プライベート・スペクタル

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第三話 第三章

第一節

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「はぁはぁはぁ……勝った……」
影達を退かせ、ボロボロの戦闘不能状態になったフッドが倒れているのを見てようやくその実感が湧くエイプリル。
と同時に肉体の限界と緊張の糸が切れたのが同時に訪れたのか…ふらりとその場に倒れそうになる。
だがその直前、三笠が抱き留めた。
「大一番お疲れさまエイプリルちゃん」
「…うぃ、お婆様……」
優しく身体を支え労いの声をかけてくれた三笠。エイプリルも何とか応じる。
その後、エイプリルが倒れないように観戦していた場所に休ませた。
「エイプリルちゃん。初の実戦での【演目】上手く出来て良かったわぁ、婆ちゃんドキドキしていたわ」
「お婆様の教えの賜物ですよ……ただフッドあのひとにも言われた通りもう少し早く演じれる事が必要でしたね…」
「ストイックねぇ、でもそれはエイプリルちゃんの良い所よぉ……無理せず精進しなさいな」
「うぃ」
「それにしても少し籠っていると取り残されるわねぇ……こんなレベルの【】がいるなんて……更にはこの子を無理にでも従わせる【星】もいるんでしょ?婆ちゃん。ちょっと会ってみたくなったわ」

『それ程お望みですか……ではその要望声のみですが聞き入れましょう』

突如ふと聞こえたトワの声。何処からともなくまるで脳内に響く様に聞こえる。
辺りを見回しても姿は見えず、何らかの手段を利用してエイプリル達に音声を飛ばしているのだろう。
「…御法川・トワ…………」
『世界で最も重要である私の命令すら無視して先行した役立たずの僕を追っていた所。まさかこのような光景が見れるとは……』
「あら?この声が敵の大玉ちゃん?」
『ええそうなりますね御尊老。御法川・トワと申します』
「あら丁寧な呼び方。そこまで畏まらなくても良いんじゃあない?私もこの子達に加担している言わば敵でしょ?」
笑みを浮かべつつそう返す三笠。トワは何も返さずに話を戻した。
『しかし…僕の処分をと思っていましたが、まさか敗れるとは思いもよりませんでした…それも『龍王』や『鬼神』ではなく若手…それも10日前に完封した【星】相手に…』
そこでトワはエイプリルに話しかける。
『エイプリルという名でしたか…まさか10日の猶予で役立たずとはいえ僕を一名斃すとは……貴方、『龍王』なんかの下につかずに私に仕えませんか?』
「お断りします。私は師匠達の事が大好きなんです…それに仲間を僕扱いする方の元では働けません」
『おやそうですか……ではこの話は無かったことに…』
きっぱりと拒否したエイプリル。だがトワは予想していたのか大して執着せず続ける。
『ですが、一つだけいただけませんねエイプリルさん…そんな目の前の役立たずを何もせずに放置とは……』
「ッツ!!?」
突如身体が宙に浮き上がったフッド。逃れようと身じろぎをするが動くことが出来ない。
「まッ!?待ってくれトワ!!?俺はまだッッ……」
『もう聞きたくも無いですよ。役立たずの言葉なんて……さようなら』
「ッツ!!?助けッ!!?」
全身が突如として風船のように膨れ始めたフッド。悲鳴すらも上げることが許されずゴムの様にありえない形に伸び始める。
そして…。
バァン!!
そのまま空気を入れ過ぎてしまったように弾け消えた。
まるでおもちゃの様に消えてしまったフッド。あまりの行為に動揺が走るエイプリルを他所にトワは事も無いように話を元に戻した。
『さて…少々予定が異なりましたが、期限の10日となりました。各国首脳からの賢明な回答もありませんでしたし、宣言通り武力行使といきましょう……コレから指定の時間、指定の地域に私の僕を送り込みます。そう貴方のお師匠様にも伝えてください。詳細は各国首脳ないし有力【星団】に送りますのでそのように……』
「ッツ!?…うぃ……」
『では、役立たずの処分も終えましたし……そろそろお暇致しましょうか、貴方がたの抵抗楽しみにしておりますよ』
そう言って会話を終えようとしたトワ。
そこに三笠が声をかける。
「トワさんだったかしら…」
『何でしょう御尊老。貴方も敵対側…参加したければ別に構いませんよ』
「いえいえ遠慮しておくわぁ、エイプリルちゃんを鍛えたけれど、そもそも私はすでに隠居の身よ、俗世に対してもあまり興味はないしね」
『そうですか、それは残念……』

「代わりにもっと適任がいるわよ…私ご自慢の愛弟子がね」
『呉成・大和ですか……フフフっ…』
「?」
『フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフっっ……』
突如笑い始めたトワ。エイプリルの成長を見れたので大和に若干の楽しみがあるのだろう。
自分が危機に陥ることは一切考慮しないような態度である。
『確かに忘れておりました。そうですね…ではそちらを楽しみに待ちましょうか…』
『それでは…』と言い残しトワは音声を切った。
気配がなくなったのを見て三笠はエイプリルへと向き直る。
「それじゃ、夜が明けたら迎えに行きましょうか…エイプリルちゃんのお師匠様を……」
「うぃ!」
三笠の言葉にエイプリルは頷いた。
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