プライベート・スペクタル

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第二話 第四章

第七節

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ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪
TAP♪TAP♪TAP♪TAP♪
ビートを刻むアトラス。
ブレイクダンスを思わせるような荒々しくパワフルながらもどこか惹かれる振り付けの踊りである。
危機を直感で感じ、大和は距離を取る。
「ダイヤこいつは…」
「奴の【演目】『巨神』の本領…ここからが本番ってやつだ呉成。出来る限り長引かせずに終わらせるぜ!」
「おうさ!」
説明の時間も惜しいという事を理解し、戦闘を再開した大和。
先程と同じくダイヤの投擲から始める。
大和も投擲とは別方向から接近し蹴りを叩き込もうとする。
だがダイヤの鎚も大和の脚も盛り上がった土の壁により容易く防がれた。
「おらっッシャアア!!」

【演目】『龍桜 誅魔豪拳 春雷』

【演目】を演る大和。壁ごと中のアトラスをぶち抜こうと拳を叩き込む。
だが、大和の拳はそのどちらも抜くことが無く土の壁に止められた。
「…マジかよッ!」
驚愕する大和。不完全とはいえ復活した『旧支配者』の肉体を穿った異次元の威力の拳。
怒りという感情の大波がやって来た時よりも感情の爆発が少なく威力は前回と下がっているとは思っていたが、それでも止められるなんて思わなかった。
(いやコイツ、押し寄せる波や折り重なる地層みてぇに壁を幾重にも出しやがったのか…幾つかぶち抜かれても問題ないように…)
抜けなかった自分へのみっともない言い訳だと断じつつ感触からそう分析した大和。
アトラスの腕の動きに連動するかのように生み出された土の棘を躱しつつ距離を取る。
「さあ…やろう……」

【演目】『巨神 響鳴の宴』

言葉と共に【演目】へと入るアトラス。踊りは本格化しブレイクダンスの技であるウインドミルのような両腕を軸とした足を振り回す振り付けを行う。
するとアトラスを中心に周囲の地面が奇妙な変化を見せる。
なんとアトラスの動きに合わせ大地が波立ち始めたのである。
ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪ZUN♪TAN♪
まるで流動する海の様に動く大地。動きに合の手を入れ踊っている様である。
「踊れ…踊れ……」
徐々に伝播していく大地の揺らぎ、言葉と共に大和の足元が大波の様にうねる。
巻き込まれた大和の視界は一瞬で天地が反転した。
「うわっとォ!?」
大地に吞まれかけたので、吞まれまいと即座にその場から動いた大和。
だが、動いた先でも同じように大地が揺れる。
今度は巨大なトラバサミの形状に変わり大和に襲い掛かる。
大和は即座に蹴り砕いた。
次は突き立てられそうな程に大量の土の槍。更には連弩のように放たれる無数の土の矢と次々と大和を襲った。
「動き続けろよ呉成。奴が『巨神』を演った以上、今立っている場所も含め地面は全て敵になると思え」
「ああッ、しかしやり難いなぁコイツは!」
絶え間なく変化し続ける大地に思わずイラつく大和。ダイヤと連携しながら迫りくる攻撃に対応する。
「なぁダイヤ!この状況を打破できるウルトラCは何かねぇかい!?」
「ヘヘッ、あるにはある!…が、タイミングが重要でなおいそれ連発は出来ねぇ!」
「そうかい。だったら俺の方からだな!」

【演目】『龍桜 桜花 花舞』

【演目】を演る大和。倒れ込むような姿勢で地面と接地を下げ、重心を徐々に真横に変えていく。
更には身体操作により弛緩を高め全身を極限まで脱力する。
それにより落ちるような高速で舞う花びらのように攻撃を躱しながらアトラスへと近づいた。
「…ッ!?」
「オラァ!?」
思わず驚愕の表情を見せるアトラス。重心を元に戻し脱力を解いた大和は打撃を叩き込む。
0から100の理想のインパクトにより痺れる大気。だがアトラスは間一髪で作り上げた土の壁で防がれる。
「チィッ!」
思わず舌打ちする大和。反撃の棘に思わず距離を取る。
「決めるか…」
踊りつつそう呟くアトラス。【演目】へと入る。

【演目】『巨神 祝餐の顎』

『巨神』を演ったアトラス。瞬間、足元への奇妙な感覚が大和達を襲う。
その感覚は喪失感。
何と踊るアトラスの周囲数メートルを除き全ての地面が陥没したのである。
「うッ、うぉおおオオッ!!?」
距離として目測100メートル程度。前述したアトラスの周囲を中心に円形状の形。
出来上がった穴の深さは十数メートル。ご丁寧に怪物の犬歯のような歪な形状をした突起が底部に満遍なく敷き詰められていた。
「やべェ!!?」
落ちかけたが咄嗟の対応で同じように落ちる瓦礫を足場に何とか穴外まで復帰出来た大和。
だが、同じく落ちていたダイヤは瓦礫が存在しない部分にいたこともありそのまま落ち続けた。
「ダイヤ!?」
「……惜しかったが、まずは一つ」
底部に到達するダイヤを見てそう呟いたアトラス。あとわずかでダイヤの肉体は突起群に貫かれるであろう。
その時、ゴィンと奇妙な音と火花がダイヤの元から鳴り響く。
次の瞬間…。
「……ぐがッ!!?」
底部の歪な突起が肉体を刺し貫く音。
だが、刺し貫かれたのはその場所に居たダイヤではなくアトラスであった。
「へへッ…」
そしてその代わりに先程までアトラスの位置に居たのはダイヤ。
何と貫かれるはずのダイヤの位置とアトラスの位置が丸々入れ替わっていたのであった。
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