装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

515 ライデン囲い込み

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 目の前に、唐突に出てきた仮想画面。
 ライデンのノートが、俺の職人技能の装備製作にレシピとして登録された。
 前に、ライデンの先祖が記した刀の作り方の書物を見た時と同じように。

 あの時から、こういう製作系のレシピとか。
 そういう類のものに関して探りを入れていたんだけど、特に芳しい成果は上がらなかった。

 妖精のロウェンから製作法を聞いて登録されたりとか。
 書物を見て登録されたりとか。
 見たらいいのか聞いたらいいのかわからず仕舞いだったんだよな……。

 しかし、ここへ来ての登録。
 めっちゃ驚いた。

「ど、どうでしょうか……?」

「え?」

 無言で驚く俺の顔を、ライデンが不安そうな目で見つめる。
 とりあえず一旦この事実については置いといて、この刀の話に戻ることにした。

「えっと、これって体力が回復する刀ってこと?」

「はい。剣の鍛錬中は疲れてしまうので、その疲れが癒せたら良いなというところから着想を得ました!」

「おおー」

 なんとも、今でもヒラガ流の剣術は毎日こなしており。
 それとともに勉強もより一層捗るようにとのことで考案したそうだ。

「中々に目の付け所が良いと思う。すごいぞライデン」

 そしてレシピ登録にもされるだなんて。
 もうこれは立派な設計図である。

「へへへ……」

「でもちょっと足りないところがあるかもね」

「え……そ、そうですか……? 個人的にはバッチリだと思ったんですけど……」

「疲れっていうのは、体を動かしてHPが減ってしまうことにも起因するけど」

「は、はい……」

「それ以上に精神的な要因の方が強い。だから、ポーションだけだと足りないよ」

「ああ……確かに、勉強し過ぎたら気疲れしてしまいますね。いや集中すると体はまだまだいけても、なんだか頭が回らなくなってしまうってことも多いです。確かに、確かにその通りです」

 適当にそれっぽいことを言ったのだが、なんとか良い感じに理解してくれて助かった。

「だったら……そうか、聖水とポーションを中に仕込んでじんわり手のひらから回復するようにしたら良いんですね!」

「え? あっうん、いいんじゃないそれで?」

 手のひらからじんわり、というのは外せない条件なのだろうか。
 まあ、刀に仕込むっつってるから、得てしてそうなってしまうのかもしれないけど。

「ほ、他に何かないですか!?」

「え? えっと……あと、いい匂いとかしたらいいんじゃね? うん」

「いい匂いですか……確かにリラックスできますもんね! そのアイデアいただきます!」

「え? あっうん、どうぞどうぞ」

 直向きなライデンは、俺が言ったことを真摯に受け止めていた。
 そしてカリカリカリとすごい速さと達筆でノートに色々書き記して行く。

「こんな感じですかね!」

 新しく書き記されたものを見る。
 すると。



〈【安堵の治癒刀・下級】がレシピに登録されました〉



 ふぁー!
 なんか知らないけど、グレードアップして登録されたぞ!

 ちゃちゃっと材料を見て見ると。
 ノートに書いてあったようなポーション、聖水、ハーブオイル各種。
 それに刀の材料を追加して、作れるレシピとなっていた。

「……ライデン、ちょっと見ない間に腕をあげた感じ?」

「トウジさんならわかりますか!」

「うん? どういうこと?」

「実は、ちょくちょく刀を打ち始めてるんですけど、ついに覚えたんです!」

「な、なにを?」

「鍛冶スキルですよ!」

「マジか……」

 でも、違和感を感じる。
 これまでにも、ちまちま冒険者業が休みの日に鍛冶屋へとお邪魔していたのだ。
 真・勇者伝説を大量購入する時のついでに、俺も個人的に色々調べていたのだ。
 他のレシピの存在について、である。

 だが、ダメだった。
 鍛冶屋にオリジナル武器の製法を高い金を払って教えてもらっても。
 さらに高い金を積んで紙に詳しく書き記してもらってもダメだった。

 すでにレシピに存在しているのか。
 はたまたレシピだと見なされないのか。

 どういう訳か。
 浄水の作り方を教えてもらった時のように。
 ヒラガの古書を見た時のように。
 レシピに登録されることはなかったのである。

 当然ながらオスローの昔見せてくれた設計図。
 それもレシピとしては登録されてくれなかったぞ。

 俺のそんな気持ちを知ってか知らずか。
 ライデンは、嬉しさを噛み締めたような表情で呟く。

「軍人にはなれない僕に、神様が授けてくれたんでしょうかね……?」

「……ライデンの今までの努力が身を結んだんだよ」

 恐らくだが、先祖譲りの鍛冶スキルなんじゃないだろうか?
 彼は鍛冶というが、恐らくただのスキルではないと思っている。
 これはもう、パインのおっさんと同じ部類に入る気がした。

 装備のレシピが作れる存在は、俺にはとんでもなく有能。
 必要不可欠。
 よし、囲い込もう。
 ライデンならば、人柄も知っていて信頼を置ける。

「あのさ、ライデン。在学中でも、卒業してからでもいいんだけど」

「はい、なんでしょう?」

「俺が出資してる魔導機器の研究所に来ない?」

「え!?」

 驚いた表情をしながらガタッと立ち上がるライデン。
 その様子に、食堂内の視線がやや集中した。

「ちょっと、目立ってるって」

「す、すいません」

 顔を赤らめながら大人しく席に座るライデンと、飯を食べつつ話を戻す。

「オスロー先輩と関わりがあったのは知ってましたけど、まさかそんなことになってるとは……」

「まあ、俺は人と人とを繋げただけで、あとはみんなが上手くやってくれているだけなんだけど」

「それでもすごいですよ。トウジさん。尊敬しています!」

「ありがとう」

 尊敬されるってのもなかなか悪くない。
 ちなみにみんなの憧れであるC.Bファクトリーの元代表もいると知ったらどうなるだろう。
 驚くかな?

「で……どう?」

「是非、よろしくお願いします! 普通は職場体験とか来年からなんですけど、嬉しいです」

「よし、決まりだな」

 二つ返事でオッケーしてもらえたので、これにて囲い込みは終了だ。
 近々、浮遊結晶の実験に立ち会ってくれとお願いされてるから、ライデンも連れて行こう。

 いやー、なかなかに面倒な依頼かもなと思っていたけど。
 こうしてレシピ認定される物が作れるライデンのことがわかっただけでも。
 味方に引き入れることができただけでも、とんでもない成果だと言えた。
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