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本編
720 跡の話
「……この傷は、残しておきたいんです」
ブレイズは言う。
「別に傷がカッコいいとか、そんな話ではないんです……」
「うん」
「ただ、ずっと公爵家の事ばかり考えていた父さんが……」
初めて、父の顔を見せてくれたんだそうだ。
不謹慎な話だと思いながらも、火傷に良くない感情は持っていないのである。
それと同時に、この失敗を忘れないように残しておこうと考えているようだ。
「耐性装備と薬をもらって、綺麗さっぱり忘れるわけにはいきません」
「なるほどね」
聡明で、良い子じゃないか。
甘やかされて育つよりも、ずっと良い。
子育てに関しては、奇跡的にうまくいっていたようだった。
領地に関しては、ちょっとって感じだけど。
俺からすれば、身内のことをしっかりできるだけ良いと思う。
そもそも、赤の他人なんてどうしようもないからな……。
自分の好き勝手なことしか言わない。
責任も取らない。
世の中の政治家さんて、良くやってると思うよ。
「さて、なら話は戻すけど」
ブレイズもソファに座らせたまま話は続く。
「イグナイト家の領地に飛空船を繋ごうと思います」
「空を飛ぶ船のことか……」
「ええ、かねてギリスで製作していました物ですね」
造船拠点自体は、クロイツに移す計画が進行中だ。
アドラー王の金と人手で作るためである。
「最新技術デプリ一番乗りだったら、変な顔されないでしょうし」
「な、なるほど……しかし王が許可するか……」
「領地の自治権は一任されてるはずですよね?」
「それでも公爵家という立場になると、一応話は通しておかないといけないのだ」
「ほうほう」
あの時の金貨5枚を叩き返す時が来たということか。
別に国の覇権を握るつもりは毛頭ない。
しかし、こっち見るなよ関わるなよと釘を刺す必要はある。
「勝手にやってしまえば良いですよ」
個人的に興味があったから的な言い訳でもしておけば良い。
もしくは仕事をできない振りして報告とか遅れた振りね。
「できない人間は、できないなりの上手い作戦だってあります」
「そうね」
俺は弱い。
だからこそ、セコい手段を用いてなんとか生きてきた。
周りの人に助けてもらいながらである。
その分、身の回りの人の人生助けるくらい、許してくれ。
「たぶん俺がいるから周りは色々と言ってくると思いますよ」
「ふむ……」
「大精霊とか関係なしに、背信者で神の敵扱いですし」
でも、時代とともにそんなのは廃れていく。
その時まで、せいぜい慈善事業アピールをしておくのさ。
イグニスにはその窓口に立っていただこう。
ついでに、今後を見据えてブレイズには留学という立場を取っていただいても良い。
「世の中魔法じゃなくて、やっぱり金だからブレイズくんは勉強がんばってね」
「はい! 頑張ります!」
努力ができる、それは人がなかなか持ってない才能。
それがあるブレイズは、特に心配ないだろう。
傷がどうとか、自分の実力がどうとか、腐ってない。
怪我を理由に、下手に他のコミュニティに関わらせなかったイグニスの英断か。
良い奴も多いけど、その分悪いのだって多いからな、人間ってのは。
「具体的には、何をすれば良いのだろうか」
「別に今まで通りで良いと思いますよ」
俺はイグニールと結婚したけど、家督はイグニスのものだ。
ただ親戚の娘が結婚した、ただそれだけ。
ぶっちゃけ公表する必要とか皆無なので、このままで良い。
「ただ、今後王とか周りから何か言われたらすぐに言って欲しいです」
「う、うむ」
「その時はすぐに駆けつけて、差を見せつけてやりましょう」
で、発言力強くなったら自ら勇者召喚用の魔法陣を破棄させる。
そこまでが俺の狙いって感じだ。
勇者召喚にかこつけた拉致被害がなくなるよう、頑張ります。
異世界の介入を無くし、世界をあるべき姿に戻す。
なんとも大それた夢かもしれないが、ガキどもを送り返すついでだ。
もうこっち来ないで大作戦、粛々と邁進中である。
「で、とりあえずイグニスさんにもブレイズくんと似たようなものを渡しますね」
「私にも? いいのだろうか?」
「困ったことに、俺には敵が多いんでね……」
それにもう身内みたいなもんだ。
と、なんとなくイグニールの髪を左手で撫でてみた。
もう夫婦だからこういうことしても良いんだよね?
未だにまだ夢かと思いそう。
だが、イグニールは俺の手を右手を固く握ったまま。
許されてる感じっぽいね!
よし、今度思い切ってデートに誘うぞ、俺は!
「ではありがたく受け取っておく。心から感謝する」
「いえいえ」
一先ず、TAFの人間を誰かイグナイト家に派遣しよう。
小さな一歩だが、それが肝心だな。
=====
あくまでトウジ視点だからイチャイチャっぷりは書かれていないが。
実際に側から見ると、なんとも甘ったるい雰囲気だったりしますので。
その辺は頭の中でよろしくお願いします。
目をつぶってぇ……想像してクダサーイ……あなたの脳裏には、ふんどしパイン
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