装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

794 女神の頼み

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「この世界の女神……なら、俺たちを召喚した張本人ってことですか?」

「いやそんな面倒くさいことする訳ないし」

 女神ユノはバッサリと否定しながら言葉を続ける。

「そもそも命って、何もしなくても生まれ滅んでを繰り返すもんだし」

「確かに」

「あたしの存在ってこの世界にある魔力由来だから、女神ってのもどうだかね」

「自分で女神だって自己紹介してたのにですか」

「そりゃ人間が勝手に女神って呼んでるだけ。でも、お前もそれが受け取り易いでしょ」

「まあそうですね」

 この世界の力の根源は魔力である。
 その魔力の概念体みたいな存在は、神にも等しい。
 あれ、ってことは、怨嗟の鎖って……神?

「そうだし、モースは神の一人的な感じだよ」

 的な、と言うことは神と呼ぶのは人だけだってことね。
 女神ユノも、あくまで概念のような存在である。

「つーか、神様相手に俺は毎日拷問してしまっていたのか……」

「そんなことしてるし!? まあ、あいつキモいから別に良いけど」

 女神目線でも、あいつはキモいのか。
 この女神とは話が合いそうだと思った。

「とにかく元の世界に戻る方法を……」

 と、そこまで考えて、そういえばと思い至る。
 教団が崇めていた神っていったいなんなんだ?
 キングさんが潰しに行った聖堂の像は、男の物だったんだよな。
 そして、地下室に女神ユノを象った小さな像が保管されていた。

「はやく帰れし」

「いや、俺の思考読めるなら、何を言いたいかわかりますよね」

「……まあ、ちょろっとだし」

「神って他にも存在するんですか? 勇者を呼んだのが貴方じゃないなら、別のやつが」

「そんなの人間が決めることであってあたしが口出しする権利はないし」

 ただ、と女神ユノは続ける。

「ある時期に、この世界には何かの介入があった。それは災厄と呼べるものだったし」

「ふむふむ」

 ダンジョンコアたちが頑張った過去の災いとやらだな。
 昔の勇者が召喚されるずっと前に起きたと言われる。

「でも結局あたしが何かしなくても、生きてる奴らがなんとかしてたし」

「めっちゃ強いですからね、ダンジョンコア」

 生存を心がけてきた俺だって、戦って死んじゃったくらいだ。
 災厄とやらが押し寄せても、ダンジョンコアがいれば割となんとかなる。

「しかし、そこから少し歪み始めた、と言っても過言ではないし」

「歪み?」

「世界にあるダンジョンって、正直、得体が知れないんだし」

「そうなんですか?」

「あの災厄の時も、ある時期を境に彼らはダンジョン化して脅威に打ち勝った」

 けど。とユノは少し悲しそうな顔をしながら言う。

「その後の彼らは、あまり見ていて良いものじゃないっていうか……可哀想」

「俺は羨ましい限りですけどね」

 わりかしなんでもできるのがダンジョンコア。
 でも、永遠の命っぽいものは必要ないかな。
 真っ当に子孫残して、孫に囲まれながら大団円したい。

「ま、それをきっかけに一人が歪み始めて、勇者召喚しだしたり、世界のあちこちで悪さするようになったんだし」

「色々はしょり過ぎでしょ……」

「なんか途中で話すの面倒くさくなったし。とにかく、せっかくここに来たんだからあたしの願いを聞くし」

「ええ……いやって言ったら……?」

「戻さない。監禁する」

「ええ……」

 脅迫じゃないか、脅迫じゃないかー。

「一応話だけは聞いておきますけど、なんですか?」

「彼らを助けてあげて欲しい。あたしはここから動けないから、お前にやってもらいたい」

「……」

 ダンジョンを助ける、か。
 そりゃまた無理難題をふっかけられたもんだ。
 こないだ実際にそれやろうとして死んでるんだよな……。
 命がいくらあっても足りない。

「大丈夫。力を貸してあげるし」

 俺の考えを読み取ったのか、ユノはそう言いながら近づいてくる。

「力?」

「うん、普通はできないんだけど、お前にあたしの力の一端を少しだけ」

 手と手が触れる。
 この世に存在しない、魔力そのものである彼女の手は、ほんのり暖かかった。

「……よし、これでオッケーだし」

「あんまり代わり映えしないんですけど、何したんですか?」

「魔力権限の一部を渡したし」

「魔力権限?」

「魔力の流れを少し操作できるようになってるし」

「ふむふむ、厳密にはそれをどう使うんですか?」

「割となんでもできるし。魔力を媒介とした攻撃は無効とか」

「おお!」

「魔力を媒介にして、相手のステータスに自分のステータスを譲渡したりとか」

「ほお!」

 いいね、ってことは逆も……。

「奪うことは無理。その権限だけは誰にも渡しちゃいけない決まりなんだし」

「そ、そうですか」

 まあ、そんな物騒なものはいらないね。
 防御系能力を得たってだけでも、十分だ。
 ダンジョンコア相手に一度死んだからこそ、そこが重要だと痛感している。
 そんな俺の心を汲み取って、彼女は力を授けてくれたのだ。

「かっこいいスキルじゃないけど、お前なら上手く使えるでしょ?」

「十分ですよ」

 ちなみに、その上手く使えるという部分には他の意味も含まれてるんだろうな。
 そう思って彼女の顔を見ると、微笑んでいた。

「しゃーねえ、やりますよ。やらなきゃ戻してくれないなら、やるしかないですし」

 嫁が向こうで待ってんだ。
 男らしく決断して、早いところ戻ってあげないと。

「お前がなんでこの世界に呼ばれたのか、少しだけ理解できたし」

「俺はちゃんちゃら理解できないですけどね」

「いーや、後できっとわかる時が来るし。この世に意味のないものなんてないんだし」

 それだけ言うと、彼女は俺の手を離してふわっと浮かんでいく。
 なんとなく、お別れの時なんだなと頭の中で理解できた。

「最後に一つ良いですか」

「なんだし?」

「女神ユノって呼ばれる前は、なんだったんですか?」

 あくまで人間が定めたもんだからね。
 他にも呼び名があるのだろう。

「──太初の力」

「ああ、なんかそれっぽい」

「じゃ、頑張るんだし」

「あっ、もう一個最後に良いですか!」

「……なんだし、ここは良い感じに別れを告げさせろし」

 ハハ、お断りだ。
 シリアスな雰囲気は苦手なんだよ。

「俺の知り合いにすっごい似てるんですけど、ひょっとして甘いもの好きだったりします?」

 なんなら、神棚でも作ってパンケーキをお供えしておいても良い。

「……イチャラブ甘々展開は好きだけど、正直甘いものは苦手。ブラックコーヒーおいとくし」

「了解です」

 顔や雰囲気、言葉遣いとかすごく似てるけど。
 根本的な部分で少し違ってるから、関係性は薄いのかな──?




「………………あ」

 光に吸い込まれて数秒後、視界に知っている天井が映った。
 特に内装にこだわっていないゴツゴツしたダンジョン本来の天井である。
 ってことは、俺は蘇ったってことで良いのだろうか。

「トウジ! もう!」

「トウジー! 心配したんだし!」

「うわああ、生き返ったほんまにー!」

「うお!?」

 寝起きの歓迎は手厚い抱擁である。
 異世界悪くないね。






=====
感想の予想コメ見ながら、ニヤニヤしてます。
鋭いみなさんは、本当にさっしが良いです。が……。
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