戦利品のオメガ

朏猫(ミカヅキネコ)

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 うつ伏せになったシャオティエンの指がベッドを引っ掻いている。上半身はすでに力なく崩れ落ち、右頬で頭を支えているからか右側に艶やかな髪でできた漆黒の川が広がっていた。

「こうして乱れる姿は、まさに黒真珠のように美しいですよ」
「んっ!」
「あぁ、また締まった。乱暴にされても褒められても、殿下のここはよい具合に締まる」
「ぁ、ぁあ!」

 アルスーンの左手が、持ち上げていた腰から腹に回る。その手で陰毛の生え際あたりを軽く押すと、シャオティエンが腰を震わせながら歓喜の声を上げた。同時に力のない小振りな陰茎からプシッと粘度のない液体が吹き出す。

「また達しましたか。精は出ないようですが、代わりにこんなに潮をこぼして仕方のない人だ」
「まっ、て、さわらない、で」

 シャオティエンのつぶやきを無視し、アルスーンの左手がぷらりと垂れ下がる陰茎を包み込んだ。そうして優しく上下に擦り始めると、華奢な体がビクンビクンと跳ねる。

「や、あぁっ! また、出る、出るからぁっ!」
「出してしまえばいい。すでにベッドをぐっしょり湿らせるほど出しているのだから、気にする必要はありません」
「ちが、そうじゃ、なく、ひっ! それじゃ、ないっ。はやく、噛んでと、言って、ひぅっ」
「すべて出し切ったら噛んであげましょう」
「んっ、やだ、もぅ、やめて、」
「望みは叶えてさしあげます。ただし、俺を煽った罰を受けてからですよ」
「やめ、こすらな、で……! 出る、出るから、やめて、やめ、……っ、っ!」

 シャオティエンの中が隙間なく埋めているアルスーンの陰茎を揉むようにうねった。ぐにょぐにょと蠢き、切っ先に吸いつくように奥が柔く熱く包み込む。
 それに口元を歪めたアルスーンはさらなる奥を抉った。途端に擦っていたシャオティエンのものがプシプシと液体を吹き出した。なおも擦り続けるアルスーンの左手からポタポタと残液が滴り落ちる。

「さすがに限界ですか」

 精が出なくなって五度目の逐情だ。腰だけを高く持ち上げられているため、シャオティエンの胸のあたりまで濡れている。後ろもねっとりと濡れ、アルスーンが注ぎ込む前から内ももを濡らしていた。
 完全に発情していれば意識が虚ろになってもおかしくない。そんな状況でもシャオティエンは「噛んで」と口にし続けた。

「……ねがぃ、噛んで……いっぱい、注ぎながら、噛んで……」

 ねだる声に、深く抉るアルスーンのものが一回り膨らんだ。ぐぅと唸りながら、濡れた左手人差し指をシャオティエンに含ませる。己が吹き出したもので濡れている指だというのに、シャオティエンはちゅうちゅうと赤児のように吸いついた。そうして舌で舐め、最後にカリッと甘く噛む。

「おねだりも上手とは知りませんでした」

 そう言いながら黒髪を左手で払い、白いうなじを顕わにした。右手で細腰を支え、自身を深くに挿入しながらゆっくりと上半身を屈める。そうして自分より遥かに小柄な背中に覆い被さり肩先に口づけた。

「んっ」
「望みどおり噛んでさしあげましょう」

 そう言ってうなじを舐めると「あぁ」とため息にも似た甘い吐息が聞こえてきた。満足げでありながら、なおも媚びるような艶やかさを含ませた声にアルスーンの口元が満足げに歪む。

「噛めば殿下は俺の伴侶となります」
「か、んで……はやく、噛んで」
「あぁ、そう締めつけないでください。噛む前に注ぎ込みそうになる」
「噛んで、そうして奥に、たっぷり注いで」
「噛み終わっても注ぎ込みますよ。腹が膨らんで苦しいと言ってもやめてあげません。俺を煽るということは、そういうことだと覚えておいてください」

 そう言い放ってから息を大きく吸い込んだ。いつもと変わらない口調にもそろそろ限界が近づいている。発情したΩに、しかも出会ったことがないほど濃密な香りを放つシャオティエンを前に理性を保つのはアルスーンと言えど難しいことだった。

「あなたが何を企んでいるかは知りませんが、もはや噛まないという選択肢は俺の中にありません」

 うなじに触れるだけの口づけを落とし、口をくわっと開ける。発情時にしか現れないαの牙を剥き出しにし、柔い白肌に噛みついた。

「ひ……ぃっ!」

 ずぶりと貫く牙にシャオティエンが悲鳴を上げる。さらに牙を差し込むと「あぁ!」という嬌声に変わった。途端にシャオティエンの柔い肉がアルスーンの逞しいものに絡みつく。もっと奥へと誘うように蠢き、硬い切っ先をこれでもかと舐め回す。

「んぐぅ」

 うなじを噛み、獣のようにシャオティエンを押さえつけながらアルスーンが唸った。食いちぎらんとばかりに噛みつきながら、膨らみきった陰茎をこれでもかと深くに収める。そうして弾けるように一気に精を吹き出した。

「ぁ、ぁ……すご、ぃ……」

 うっとりとつぶやく声は甘く、蕩けるようにアルスーンの耳をくすぐる。背中を押し潰されているシャオティエンは、高く上げたままの腰をブルブルと震わせていた。ときおりビクッビクッと跳ねるような感触がアルスーンの下腹に刺激を与える。そのせいで吹き出す精が一向に収まらない。

「……はぁ」

 うなじから離れ唇をぺろりと舐める。口の中に広がってるのは間違いなく人の血だが、鉄臭い感じは一切なく蜜のような濃厚な甘さに感じられた。香りが鼻孔を抜けるだけで気持ちが昂ぶり精が勢いよく吹き出す。まるで若造に戻ったようだと思いながら、アルスーンは己の噛み痕に目を向けた。

「殿下にはこのような噛み痕が出るのか」

 一般的にαの噛み痕は文字通り“噛んだ痕”として浮かび上がる。しかし、人によっては噛み痕というより模様に見える場合があり、噛まれたΩがそれを自慢するように晒すこともあった。
 アルスーンが見つめる先にある噛み痕は、まるで花のような形をしていた。血が滲んでいるからかと再びく口を寄せ舐め取るが、余計に花のように見えてくる。

「ん……なめ、ないで」
「殿下?」
「ひどく、感じて、しまうから」

 うわごとのような言葉だが、中がぐにゅりと蠢いたということは快楽を感じてしまうということなのだろう。アルスーンはそう理解し、思わず喉を鳴らした。

(噛むのは発情時に一度だけと言うが……)

 発情以外でも、それどころかベッドに入っていないときにも噛みかねないなと思いながら精が収まるのを待った。
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