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本編
603 別の世界線?
しおりを挟む「ん……」
肉球というか、もふもふプニプニが俺の顔を撫でる。
「──アォン」
目を覚ますと、ポチが俺の顔を覗き込んでいた。
「ポ、ポチィ!」
「ォン」
思わず抱きしめてしまう。
会いたかった、本当に、会いたかった。
ゴレオ、コレクトも一緒にいる。
俺の側に来てくれるので、みんな揃って抱きしめた。
「ポチィ、ゴレオォ、コレクトォ」
「ォン」
「……」
「クエッ」
周りを見ると、木造の小さな部屋の中。
魔国の奴らにバインドされたと思うのだけど…‥。
「ここはどこだ?」
ポチたちが助けに来てくれたのか?
巻き込みたくない。
心の中で思っていても、やはり嬉しい。
来てくれて、側にいてくれて。
ただただ嬉しいと、そう感じた。
「あれ、イグニールとジュノーは来てないの?」
そう言えば、周りにはポチたちしかいない。
彼女たちはどうしたんだろう、と聞いて見ると。
「……アォン?」
ポチは首を傾げていた。
──え?
「もう一度聞くけど、イグニールたちは一緒じゃないのか?」
「……?」
ゴレオが首を傾げつつも、メモ帳に書く。
だれ、それ。
「──ッ」
誰それ、それはないだろ。
一番お前の、ゴレオの面倒見てくれたイグニールだよ。
「コレクト! ジュノーは?」
「クエッ?」
コレクトに尋ねて見ても、ゴレオ同様に知らない様だった。
一緒にいる時は常に背中に乗せていたのに、マジか。
「……アォン?」
心配そうにポチが俺の顔を覗き込む。
俺はポチの顔を掴んでむにょんむにょんと触る。
撫でたりほっぺを伸ばして見たり、いろいろだ。
「あぉんあぉんあぉん」
「こいつらは普通だな、夢じゃないか」
「アォン!」
自分の頬にやれよ、とポチから抗議のポカポカを肩に受ける。
痛くはないが、それなりに衝撃を感じるから、夢ではない様だ。
「……にしても、どうなってんだ」
ポチたちが一緒にいたイグニールたちのことを全く覚えていない。
「マイヤー、パインのおっさんは覚えてる?」
「アォン」
それは覚えてるっぽい。
ジュノーとイグニールだけがすっぽり消え落ちているらしい。
はあ、全く面倒なことになった。
こりゃ、精神的な能力をその身に受けていると仮定して良いだろう。
俺は毎朝霧散の秘薬を必ず飲むから、そういうのには無縁だ。
いったい誰が……魔国の奴らの最後の攻撃。
あれが、そんな感じの効力を持っていたとかだろうか?
ここで俺は取り乱したりはしないぞ。
こういう精神攻撃は前にも受けていたしな!
つーか、勇者たちと一緒に行動する方がストレス溜まる。
ナチュラル精神攻撃をかましてくるのだし。
ガチャ。
そんなことを考えていると、部屋にある扉が開いた。
「トウジさん! いきなり倒れてしまったから心配しました!」
「トウジさぁん! 私、すっごく心配したんですよぉ!」
「大丈夫……って、なんか呑気そうな顔出し大丈夫ね」
「ふむ、心配して損したぞ、トウジ」
扉からは勇者、聖女、賢者、剣聖。
その四人が流れ込むように入ってくる。
そして、俺が寝ているベッドに駆け寄って来た。
「は?」
「は? って、トウジさん……何を惚けた面してんの」
「いや……」
精神攻撃にしては、なんとも生ぬるくないか?
もっとこう、イグニールが囚われていたりとか。
ジュノーが酷い目にあっていたりとか。
そういう展開で、敵が勇者だった方がリアリティがあって俺はキレる。
なのに、いきなりドアが開いて「トウジさん!」とか、言われてもな……。
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