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本編
618 引き分けか……?
「小さなダンジョンを育てる……果たして可能なのですか?」
アドラーの問いに、ジュノーが答える。
「あたしが今トウジの所にいるし、実際」
「それは少々特殊なケースだと思いますけど……」
そうだ、特殊だ。
基本的にダンジョンって自分以外の物は餌だと認識している。
八大迷宮のやつらだって、人を殺さないなんてことはない。
俺の視点では、話が通じるやつらだったと言うだけなのだ。
「みんな誠心誠意をもって話せば、友達になれるし!」
「そうですか、ではダンジョンコアをどなたか紹介してもらえませんか?」
その言葉を聞いたジュノーは黙る。
友達、いなかったからな……。
ダンジョンコアの知り合いなんて彼女にはいない。
「そもそもジュノー、ダンジョンって横の繋がりあるのか?」
「ないし」
「だよな。繋がってんのは、他の八大迷宮クラスのコアだろ」
近場にダンジョンを構える、なんてことはまずあり得ないのだ。
そんなことしたら、周りの資源の取り合いになってしまう。
拡張を重ねるごとにダンジョンの深部が重なり合ったらヤバイ。
まあ、ダンジョン同士の小競り合いなんて聞いたことないけど。
「その言い方ですと、トウジさんは他の八大に関しても情報をもっているんですか」
「あ、やっべ」
「ぜひ教えて欲しい所ですねえ」
「教えたいのも山々ですけど、断片的な情報しか知りませんよ? うん」
色々知ってそうなスローフだって、そんな感じだった。
必要以上に知り過ぎるとヤバイ、みたいなね。
……あっ、でもここで教えておいても良いのでは?
とんでもない厄災の運命とか、こいつ巻き込もうぜ。
ダンジョンを知るには、リスクが付き物なのさ。
「俺がダンジョンにちょっかい出したがらない理由が一つありますよ」
「ほう、なんでしょう」
「すごく昔にとんでもない厄災があって、それに関係してるっぽいです」
「随分とふんわりした説明ですね」
「色々聞いた状況から、こっちで勝手に推測しただけですから」
とにかく、ダンジョンを奪うだのなんだの。
こと八大迷宮に関してはやるべきではない。
そういう認識でオッケーなのだ。
触らぬ神に祟りなし、ってよく言うだろ?
「もはや勇者とか魔王とかの次元ではないとのことですよ」
「ふむ。ですが実際にトウジさんが旅立ったと言うことは、何か手立てがあったということでは?」
「……いや」
──行くしかねーだろーがよー!!
と、俺は心の中で呟いた。
心の中で。
まったく、あそこで断れる流れじゃなかっただろうが……。
「無理」と言わずに続ければ無理じゃなくなる理論か?
ブラック過ぎるだろ、勇者稼業。
ちなみに、軍師の介入がなければ、どこか良いタイミングで引き返す予定だった。
旅立って、良い感じのところで「無理でした」って具合にである。
再び戦力を整えて頑張りますので、お金ください戦法を使うのだ。
そのために、法外な料金を勇者に請求したんだからね。
「ともかくアドラー様」
怒りも枯れ果てて、すっと落ち着いた様な気持ちで俺は言う。
「特にこだわりが無いのでしたら初期段階のダンジョンコアを従魔にすることをお勧めします」
「ふむむ……」
「絶対良いですよ? ダンジョンコアって、ジュノークラスでも素でレベル100ありますし」
「あたしクラスってなんだし!」
耳の穴の中に指を突っ込まれる。
あふんってした。
「なるほど。なんにしても交渉は平行線を辿りそうですから、もう少し見識を広めることにします」
「おお!」
なんとか納得してくれたってことで良いのかな?
やはり、生の意見はでかいぞジュノー。
最初からこうしておけばよかった。
もっとも、勇者たちがお寝んねしてるから話が早いのだけど。
起きてたらダンジョンは敵だって、ジュノーを斬りかねない。
「じゃあ、攻略ではなく自作の方向で交渉はまとまったってことで良いですか?」
「そうですね」
アドラーは頷きながら言う。
「では、その小さなダンジョンを探して来てください。トウジさん」
「……えっ、俺がですか?」
「ええ、他に誰がいらっしゃると言うのですか?」
こき使いすぎだろ、こいつ。
「いやあ、俺も忙しいと言うかなんと言うか……」
「報酬次第ですか? だったら僕の手持ち出します」
「えっと……」
まあ、それだったら難易度ははるかに下がるから良いかな?
俺も自由に過ごせるならば、その提案には乗っても良いと思えた。
と言うよりも、早い所この会話を終わらせたかったのである。
うん、王であるアドラーはダンジョン探しになんて行けるはずがない。
ギルドに依頼するくらいならば、俺がやった方が早いのだ。
俺はダンジョンコアとの戦い方を熟しているから、まだなんとかなる。
消耗戦に持ち込まれたら人間はダンジョンには勝てない。
さっさと潜って早期決着、それが普通の対処方法なので、味方に引き入れるのは不可能に近いのだ。
そう考えると、ジュノーとの出会いって、なんとも不思議というか。
奇跡的なものに近かったんじゃないかなと思えて来た。
「それだったらまあ……」
と、交渉成立する時だった。
「──待てトウジ!」
「──待ってくれトウジくん」
謁見の間に、オカロとオスロー親子がなだれ込んでくる。
「対価を得るならば、別のものにしようトウジくん!」
「うむ、せっかくギリスとは違う魔導機器を作る国家なのだから、もっと有意義な話し合いにするべきだ!」
=====
頭脳派が動く。
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