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本編
793 魔力の海
過ぎたるは猶及ばざるが如しって言葉があるのを知らんのか。
異世界人ならまだしも、骨は知ってるだろうに。
酒と同じで用法用量を守ってやるもんなんだよ、こう言うのは。
ちくしょう。
で、ここはどこなんだ、結局俺は体に戻ったのか。
何がどうなってんの、本当にここどこ!
気がつけば、真っ白な世界にポツンと一人で座っていた。
なんか、これこそまさに異世界転生的な何かではないか。
そんなことを思わせられるほどの白の空間だった。
神とか、女神とか。
なんかスキルを渡してくれる展開とかでよくある光景だよな。
「あーはいはい、もうそう言うの良いっすわ」
なんでも良いから、とにかく元の世界に返してくれよ。
俺はイグニールと結婚して向こうの世界に骨埋めんだから。
そう独り言をつぶやいて見ても、返答も何も帰ってこなかった。
「……結局失敗してんの?」
蘇生の魔法陣を行使しても、よくわからない世界にいる。
その事実は俺に失敗を予感させるのだった。
最近の俺のゴタゴタを整理してみる。
死亡、墓ドロ、幽霊、蘇生、白い世界。
見事なまでに、ヤバそうな展開じゃないか。
ガチでここって神の世界なのだろうか。
誰か教えてくれよ、頼むから。
「マジで、どーすんだよこれ……」
蘇生魔法陣に関しては、蘇る以外のことは聞いていない。
老衰で死亡した場合。
たとえ蘇ってもまた死ぬとかそんなもんだ。
昔の国では、王が遺言を言いかけて死亡した際。
わざわざこの魔法陣を使い最後まで言わせた国があるとか。
ある意味、鬼畜な魔法陣である。
「はあ……どうしよ……」
状況は悪化していると見て良いのだろうか。
いや見て良いだろうな、誰とも連絡不可避になった。
「マジで、ここ、どこなんだよ?」
なんかすごく心細くなって来たので声を大にして叫ぶ。
「だから! マジで! ここ! どこ!」
「うるさい」
「えっ」
叫びが通じたのか、俺の前に誰かが姿を現した。
それは栗色の髪の毛を持った美しい女性である。
胸もでかい。
「えっと……誰ですか」
「お前こそ誰。なんでここにいるし」
「秋野冬至30歳──既婚者です」
「……? なぜ既婚者の部分だけ強調した訳?」
まあそれは、事実だし。
既婚者なんだよ俺は、それでいいだろうに。
「名は名乗りました。貴方は誰ですか」
「なぜここに来たか、まだそこに答えてないし」
「いやはや、話せば長くなるんですが……」
「うん」
ここに至る原因となったことを話した。
「ダンジョンコアと戦って死んで、みんなに蘇生してもらったんですけど」
「うん」
「気がつけば、ここにいたってことですよ」
「へぇー。それ、あれだね、魔力過多で魔法陣暴走してる状態だし」
「暴走……?」
女性は語る。
「何事もほどほどにが一番いいんだし。一つが行き過ぎれば、角が立つだろう?」
「確かにそうですね」
「あたしの見立てでは、必要魔力の100倍近い量をつぎ込まれたんじゃない?」
「100倍て……」
「確か、あの魔法陣はINTとMP5000程度の人が20人集まってれば良い」
「そうなんですか?」
「そうだし。死者の体の一部を用いるから、ある程度は緩和されてるものだから」
……他の奴らは知らんが、イグニールはINT6万超えてる。
MPもおそらく同じくらいある。
ウィンストは少し低いとは思うが、謙遜ないレベル。
ジュノーも俺の装備をつけてるから、おそらくかなりのもんだ。
そもそもダンジョンの魔力改革は常日頃から行って来た。
だから、INTとMPのちょうどいい数値を大幅に超えているのは頷けた。
イグニールと俺でチャージするバッテリー5本。
つまるところ、MP量でいけば基準値レベルの人200分くらいは余裕。
「あー……」
「で、超大な魔力過多を引き起こして、君は一時的に世界の魔力と同化したってこと」
「魔力と同化?」
「そ。あたしがいるこの場所は、世界とは異なる場所だからね。言わば魔力の海だし」
それは、怨嗟の鎖がいるような概念的な世界でいいのだろうか。
俺の思考を読み取ったのか、女性が言う。
「それと同じだと思ってくれていいし。世界に溢れた魔力の海だからね」
「なるほど……で、貴方は誰ですか?」
「君の出自もわかったことだし、答えよう──あたしはユノ」
女性は言う。
自分は、この世界の女神である、と。
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