文字の大きさ
大
中
小
319 / 650
本編
620 アメリカンドッグ・前編
さて、一旦ダンジョンコアを手懐けに行くとか行かないだの話は後回し。
勇者たちには無事に竜の実をお届け、そして治療院の人が間に合って凍結。
クロイツ王城の厳重なる部屋にて、目覚めるまで待つことになった。
その間、オカロとオスロー主体で飛空船に関することが話し合われている。
うむ、これもお任せでいいだろうな。
俺が口を挟む余裕とかなく、そもそも何がどう進んでいるのかすら知らん。
専門家とか、詳しく事情を知る人物に任せたらいいんだ、こういうのは。
俺がお金出さなくても、もう勝手にことが運ぶようになっている。
うーん、そう考えると俺の人脈ってヤバい?
いやいやここで驕った考えを持つのはやめておこう。
俺の力ではなく、みんなの努力の結晶なんだからな!
んでもって。
話し合いがひと段落つくまで俺たちはクロイツに滞在することとなった。
「ポチとお散歩だなんて、なんだか久しぶりだな?」
「アォン」
難しい話を有能な奴らに任せた俺は、朝からポチとクロイツ城下町を歩く。
ポチがどうしても本場のソーセージを食べてみたいらしい。
ちなみに他のメンツはまだ寝ている、それくらい朝早い時間帯だった。
「ふああ……」
「欠伸してちゃ幸せが逃げて行っちまうぜ、兄ちゃん!」
「あっ、すいません」
クロイツ城下町の人々は、朝早くからしっかり起きてキビキビと動いている。
人気のソーセージ工房ではミンサー魔導機器の音が鳴り響いていた。
みんな朝食用のソーセージを求めて、綺麗な列をなしている。
仕事に行く前の人とか、朝から冒険者業にせいを出すやつらとか。
大体の連中が、パンに挟んだソーセージを食べながら歩いている。
ホットドッグだな、あれ。
ちなみに、挟んでいるパンは普通の食パン。
俺の知るような、コンビニにも売ってあるホットドッグではない。
普通にソーセージという名前で売られていることから、持ちやすくパンに挟んでいるだけだった。
パンとソーセージにソースをかけただけのものから、細切りにしたピクルスとか野菜が入ったものまで。
前は全く食欲がなくて見ることもしなかったのだが、食べている姿を見るとお腹が空いてくる。
「ポチ、食べる?」
「ォン!」
よし、買い食いしちゃおっか。
列に並ぶのは面倒だけど、人が並んでいる店の物は美味しそうだったから並んでみることに。
時間はたっぷりあるし、ポチを抱っこしながら待っていよう。
「よっ! 兄ちゃん見ねえ顔だな! クロイツには観光かい?」
黙って並んでいると、俺の後ろに並んだおっさんから声をかけられた。
「ええ、まあそんな感じです」
この国に再召喚されたとはとてもじゃないが言えないので、適当に答える。
今は観光気分だし、俺はただの観光客なんだ。
「おうおう、だったらそんな店よりもこっちに穴場があんぜ? 穴場!」
「ほうほう、穴場ですか」
なんとも、地元の人が美味いソーセージの店を教えてくれているっぽい。
地元民の意見って結構重要だから、その穴場のソーセージ屋は気になる。
「正直な、みんなここの店によく並んでるんだが、味は普通だぜ?」
「そうなんですか? みんな並んでたら美味しいと思いますけども」
「いや、みんな並んでっから、なんか他の連中も並んで買っちまうんだ」
「……なるほど」
なんかそれ、分かる気がする。
人がいっぱい並んでる店って、なんか信用して並んでしまうんだ。
「みんな最初に使った店をずっと使い続ける国民性だからよ」
「はい」
「観光客もそれに付き合わされて本当に美味いもんを知らずに帰っちまうってことが多いんだ」
「そうなんですか……」
生真面目なのかな、クロイツの人って。
つーか、それを言う目の前のおっさんもどうなんだろう。
自虐ネタか?
「本場クロイツのソーセージってのを俺が教えてやるぜ!」
「ふむ……」
ニカッと歯をむき出しにして笑いながらサムズアップするおっさん。
一応ポチにも聞いておくか。
「どうするポチ? そっちを見に行ってみる?」
「アォン」
頷くポチ。
どうやら穴場、そして本場という言葉に惹かれたらしい。
本場って、実際は目の前にあるソーセージ屋のことなのだが……。
まあ、腹が減ったらまたくりゃ良いか。
「案内してもらえます?」
「おうよ! こっちだぜこっち!」
俺とポチは列から離れ、おっさんについて行くことにした。
なんだか列に並ぶ人の視線を感じるのだが……。
別に行くなら早く行けってことなのだろう。
「よっしゃ! ここだぜ!」
路地を抜けて行くと、寂れた公園に小さな屋台がポツンとあった。
「えっ、ここですか……?」
「おうよ! ここが穴場のソーセージ屋台だぜ!」
小さな屋台には誰もおらず、人っ子一人いない。
こんな朝っぱらから公園で遊ぶ子供なんかいないからだ。
「えっと……店の人いないみたいですけど……?」
「ん? 店の人? ああ、俺だぜ。いらっしゃい! 何食べる?」
「は? ……えっ」
「おう、いらっしゃい! ここが新感覚パンケーキソーセージ屋だ!」
……だ、騙された!
このおっさん、客引きだったのかよ!
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
間違えられた番様は、消えました。
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。
運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。
「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」
ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。
ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。
「エルマ、私の愛しい番」
けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。
いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。
名前を失くしたロイゼは、消えることにした。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキルを奪われてお詫びチートをもらったので余生を楽しく……過ごさせてくれ
異世界に召喚されたその日、巻き込まれた青年に俺が得るはずだったスキルを奪われた。
お詫びとしてチートスキルを授かった俺は、第二の人生くらい好きに生きようと旅に出る。
行き着いた先は、寂れた町の場末の酒場だ。
なぜか客は男ばかりだが、日雇い冒険者や恐妻家の肉屋たちとの気楽な毎日は悪くない。
……ただ一人、どう見ても貴族のような美青年がこの地味な酒場へ通ってくる理由だけは、さっぱりわからない。
「お前らツケはやめろ」
そんな穏やかな日々を送っていたはずなのに、ある日、酒場へ厄介な依頼が舞い込んできた――。
他サイトでも掲載しています。
不定期更新です。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
『お前が運命の番だなんて最悪だ』と言われたので、魔女に愛を消してもらいました
竜族の王子フェリクスの成人の儀で、侯爵令嬢クロエに現れたのは運命の番紋。けれど彼が放ったのは「お前が番だなんて最悪だ」という残酷な言葉だった。
異母妹ばかりを愛する王子、家族に疎まれる日々に耐えきれなくなったクロエは、半地下に住む魔女へ願う。「この愛を消してください」と。
恋も嫉妬も失い、辺境で静かに生き直そうとした彼女のもとに、三年後、王宮から使者が現れる。異母妹の魅了が暴かれ、王子は今さら真実の愛を誓うが、クロエの心にはもう何も響かない。愛されなかった令嬢と、愛を取り戻したい竜王子。番たちの行く末は――。
愛犬たちと異世界辺境スローライフ~王家から逃げたアラサー女子、スマホ通販で快適生活~
女子高生と一緒に異世界へ聖女召喚された、アラサー女子・一ノ瀬玲。
ところが、召喚された二人を待っていたのは、あまりにも残酷な現実だった。
聖女として期待される女子高生とは対照的に、玲は年齢を理由に無視され、王城で居場所すら与えられない。
それでも何とか生きようとしていた玲だったが――ある日、食事に毒を盛られる。
「……私、命狙われてる?」
愛犬の柴犬・雷電とチワワのアビーに助けられ、玲は王城から逃げ出すことを決意する。
逃亡先で冒険者となった玲のランクは、まさかのFランク。
そんな玲を助けてくれたのは、辺境へ向かう騎士団長・レオンハルトだった。
そして玲のスマホには、異世界へ来た時から謎の【異世界モード】が存在していた。
【異世界通販】
【異世界銀行】
【アイテム収納】
【マップ】
【翻訳】
【ステータス】
「……これ、もしかしてチートじゃない?」
王家から逃げながら、愛犬たちと辺境を目指す玲。
魔物と戦ったり、旅をしたり、異世界通販で買い物したり。
ちなみに、記念すべき異世界通販の初購入は――犬のウンチ袋。
王城では散々だったけれど、もう戻るつもりはない。
アラサー女子と愛犬たちの、ちょっと騒がしくて、時々ほのぼのな異世界辺境生活が始まります。
初投稿なので誤字脱字
支離滅裂有るかと思います
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!