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本編
497 宿直前の夕食
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さて、結局料理研究クラブしか見学することは叶わなかった。
きゃっきゃうふふの女子スポーツクラブはお預けなのである。
そんでもって。
地味に今夜も仕事があると言うことで、俺とポチは一旦自宅に戻ることとなった。
「──宿直? 初日から無駄にハードね?」
ポチが作った夕食をもぐもぐしながら、俺の正面に座るイグニールが言う。
今日の夕食は白ご飯、味噌汁、生姜焼き、とびっこと蟹身のシーフードサラダ。
とびっことは、フライフィッシュと呼ばれる空飛ぶ魚の卵の塩漬けである。
俺のいた世界ではトビウオの魚卵の塩漬けなのだけど、ほぼそれ。
このシーフードサラダは、イグニールもマイヤーも好きな一品なのだけど。
料理クラブの虫卵騒動を終えた後の俺には、なんとも言い難いものがあった。
いちいち指で触って確認しながら食べるレベルである。
まったく、なんつートラウマを俺に植え付けてくれとんじゃポチは。
「宿直やったら、明日は一緒に登校できへんなあ」
隣に座るマイヤーが、サラダをフォークで突き刺しながらイグニールの言葉に頷く。
「依頼報酬2000万という破格とは言えども、なんともコキ使いが過ぎますな」
「やんな、リクール。聞いたら、一人には到底できんほどのハードワークやん」
リクールも夕食をつつきながらマイヤーの言葉に反応し頷いていた。
「でもまあ、2000万だから仕方ない、一度受けちゃった依頼だし」
「どう考えても価格設定がおかしいわよ、それ」
「せや、なんか裏がある気がするわ、文句言ったる?」
「お嬢様のいう通り、クレームを入れても良いのではないでしょうか?」
家に帰って早々。
マイヤーからなんで学院にいたのか、という疑問から始まり。
今回の依頼の件について説明をすると、そんな反応を示す各々。
「いやいや、さすがにクレームを入れるほどじゃないってば」
俺のためにみんな動こうとしてくれるが、止める。
さすがに事を荒立てるつもりはない。
評価につながって、依頼が受け辛くなることもある。
こうして愚痴を聞いてくれるだけで、ありがたいってもんだ。
「ただ見回りとか、修繕とか、今いる人員の手伝いに回るだけだから、まだ大丈夫だよ」
「やることは隙間産業冒険者とあんまり変わらないってことね」
「うん、授業もただ今までやってきた依頼の経験とかダンジョンの経験を話すだけだしな」
そこに授業課程の報告とか、まどろっこしい職員業はあまりない。
その辺は、俺に付いてくれてるサポートのアシュレイ先生他が受け持ってくれる。
俺の授業風景を見て、生徒たちの反応とかを見てくれるんだそうだ。
「でも、一人でこなせなくなりそうだったらイグニールも来てもらうぞ」
「私? トウジ一人で受けた依頼だったから、私の出る幕ないかと思ってた」
「いや、パーティー単位で受けたことにしちゃえば良いと思う」
最悪雑用は俺がこなして、イグニールに先生をやってもらうのも手だ。
こと冒険者業にかけてはイグニールは俺の先輩である。
こなした依頼も、そして冒険者として乗り越えて来た困難も多い。
つーか、むしろ俺がイグニールの授業受けたい。
イグニール先生とマンツーマンで居残り補習したい。
色々したい。
「なるほど、新入り冒険者の引率とかしたことあるから、微力でも力になるわよ」
「ありがたやありがたや」
「拝まないでよトウジ、不吉だから」
その様子を見たマイヤーが笑いながら言う。
「イグ姉は、普通に冒険者というより魔法スキルの先生の方が適任やと思うけどなあ?」
「確かに」
マイヤーの言葉はごもっともだ。
彼女は火属性スキルに関しては大精霊をも使うエキスパート。
豪炎のイグニールなのだから、普通の先生よりはすごい。
美人で、すごい、魔法の先生、かっこいい、イグニール。
「うーん、でもあたしのって自己流だし、爆発しちゃうから……危険よ?」
「確かに」
「そら、あかんなあ」
何かの拍子に爆発に巻き込んでしまったら生徒に身が危ない。
魅惑のイグニール先生計画は、一旦なしということで。
「トウジ、宿直ってなんだし? っていうかあたしも学院行きたいし」
食後のパンケーキを貪るジュノーが尋ねる。
「えっと、学院に泊まり込んで警戒とか、そう言うのする係?」
「じゃあ今日はまた学院行っちゃうし? 寝る場所はどうするし? あたしも学院行きたいし」
「宿直室っていうところで仮眠とれるらしいよ。だから寝る場所は平気だ」
「へー、寂しくない?」
「ポチの家事が終わった時間で再召喚する予定だから別に」
「あたしも付いて行くし、学院行きたいし」
「しつこいな、さっきから話はぐらかしてるのわからなかったのか、付いて来るなよ」
面白いものとかないし、来たら面倒なことになってしまうの確定だ。
それに、夜の学院を探検されたら他の宿直要員の人がびっくりする。
「いずれ草むしりの手伝いくらいには呼ぶから、家で大人しくしてろ」
「えー! クラブがしたい! 授業受けたい! 連れてくしー!」
うるさいな、駄々こねるなよ。
まったくしょうがない奴だ。
「まあ、今度な」
「ほんと? 今度っていつだし! 明確な約束日をあたしは求めるし!」
「……今度な」
「ぐむむー!」
「まあまあジュノー、お手伝いがある時に一緒に行きましょ?」
「わーん! トウジの意地悪、ハゲ死ね!」
相当学院に行って見たかったのか。
ジュノーはイグニールの胸に飛び込んで泣きながら暴言を吐きまくっていた。
「何度か行ったことあるだろうに……」
「まだ探検したりないし、学院の七不思議も調べ終わってないし! ね? コレクト?」
「クエッ」
「いや、それ仕事じゃなくて思いっきり遊びに行く気満々じゃん……」
前にオスローを探しに学院に行った際、コレクトとそんな噂を生徒から耳にして勝手に探していたそうだ。
その時は時間が足りず七不思議の解明はできなかったが、次はその悲願を達成したい、とジュノーは語る。
「ダメダメ、遊びに付き合ってたら余計疲れるから、今度な、今度」
「その今度はいつのことだし!」
「いつか」
「だからいつ!」
「きっと」
「日時ですらなくなってるし!」
さて、バカに付き合うのも時間の無駄だから、さっさと宿直に出向くことにする。
初日から馬鹿騒ぎして面倒ごとを引き起こす訳にもいかない。
慣れたら連れて来て、一緒に依頼をやろうってことで済ませることにした。
「まあ、何かあったら教えてね? すぐに手伝いに向かうから」
「うちもいくでー」
「ありがと。でも別に普通に宿直の手伝いだからトラブルとかないよ」
依頼のきな臭さを感じていたのか、やや心配そうにするイグニールとマイヤー。
金の出所がC.Bファクトリーだし、絡んでいたらそうも思うか。
しかし、さすがに生徒がいる場所で愚行に及ぶ心配もないし、今はこうして地味な用務員手伝いに興じると行こう。
「じゃ、行って来ます」
「いってらっしゃい」
「ほないってらー」
そうしてみんなに見送られて夜の学院へと向かった俺。
宿直なんてただの泊まり込みだから、コンビニ夜勤と変わらない、なんて最初は思ってました。
しかし……。
きゃっきゃうふふの女子スポーツクラブはお預けなのである。
そんでもって。
地味に今夜も仕事があると言うことで、俺とポチは一旦自宅に戻ることとなった。
「──宿直? 初日から無駄にハードね?」
ポチが作った夕食をもぐもぐしながら、俺の正面に座るイグニールが言う。
今日の夕食は白ご飯、味噌汁、生姜焼き、とびっこと蟹身のシーフードサラダ。
とびっことは、フライフィッシュと呼ばれる空飛ぶ魚の卵の塩漬けである。
俺のいた世界ではトビウオの魚卵の塩漬けなのだけど、ほぼそれ。
このシーフードサラダは、イグニールもマイヤーも好きな一品なのだけど。
料理クラブの虫卵騒動を終えた後の俺には、なんとも言い難いものがあった。
いちいち指で触って確認しながら食べるレベルである。
まったく、なんつートラウマを俺に植え付けてくれとんじゃポチは。
「宿直やったら、明日は一緒に登校できへんなあ」
隣に座るマイヤーが、サラダをフォークで突き刺しながらイグニールの言葉に頷く。
「依頼報酬2000万という破格とは言えども、なんともコキ使いが過ぎますな」
「やんな、リクール。聞いたら、一人には到底できんほどのハードワークやん」
リクールも夕食をつつきながらマイヤーの言葉に反応し頷いていた。
「でもまあ、2000万だから仕方ない、一度受けちゃった依頼だし」
「どう考えても価格設定がおかしいわよ、それ」
「せや、なんか裏がある気がするわ、文句言ったる?」
「お嬢様のいう通り、クレームを入れても良いのではないでしょうか?」
家に帰って早々。
マイヤーからなんで学院にいたのか、という疑問から始まり。
今回の依頼の件について説明をすると、そんな反応を示す各々。
「いやいや、さすがにクレームを入れるほどじゃないってば」
俺のためにみんな動こうとしてくれるが、止める。
さすがに事を荒立てるつもりはない。
評価につながって、依頼が受け辛くなることもある。
こうして愚痴を聞いてくれるだけで、ありがたいってもんだ。
「ただ見回りとか、修繕とか、今いる人員の手伝いに回るだけだから、まだ大丈夫だよ」
「やることは隙間産業冒険者とあんまり変わらないってことね」
「うん、授業もただ今までやってきた依頼の経験とかダンジョンの経験を話すだけだしな」
そこに授業課程の報告とか、まどろっこしい職員業はあまりない。
その辺は、俺に付いてくれてるサポートのアシュレイ先生他が受け持ってくれる。
俺の授業風景を見て、生徒たちの反応とかを見てくれるんだそうだ。
「でも、一人でこなせなくなりそうだったらイグニールも来てもらうぞ」
「私? トウジ一人で受けた依頼だったから、私の出る幕ないかと思ってた」
「いや、パーティー単位で受けたことにしちゃえば良いと思う」
最悪雑用は俺がこなして、イグニールに先生をやってもらうのも手だ。
こと冒険者業にかけてはイグニールは俺の先輩である。
こなした依頼も、そして冒険者として乗り越えて来た困難も多い。
つーか、むしろ俺がイグニールの授業受けたい。
イグニール先生とマンツーマンで居残り補習したい。
色々したい。
「なるほど、新入り冒険者の引率とかしたことあるから、微力でも力になるわよ」
「ありがたやありがたや」
「拝まないでよトウジ、不吉だから」
その様子を見たマイヤーが笑いながら言う。
「イグ姉は、普通に冒険者というより魔法スキルの先生の方が適任やと思うけどなあ?」
「確かに」
マイヤーの言葉はごもっともだ。
彼女は火属性スキルに関しては大精霊をも使うエキスパート。
豪炎のイグニールなのだから、普通の先生よりはすごい。
美人で、すごい、魔法の先生、かっこいい、イグニール。
「うーん、でもあたしのって自己流だし、爆発しちゃうから……危険よ?」
「確かに」
「そら、あかんなあ」
何かの拍子に爆発に巻き込んでしまったら生徒に身が危ない。
魅惑のイグニール先生計画は、一旦なしということで。
「トウジ、宿直ってなんだし? っていうかあたしも学院行きたいし」
食後のパンケーキを貪るジュノーが尋ねる。
「えっと、学院に泊まり込んで警戒とか、そう言うのする係?」
「じゃあ今日はまた学院行っちゃうし? 寝る場所はどうするし? あたしも学院行きたいし」
「宿直室っていうところで仮眠とれるらしいよ。だから寝る場所は平気だ」
「へー、寂しくない?」
「ポチの家事が終わった時間で再召喚する予定だから別に」
「あたしも付いて行くし、学院行きたいし」
「しつこいな、さっきから話はぐらかしてるのわからなかったのか、付いて来るなよ」
面白いものとかないし、来たら面倒なことになってしまうの確定だ。
それに、夜の学院を探検されたら他の宿直要員の人がびっくりする。
「いずれ草むしりの手伝いくらいには呼ぶから、家で大人しくしてろ」
「えー! クラブがしたい! 授業受けたい! 連れてくしー!」
うるさいな、駄々こねるなよ。
まったくしょうがない奴だ。
「まあ、今度な」
「ほんと? 今度っていつだし! 明確な約束日をあたしは求めるし!」
「……今度な」
「ぐむむー!」
「まあまあジュノー、お手伝いがある時に一緒に行きましょ?」
「わーん! トウジの意地悪、ハゲ死ね!」
相当学院に行って見たかったのか。
ジュノーはイグニールの胸に飛び込んで泣きながら暴言を吐きまくっていた。
「何度か行ったことあるだろうに……」
「まだ探検したりないし、学院の七不思議も調べ終わってないし! ね? コレクト?」
「クエッ」
「いや、それ仕事じゃなくて思いっきり遊びに行く気満々じゃん……」
前にオスローを探しに学院に行った際、コレクトとそんな噂を生徒から耳にして勝手に探していたそうだ。
その時は時間が足りず七不思議の解明はできなかったが、次はその悲願を達成したい、とジュノーは語る。
「ダメダメ、遊びに付き合ってたら余計疲れるから、今度な、今度」
「その今度はいつのことだし!」
「いつか」
「だからいつ!」
「きっと」
「日時ですらなくなってるし!」
さて、バカに付き合うのも時間の無駄だから、さっさと宿直に出向くことにする。
初日から馬鹿騒ぎして面倒ごとを引き起こす訳にもいかない。
慣れたら連れて来て、一緒に依頼をやろうってことで済ませることにした。
「まあ、何かあったら教えてね? すぐに手伝いに向かうから」
「うちもいくでー」
「ありがと。でも別に普通に宿直の手伝いだからトラブルとかないよ」
依頼のきな臭さを感じていたのか、やや心配そうにするイグニールとマイヤー。
金の出所がC.Bファクトリーだし、絡んでいたらそうも思うか。
しかし、さすがに生徒がいる場所で愚行に及ぶ心配もないし、今はこうして地味な用務員手伝いに興じると行こう。
「じゃ、行って来ます」
「いってらっしゃい」
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そうしてみんなに見送られて夜の学院へと向かった俺。
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