装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
202 / 650
本編

503 宿直と学院七不思議・その6 走る踊る模型像


「よーし! トウジ、次の七不思議だし!」

 次の場所への階段を上がる中。
 俺のフードにいるジュノーが耳元でそう言った。

「あと何個あるんだっけ?」

「えーと、音楽室で2個、変態女で1個、あと4個だし!」

 まだ折り返せてもいない。
 宿直長いって、マジで。

「で、次は何?」

「この先の実験室で、走って踊る魔物の模型像の姿が確認されたっぽいし」

「走って踊る……」

 なんか色々と混ざってる気がする。
 こういった七不思議系の鉄板と言えば。
 歩く二宮金次郎蔵、そして踊る人体模型。

 うむ、混ざっている。
 基本的に怪我はポーションやスキル頼りだから。
 人体模型が無いのは仕方ない。
 まさに異世界オリジナルと言えた。

「確か、走って踊る模型像は、追いかけて来るって聞いた!」

 向こうから来るのか。
 しかし、それだと踊るという言葉が浮くな。

「それだけだと走る模型像じゃないの?」

「捕まると一緒に朝まで踊らされるんだってさ」

「…………」

「トウジ、信じてない顔してるし!」

「いや、信じるかそんなもん」

 走って来る模型像に捕まると朝まで踊りに付き合わされる?
 なんだそれは、ギャグでもクソ寒い。
 そんなもんのためにいちいち気を揉んでたらハゲになるぞ。

「踊るだけで危険な代物じゃないなら、シカトだ」

「えー、どんな踊りなのか見てみたいし……」

「俺がいつか一緒に盆踊りでもしてやるから、我慢しろ」

「えっ! トウジと一緒に? だったら……それで!」

 良いんだ?
 もっとゴネるかと思っていたけど、意外と呆気なかった。
 ジュノーの中の想像がどうなっているか知らんけど。
 盆踊りだったら別に覚える必要もない。
 それに、みんなでやるもんだろうから恥ずかしくないね!

「じゃ、誓約書にサインするし、書面に残すし」

「……マイヤーに似てきたな」

「トウジの場合、口約束は信用できないし?」

「ぐっ」

 確かに口約束はその場の状況でおざなりにすることが多い。
 何か他に目移りするものがあれば、そっちに流れてしまうからだ。
 前科持ちみたいなものだから、ここは頷いておこう。

「とりあえずジュノー、次の教えて、できれば危険なやつで」

「うーん、13段階段の処刑台ってやつかなあ」

 ガチで危険そうな感じのやつきた。
 13階段って、不吉だからよくありがちな七不思議だけど。
 それに処刑台っていうワードが追加されている。

「どこにあるかまでは、リサーチできてないんだけど、確かこの学校のクラブ棟の階段がランダムで13段になってしまって、登りきったら首が落ちるらしいし。七不思議の中では一番危険だと言われているやつだし!」

「説明もやべぇな」

「でも、注意深く確認すれば階段が13段あるって言うのがわかるから、別の階段を使えば良いって対処法まで、噂とセットになってたよ? だから危険じゃないんじゃない?」

「つーか、そういうの一番最初に言ってもらえる?」

 今現在も階段を利用しているが。
 この巡回中、何度も階段を使って移動してきた。

 たまたま何もなかったけど。
 一応、七不思議はガチであるっぽいから油断も隙もない。

 知らないうちに首チョンパとか、嫌だぞ?
 装備の効果で即死は防げるが、もしかしたらだってある。

「あとね、トウジ」

「まだあるのか……?」

「極々稀に、七不思議の一つ合わせ鏡もランダムで階段の踊り場に出現して、運が悪いと首切られて鏡の中に攫われてしまうっていう最悪コンボもあるらしいし」

「うわぁ」

 作為的な何かを感じざるを得ないな、そこまで行くと。
 音楽室のは、水島の説明で納得がいった。
 しかし、この階段にいる類のものは、精霊じゃ説明がつかない。
 それほどまでに、悪意がこもった危険な代物だと思った。

「この学院、ダンジョンとかそんなオチじゃないだろうな?」

「それはないし。ダンジョンだったらあたしが気付いてるし」

「なるほどね」

「多分、こういう悪さをするのは精霊の一種である悪魔の仕業だと思う」

「悪魔?」

「うん、取り憑いて悪さするのは悪魔の眷属がよくやることだし! 怨嗟の鎖も、そんな存在の一つだし」

「へー」

 うちの神棚に飾ってるアレも、悪魔の一つなんだ。
 まあ、異世界だからいても不思議ではない。

 勇者がいたら魔王がいる。
 救うものがいたら救われるものがいる。
 因果には応報が存在する世界で。
 精霊と対なる存在なのが、悪魔ってわけだ。

「キュッキュ!」

 またひとつ勉強になったな、と思っていると。
 水島が俺の袖を引っ張った。

「どうした?」

「キュッ!」

「この階段、ちょうど13段あるってさ」

「えっ!?」

 危なっ!
 喋りつつ最後の3段くらい登り切っちゃうところだった。
 だが、どこにあるのかわからん13階段の処刑が目の前にあるのは好都合。

「みんな武装して処刑台に備えるぞ!」

「キュイ!」

「次はなんだ水島ァ!」

「なんだかこっちに走って近づいて来る軽快な足音が下から響いてくるって!」

「えっ!? 模型像も!?」

「またダブルパンチだし!」

「いや、ダブルパンチどころじゃねえ! トリプルだ!」

 あと3段ほど前にある踊り場に、合わせ鏡が出現した。
 まるで俺たちが登って来るのを虎視眈々と待つかのように。
 忽然と合わせ鏡が存在しているのだった。

「やべぇ!」

 走って踊る模型像が俺たちの元へ向かってきている。
 そして俺たちの目の前には階段の13段目と踊り場の合わせ鏡。
 完全に退路を断たれたような状況だった。

 とりあえず防御だけ固めて処刑台をやり過ごすことは可能だ。
 だが、その先の合わせ鏡が厄介である。
 鏡の世界に引き込むって、それの対処方法がわからないのだ。

 それは霧散の秘薬の効果で防げるものなのだろうか?
 だったら良いのだけど、迂闊に行く訳にもいかん。

「トウジ! 模型像来てるし! 踊ってるし!」

「えっ!?」

 次から次に情報量が多い、どうなってんだ。
 下を確認すると、ジュノーの言葉通り魔物の模型像がいた。

「…………!」

「うふふ、お姉さまぁ~! お姉さまと踊れるなんて、うふふ、媚薬ちょっと飲んじゃいましたけど、飲んだ甲斐がありましたです~!」

 頬を染めてなんだか熱を持った目を持つローディと一緒に。

「う、うわああああああ!」

 トリプルじゃねぇ、もっとヤベェ!
感想 9,840

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました