装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

本編

８９９ 悪徳商人じゃないからな

　強くするために必要なものがお金という時点で、何なのかわかった。
　特殊強化のことであり、さらに膨大な金額が必要になるという部分。
　これはおそらく、スペリオル……もしくはエクシオル。
　いや、装備の説明を聞いている限りだと、右手と左手でそれぞれ分かれた代物なのだろうか。

　ともすれば、あと２０億近いケテルが必要になってくる。
　これで両方の性質を掛け合わせたミラクル装備だったりしたら、俺は「しぇーっ」て驚くぞ。

　さすがにないだろうけどな。
　そんなもん、ゲームの中じゃ見たことない。

「手甲が本来の力を取り戻した時、伝説の存在が蘇るんですじゃ！」

「ほえー、すごいですね。１０億って、えーと……」

　指じゃ足りなかったので、木の枝で地面に計算式を書くエリナ。
　その後すぐに飛び上がっていた。

「しかしながら、この状況では稼ぐこともできないのですぞ……」

「そうですね。でも、最近はペットカフェもありますし、そういう路線で荒稼ぎとか？」

　大量に毛並みの良いコボルトを使役した奴が営んでるコボルト喫茶なるものもある。
　ゴーレムマニアがゴーレムを使役して営むゴーレムメイド喫茶なるものもある。
　この世の特殊な嗜好は、俺の元いた世界よりもさらなる進化を遂げいてるので、小人フェチもいるはずだ。
　ちなみに、上の例二つは全部知り合いの店である。

「我らに愛玩業を営めとな！？　そ、それだけは嫌なのじゃあああ！！」

　長の元屈強な井守衆のプライドが許さないのか、想像しただけでのたうち回る程に苦しんでいた。

「でも、１０億使ってもまだなんですよね？　もしかしたら今やっと半分くらいかもしれませんよ？」

「ぬぐぐ……しかーし、年々魔力の輝きが増してきておるのは確かだったのじゃ！」

　強化回数が伸びてくるにつれて、能力値の上昇幅も大きくなるからだろう。
　それにしても、もし１０億ほど吸わせているという情報が本当ならば……。
　スペリオル系の装備は◇１～１０まで一回の強化に５０００万ケテル必要となる。
　片方５億で、二つ合わせてぴったり１０億ケテルだ。

　……エリナの言っていたことは、ある意味で当たっている。
　問題なのは◇１１～１５までの金額だ。

　◇１１～１５までに必要な金額は、１０億ケテル。
　両方合わせて２０億ケテル。

　仮に片方がエクシオルで、スペリオルほどの金額を求めないとしてもえげつないぞ。
　マジであと１０億本当に足りない可能性が浮き彫りになってきた。

「長、ちょっと良いですかね？」

「なんですぞ？」

「もしよろしければ、ですけど……お金出すんでその装備の所有権を買い取って良いですか？」

「えーっ！？　トウジさん、いきなり何を言ってるんですか！？」

　俺の発言にエリナが驚く。

「まさか所有権を買い取るって、今まで長さんたちが収めた金額ごとって意味ですか！？」

「うん」

「ひえええええーー！？」

「どっひぇーですぞ！？」

　二人して飛び上がって驚いているが、これにはもちろん訳がある。
　現状この世界で特殊強化ができる奴は俺しかいないはずだった。
　しかし、話を聞いてみれば俺以外にもこの世界の様式に則って特殊強化をする方法があるじゃないか！
　それもなんか成功率１００％っぽい雰囲気のすごい方法である。

　スペリオル装備の強化は、俺だって躊躇するほどに失敗が怖い代物だ。
　長年強化を続けているのならば、必ずどこかで装備自体が失敗により壊れているはず。
　いや、壊れてないとおかしい！

　そんな一発で上手くいくもんじゃないんだからな？
　強化ってもんは、膨大な失敗の中にわずかに存在する成功の証なんだぞ。

　装備の所有権を買い取るということは、安置されている場所ごと貰うってこと。
　金払うだけで成功率１００％が保証されるなんて、最強最高の設備である。

「長さん、一括でも分割でもいくらでも良いですよ」

　別世界の財産が俺にはまだまだたんまりあるんだから、別に痛くない。
　泡銭みたいなもんだしな？

「この状況を解決するためには、その手甲の力が必要なんですよね？」

「うぐ……た、確かに……しかし、一族の財産を……」

　さっきウィンストに渡して助けてもらうとか言ってただろうに。
　チラつかせるだけチラつかせて、急に惜しくなったか。

　まあ、わからんでもない。
　人間誰しも失うってことにストレスを感じるのだからね。

「そんなに惜しいなら、わかりました。大事なものですもんね」

　助けるのもやめる。
　安置されている場所だけ探して、確保すれば良いのだ。
　装備はいらないから、井守衆に返して恩を売っておこう。

「決断の時ですよ、長さん。俺は色々と用事があるんで、あまり時間がないんです」

「むぐぐ」

「買い取らせてくれるなら、百足ぶっ飛ばしてその体を元に戻す方法も全力で探します」

「お願いしますですじゃ」

　背に腹は変えられないと理解したのか、長はようやく頭を下げた。

「なんか、悪徳商人みたいな雰囲気でしたね……トウジさん……」

「ちゃんと正規の料金を払うんだからぜーんぜん悪徳じゃないよ」

　立場を利用して不平等な取引を持ちかけているつもりはない。
　お金も払うし、その後の金の融通だってするんだからね？






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メモ帳の貼り付けコーナー

エクシオル
５mケテル　６　１２　１３　１４　２８　２９　３０　６０　６１　６２　１２４　１２５　１２６　２６２　

ステ上昇　１０　１５　２０　２５　３０
　　　　　３５　４０　４５　５０　５５
　　　　　６０　６５　７０　７５　８０


スペリオル
１～１０まで５０m
１１から５０mずつ増えていく


◇１……全ステータス＋２０、攻撃力・魔力＋１１／５０００万ケテル
◇２……全ステータス＋２０、攻撃力・魔力＋１２／５０００万ケテル
◇３……全ステータス＋２０、攻撃力・魔力＋１３／５０００万ケテル
◇４……全ステータス＋２０、攻撃力・魔力＋１４／５０００万ケテル
◇５……全ステータス＋２０、攻撃力・魔力＋１５／５０００万ケテル
◇６……全ステータス＋２５、攻撃力・魔力＋２１／５０００万ケテル
◇７……全ステータス＋２５、攻撃力・魔力＋２２／５０００万ケテル
◇８……全ステータス＋２５、攻撃力・魔力＋２３／５０００万ケテル
◇９……全ステータス＋２５、攻撃力・魔力＋２４／５０００万ケテル
◇１０……全ステータス＋２５、攻撃力・魔力＋２５／５０００万ケテル
◇１１……攻撃力・魔力＋５０／１億ケテル
◇１２……攻撃力・魔力＋６０／１億５０００万ケテル
◇１３……攻撃力・魔力＋７０／２億ケテル
◇１４……攻撃力・魔力＋８０／２億５０００万ケテル
◇１５……攻撃力・魔力＋９０／３億ケテル