装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
196 / 650
本編

497 宿直前の夕食

 さて、結局料理研究クラブしか見学することは叶わなかった。
 きゃっきゃうふふの女子スポーツクラブはお預けなのである。

 そんでもって。
 地味に今夜も仕事があると言うことで、俺とポチは一旦自宅に戻ることとなった。



「──宿直? 初日から無駄にハードね?」

 ポチが作った夕食をもぐもぐしながら、俺の正面に座るイグニールが言う。
 今日の夕食は白ご飯、味噌汁、生姜焼き、とびっこと蟹身のシーフードサラダ。

 とびっことは、フライフィッシュと呼ばれる空飛ぶ魚の卵の塩漬けである。
 俺のいた世界ではトビウオの魚卵の塩漬けなのだけど、ほぼそれ。
 このシーフードサラダは、イグニールもマイヤーも好きな一品なのだけど。
 料理クラブの虫卵騒動を終えた後の俺には、なんとも言い難いものがあった。

 いちいち指で触って確認しながら食べるレベルである。
 まったく、なんつートラウマを俺に植え付けてくれとんじゃポチは。

「宿直やったら、明日は一緒に登校できへんなあ」

 隣に座るマイヤーが、サラダをフォークで突き刺しながらイグニールの言葉に頷く。

「依頼報酬2000万という破格とは言えども、なんともコキ使いが過ぎますな」

「やんな、リクール。聞いたら、一人には到底できんほどのハードワークやん」

 リクールも夕食をつつきながらマイヤーの言葉に反応し頷いていた。

「でもまあ、2000万だから仕方ない、一度受けちゃった依頼だし」

「どう考えても価格設定がおかしいわよ、それ」

「せや、なんか裏がある気がするわ、文句言ったる?」

「お嬢様のいう通り、クレームを入れても良いのではないでしょうか?」

 家に帰って早々。
 マイヤーからなんで学院にいたのか、という疑問から始まり。
 今回の依頼の件について説明をすると、そんな反応を示す各々。

「いやいや、さすがにクレームを入れるほどじゃないってば」

 俺のためにみんな動こうとしてくれるが、止める。
 さすがに事を荒立てるつもりはない。
 評価につながって、依頼が受け辛くなることもある。
 こうして愚痴を聞いてくれるだけで、ありがたいってもんだ。

「ただ見回りとか、修繕とか、今いる人員の手伝いに回るだけだから、まだ大丈夫だよ」

「やることは隙間産業冒険者とあんまり変わらないってことね」

「うん、授業もただ今までやってきた依頼の経験とかダンジョンの経験を話すだけだしな」

 そこに授業課程の報告とか、まどろっこしい職員業はあまりない。
 その辺は、俺に付いてくれてるサポートのアシュレイ先生他が受け持ってくれる。
 俺の授業風景を見て、生徒たちの反応とかを見てくれるんだそうだ。

「でも、一人でこなせなくなりそうだったらイグニールも来てもらうぞ」

「私? トウジ一人で受けた依頼だったから、私の出る幕ないかと思ってた」

「いや、パーティー単位で受けたことにしちゃえば良いと思う」

 最悪雑用は俺がこなして、イグニールに先生をやってもらうのも手だ。
 こと冒険者業にかけてはイグニールは俺の先輩である。
 こなした依頼も、そして冒険者として乗り越えて来た困難も多い。

 つーか、むしろ俺がイグニールの授業受けたい。
 イグニール先生とマンツーマンで居残り補習したい。
 色々したい。

「なるほど、新入り冒険者の引率とかしたことあるから、微力でも力になるわよ」

「ありがたやありがたや」

「拝まないでよトウジ、不吉だから」

 その様子を見たマイヤーが笑いながら言う。

「イグ姉は、普通に冒険者というより魔法スキルの先生の方が適任やと思うけどなあ?」

「確かに」

 マイヤーの言葉はごもっともだ。
 彼女は火属性スキルに関しては大精霊をも使うエキスパート。
 豪炎のイグニールなのだから、普通の先生よりはすごい。
 美人で、すごい、魔法の先生、かっこいい、イグニール。

「うーん、でもあたしのって自己流だし、爆発しちゃうから……危険よ?」

「確かに」

「そら、あかんなあ」

 何かの拍子に爆発に巻き込んでしまったら生徒に身が危ない。
 魅惑のイグニール先生計画は、一旦なしということで。

「トウジ、宿直ってなんだし? っていうかあたしも学院行きたいし」

 食後のパンケーキを貪るジュノーが尋ねる。

「えっと、学院に泊まり込んで警戒とか、そう言うのする係?」

「じゃあ今日はまた学院行っちゃうし? 寝る場所はどうするし? あたしも学院行きたいし」

「宿直室っていうところで仮眠とれるらしいよ。だから寝る場所は平気だ」

「へー、寂しくない?」

「ポチの家事が終わった時間で再召喚する予定だから別に」

「あたしも付いて行くし、学院行きたいし」

「しつこいな、さっきから話はぐらかしてるのわからなかったのか、付いて来るなよ」

 面白いものとかないし、来たら面倒なことになってしまうの確定だ。
 それに、夜の学院を探検されたら他の宿直要員の人がびっくりする。

「いずれ草むしりの手伝いくらいには呼ぶから、家で大人しくしてろ」

「えー! クラブがしたい! 授業受けたい! 連れてくしー!」

 うるさいな、駄々こねるなよ。
 まったくしょうがない奴だ。

「まあ、今度な」

「ほんと? 今度っていつだし! 明確な約束日をあたしは求めるし!」

「……今度な」

「ぐむむー!」

「まあまあジュノー、お手伝いがある時に一緒に行きましょ?」

「わーん! トウジの意地悪、ハゲ死ね!」

 相当学院に行って見たかったのか。
 ジュノーはイグニールの胸に飛び込んで泣きながら暴言を吐きまくっていた。

「何度か行ったことあるだろうに……」

「まだ探検したりないし、学院の七不思議も調べ終わってないし! ね? コレクト?」

「クエッ」

「いや、それ仕事じゃなくて思いっきり遊びに行く気満々じゃん……」

 前にオスローを探しに学院に行った際、コレクトとそんな噂を生徒から耳にして勝手に探していたそうだ。
 その時は時間が足りず七不思議の解明はできなかったが、次はその悲願を達成したい、とジュノーは語る。

「ダメダメ、遊びに付き合ってたら余計疲れるから、今度な、今度」

「その今度はいつのことだし!」

「いつか」

「だからいつ!」

「きっと」

「日時ですらなくなってるし!」

 さて、バカに付き合うのも時間の無駄だから、さっさと宿直に出向くことにする。
 初日から馬鹿騒ぎして面倒ごとを引き起こす訳にもいかない。
 慣れたら連れて来て、一緒に依頼をやろうってことで済ませることにした。

「まあ、何かあったら教えてね? すぐに手伝いに向かうから」

「うちもいくでー」

「ありがと。でも別に普通に宿直の手伝いだからトラブルとかないよ」

 依頼のきな臭さを感じていたのか、やや心配そうにするイグニールとマイヤー。
 金の出所がC.Bファクトリーだし、絡んでいたらそうも思うか。
 しかし、さすがに生徒がいる場所で愚行に及ぶ心配もないし、今はこうして地味な用務員手伝いに興じると行こう。

「じゃ、行って来ます」

「いってらっしゃい」

「ほないってらー」



 そうしてみんなに見送られて夜の学院へと向かった俺。
 宿直なんてただの泊まり込みだから、コンビニ夜勤と変わらない、なんて最初は思ってました。
 しかし……。
感想 9,840

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました