンジの果汁。
甘くて、爽やかで、美味しい。
カルヴァン様は、初めて飲んだらしくまた、驚いていた。
「これは・・・うまい! こんなに甘いのか!」
「美味しいでしょう?」
「ああ、美味い。シャーリー嬢、よく知っていたな」
カルヴァン様が、感心したように言った。
「シャーリー嬢、他には?」
「他、ですか?」
「ああ、他にも美味いものがあるだろう?」
カルヴァン様の銀の瞳が、期待に満ちている。
「では、揚げ菓子は如何でしょうか。帰ってからのおやつにもなりますしね」
「揚げ菓子?」
「はい。中に餡子が入っている、甘い菓子です」
「それも食べたい」
カルヴァン様が、即答した。
そして、揚げ菓子を買った。
中に餡子が入っている。
外はサクサク、中はしっとり。
これも、カルヴァン様は初めてらしく、とても喜んでいた。
「シャーリー嬢、これも美味い!」
「良かったですね」
「シャーリー嬢は、本当に色々知っているんだな」
カルヴァン様が、嬉しそうに言った。
「この街は、初めてなのですが」
「そうなのか? でも、よく知っている」
「露天の食べ物は、大体どこも似たようなものですから」
「そうか。シャーリー嬢は、よく露天で食べるのか?」
「ええ、まあ」
「それは・・・」
カルヴァン様が、何か言いかけて止めた。
銀の瞳が、少し曇る。
何か、気になることがあるらしい。
カルヴァン様はとても、満足されたようで、最後の頃は、私を呼び捨てにしていた。
「シャーリー、次はあれを食べてみたい」
紺碧の髪を揺らして、銀の瞳を輝かせながら、カルヴァン様は少年のように笑った。
「カルヴァン様、もう・・・」
「シャーリーでいいだろう? 俺もカルヴァンでいい」
「それは、失礼に当たります」
「気にするな。シャーリーは面白い。もっと色々教えてくれ」
カルヴァン様が、嬉しそうに笑った。
その笑顔が、本当に無邪気で。
どうしよう……困ったな、この人。
本当に面倒くさいよぉ。
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