装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

900 これは正義感からの行動である

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 無事に商談成立といたしまして、井守衆とともに隠れ里へと向かうことになった。

「こっちですじょー」

『ですじょー』

 もはや「ぞ」が「じょ」になってしまうほど、全員の幼児化が進んでいる気がする。

「トウジさん……なんだか、さらに幼くなってませんか……?」

「アォン……」

 グリフィーにまたがるエリナの言葉に、ポチも頷いているようだ。

「そう感じてるのが俺だけじゃないことに安心した」

 身長もポチほどだったのが、さらにひとまわりミニマム化している。
 忍び装束から見える手元はみずみずしい潤いを保っていた。
 顔だって、大人を無理やりデフォルメしたようなものから、さらなるベビーフェイスへ。

「……あんまり深刻に考えてなかったけど、ガチでヤバイ系かこれ」

 このまま生まれたままに戻ったら、こいつらはいったいどうなる。
 幼児化させる呪いの類だと思っていたのだが、実は違ったのだろうか。
 生まれる前まで引き戻されたら、と考えるとゾッとする。

「早いところ何とかしたほうがいいな」

 ウィンストがこいつらに掛り切りになっている以上、見捨てることはできない。
 早いところ何とかする他なかった。

「百足衆は、何でこんなことを企てたんですかね?」

「敵対組織を消そうとするのは当たり前のことだよ」

 俺だって色んな敵対組織が一時期周りにうようよいたもんだ。
 今はだいぶ粛清したけど。

「これは俺の想像だけど、もっともっと色んな思惑がごちゃごちゃに絡んでると思う」

「色んな思惑?」

 ダンジョンコア関連の話は避けつつ、俺はエリナの疑問に答える。

「これは仮の話だけど、ギフの父親が言ってだろ? あいつは訳のわからん薬物にハマったって」

「言ってましたね……その話はあんまり想像したくないんですけど……」

「オムツが必要なくらい頭逝かれてしまったって話だけど、なんとなく繋がりを感じない?」

「繋がりですか……」

 少しだけ考えてからエリナは言う。

「井守の方々みたいな状況と酷似してるってことですか? でも小さくなったなんて一言も」

「似てるとは言ってないよ」

 しかし、この世に幼体化させてしまうような代物が二つとあってたまるかという話だ。
 全てが同じと言うわけではないが、効果が似ているよねという点で関係性を疑うべきである。
 疑うべきというか絶対に怪しい。

「ギフの件と繋がりがあるのなら、やばい薬が裏で出回ってるってことになる」

「い、意外なところから恐ろしい話に膨らんできましたね……あっ、もしかして長さんが言ってました装備を薬を捌いたお金で解放しようと目論んでいるんですかね!?」

「その線はあるけど、たぶん事態はもっとやばいことになってると思うよ」

「アォン」

「だよな」

 頷くポチに俺も頷きを返しておく。

「え、ポチちゃんは何と言ってるんですか?」

「時系列的にはギフの方が早かったから、自分の想像が正しければかなり不味いかもしれないのは同意」

「長っ……てか、ずっと前から思ってましたけど……」

「はい」

「トウジさんってポチちゃんの言葉がわかるんですか? コボルト語」

「いや、全く」

「ええ……」

 でも何となくこんなこと言ってんだろうな、という感覚はある。
 顔を見てみろ、パーフェクトキュートフェイスの中に確かに存在する意思表示。
 俺の想像の域を出ないが、間違ってるとポチが違うって反応を示してくれるのでおそらくあっている。

 さて話を戻そうか。
 時系列的に、ギフの頭がパーになってしまったのは井守衆が幼体化し始めた時よりもだいぶ前だ。

 その時からこうして幼体化させる何らかの方法を開発し続けていたのだろう。
 色々あってごちゃごちゃしてるデプリなら、裏で何をやっても気付かれにくい。
 その余波が、山脈の向こう側まできてしまったと考えられる。

「井守衆が幼体化させられた時点で、すでに金の目処が立っていたという可能性が大きい」

「……それはヤバイですね」

「だろう?」

 どうヤバイかって言えば、俺がお金を再投資しなくてもすでに完成されている。
 と、いうヤバさだったりするのだが……。
 ここは悪の手に装備が渡ってしまってヤバイとしておきましょう。

「も、ももも、もしそんな装備を百足衆が振りかざしてきたらどうするんです!?」

「でも買い取るって契約しちゃったから何とかするしかないよね」

「……ひょっとして最初からそのつもりだったりしますか? やけに強気に買い取る買い取る言ってましたし」

「いやもう手遅れかもねって件はさっきふと思いついたから、完全に誤算です」

 でもスペリオルとかエクシオル系の特殊強化が100%成功する摩訶不思議な代物。
 これは是非ともゲットしておかなくてはならない、喉から手が出るほど欲しい。

「ほら、こんな姿になってしまった井守衆を見て、今更後には引けないっしょ?」

「……た、確かにそれもそうですが……むぐぐ、正義感で突っ込んでしまってもいい問題なのでしょうか……?」

「じゃあ見捨てる?」

「そんなこと言われたらもうどうしようもないじゃないですか! 任せますよもうどうにでもなってください!」

 適当にエリナを丸め込んで、俺は先を急ぐことにした。

「わふ……」

 ポチのため息が聞こえてくるが、井守衆を何とかしてやりたいって気持ちは本当だ。
 本当だぞ?

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