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本編
620 アメリカンドッグ・前編
さて、一旦ダンジョンコアを手懐けに行くとか行かないだの話は後回し。
勇者たちには無事に竜の実をお届け、そして治療院の人が間に合って凍結。
クロイツ王城の厳重なる部屋にて、目覚めるまで待つことになった。
その間、オカロとオスロー主体で飛空船に関することが話し合われている。
うむ、これもお任せでいいだろうな。
俺が口を挟む余裕とかなく、そもそも何がどう進んでいるのかすら知らん。
専門家とか、詳しく事情を知る人物に任せたらいいんだ、こういうのは。
俺がお金出さなくても、もう勝手にことが運ぶようになっている。
うーん、そう考えると俺の人脈ってヤバい?
いやいやここで驕った考えを持つのはやめておこう。
俺の力ではなく、みんなの努力の結晶なんだからな!
んでもって。
話し合いがひと段落つくまで俺たちはクロイツに滞在することとなった。
「ポチとお散歩だなんて、なんだか久しぶりだな?」
「アォン」
難しい話を有能な奴らに任せた俺は、朝からポチとクロイツ城下町を歩く。
ポチがどうしても本場のソーセージを食べてみたいらしい。
ちなみに他のメンツはまだ寝ている、それくらい朝早い時間帯だった。
「ふああ……」
「欠伸してちゃ幸せが逃げて行っちまうぜ、兄ちゃん!」
「あっ、すいません」
クロイツ城下町の人々は、朝早くからしっかり起きてキビキビと動いている。
人気のソーセージ工房ではミンサー魔導機器の音が鳴り響いていた。
みんな朝食用のソーセージを求めて、綺麗な列をなしている。
仕事に行く前の人とか、朝から冒険者業にせいを出すやつらとか。
大体の連中が、パンに挟んだソーセージを食べながら歩いている。
ホットドッグだな、あれ。
ちなみに、挟んでいるパンは普通の食パン。
俺の知るような、コンビニにも売ってあるホットドッグではない。
普通にソーセージという名前で売られていることから、持ちやすくパンに挟んでいるだけだった。
パンとソーセージにソースをかけただけのものから、細切りにしたピクルスとか野菜が入ったものまで。
前は全く食欲がなくて見ることもしなかったのだが、食べている姿を見るとお腹が空いてくる。
「ポチ、食べる?」
「ォン!」
よし、買い食いしちゃおっか。
列に並ぶのは面倒だけど、人が並んでいる店の物は美味しそうだったから並んでみることに。
時間はたっぷりあるし、ポチを抱っこしながら待っていよう。
「よっ! 兄ちゃん見ねえ顔だな! クロイツには観光かい?」
黙って並んでいると、俺の後ろに並んだおっさんから声をかけられた。
「ええ、まあそんな感じです」
この国に再召喚されたとはとてもじゃないが言えないので、適当に答える。
今は観光気分だし、俺はただの観光客なんだ。
「おうおう、だったらそんな店よりもこっちに穴場があんぜ? 穴場!」
「ほうほう、穴場ですか」
なんとも、地元の人が美味いソーセージの店を教えてくれているっぽい。
地元民の意見って結構重要だから、その穴場のソーセージ屋は気になる。
「正直な、みんなここの店によく並んでるんだが、味は普通だぜ?」
「そうなんですか? みんな並んでたら美味しいと思いますけども」
「いや、みんな並んでっから、なんか他の連中も並んで買っちまうんだ」
「……なるほど」
なんかそれ、分かる気がする。
人がいっぱい並んでる店って、なんか信用して並んでしまうんだ。
「みんな最初に使った店をずっと使い続ける国民性だからよ」
「はい」
「観光客もそれに付き合わされて本当に美味いもんを知らずに帰っちまうってことが多いんだ」
「そうなんですか……」
生真面目なのかな、クロイツの人って。
つーか、それを言う目の前のおっさんもどうなんだろう。
自虐ネタか?
「本場クロイツのソーセージってのを俺が教えてやるぜ!」
「ふむ……」
ニカッと歯をむき出しにして笑いながらサムズアップするおっさん。
一応ポチにも聞いておくか。
「どうするポチ? そっちを見に行ってみる?」
「アォン」
頷くポチ。
どうやら穴場、そして本場という言葉に惹かれたらしい。
本場って、実際は目の前にあるソーセージ屋のことなのだが……。
まあ、腹が減ったらまたくりゃ良いか。
「案内してもらえます?」
「おうよ! こっちだぜこっち!」
俺とポチは列から離れ、おっさんについて行くことにした。
なんだか列に並ぶ人の視線を感じるのだが……。
別に行くなら早く行けってことなのだろう。
「よっしゃ! ここだぜ!」
路地を抜けて行くと、寂れた公園に小さな屋台がポツンとあった。
「えっ、ここですか……?」
「おうよ! ここが穴場のソーセージ屋台だぜ!」
小さな屋台には誰もおらず、人っ子一人いない。
こんな朝っぱらから公園で遊ぶ子供なんかいないからだ。
「えっと……店の人いないみたいですけど……?」
「ん? 店の人? ああ、俺だぜ。いらっしゃい! 何食べる?」
「は? ……えっ」
「おう、いらっしゃい! ここが新感覚パンケーキソーセージ屋だ!」
……だ、騙された!
このおっさん、客引きだったのかよ!
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