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本編
616 自由を得るために
「……すいません、もう一度おっしゃっていただけますか?」
「はい、勇者は封印、魔国の裏切り、俺たち逃亡……です」
クロイツに戻って来た。
アドラーに謁見を申し込んで、さっそく事の顛末を伝える。
その際、もう一度言ってくれと言われたので簡潔に答えた。
「まるでラップみたいですぞ」
「ラップってなんだし?」
「ノリの良い罵倒みたいなもんですぞ」
「へ~」
後ろで会話する骨とジュノーはさておいて。
アドラーの反応はどうだろうか。
「……」
片眉を上げて、未だ理解に苦しんでいる。
ニコニコ笑顔だったのに、何とも滑稽か。
こうして見ると、ただのガキである。
「えっと、つまりは魔国軍の軍師に狙われ帰って来たと」
「そうです。バインドで奇襲、勇者は拷問、そして封印」
「やめてもらえませんか、リズムに乗るの」
「すいません。でも嘘偽りは一切言ってないですので」
何なら嘘発見器でも持ってこい。
そう思っていたのだが、アドラーは頷く。
「トウジさんが余計な嘘を付く様な方だとは思ってませんから、ええ」
「ありがとうございます」
「ちなみに意識、そして力を失ってからどれくらい経ちましたか?」
「えっと、だいたい2日くらいですね」
詳しい時間に関してはわかっていない。
だが、スキルを失ってからはそのくらいの時間が経過している。
「なるほど……由々しき事態です、至急治療院の者を呼び寄せてください」
「ハッ!」
アドラーの言葉に合わせて、家臣の一人がさっと謁見の間を出て行った。
状況について理解したのだろう。
このままだと、勇者一行の命が危ないということに。
人は水も何も口にしないと3日で死に至る。
多少はレベルアップで強化されていたとしても、長くはない。
勇者としての力を封印された今、ステータスは大きく下がっていた。
力を失って10分の1。
まさに俺の素ステと同じ様なもんである。
「……」
アドラーは苦虫を噛み潰したような表情で黙っていた。
今後どうするかを考えているのだろう。
勇者をむざむざ死なせてしまったら、諸国からのバッシングは酷い。
デプリからは、かなり講義の声を受けることになりかねないだろう。
「何か手立てはあるんですか?」
空気が重たかったのでそう尋ねてみた。
表向きは勇者を労ってのことである。
「手立てが無いってことはないのですが、厳しい状況です」
だろうな、と心の中で俺も呟いた。
この世界に点滴とか、現代医学は存在しない。
故に、昏睡状態からの餓死は厄介なのである。
一応、俺も手を尽くそうと持って、回復の秘薬を振りましてみた。
しかし回復しても回復しても、HPはじわじわと減少していく。
どれだけ回復させようとも飢えによる衰弱が回復速度を超えるのだ。
その時が、彼らの最後の時である。
「アドラー様、手立てとは?」
非常にどうしようもない状況なのだが、まだ手立てはあるらしい。
それが少し気になった。
「治療院の方に頼んで衰弱を抑えていただきます」
「え? 一応俺もポーションを使ってるんですけど……同じですよね?」
「こういう場合のために、対象の時間を止める魔法があるんですよ」
「ほうほう」
昏睡した状態のまま、体の時間を止めてしまう。
まさに一種のバインドの様な魔法が存在するらしい。
何十人もの治療師が集まって担う魔法。
それによって、ひとまず衰弱死はなくなる。
その間に、意識を戻す方法と封印を解く方法を考えるのだ。
「しかし難点がありましてね」
毎日毎日、治療院の上級治療師が魔力を使い続けなければならい。
そのためには、多大なる費用がかかってしまうということだった。
「さらに、そもそも今から呼び寄せて当日中に間に合うかどうか……」
城下町にも上級治療師は存在する。
しかし、その魔法を使うには、人手が足りないのだ。
「ねえ、口から水と食べ物を無理やり入れちゃえば良いし?」
「アホか、窒息するわ」
物騒なことをジュノーが言い始めたので、黙らせる。
それができたら苦労しないんだよな。
やっぱり点滴ってつえーな、現代医学すげーな。
下手に回復魔法スキルとかあるから、発展していないのである。
あれ、生み出したら現代知識無双できるんじゃね?
いや、なんかバッシングとか治療院から受けそうだしやめとこう。
団体を敵に回すのは面倒なのだ。
「その方法だと、竜の実と呼ばれる果実があれば……」
「竜の実?」
「ええ、その果実の汁一滴でも、餓死は免れます……しかし、竜樹自体が伝説の代物ですから……」
──あるっ!
そう言えばグルーリングたちからお土産としていくつかもらっていた。
ジュノーのダンジョン内でも、育てようとしているところである。
そう言えば、食ったらめっちゃ生きれるとか、そんな話あったなあ……。
よし、ここはひとつ。
交渉といきましょう。
=====
近日中によき知らせができたら良いなと思っております。
「はい、勇者は封印、魔国の裏切り、俺たち逃亡……です」
クロイツに戻って来た。
アドラーに謁見を申し込んで、さっそく事の顛末を伝える。
その際、もう一度言ってくれと言われたので簡潔に答えた。
「まるでラップみたいですぞ」
「ラップってなんだし?」
「ノリの良い罵倒みたいなもんですぞ」
「へ~」
後ろで会話する骨とジュノーはさておいて。
アドラーの反応はどうだろうか。
「……」
片眉を上げて、未だ理解に苦しんでいる。
ニコニコ笑顔だったのに、何とも滑稽か。
こうして見ると、ただのガキである。
「えっと、つまりは魔国軍の軍師に狙われ帰って来たと」
「そうです。バインドで奇襲、勇者は拷問、そして封印」
「やめてもらえませんか、リズムに乗るの」
「すいません。でも嘘偽りは一切言ってないですので」
何なら嘘発見器でも持ってこい。
そう思っていたのだが、アドラーは頷く。
「トウジさんが余計な嘘を付く様な方だとは思ってませんから、ええ」
「ありがとうございます」
「ちなみに意識、そして力を失ってからどれくらい経ちましたか?」
「えっと、だいたい2日くらいですね」
詳しい時間に関してはわかっていない。
だが、スキルを失ってからはそのくらいの時間が経過している。
「なるほど……由々しき事態です、至急治療院の者を呼び寄せてください」
「ハッ!」
アドラーの言葉に合わせて、家臣の一人がさっと謁見の間を出て行った。
状況について理解したのだろう。
このままだと、勇者一行の命が危ないということに。
人は水も何も口にしないと3日で死に至る。
多少はレベルアップで強化されていたとしても、長くはない。
勇者としての力を封印された今、ステータスは大きく下がっていた。
力を失って10分の1。
まさに俺の素ステと同じ様なもんである。
「……」
アドラーは苦虫を噛み潰したような表情で黙っていた。
今後どうするかを考えているのだろう。
勇者をむざむざ死なせてしまったら、諸国からのバッシングは酷い。
デプリからは、かなり講義の声を受けることになりかねないだろう。
「何か手立てはあるんですか?」
空気が重たかったのでそう尋ねてみた。
表向きは勇者を労ってのことである。
「手立てが無いってことはないのですが、厳しい状況です」
だろうな、と心の中で俺も呟いた。
この世界に点滴とか、現代医学は存在しない。
故に、昏睡状態からの餓死は厄介なのである。
一応、俺も手を尽くそうと持って、回復の秘薬を振りましてみた。
しかし回復しても回復しても、HPはじわじわと減少していく。
どれだけ回復させようとも飢えによる衰弱が回復速度を超えるのだ。
その時が、彼らの最後の時である。
「アドラー様、手立てとは?」
非常にどうしようもない状況なのだが、まだ手立てはあるらしい。
それが少し気になった。
「治療院の方に頼んで衰弱を抑えていただきます」
「え? 一応俺もポーションを使ってるんですけど……同じですよね?」
「こういう場合のために、対象の時間を止める魔法があるんですよ」
「ほうほう」
昏睡した状態のまま、体の時間を止めてしまう。
まさに一種のバインドの様な魔法が存在するらしい。
何十人もの治療師が集まって担う魔法。
それによって、ひとまず衰弱死はなくなる。
その間に、意識を戻す方法と封印を解く方法を考えるのだ。
「しかし難点がありましてね」
毎日毎日、治療院の上級治療師が魔力を使い続けなければならい。
そのためには、多大なる費用がかかってしまうということだった。
「さらに、そもそも今から呼び寄せて当日中に間に合うかどうか……」
城下町にも上級治療師は存在する。
しかし、その魔法を使うには、人手が足りないのだ。
「ねえ、口から水と食べ物を無理やり入れちゃえば良いし?」
「アホか、窒息するわ」
物騒なことをジュノーが言い始めたので、黙らせる。
それができたら苦労しないんだよな。
やっぱり点滴ってつえーな、現代医学すげーな。
下手に回復魔法スキルとかあるから、発展していないのである。
あれ、生み出したら現代知識無双できるんじゃね?
いや、なんかバッシングとか治療院から受けそうだしやめとこう。
団体を敵に回すのは面倒なのだ。
「その方法だと、竜の実と呼ばれる果実があれば……」
「竜の実?」
「ええ、その果実の汁一滴でも、餓死は免れます……しかし、竜樹自体が伝説の代物ですから……」
──あるっ!
そう言えばグルーリングたちからお土産としていくつかもらっていた。
ジュノーのダンジョン内でも、育てようとしているところである。
そう言えば、食ったらめっちゃ生きれるとか、そんな話あったなあ……。
よし、ここはひとつ。
交渉といきましょう。
=====
近日中によき知らせができたら良いなと思っております。
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