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本編

447 Aランクの遠征討伐依頼

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 さてと、ギリスに戻って来てマイヤーボロボロ事件とか、異臭騒ぎがあった。
 俺が他力本願過ぎるばかりか、いろんな人がハードワーク気味。

 それを解消するために、一時的に従業員の食堂を暇を持て余したおっさんにやってもらったり。
 残業分の賃金アップを行ったり。
 一時的に研究所自体を締めて、無理くり休日を定めたりとか色々対策を整えた。

 食堂はパインのおっさんがいる間だけ、と言う形になるが。
 丼ものパインの従業員を何人か連れて来てもらって、なんとか継続していきたいところである。

 むしろギリスで募集して、丼ものパインに流しても良い。
 どちらにせよ、だ。
 給料が出て、飯もタダで食えて、さらに休日もしっかりとってもらう。
 これがしっかりできるのは良いのではないだろうか?

 なんなら従業員のための住まいだって準備してやりたい。
 目指すは超絶ホワイト、ホワイトなのである。

 マイヤーに色々と甘やかしちゃダメやとか言われたけども、アイデアは良いと言われた。
 従業員の住まいなんかは、大きな商会は準備していたりするもんだからね。

 くれぐれも自分を追い込まないように、とマイヤーに告げてあとは任す。
 学生なんだから、学業優先ってこともあるのだ。

 相変わらず人任せか、なんて言われるかもしれないが……俺には無理。
 ろくな社会経験だってないし、こう言うのはできる人に任せるのだよ。

 マイヤーならできる、信じてる。
 専門知識がない奴ができることなんて、金を出すことだけなんだな。







「お久しぶりですトウジさん!」

「お久しぶりです」

 俺は久しぶりに冒険者ギルドへと顔を出していた。
 担当受付であるエリナの顔を見るのも久しぶりである。

「もうこの街から他に移っちゃったのかと思ってましたよ!」

「その時は言いますよ」

「ちなみに、今までどこに行ってたんですか?」

「ストリアまで遠征してました」

「また遠いですねえ……旅行ですか?」

「まあそんな感じです」

 出先で色々とあったのだけど、語るのも面倒なの話を合わせておく。
 所属自体はギリスだってことにしてあるから、いずれ向こうでの依頼報告もこっちに流れてくるはずだ。
 だから、その時に詳しくわかるだろう。

「いいなあ旅行。私は生まれてこのかたギリスから出たことありませんよ」

「外は危険もありますし、平和が一番だと思いますよ」

 お金を貯めて他の国に旅行してみたい、というエリナに言っておく。
 魔物がいないならまだしも、そこら中にいるんだから街から出ない方が吉。

 俺なんか弱い魔物しかいない平和そうな道で野盗に襲われた経験がある。
 友達の友達なんか、ゴブリンに襲われて今ではメンヘラだ。
 俺の後ろにジュノーを肩に乗せて控えるイグニールを横目で見ながら例の女を想像する。

「何よ?」

「外には危険がいっぱいだよね?」

「まあそうね、自衛手段は持っておくべきね。護衛を雇うとか」

「そうなんですね……平和な都会に生まれてよかったです……」

 露骨にテンションを下げるエリナ。
 すまんな、だが事実だ。
 怖いぞ、色々と。
 街中にいても、ワンチャン刺される可能性だってあるんだから。

 ちなみに、まだローディにはあってない。
 この間、研究所に行った時はたまたま非番だったそうだ。
 奇跡だぜ。

「とりあえず、Aランクの依頼で良いのないですか?」

「おっ! トウジさんから聞いてくださるなんて、信用してもらえたようで嬉しいです!」

 そう言いながらガサゴソと机の中を確認するエリナ。
 久々に顔を出したのに、まだ俺向けの依頼をしっかりファイリングしているようだった。
 ファーストコンタクトは面倒だな、なんて思ったけど。

 なんだかんだ努力家というか。
 しっかりしてくれている気がするのでそれなりに心を許している。

「Aランクの指定は討伐よりも山脈内の採取が多いんですけど大丈夫ですか?」

「それでお願いします」

「複数受けますよね?」

「もちろん」

 Aランクの採取物なんて、それなりに傾向がわかっている。
 っていうかダンジョン部屋にしこたま確保している。
 ぜーんぶまとめて持ってて、換金したるのだ。

「エリナくん、ちょっと良いかな?」

「え? はいはい、なんでしょうか?」

 依頼書を準備するエリナに、横からやって来た他のギルド職員が耳打ちする。

「……ってところなのだけど、頼めるかね?」

「えっ? えっと……一応聞いて見ますけど……指名はNGですよ……?」

 どうやら、指名依頼のようなものが入っているようだった。
 申し訳なさそうに俺を見ながら、エリナは言う。

「Aランク指定の依頼で、ちょっと戦力が足りないと判断されているものがあるんですけども……」

「話は聞きます」

 申し訳なさそうにされたら断ったこっちが悪い気がする。
 故に話だけは聞いて判断することにした。

「ありがとうございます。依頼は、ワイバーンライダーの討伐です」

「ワイバーンライダー?」

「はい、ワイバーンを操る魔物です。どうやら、ギリスの山脈で巣を作っているのが目撃されたそうで」

「へえ、知らない魔物ですね」

 素直にそう答えると、イグニールが補足してくれる。

「確か、元々はテイムスキルを持ったゴブリンが始まりだったはずよ?」

「そうなんだ? ってことはゴブリンなの?」

「いや、ワイバーンライダーはワイバーンライダーね」

 ワイバーンを使役するゴブリンがそのままワイバーンと共存するようになって、いつの間にかワイバーンライダーって個体で呼ばれるようになったそうだ。

 どういった進化をしたらそうなるのかわからないが、生まれてくる時はゴブリンとワイバーンがセットらしい。

 空を飛んで各地を回り、そこら一体の魔物を餌として捕食し、荒らしたら別の場所へと移動する、イナゴのような存在の魔物らしかった。

 もちろん人の村も襲う。

「ワイバーン自体は、Bランクパーティーでも討伐可能だけど、ライダーになればBランク上位もしくはAランクが可能ラインで、たいてい集団で行動してるからこっちも数を揃えないとやられかねないのよ」

「はい、イグニールさんの言う通りです。討伐に向けた遠征隊の人数が少し足りないようなので、トウジさん達にどうか受けてもらえないかと、たった今話が来たのですよ」

「なるほど」

 集団での依頼はCランク昇格依頼から久しく受けてない。
 あまり率先してやろうとは思わないのだけど。
 あんまりNGばかり出していると、今後割りのいい依頼とかもらえそうにないので受けてみることにした。

「やります」

「ありがとうございます! では説明をいたしますね!」

「はい」

 まあ、ワイバーンに乗っててもたかがゴブリン。
 危険は少ないよな?
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