プライベート・スペクタル

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第三話 第六章

第七節

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「?……一体何を考えているのです?」
不可解な行動ではあったが、気にしないことにしたトワ。どうであれ大和は加速について来れていないのだ。
手を首筋に振るえば終わる。
そうしてトワは大和の背後へと回り込んだ。
だが…。
「!?……ッッ!!?」
超々高速での手刀を振るおうとした瞬間、何かに殴られたトワ。
時の加速が一時消え吹き飛び転がる。
大和の方を見るとさっきまでいた位置に拳が置かれていた。
「……少々調子に乗り過ぎましたか…」
どうやら振り回した腕に運悪く衝突してしまったようである。能力の高揚感と全能感により油断していたようだ。
(……ん?振るった腕が運悪く?)
そう違和感を覚えつつも再び加速へと入ったトワ。総体的に全てがスローモーションになって行く。
再び大和へと近づいた。
(二度目はありません)
今度は油断することなく完全な死角から振るおうとするトワ。
だが…。
「―ッッ!!?」
(またッッ!??)
再び打撃を叩き込まれる。今度は後ろ回し蹴りであった。
後ろ回し蹴りなんて偶然に振るわれるモノではない。狙っての一撃だ。
そこでトワは確信した。
(まさか対応してきている!?…加速している私に、この短時間で!?)
ということに他ならなかった。
(末恐ろしい若手ですね『龍王』…)
『時間の加速』コレを使ったのは今なのだ。それなのにもうその加速に追いついて来ている。
異常…否、畏怖するべきと言っても過言でない。
(ですが…そんなこと本当に可能でしょうか?)
【銘付き】とはいえ【星】の対応能力を遥かに超えている。
(それに、これだけ速ければ…式典時には私を捉えられていた筈…とどのつまり)
何かある……。そう読んだトワ、三度加速を行う。
ただ近づかない。この違和感を探る為、加速による時間の余りを使い隅々まで注意深く観察する。
彼の【演目】、『龍桜』には強化形態が存在する事は過去の映像から知っている。
だがそのような形態が出ているとは思えない。
先と異なるのは脱力あの構えだけだ。
(脱力…もしや……)
何かが引っ掛かったトワ。確かめるために近くにあった礫を一つ拾う。
そして指弾の要領で大和に撃ち出した。
致命傷には至らない大和の右腕に向かって高速で吸い込まれていく礫。
だが着弾しようとしたその瞬間、砕け散る。
見ると腕を最小の動作で振り払い砕いたのだ。
「フっ、フフっ…」
(成程…そういうことですか)
これによりタネを理解したトワ。
「驚きましたよ…まさか自らの触覚を頼った自動カウンターとは……」

【演目】『龍桜 乱浄風情 花風』

『後の先』と呼ばれる。古今東西数多の武術にはそれを目的とした返し技が数多存在する。
相手の力を利用した合気等の技術がそれにあたる。
大和は時間の加速に対応する為にそれを最大限利用したのだろう。自らの感覚を研ぎ澄ます事により攻撃を仕掛けて来た存在ものを文字通り肌で捉え反撃を加える。
徒手空拳の体術使い。すなわち武術の心得。
それと「時間が加速している」理解する事で出来る一瞬の対応と併せる事により大和は反応出来たという訳だ。
(太極拳等の武術に相手の攻撃を導くガイドさせ受け流す技術があり、それには脱力が要だと聞いた事がありますが…おそらくそれを利用しているのですか)
知ってか知らずか…おそらく前者に違いないが、大和はこの為に近しき行動をとったに違いない。
(本当に惜しい程に大した男です…ですが、わかってしまえば意味が無い)
そう笑みを浮かべたトワ。同じように幾つかの礫と懐のナイフをそれぞれ別方向から投擲する。更に高速移動により砂埃を巻き上げ大和を包む。
(触覚を用いての反撃…ならば、それでも反応できないようにしてやれば良い)
単純シンプル。故に効果的。
小手先の技術で対応できない飽和攻撃。現にナイフや礫は一部対応出来ているが一部は大和を確実に削りダメージを与える。
(更に…)
それらに紛れて近づくトワ。チャフ代わりとなり大和は反応できない筈だ。
(今度こそ終わりです)
そう手刀を振り下ろしたトワ。
だがその瞬間、大和はすっとトワの方を向き、拳を叩き込んだ。
「ッ!?……っ!!?………!!???」
腹部に叩き込まれる重い打撃。
弊害である時間の加速による威力の増加、さらにガードも出来ずにモロに受けたトワはひしゃげたような身体で吹き飛んだ。
「……まさか、加速には対応出来ていたのに…わざと……っ!?」
「ああ、手前に確実な一発を叩き込むためにな……」
血飛沫と砂埃を巻き上げ地面を転がったトワ。その時大和の姿が一瞬目に映った。
「それは……ッ!?」
「ああコイツが俺の『龍桜』その新たな姿『龍式雷龍らいりゅう』。本邦初公開だぜ!」
なんと大和はその身体から電気を迸らせていたのだ。

【演目】『龍桜 龍式雷龍』

バチッバチッと電気による火花を散らす大和。見るだけで帯電しているのが理解出来る。
『ふむ…体内の電流を利用した技ということですか……』
「睦美様?」
その様子を見て睦美はそう分析した。

誰もが大なり小なり理解しているだろうが、体内にも電気が流れている。
神経細胞が細胞各所を伝導する時に発生する微弱な電流。生体電流と呼ばれるモノである。
大和はそれを利用したのだと察する。
『とはいえ電流自体は極々微弱なモノ…おそらく骨を用いた圧電現象や彼がよく言っている魂のエネルギーにより電力を増幅させ、電子機器の回路の様に身体に行き渡らせたことで編み出したのでしょう』
『炎龍』の熱と同じくその手の身体操作は『龍桜』の十八番。本来ならそんな電流は自傷、自殺行為であろうが、【星】の肉体なら問題ない。
技術と【星】。それらの合わせ技により成立した【演目】であろう。
『電気の速度は光と同等の秒速30万mの文字通り光速。そこまでは流石に難しいでしょうが、それに近しき速度なら確かに時間の加速の対応も十二に出来る筈です』

砂埃を巻き上げて地面を転がった後、すぐさま起き上がったトワ。傷を治そうと時間の遡行を行おうとする。
だが、大和の追撃がそれを許さなかった。
「させねぇよ」
「くっ…!?」
瞬間移動したような速度で目の前に現れた大和。そんなのに時間の遡行なんて自殺行為。トワは高速化をして対応しようとする。
だが、大和の高速に今度は逆について行くのがやっとである。
「こんな……私がやっと編み出したモノを容易く……っ」
「終わりだ…」
そう吐き振るわれた大和の拳。拳はトワの顔面に吸い込まれていった。
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