何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫

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第52話オーリュゥン様と街へ3

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「お嬢さん。一緒にお祭りを楽しまない?」
1人が笑いながら聞いてきた。
見る限り、庶民ではなさそうだ。背筋が伸び、服も質のいい生地を着ていて、発音からきちんと教育された物言いだ。
貴族、だ。
「そんなに怯えなくても大丈夫。誰と来たの?」
にこやかに優しい言葉で1歩近づいてくる。
「・・・あの、連れがいるので・・・」
嘘ではないし、怖いわけでは無い。
それよりも、コロッケが冷める方が怖い!
早く2人の所へ行きたい。
「家族でしょ?少し話そうよ」
また、1歩近づいてくる。
「その……話すことは、ありません」
1歩、下がる。
「じゃあそれを食べたら少し歩かないか?そうしたら、会話が思いつくかもしれないぜ」
思いつきません。
つまんないこと言う人だな。
どうしよう……。
そう思った、その時だった。
ふたりの肩越し、視界の奥に、見覚えのある姿が映る。
あれ?
2人の間から見えるのは……。
「・・・あ、あの・・・、そこに・・・、連れが・・・」
ガン!!
ガン!!
私の言葉が綺麗にかき消され、思いっきり頭を叩かれた音が響いた。
「お前ら何やってる!!休日にいつもこんな事をやってるのか!?それも、その女性に気安く声をかけるな!!」
「わっ!!イエーガー様!!」
「な、なんで!?」
2人のおののきに、ああ、騎士団の方か、と思った。
だから体つきががっちりしてるし、発音がいいのか。
「え!?じゃあイエーガー様の婚約者とかですか!?」
違います。
「いつの間にそんな人が出てきたんですか!?」
いや、出来てません。
オーリュゥン様に失礼です。
「・・・そんな恐ろしい事口が裂けても言えんわ。そこにいる方は・・・ウィンザー様のご息女だ」
「え!?」
「まじですか!?」
2人が驚き、ずさっ、と後ろへ下がった。
あからさまにそんな怖がられると、どうしていいのか分からないが、御義父様が尊敬されている、と言うのは3人の瞳を見て理解出来たから、嬉しかった。
「はい。シャーリー・ウィンザーと申します。では、お邪魔のようなので、失礼します」
早く逃げよう。コロッケが冷めたら美味しくなくなるし、ノーセットが一人になってるから、席がなくなってないか心配だ。
軽く微笑み会釈し、その場を去った。
知らない人と喋るのは苦手だし、それよりも冷めちゃう!!
「ちょっ、シャーリー!!」
オーリュゥン様の慌てた声が聞こえ、私についてきた。
「お話はよろしいのですか?」
「・・・話なんかある訳ないだろ。シャーリーが絡まれていたから助けに行ったら、あいつらだったんだ」
「そうなんですね、ありがとうございます。ノーセットお待たせ」
1人残されてやっぱり不安だったようで、キョロキョロとしていた。
「ごめんね。さあ、食べよう」
座り、袋を広げる。
「色々ある!!」
「・・・シャーリー、食い気か・・・?もう少し・・・立場とか・・・自分の容貌とかを・・」
「あのね、これが普通のじゃがいもで、これが牛肉で、これがコーンで、これがかぼちゃで、これがカレーで、これがクリーム。全部食べられるように半分に切ってもらったよ。ね、ノーセット、オーリュゥン様」
ん?何故だろう?
オーリュゥン様が渋い顔して、諦めのようにため息をつきながら座った。
ん?
それも、先程のふたりが何故だか直立不動で、近くに立っている。
良く分からなかったが、とりあえずコロッケです。
では、いただきます。
まずは、定番のコロッケから。
ぱくり。
……うん!
外はサクサク、中はほくほく。
じゃがいもの優しい甘さが、口の中でふわっと広がる。
シンプルだけど、これがいいんだよね。
じゃがいもの味がしっかりしてて、塩加減も絶妙。
噛むたびに、じゃがいもの甘みが増していく。
次は、お肉コロッケ。
ぱくり。
おお!
お肉の旨みが、じゅわっと広がった!
玉ねぎの甘さとお肉の旨味が混ざり合って、口の中が幸せでいっぱい。
これ、お肉たっぷり入ってる。
ちょっと贅沢な感じ。
そして、コーンコロッケ。
ぱくり。
うーん……。
やっぱりコーンは季節がズレてるから、正直美味しくなかった。
甘みが足りず、粒が固くて、少し残念な味だった。
でも、かぼちゃコロッケは期待通り!!
ぱくり。
んん!!
香りもいいし、何よりも、厳選され熟したかぼちゃを使用してるみたいで、かぼちゃ本来の甘みが、じゅわあああ、と広がった。
もちろん、かぼちゃのホクホク感は残ってる。
それも、大ぶりに切って蒸しているみたいで形も皮も残っていて、食感も楽しめる。
ねっとりとした濃厚な甘さが、舌に絡みつく。
これ、最高!
そして、クリームコロッケ。
ぱくり。
あっつ!
でも、美味しい!!
びっくりするくらいトロトロで、クリーミーで美味しかった。
生クリームの味もして、これ、露店か!?と思うくらいだった。
ベシャメルソースが、とろーり、口の中で溶けていく。
濃厚だけど、しつこくない。
衣のサクサクと、中のトロトロの対比が最高。
最後は、カレーコロッケ。
ぱくり。
おお、スパイシー!
カレーの香りが、ふわっと鼻に抜ける。
ピリッとした辛さと、じゃがいもの甘さが絶妙なバランス。
これも、お店の個性が出てて美味しい。
幸せ・・・。
「お前ら帰れ。いいか、今回ウィンザー様に許しを頂き私はここにいるんだ。許しを得ず勝手にご息女であるシャーリーに近付くということは、ウィンザー様に楯突くという事になるんだ。いや、別にそれで、構わん、と言うなら、私も止めん」
「帰ります!」
「お邪魔しました!」
それはそうでしょ。そう答えるでしょ。オーリュゥン様の捲し立てる言葉の内容もそうだが、顔が怖いもの。
2人は一目散に去っていった。
「あの、ついでにオーリュゥン様も帰らないのですか?」
「何故私が帰る!」
ええ、そんな睨まれても・・・。何故って、帰って欲しいからに決まってるじゃないですか。
「シャーリー、僕喉渇いた」
口をナプキンで拭きながらノーセットが言った。
睨んでくるオーリュゥン様から逃げるように立ち上がった。
「果汁とか果物見てみようか。ないのだったら、喫茶店に行ってもいいしね。私喫茶店に行くの久しぶりだから」
「・・・そうなのか・・・?」
ああ、またその顔ですか。
憐れむような、寂しい顔で、カルヴァン様と同じ顔でオーリュゥン様が私を見る。
「この街の喫茶店に行った事がないのです。前に住んでいた街では行ったことありますよ」
嘘ではないが、嘘でもある。
変に心配をこの方たちにかけたくない。
「あ、ああそうか」
明らかにほっとした感じが、この人も悪い人ではないな、と思った。
「僕、露店がいいな。喫茶店はいつでも行けるけど、今日はお祭りなんでしょ?」
ワクワクと目を輝かせるノーセットにオーリュゥン様も楽しそうな顔になった。
「私も賛成だ。見回りで街を見ることがあったが、こんな露店で何か食べる事なんかなかったからな」
「じゃあ行きましょう」
これ以上の説明はしない方がいい。貴族で産まれた時点で、庶民とは違う。それは、住む場所だけではなく、食べる物も違う。
自分で知るのが1番だろう。
お祭りだ!
というのを感じたのは移動サーカスの大きなテントを見て実感した。
ただ残念ながら、チケットは全て完売だった。
ちぇっ。見たかったなあ。
「主催者に私の名前を言えば通してくれる。待ってろ」
へっ!?
「オーリュゥン様、ここは御義父様の領地ですので、僕が言った方がいいのでは?」
はっ!?
「そうだな、では」
「ま、待って!!!!」
何がそうだな、ですか!?
それも、何故私が止める事にふたりは疑問を持ってるの!?
無理やり権力を使い、入ろうとする2人をなだめ、急いでそこを離れた。
「なんだよ、見たかったんだろ?こんな事大した事ではない」
「そうだよ。シャーリー、凄く見たそうだよ」
「いや、そうだけど、そうじゃない!あ、あのね、カルヴァン様を誘って皆で、そう、皆で来ましょう?また、狡いとか言われたら困るから。ね、そうしましょうよ」
「そっかあ、そうだね」
「それは一理あるな。そこまで考えていなかった。急に決めるのは卑怯だな。さすがシャーリーは周りを見てるな」
いや、そこではないけど、良かった、納得してくれて。
その後はまたウロウロしながら、露店を楽しんだ。お土産は、この間買った焼き菓子の中身の種類が増えていたので、色んな味を買いました。
それと、新鮮な魚も売っていたので、生秋刀魚を買った。
今日のつまみは、秋刀魚を焼いてあげよう。
御義父様、待っててね♪
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