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本編
696 インチキカルトは潰れてどうぞ
片刃の巨大な大剣を片手に持った、金色の鋭い瞳を持つ男。
編み込まれた長い金髪からは、何とも美という物を感じる。
その男は、ため息を吐きながら言った。
「まあ良いでしょう。神に背く人たちは、みんな死んでください」
「いきなり物騒だな、聖人様」
言葉が通じるのなら、まずは話し合い。
初手、いきなりやられているが、この場にはピーちゃんもいる。
迂闊に攻撃を仕掛け、周りに被害を及ぼすことは避けたかった。
「物騒? それを聖人がどう関係していると言うんですか?」
首をかしげる聖人。
言葉のキャッチボールできない勢力か、こいつ。
「何となく理解してるが、ハイオークとエルフを殺したのはお前か?」
「ええ、私です」
それが何か、と言わんばかりの答えに、少しだけ苛立った。
「だとしたら、ここに住んでたのは言葉も通じる魔族みたいなもんだぞ」
「はあ……」
「それでも聖人かよ、惨たらしい真似しやがって」
教団がどんな教義を持っているのかは知らん。
だが、殺して良い理由にはならない。
俗世から離れて暮らしている魔族と変わらないんだ。
俺の価値観的には、外国人を問答無用で叩き斬る。
それと同じ様に思えた。
「魔族? 私たちとは違う存在だから、死んでしかるべきでしょう」
「お前」
「知性ある生き物は私たち人間だけで十分です。それ以外は全部魔物」
聖人のその言葉に、俺ではなくピーちゃんが動いた。
「ぷ、ぴいいいいいいッ!」
「ピーちゃん!」
同胞を惨たらしく殺された怒りか、小さな拳を握りしめて殴りかかる。
「ああ、それが件のハイオークですか」
ジロリ、とピーちゃんに目を向けた聖人は、無造作に剣を振るった。
殺す気だ。
すぐに俺も飛び込んで、ピーちゃんを抱えて斬撃から身を躱す。
無造作に振るわれた剣の斬撃が、俺の体すれすれの地面を切り裂いた。
「魔物をかばう。やっぱり貴方は神の敵しかるべき存在ですね」
「一応、勇者と一緒に召喚されたメンバーなんだけど……?」
「資格すら持たない貴方が勇者? 笑えてきますね、いや、むしろ笑えない」
どっちだ。
まあ良いや、とりあえずピーちゃんはイグニールたちに任せておく。
「イグニールと骨、ピーちゃんとジュノーを連れて離れててくれ」
「わかったけど……トウジ、大丈夫?」
「俺は平気。むしろ、抜かりはない。それよりピーちゃんが心配だから」
「ぷぴぃ! ぷぴぃぃ!」
イグニールに抱かれるピーちゃんからは、可愛さは消えていた。
目には強い感情がこもっている。
……あまりよろしくない傾向だ。
怨嗟の鎖はこっちで管理しているとは言え、蝕まれるのは良くない。
「ピーちゃんを頼む」
「わかった。とりあえず、離れた位置から、いつでも援護できる様にしておく」
「うん」
それだけあれば、十分心強い。
森の中にかけて行くイグニールを見送った俺はポチに言う。
「よし、ポチ。チェンジするぞ」
俺の最強メンツにな。
「……アォン」
だが、ポチはイグニールたちが走って言った方向を見ながら首を横に振る。
「アォン」
「ポチ……」
どうやら、ピーちゃんの方が心配らしい。
側にいてあげたい。
そんな思いが伝わってきたので、ポチもピーちゃんの方に向かわせることにした。
「聖人相手よりも、ピーちゃんの方が大事だから、当然だな……心のケア、頼むぞ」
「ォン!」
続いてポチも見送った後に、俺は空いた枠にキングさんを召喚する。
体格5メートル超。
ぷるんとした表面張力ボディから迸る覇気は、前よりも強く感じた。
そんな俺とキングさんを見て、聖人は言う。
「魔物を複数従え、ハイオークとエルフの味方をする。やはり貴方は背信者」
「あー……うっさいな、さっきから」
むかつく野郎の目をまっすぐに見て、俺は言い返す。
口喧嘩ならば、絶対に負けない自信があるぞ。
「そもそもお前らの宗教に入ったわけじゃないから、その理屈は通用しねえ」
「全て等しく、私たちは神に祝福される存在ですから、通用しますけども?」
「通用してたら一応俺もお前らの仲間内なんだが、それが魔物を連れてるだけで背信者扱いして殺しに来るとか、野蛮すぎ。大丈夫か、お前らの宗教。なんか物騒すぎて逆に信じる気持ち無くしたわ」
「……死んでください」
再び斬撃、剣の先からコレクトをやった光の砲撃が俺たちを襲う。
「プルァ!」
瞬時に、俺の前にキングさんが躍り出て体をグネらせて光を受け流した。
どうやったのかわからないが、通用しないことを一つ見せつけてやる。
「はい出ました、死んでください。都合が悪くなったら殺すとか、刺客を大量に送り込んで来るとか、マジで宗教の風上にも置けんな」
まったく。
はっきり言っておくぞ。
「潰れてしまえ、そんなよくわからん宗教なんぞ。お前らこそ生き物の敵だ」
インチキカルトは潰れてどうぞ。
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