装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

510 教団の手の者

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「──はい、お疲れさん」

「ギュアッ」

 超速飛行を終えて「ふう」っと翼で汗を拭うそぶりを見せるワシタカくんを戻す。
 その「ふう」ってそぶりだけでも、かなりの風圧が裏庭を駆け抜けるからやばい。
 これは突然傾く裏庭の木々って感じで、新たな七不思議になりそうな予感。

 水島のヌルヌルは、後で掃除すれば証拠隠滅になるけど。
 さすがに木はなあ……?
 まあ、害はないので気にしないことにした。

 それにしても、しばらく上空を見ていたが……。
 超高度から時折ポロっとこぼして、地面ギリギリのところで拾ってまた上空。
 それを繰り返すワシタカくんの姿は、なんとも言えない何かを感じた。

 わざとだよな?
 飛ばし過ぎて普通に落としたとかだったら、乗れなくなっちゃう。
 たまには陸路も、趣があって良いかもしれないと思った。

「さてと……ほら起きろ」

 すっかり白目を剥いて悲惨な状況になっているフード男を叩き起こす。

「ぐ、う……あああああああああ!? 空がああああああああ!!」

 目覚めたフードの男は地面で折れた手足をバタバタさせながら暴れていた。
 ワシタカくんによって相当なトラウマが刻まれてしまったようである。
 くわばらくわばら。

「ほ、星が近い! 地面が迫って、あああああ! 股間がああ!!」

「……股間が? いったいどうしたし?」

「男は浮遊感に弱い生き物なんだよ」

「そっかー」

 ジュノーはボケーっとした表情で何気なく言う。

「トウジも空弱かったもんね? 股間大丈夫?」

「……」

 股間大丈夫、と聞かれてなんと答えようか一瞬迷った。
 これは天然か、それともギャグで言ってるのか。

「大丈夫大丈夫、問題ない」

「ほんと? 年取るとダメだってイグニールが」

「もうその話題はいいよ」

 いったいジュノーに何を教えたというのだ、イグニール。
 ガールズトークで夜な夜な盛り上がりを見せるというが……少し心配になった。

 まあ、カニに挟まれたり怨嗟の鎖に執拗に狙われたり色々あったけど、元気です。
 やはり、しっかり強化し潜在能力を兼ね備えたユニークパンツがあったからこそってもんだ。
 インナー系装備は、普通の装備よりもしっかり強化しておくに限る。

「あああああああ! あうっ、ああああああ!」

「うるさいなあ」

 その間も、ずっと悲鳴とともに手足をばたつかせるフード男。
 気絶から復帰して、すぐ錯乱とともに過呼吸だ。
 俺が想定していたよりも、紐なしバンジーは精神を破壊してしまったらしい。

「落ち着いて落ち着いて、もう地面だから、地面だから」

 再び気絶されたら面倒なので、落ち着かせるべく声をかけて上げる。
 まったく。
 ピーちゃんをいじめていた悪ガキを見つけ次第。
 このフードと同じような目に合わせるつもりだったのだけど。
 これはさすがにやり過ぎてしまうので、別の方法を考えるか。

「……へ? じ、地面? よがっだあああああ!」

 へし折れた腕を動かして裏庭の土を握りしめるフードの男。
 激痛にも勝る恐怖。
 それが本気のワシタカくんの実力である。

「ってことで、本題に入るけど誰の差し金? 何が目的? 全部はけ」

「……く、それは……」

「また空行く?」

「わ、わかった! わかった俺が知っていることは全て話す! 全て話す!」

「よし、話せ」

 特殊な訓練を受けたという割には、なんともあっさりとしたものだった。
 それでもプロか?
 ちなみに、情報を履けば死ぬような毒が仕込まれていたとしても無意味。
 怪しげな動きをすれば、すぐに霧散の秘薬と回復の秘薬を使ってやる。

「だが、俺が知ってる情報なんて、役に立つものばかりじゃないぞ! 下っ端中の下っ端だからな!」

「嘘つけ」

 レベル79の野郎が下っ端な訳がない。
 さらに巡回中、何度も水島がエコーロケーションを行っていた。
 その中で、一切気づかれずに不意打ちができるのは強者の証。

「もう一回、空飛ぶ?」

「わ、わかった! 話す! 話すから!」

 そんな訳で、フードの男は自分の持つ情報を洗いざらいぶちまけた。
 上にいる立場の個人名とか、プライベートな情報はさすがにない。
 だが、デプリにいる勇者と教団の繋がりと今回の命令。
 そしてデプリ国内での俺の立場というものを、詳しく知ることになる。

「トウジが……犯罪者……? 意味わかんないし!」

「うむ、盟主を罪人扱いとは……至極胸糞悪い話だ」

 述べられた話を聞いたジュノーとロイ様が険しい顔つきを見せていた。

「まあ、とりあえず落ち着いて二人とも」

 情報についての精査は、落ち着いた頃にやるとして……。
 まずはこの男の処分からである。

「ワシタカくん」

「ギュアッ」

 再び召喚したワシタカくんを前に、フードの男が「ひっ」と悲鳴をあげた。
 超高度からの紐なしバンジー連発がフラッシュバックしたか。

「じょ、情報は全て話した! ほ、ほほほ本当だ! だから空はやめてくれ!」

「空はやめるとして、どうすんの? 普通に死ぬ感じでいいですか?」

「なっ!? かっ、解放してくれるんじゃないのか!?」

「アホか。お前、人の命狙って来といて、何言ってんだ」

 この男は、俺の予想通り暗殺者の一人だった。
 もっとも、敵情調査が優先だが、隙があれば殺してもいいとの命令を受けている。
 そんな奴を前にして、のこのこと逃すはずがない。
 逃したら、情報が割れてさらに厄介な敵が来てしまうことが確定なんだから。

「ま、待て! 捕まった時から覚悟はしている! だ、だが、そ、空はやめてくれ!」

「オッケー」

 空が嫌いだってことで、そのご要望にお応えしてあげることにした。

「ワシタカくん」

「ギュア?」

「こいつ、ギリス北部の沖合に捨ててきてくれ。ダンジョンの近場で」

「──なっ!? な、なにを!!」

 焦った表情をするフードの男。

「海に落としてあとは放置するんだから、空じゃないぞ?」

 さらに言えば、これはわざわざ見逃してやっている範疇に入る。
 生き残れるかは、こいつ次第って奴だ。

「空じゃないか! 貴様騙したな! 教義に背き、碌な人生を送れんぞ!」

「ワシタカくん、高度さっきより高くで」

「ギュア」

 余計な一言で、ただでさえ低い生存確率が極めてゼロになった。
 見苦しくて不愉快なのでさっさとこの場から消え去ってもらう。

「すまんなワシタカくん、面倒な役目を押し付けて」

「ギュア」

 俺の言葉に首を横に振ったワシタカくんは、男を掴んで空へと飛んだ。

「き、貴様ああああ! くそおおおおお!」

 ちなみに、HPが見えるようにグループ機能には突っ込んでおく。
 これにより落下ダメージ半減だが、それは俺の優しさってことで。

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