601 / 650
本編
901 隠れ里爆破
しおりを挟む井守衆の隠れ里から少し離れた上空にて、グリフィーに乗りながら敵情視察。
山脈中腹の崖側にまさに隠れ家っぽい無数の横穴があり、黒装束に身を包んだ細身の人間が出入りしていた。
「あれが井守の隠れ里か」
「そうですじゃ」
崖の正面にあった集落は全て焼き払われてるようで、燃えかすになった家屋の残骸が点々としている。
「残ってそうな建物はないっぽいし、祀ってある手甲は洞窟の中?」
「ですじょ。横穴の一つより、どれか一つの道が手甲へ続く道となるんですじゃじょ」
「へー、うまいこと隠されてるわけね? だったら、時間的猶予は多少あるのかな?」
崖の手前の地面に大量の財宝が積まれているのを見るに、まだ敵は行動していないのがわかった。
百足衆は、ライバルだった井守衆を無力化したことによる安心感か、少し余裕を持っている。
この隙をついて大火力を浴びせて全員ぶっ飛ばした後、井守の長からルートを聞いて俺が行けば良い。
うん、この方法が一番だな。
百足衆がかき集めた汚いお金も回収できるし、まさに両得、いやマルチに得できる。
「長、あいつら全員ぶっ飛ばすから、手早く正解のルートを教えて欲しい。それで俺が手甲を完成させるから」
「む? それは無理ですじゃ、我ら井守衆ですら正確な道順を導き出せていないんですじゃ」
「えっ、ならどうやって今までお金を納めていたんだって話なんだけど……」
「この抜け穴には、少し裏技があるんですじょ」
もはや語尾についていた「ぞ」が「じょ」に変わってしまった長の得意げな言葉に耳を傾けた。
「正解へのルートはどこかに必ずあるんですぞ。じゃから、全員で一気に全ての横穴から入るんですじゃ」
「ち、力技だった」
大多数で一気に抜け道に入れば、いつかは誰かがたどり着く。
そういった手法を全力疾走で何度も何度も繰り返すことによって、今までお金を納めて来ていたらしい。
「朝から翌朝まで、全てのお金を収めるためのダッシュ祭り……はあ、またやりたいですじょ……時間内に終わらせた後のあの開放感と達成感は、今まで体を鍛えて来てよかったと心の底から実感するんですじょ……」
大金を均等に割って、一人が手甲までたどり着く。
そして再び残されたお金を均等に割って、の繰り返し。
最終的に、端数はみんなのお小遣いとして。
最後に手甲にたどり着いたものには栄誉を。
そんな祭りが一定の時期を挟んて行われていたそうだ。
うーん、脳筋ゴリ押し祭り……。
「なるほどなあ」
俺もどうやって入るか考える必要があるけど、百足衆もかなり時間を取られそうな状況である。
キングさんに頼んで、大量に分身を出してもらって一気に向かわせるか……いや怒られるね。
ロイ様だって同じ手法が使えるからロイ様でも良いのだが……アイテムを分散するってのが面倒である。
「そうか、ジュニアで良いか」
「ジュニア? なんですじょ?」
「俺の従魔でダンジョンコア」
「!?」
この辺一帯をダンジョン化して、直通ルートが絞れるならそれで良い。
もしできなかったとしても、分体を作って持っていけば良いのだ。
分体も本体も俺のインベントリをストレージ代わりにできるから、お金の共有が可能である。
そうすれば、一回の試みで全てが完結しそうだ。
「ほ、本当だとしたらその反則じみたやり方は、手甲の持つ力に変な影響がありそうですじょ……」
「そっちだってせこい真似してるだろ」
「力技ですが反則ではないんですじょ~!!」
「まあ、試してどうかって感じだから、まだ本当にできると決まったわけじゃないよ」
「むむむ。できなかったらどうするんですじょ」
「できなかったらできなかったで、また別の手段を考えるさ」
「正攻法ではいかないんですじょ?」
「ないない」
そうなれば、俺と勘違いしている伝説の存在的なもんを探してこいって話になってくるのだが……。
今から探しに行くのはちょっとな……。
ウィンストが探しているような、そんな話があったけども。
到底間に合うかはわからない。
「時間をかければかけるほど、面倒臭いことになるってわかってる?」
「ぬぬぬ?」
「……わかってなさそうだな……お前らには時間がないだろ、現状」
ただでさえ、エリナが保母さん役をしてないと統率が取れないような状況だ。
このままいくと、目の前でこいつらの存在が消えかねない。
「一網打尽で即日解決、これを捻り出して実行するのが一番なんだよ」
「どうするんですじょ」
「まあ、あとはとんでもない攻撃を加えて崖全体をぶっ壊すとかかな——」
——ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
そんな話をしていると、目下の崖からとんでもない爆音が響いて来た。
土煙と共に、粉々になった石が俺たちを襲う。
「おわあああああああああ!?」
「ぬおおおおおですじょー!?」
どうやら百足衆はなんらかの手段を用いて穴の中を爆破したようだった。
手甲にお金を収める上で、やはりあいつらもその手段を取ったらしい。
俺でも考えつくことなんだから、敵も使ってくるのは当たり前か……。
「って、まずいな! これ崖の爆破に成功してたらまずいやつだ! グリフィー!」
「グルァッ」
「目が開けづらいと思うが、この土煙に隠れながら近寄って欲しい!」
この状況なら、爆心地に人がいるわけがない。
巻き込まれるのを避けて避難しているはずだ。
そっから瓦礫やらなんやらを退けて、手甲が納められた場所を探し始めるはず。
接収するなら、今がチャンスだな。
=====
なかなか更新できなくてすいません。
執筆環境がimacからwindowsに変わってしまい、戸惑いを隠せませんが頑張ります。
来年の豊富はもっと読んでくださる皆様と寄り添えるような作家になることです。
楽しんでいただけますよう、がんばります。ツイッター活発になります。
53
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。