廃人ゲーマーとラスボス後の世界

tera

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幕間 - 寄り道

2 - 戦士と助祭を天秤に

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■聖王国領/北方都市スタジア/農士:ユウ=フォーワード

「うーん……戦士か……助祭か……マリアナ、どっちがいいと思う?」

「はあ……」

 適当な喫茶店の席に座り、色々と調べ上げた職業を紙に書いてまとめながら吟味し、それでも考えがまとまらずにマリアナに意見を求めると、えらいでかいため息をつかれた。

「え、何そのため息?」

「まさか服を選ぶときの女性のようなセリフを私が聞くとは思いませんでした。これいかに」

「大事なことなんだってば」

 色々と間違った下位職業を選んでしまうと、付け替える際にペナルティが発生する。
 だから、自分のアビリティとの相性を比べないといけないのだ。

 現在、候補に挙がっているのは戦士と助祭。
 戦士は農士よりもSTRとHP補正が大きな職業だ。
 職業効果は戦闘時の持久力アップと怯み難くなる。

 なぜ戦士か。
 それはアビリティの有効範囲が関わってくる。
 今の所確認できる状況では約3メートルが限度。
 故に基本的に近距離職を選ばなくてはいけないのである。

 戦士の他にも拳闘系とか斥候系とか近距離職はあった。
 しかし、斥候系は俺の弱点である決定打に欠ける。
 そして拳闘系は素手じゃないと発動しないアビリティがネックとなる。

 喫茶店に来る前にガントレットを借りて、ちらっと試してみた。
 なんと攻撃力がついたガントレットは発動しなく。
 ただ防御用のもので攻撃力がついてないもの、いわゆる籠手は発動する。

 ……結局、レベルを上げれば両手剣を片手で振り回せそうな戦士が最終候補になった。
 STR補正的にね。

「アビリティの性能から前衛ってことはわかりますけど、助祭はどこから来たんですか?」

「ああ、使用にMPが必要だろう?」

 助祭系は、この聖王国の特殊職業らしい。
 別ゲーで言えば、いわゆる僧侶としての役目を持つ回復職だな。
 回復やら障壁という防御能力と、遠距離攻撃系のスキルがない故に杖を振り回して戦うための近接適性も持つ。
 ステータスでは、STR、VIT、MND、そしてMPに補正がつくからすごくいいと思ったのだ。
 MPが増えれば増えるほど、その分アビリティの発動時間は増える。

「一応聞いておきますけど、どっちかしかダメってポリシーがあるのですか?」

「いや、どっちも取得する気ではいる」

「…………なら早く決めろよ、と」

「いや問題はどっちをメインにするかだよなあ」

 職業取得について冒険者ギルドで聞いたところ。
 サブに置くと職業効果もややダウンするとのこと。
 基本的に機能性能を発揮できるのはメイン職である。

「はあ……まあ好きに決めてください。私はこのデラックスパフェという物を食べていますので……あ、店員さんいいですか? このデラックスパフェを一つ……え? カップル? ふふ、そうですねカップルというか夫婦です。永遠の契りを交わしていますので、そのラブラブシェイクというドリンクも一つもらっておきましょう」

 何やら大きなパフェとけったいなドリンクを注文しだすマリアナ。
 まあ、害虫駆除で貰ったお金はあることだし、好きに注文していいだろう。
 デートプランを考えたり、リードすることはできないが、そのくらいの男の甲斐性くらいは持ち合わせていたいところである。

 結局のところ、マリアナはアビリティの相性的に後方支援職が一番いい。
 狩人の職業効果をさらに引き延ばすようなものだからな。
 だったら、火力は彼女に任せて前衛盾役を担う方向性は変わらないだろう。

 それで、戦士と助祭か……。
 レベルによってMPが上昇して行くことで、アビリティの使用時間が純粋に伸びる。
 そのアドバンテージはでかい。
 ってことは、ドンキ持ちながら破壊僧プレイってのも乙なもんだ。

 よし決めた。
 決めたぞ!

「マリアナ」

「はい?」

 運ばれてきたでかいパフェのクリームを口元につけて首をかしげるマリアナに宣言する。

「俺、神父様になります」

「ツインテールではなく?」

「別に幼女戦士にはならねぇよ」

 まあ、マリアナを見ていると汚れなき幼女が天使も思えてくるけどな。
 すると、目の前ではなく横から声が聞こえた。

「ほう、神父とな? よいのうよいのう。」

「そうそう神父……って誰!?」

 となりを見ると、幼女がいた。
 俺のとなりに、ツインテールの幼女が座っている。
 あまりにもタイムリーすぎて、俺の脳が無意識に幼女を求めているかと錯覚しかけた。

「のう、われにもそれを一口くれんかのう?」

 幼女はテーブルに身を乗り出して物欲しそうな顔でそそり立つでかいものを見つめている。
 まあ、いやらしい言い方をしたがパフェなんだが。

「……いやです」

「ぬわ!? なぜじゃ! なぜなのじゃー!」

「幼女で、ツインテールで、一人称がわしで、のじゃ口調……明らかにヒロイン成分過多です。そんな幼女にあげるパフェなんかありません。むしろ敵性だと判断しました」

 真顔で冷たくそういうマリアナに、幼女が涙ぐむ。

「うぐ、ひっぐ……」

「おわー! お前流石に酷すぎるだろそれ!」

 泣きそうになる幼女には、代わりに俺がパフェを注文してあげた。
 フルサイズは食べきれなさそうなのでミニサイズのものを。



「ふおおおお!! これがかんみ! これがすいーつ!」

 目の前に置かれたパフェに、目を輝かせる幼女。
 スプーンを握りしめて一口食べると、頬を抑えて体をくねらせていた。

「おいひい! おいひいぞこりぇ!」

「あーはいはい、口元にクリームついてるから拭こうなあ」

「むぐむぐ」

 口元にクリームをつけながら必死にパフェを頬張る幼女の世話をする。
 その様子を見て、マリアナがどす黒いオーラをあげていた。

「……わー、口元に、パフェがーついたのじゃー」

「自分で拭けよ……大人だろ……」

「むしろ0歳では? むしろ人の体で言えば私は生後五日です。一番年下ですマスター」

「暴論すぎるだろ!」

 精神年齢は俺と同じくらいに設定していたし、この世界で人の体を得てもその辺は変わらんからおそらくマリアナと俺は同年代って感じだ。

「ニヤリ。なんかわからんのじゃが、とりあえず勝利したことは確か可能?」

 俺に窘められるマリアナを見て、幼女が口元をニヤリを歪めてそういう。
 するとマリアナは真顔で言った。

「……いいでしょうクソガキ。マスターの手前大人の対応を心がけていましたが、手加減はしません」

「どこが大人の対応だ! 子供相手に真顔で殺気出すなよ!」

「ぬわーこわいのじゃー、おにいちゃーん!」

「え!? ちょ、いきなり抱きつかないで! つーかパフェ服につくだろ!」

「これはこれは、実に可愛くない妹ですね。マスターの妹という設定ならば、必然的に妻である私の義妹。これはしっかり教育をしなければなりませんね……」

「姑はどこでも厄介な存在じゃのう」

「死ッ!!!」

「わーーー!!! 店の中で弓を抜くなあほたれ!!!」
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