装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

503 宿直と学院七不思議・その6 走る踊る模型像

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「よーし! トウジ、次の七不思議だし!」

 次の場所への階段を上がる中。
 俺のフードにいるジュノーが耳元でそう言った。

「あと何個あるんだっけ?」

「えーと、音楽室で2個、変態女で1個、あと4個だし!」

 まだ折り返せてもいない。
 宿直長いって、マジで。

「で、次は何?」

「この先の実験室で、走って踊る魔物の模型像の姿が確認されたっぽいし」

「走って踊る……」

 なんか色々と混ざってる気がする。
 こういった七不思議系の鉄板と言えば。
 歩く二宮金次郎蔵、そして踊る人体模型。

 うむ、混ざっている。
 基本的に怪我はポーションやスキル頼りだから。
 人体模型が無いのは仕方ない。
 まさに異世界オリジナルと言えた。

「確か、走って踊る模型像は、追いかけて来るって聞いた!」

 向こうから来るのか。
 しかし、それだと踊るという言葉が浮くな。

「それだけだと走る模型像じゃないの?」

「捕まると一緒に朝まで踊らされるんだってさ」

「…………」

「トウジ、信じてない顔してるし!」

「いや、信じるかそんなもん」

 走って来る模型像に捕まると朝まで踊りに付き合わされる?
 なんだそれは、ギャグでもクソ寒い。
 そんなもんのためにいちいち気を揉んでたらハゲになるぞ。

「踊るだけで危険な代物じゃないなら、シカトだ」

「えー、どんな踊りなのか見てみたいし……」

「俺がいつか一緒に盆踊りでもしてやるから、我慢しろ」

「えっ! トウジと一緒に? だったら……それで!」

 良いんだ?
 もっとゴネるかと思っていたけど、意外と呆気なかった。
 ジュノーの中の想像がどうなっているか知らんけど。
 盆踊りだったら別に覚える必要もない。
 それに、みんなでやるもんだろうから恥ずかしくないね!

「じゃ、誓約書にサインするし、書面に残すし」

「……マイヤーに似てきたな」

「トウジの場合、口約束は信用できないし?」

「ぐっ」

 確かに口約束はその場の状況でおざなりにすることが多い。
 何か他に目移りするものがあれば、そっちに流れてしまうからだ。
 前科持ちみたいなものだから、ここは頷いておこう。

「とりあえずジュノー、次の教えて、できれば危険なやつで」

「うーん、13段階段の処刑台ってやつかなあ」

 ガチで危険そうな感じのやつきた。
 13階段って、不吉だからよくありがちな七不思議だけど。
 それに処刑台っていうワードが追加されている。

「どこにあるかまでは、リサーチできてないんだけど、確かこの学校のクラブ棟の階段がランダムで13段になってしまって、登りきったら首が落ちるらしいし。七不思議の中では一番危険だと言われているやつだし!」

「説明もやべぇな」

「でも、注意深く確認すれば階段が13段あるって言うのがわかるから、別の階段を使えば良いって対処法まで、噂とセットになってたよ? だから危険じゃないんじゃない?」

「つーか、そういうの一番最初に言ってもらえる?」

 今現在も階段を利用しているが。
 この巡回中、何度も階段を使って移動してきた。

 たまたま何もなかったけど。
 一応、七不思議はガチであるっぽいから油断も隙もない。

 知らないうちに首チョンパとか、嫌だぞ?
 装備の効果で即死は防げるが、もしかしたらだってある。

「あとね、トウジ」

「まだあるのか……?」

「極々稀に、七不思議の一つ合わせ鏡もランダムで階段の踊り場に出現して、運が悪いと首切られて鏡の中に攫われてしまうっていう最悪コンボもあるらしいし」

「うわぁ」

 作為的な何かを感じざるを得ないな、そこまで行くと。
 音楽室のは、水島の説明で納得がいった。
 しかし、この階段にいる類のものは、精霊じゃ説明がつかない。
 それほどまでに、悪意がこもった危険な代物だと思った。

「この学院、ダンジョンとかそんなオチじゃないだろうな?」

「それはないし。ダンジョンだったらあたしが気付いてるし」

「なるほどね」

「多分、こういう悪さをするのは精霊の一種である悪魔の仕業だと思う」

「悪魔?」

「うん、取り憑いて悪さするのは悪魔の眷属がよくやることだし! 怨嗟の鎖も、そんな存在の一つだし」

「へー」

 うちの神棚に飾ってるアレも、悪魔の一つなんだ。
 まあ、異世界だからいても不思議ではない。

 勇者がいたら魔王がいる。
 救うものがいたら救われるものがいる。
 因果には応報が存在する世界で。
 精霊と対なる存在なのが、悪魔ってわけだ。

「キュッキュ!」

 またひとつ勉強になったな、と思っていると。
 水島が俺の袖を引っ張った。

「どうした?」

「キュッ!」

「この階段、ちょうど13段あるってさ」

「えっ!?」

 危なっ!
 喋りつつ最後の3段くらい登り切っちゃうところだった。
 だが、どこにあるのかわからん13階段の処刑が目の前にあるのは好都合。

「みんな武装して処刑台に備えるぞ!」

「キュイ!」

「次はなんだ水島ァ!」

「なんだかこっちに走って近づいて来る軽快な足音が下から響いてくるって!」

「えっ!? 模型像も!?」

「またダブルパンチだし!」

「いや、ダブルパンチどころじゃねえ! トリプルだ!」

 あと3段ほど前にある踊り場に、合わせ鏡が出現した。
 まるで俺たちが登って来るのを虎視眈々と待つかのように。
 忽然と合わせ鏡が存在しているのだった。

「やべぇ!」

 走って踊る模型像が俺たちの元へ向かってきている。
 そして俺たちの目の前には階段の13段目と踊り場の合わせ鏡。
 完全に退路を断たれたような状況だった。

 とりあえず防御だけ固めて処刑台をやり過ごすことは可能だ。
 だが、その先の合わせ鏡が厄介である。
 鏡の世界に引き込むって、それの対処方法がわからないのだ。

 それは霧散の秘薬の効果で防げるものなのだろうか?
 だったら良いのだけど、迂闊に行く訳にもいかん。

「トウジ! 模型像来てるし! 踊ってるし!」

「えっ!?」

 次から次に情報量が多い、どうなってんだ。
 下を確認すると、ジュノーの言葉通り魔物の模型像がいた。

「…………!」

「うふふ、お姉さまぁ~! お姉さまと踊れるなんて、うふふ、媚薬ちょっと飲んじゃいましたけど、飲んだ甲斐がありましたです~!」

 頬を染めてなんだか熱を持った目を持つローディと一緒に。

「う、うわああああああ!」

 トリプルじゃねぇ、もっとヤベェ!
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