プライベート・スペクタル

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第三話 第五章

第二節

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「着いたぞ兄弟。ここだ…」
「おぅ」
次の戦いの方針を決めてから直ぐ。
コチラの助っ人となるべき存在と会う為に大和は門司に連れられてとある【領域】にやって来ていた。
「しっかし、俺と門司の二人だけで行動するなんて本当に久々だな~…いつぶり?」
「忘れたな…同じ【銘付き】の晴菜がいるとはいえウチは人員が少ないからな…鉄面皮もあまり同じ局面に使いたくないんだろう……それに俺も消耗している晴菜を連れ出すのは忍びないと思ったからな…」
「…まあそりゃそうだ」
こういう時にはリアクション要員のエイプリルやミコを連れていくことが多い大和や門司だが、その名前が出ていない事に少し違和感を覚えつつも大和は指摘しないことにした。
「しっかし、変わった【領域】だよなぁ~」
話題を変えようと呟いた大和。
彼等が訪れた【領域】。そこはあまりにも特徴的であった。
天を覆うショッキングピンクの空とその下に広がる紫色の野原。生える様々な色の木々やキノコの間を流れるのは薄黄色の小川。そして架空の生物である妖精や珍妙な毛並みの一角馬ユニコーンが闊歩する。
まるでショッピングモールの一角にあるファンシーショップの様なデザインの【領域】であった。
「目が痛くなりそうな中々に度し難い【領域】だろう?全くこんな場所に引き籠っているから、頭が花畑になるんだ……」
辛辣な言葉を呟く門司。後半部分はこの【領域】の主に向かってのようであった。
しばらく【領域】の奥へと進む大和と門司。すると一つの建物が見えてくる。
巨大な木の切り株。それをくり貫き作り上げた様な、童話とかで出てきそうなメルヘンな見た目の家であった。
「あそこが目的地?」
「ああ…あそこだよ……」
溜息を吐きつつも頷く門司。内心では行きたくないのが見え見えの態度と表情である。
「おい」
とそこでかけられた声。大和達が声の方向を振り向くとそこにいたのは式典にも参加していた合衆国の【星】スミスであった。
「ようやく来たな『鬼神』それとお付きの『龍王』。待ちくたびれたぞ…」
「確か、海軍のお偉いさんと一緒にいた【星】だったよな?まさかお前がこの珍妙な【領域】の主なのか?」
「んなわけあるか馬鹿たれ…」
冷やかな表情で大和の言葉にスミスはそう返し続ける。
「俺はそこの『鬼神』の刀造りの為だけにここに居るだけだ…全く、久々にやりがいのある良い仕事だと思ったらこんなイカレた空間に缶詰にされるとは……もう少しいたら発狂するところだったぞ…」
「だろうな、俺も『社』よりもこっちだったら正直持つ気がしねぇもん」
「それは気の毒な事をさせたな……」
「まあ楽しめたのは事実だからな、チャラにしてやるさ……それじゃあ依頼主クライアントも来た事だし俺はさっさとこんな場所から退散させてもらうぜ…」
「あれ?アンタが門司の刀を持っているんじゃあねぇの?」
「俺の担当は刀身の鍛錬とか基本部分だけだ…その後に特別な仕上げを施すとかでコイツの刀はアイツが今、後生大事に持ってるよ…」
「そうか…」
スミスの言葉に軽くため息を吐いた門司。もしかしたらを望んでいたがそれが当然無かったようなそんな残念な態度である。
「それじゃあ、ご愁傷様…」
「ああ、手を貸してくれてありがとうスミス。今度また何か馳走させてくれ」
「それよりも面白い仕事の方が良いがな……まあ期待はしないでおく」
そう言ってスミスは【領域】の出入り口に向かって行った。
「ハァ…結局会う必要があるか…まあ、次の協力もする必要があるから会わないといけないのは確かなんだが…」
「この【領域】といい、スミスのあの態度やら、アレやらアイツやら…なんかとんでもない奴みたいだな…寧ろ気になって来たんだけれど……」
「やめとけ、そんなに期待度をあげるのは…兄弟も会えばすぐにわかる…」
そう言いつつ切り株の家に向かった大和と門司。出入り口の扉に手をかけた時門司が大和に念を押す。
「良いか?コレから会う生物とは変に分かり合おうなんて考えるなよ…人語に似た言語を発するだけの何か別の生物だと理解しておけ…協力を乞うが、あくまでそれだけの関係それに留めろ、変に関わると……」
ガチャ…。
「もんじきゅ~ん!待っていた!ワガハイはずっと待っていたよォ~~」
「こうなる」
扉を開けた瞬間、門司に飛び込んで来た小型の何か…。その何かに顔面を羽交い絞めにされながらも、門司は冷静な口調でそう続けた。

「門司きゅん!門司キュン!もんじきゅん!モンジキュン!!」
「…………………」
ハァハァ荒い息と共に身体を門司の顔面に必死に擦り付ける何か…。門司は無言で引き剥がすと投げ飛ばす。
ポニュやポニョと効果音を発しながら何かは地面を跳ね回った。
「いい加減にしろエルマ…会う度会う度、オーバーなリアクションしやがって……」
「門司コイツが?」
「ああ……御堂・エルマ。この【領域】の主にして俺の刀造りの協力者。そして次回の戦いにおける助っ人候補の女だ」
門司の言葉を聞きながら何か、エルマを見た大和。
腰どころか脚まで届く長い黒髪に面影から女性のようであるが、ゲームやアニメーションのSDキャラの様な二頭身。西洋人形が身につけそうなゴシックロリータファッションに身を包み首には神社の鐘のような大きな鈴のついた首輪がガロンガロンと動く度に音を鳴らす。
不思議なような幼稚なような、様々な【星】に出会ってきた大和でも何とも掴みきれない独特な雰囲気を纏った【星】であった。
「大丈夫だと思うが、ちんちくりんな身なりに油断はするなよ兄弟…」
「わかってるって…」
そんな訳の分からない【星】ではあるが、強いという事だけは出会った瞬間より理解出来た。底の見えない否、見てはいけない恐ろしさの様なモノと言うべきであろうか…。
この【領域】に赴く際にエイプリルやミコの名が挙がらなかったのも理解出来る。仮に交渉が決裂し敵対した場合。自分と門司の二人がかりでようやく問題なく斃せる。それ程の実力だと察せられた。
「それでエルマ。頼んだ俺の刀は一体どこに在る?」
「んもう早速すぎィ!?せっかく愛するワガハイの元までお友達を連れて会いに来たのに味気なさ過ぎるティ~そんなんじゃあ渡さないゾ☆」
「愛する?」
「そうなのダ門司きゅんのお友達!ワガハイと門司きゅんは運命の赤い糸で結ばれたベストパートナーなのさ!」
「ただの妄想だ、気にするな…」
「ああッ…今でも目を閉じれば鮮明に思い出すよ、暗く冷たいお城に囚われたワガハイを白馬に乗って救いに来てくれたあの日。「さあ一緒に行こう」と優しく手を差し出した門司きゅん。「はい」とその手を決して離さないように握りしめたワガハイ…キャー!!」
「とある合衆国都市にて大規模犯罪を引き起こしたコイツを斃しに行ったのが最初だ。身勝手な理由で積極的に暴れ、合衆国の中でもトップクラスに危険な【星】扱いされているのがこの女、御堂・エルマ。見ての通り今は俺に執心し、この気持ち悪い【領域】の中に引きこもっているから大して害は無いが……」
ほぼぞんざいに扱われているのに顔を抑えくねくねと身を捩らせながらキャーキャーと喜ぶエルマ。そんな彼女に聞こえる程わざとらしく舌打ちした。
「妄想して満足したか?だったらさっさと俺の刀を寄越せ」
「もぅ門司きゅんったら、もっと絡み合いたいのに照れ隠ししちゃって~」
名残惜しく。しかし嬉しそうに家の奥へと取りに行ったエルマ。家の中央にある食卓にてしばらく待っていると持ってきた。
「持ってきたよぉ~」
アサギ色の剣袋に包まれた自らの身長より長い刀を担ぐエルマ。対面へと腰掛けると卓の上に置いた。
「ではではとくと刮目せよ~これがワガハイとスミス君が作り上げた愛しの門司キュン至高の愛刀『桃源』だよ☆」
剣袋の帯を解き現れたのは桜色の鞘に納められた一振りの刀であった。
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