装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

619 交渉成立

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「あなた方は……トウジさんと一緒に空飛ぶ船に乗っていた……」

 謁見の間に入って来たオカロがすぐに片膝をついて挨拶をする。

「ご挨拶が遅れました。トウジくんのところで魔導機器のエンジニアをさせていただいてます、オカロ・ブリンドです」

「オカロ……ギリスC.Bファクトリーの元代表が、何故こんなところに……?」

「トウジくんとともに開発しております、飛空船の運行実験も兼ねてですね」

「飛空船……あのロック鳥に引かせていた空飛ぶ船ですね……そうですか、あれにはあなた方が携わっていたんですか」

「もっとも、発案と出資の全てはトウジくんで、僕はただの雇われ研究者ですけども」

 膝をついたまま、オカロは俺の方を向く。

「トウジくん、差し出がましい様だけど、僕の方から一つ良いかな?」

「どうぞどうぞ」

 彼は俺よりも年上で、人生経験もかなり豊富だ。
 C.Bファクトリーの代表として、腐り散らした奴らと戦って来た。
 かなりの数の研究員を説得し、うちの商会に吸収して来た。
 交渉に関しては、王族にも引けを取らない『商人』なのである。

 マイヤーもそうだが、こういう時に商人ってポジションは大事だ。
 RPGの世界で財政を担う商人という職業があるのも納得である。

「アドラー様」

 そしてオカロはアドラーに向き直って告げた。

「今回の運行実験にて、約七日ほどでギリス首都からクロイツを超えた魔国領北方へと向かうことができました」

「ギリスからクロイツまでを……七日……?」

 そのとんでもない速さに驚いた顔を作るアドラー。
 俺だって最初聞いたときは驚いた。
 本気を出せば、早いらしいんだよ、飛空船って。

 恐らく、寝ている間も走り続けることができるからだろう。
 ワシタカくんの場合は、一旦陸地に戻って食事休憩を取る必要があるのだ。
 広いスペースが取れる、それは本当に素晴らしいことである。

「この数字は、船体の耐久値を度外視した全力飛行での限界数値」

「つまり安全を考慮した場合はもう少しかかると?」

「はい、直行ですと片道10日ほどでクロイツまで飛行できる性能を持ちます。他の国を経由した場合だと、もう少し日数を必要としますが、このトウジ君と我が娘主体となって考案したアイデアは、世の中の物流網を大きく覆す、新たな時代の到来を確信たるものにするものでございます」

「……ふむ、では僕は何をすれば良いのですか? すでにほとんど完成されているようにも感じますが?」

「船には船着場が必要になることと同じように、この飛空船にも船が着く場所が必要となります。一国一城の主人たるアドラー様に直接交渉権をいただけるのであれば、ぜひとも飛空船用の空の港をいただけないかと思っております」

「空の……港……」

 空港だな、空港。
 飛空船が立ち並ぶ空港、是非とも見てみたいと思った。
 どのくらい先になるかはわからないけどね。

「ええ、今後の貿易はこの飛空船が重要な要素となってくるでしょう。同じような革新技術の計画を持つC.Bファクトリーとの技術力合戦真っ只中、依然として長き歴史と古い繋がりを持つ彼らに、私たちは決め手を打つことができておりません。勝利を確固たるものとし、巨万の利益を得るためには、ここはひとつ、トウジ君とアドラー様の関係の元、後ろ盾としてクロイツにどの国よりも先に飛空船の空港を作らせていただければ!」

「ふむ……」

 ぐいっと迫真の表情で説明するオカロ。
 すげぇ。
 なんだかオカロにもオーラが見えて来たぞ。

「空港をギリス国内でやろうとすると、基本的にC.Bファクトリーが絡んでくるでしょう。法外な要求を迫ってくることもあるでしょう。しかしながら、私の目的は大勢の人々を便利にすること。勇者と魔王の対立を外交でまとめ、争いの火種を食い止めたアドラー様ならば、ご理解いただけるはずです」

「パパ、資料」

「ありがとう娘ちゃん、大好き愛してる」

 オスローから紙の束を受け取ったオカロはそれに目を通しながらさらに話を続ける。

「クロイツは港を持たない国、貿易はかねて陸路をお使いになられていると存じております。一つ空の港を確保し、ご利用されてみるのはいかがでしょうか? 他の国へのカードとすることもできますし、国益は計り得ません」

「仮に僕が空港を持ったとして、他の国にも港がなければ意味がないのではありませんか?」

「ご安心ください。すでにギリスではデリカシ辺境領、そしてトガルのリゾートオデッセイ、ストリアのテイスティ侯爵領。計画としてはこの三つに空港を作る予定となっております。ともにトウジ君とつながりがあり、さらには八大迷宮と呼ばれるダンジョンに隣接した領地……」

 この意味、わかりますよね、とオカロは目で言っていた。
 つまるところ、ダンジョンに向かう冒険者を客にできる。
 さらにさらに、デリカシ辺境領、テイスティ侯爵領はグルメ二大巨頭が治める土地。
 美味いものを食べに行きたい貴族の客なんかも取れるのではないだろうか。
 それを加味するとオデッセイとか、めっちゃ人呼びそうだよな。

「勇者様型をお救いする、トウジ君がダンジョンコアを捕まえに行く、この二つは譲れない状況ならば、是非ともクロイツ国内に大きな造船所、そして空港を構えさせていただきたく思います」

「なるほど、つまりは土地代をタダにしろ、と言うことですか?」

「そうですね、土地代を安くしていただくこともそうですが、飛空船の運用には専門的な技術知識も必要になって来ますので、その人材育成などを国から支援していただければと思っております。人は力です。それが一番足りていない部分となっておりまして……」

「ふむ」

「また、飛空船の搭乗料金を大きく下げたいと思っておりますので、その辺の援助や許容をしていただければと思っています。人が流動的になれば経済効果は計り知れませんが、軌道に乗るまでの我慢を強いてしまうことにもなります。この交渉ではその辺りを今一度煮詰めさせていただきたく思います」

「……わかりました。国益、そして僕の夢にも寄り添うようなご提案をありがとうございます。良いでしょう。もとより実際に空を飛ぶ姿を遠目で見ていましたから、断る理由なんてありません。後で家臣を呼ぶのでそのまま計画を再びご説明していただけますか?」

「ありがとうございます」

 話がまとまった。
 すげーな、俺じゃ無理な部分でオカロはバリバリと話を進めてしまった。

 要するに、土地くれ、人くれ、技術くれ、最初は赤字だけど我慢してくれ。
 そういうことだ。

 基本的に、誰でも利用できるように料金を安く設定したいオカロである。
 そのためには多額のお金が必要となるのだが、国から引っ張るのが手っ取り早い。
 さらに国の後ろ盾が存在する状況、C.Bファクトリーから潰されることもない。

 ぶっちゃけ有り余るお金を私財を投じて人をかき集めることは可能だ。
 魔王の精神世界でたんまり稼がせていただいたからね。
 しかし、湯水のごとくお金を使うと、まあ世界がインフレしちゃう。
 だから、俺はこのお金は強化費用として使うことにしているのだ。

 素材は確保するから、最初のお金以外の資金繰りは自分らで賄う。
 これが本来のあり方なのである。
 最初にお金をがっつり入れてる分、少しセコいかもしれんが……。
 まっ、今後ちゃんとやっていけば良いのだよ!

「でも、俺、やっぱりダンジョンコア捕まえに行のか……」

 俺のつぶやきにオカロとアドラーが反応する。

「トウジ君、途中から話聞いてたけど、絶対譲れない条件って誰にでもあるんだよ?」

「オカロさんの言う通りです。土地も人も技術も金も出しますから、お願いしますよ」

「むむむ」

「なんならギリスのC.Bファクトリーに対しても外交圧力をかけることに力を貸します。他にもトウジさんの敵となりうる様な方々いるのでしたら、僕が後ろ盾としてドンドン圧力をかけさせていただきます。だから敵だとは思わないでください、味方ですよ、味方。最初から最後までずーっと味方ですよ?」

 本当かよ……。

「ならもう一つ条件として、八大迷宮には関わらない、敵対しない、そういう約束をしていただけますか?」

「約束しましょう。僕がダンジョンを大迷宮として育て上げれば、話はそれで済みますからね」

「うーん、わかりました」

 大迷宮って、育てたからなるものじゃないと思うけど。
 まあ、ひとまずアドラーの意識が別に向いたからよしとしておこう。
 権力者を前にして、どうせ回避不可能なイベントだったんだ。
 飛空船の計画が大きく進むことになって、俺の自由も確保できるなら、それで良いか。






=====
巡り巡って、国家単位での土地、労働力、金を確保。
対価は野良のダンジョンコアを王様にプレゼント。

一方C.Bファクトリー。
後ろ盾としてデプリがこっそりいましたが……。
デプリの強みだった勇者もクロイツに全部ある状況になりましたね……。
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