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「ふ、あ……っ」
「そう、いい子だ。もう五番目の張り型まで難なく入るようになった」
「ん……っ。ん、ふ……、ふ、ふぅ……っ」
「力も抜けるようになったようだし、柔らかくなるのも早いね」
「んっ、んぅ、ん……。ふ、ぅ……っ」
「それじゃ、今夜は最後の張り型も使ってみようか」

 殿下の言葉が聞こえたあと、ヌプと音を立てて張り型が抜けていくのがわかった。内蔵を押し広げていた圧迫感が消えるとともに、排泄感にも似た感覚に得体の知れない何かが混じる。ざわざわするその感じは張り型が出入り口を抜ける瞬間に強くなり、どうしてか腰が震えてしまった。それを恥ずかしく思っているのに、耐えようとしても体が言うことを聞いてくれない。

「念のため、潤滑剤を足しておこう」
「ひ、……っ」

 三番目の張り型を使うようになってから、途中で潤滑剤という甘い香りの液体を直接体内に注ぎ込まれるようになった。きっとわたしが苦しくないようにと思ってくださってのことなのだろう。

(こういうことまで、気を配ってくださるのは……嬉しいけれど……)

 あらぬところを殿下の指で広げられ、そこに小さなポットのような入れ物の注ぎ口を差し込まれるというのは慣れることがない。
 しかも注ぎ込まれている間は、ずっと殿下にそこを見られているということだ。たまに液体がこぼれ出てしまうときなど、「あぁ、垂れてしまうな」とおっしゃって、注ぎ口を差し込まれたままのそこを指で撫でられるのが何より恥ずかしかった。そのとき睾丸を触れられることもあり、それが未知なる感覚を呼んでますます腰が揺れてしまう。

(あぁ、わたしはなんて浅ましいのだろう……!)

 何も知らず一人では何もできないわたしのために、殿下自らがこうしていろいろと教えてくださっているというのに……。

「さぁ、これで痛みはあまり感じないはずだ。……そう、力を抜いて……。そう、いい子だ。このままゆっくり入れていくからね」

 殿下の声とともに、これまでにない圧迫感を感じて思わず声が漏れそうになった。そのまま何度かクチクチと出入りをくり返していた張り型が、ググッと奥のほうへと入ってくる。そこでまた出入りをくり返し、そうしてさらに奥へと入り込む。
 たしかに痛みはほとんど感じなかった。けれど圧迫感はすごいもので、奥へと入ってくるときに思わず下腹に力が入ってしまう。そうすると張り型の動きを止めることになり、同時にグプグプとみっともない音を立てて潤滑剤が隙間からこぼれてしまった。

「ぁ、ごめ……、なさ……、ひぅ……っ」
「大丈夫、謝らなくていい。こうして途中で力を入れるのも悪いことじゃない。……ふふ、まるでわたしのものを食いしめているのを見ているような気持ちになるね」

 殿下の小さく笑うような声が聞こえたあと、またググッと張り型が奥へと入ってきた。思わず「ひっ」と小さな悲鳴を漏らしてしまい、慌てて枕を噛み締める。

「そう、とても上手だ……。ちゃんと奥まで入っている。それに中も具合よく動いているようだし……、これは明日が楽しみだ」

 殿下の声は聞こえるけれど、ヌプヌプと出し入れされる張り型が気になって言葉に集中することができない。
 太く大きな張り型を何度も動かされ、いつの間にかビリビリと感じるようになっていた部分を何度も擦られた。かつてないほど奥深くを押し広げるように、そのまま何度も奥で出入りをくり返される。

(あんな、大きいものが……動いている、のに……)

 不思議なほど痛みは感じなかった。圧迫感と違和感はすごいものの、そこに少しずつ違う感覚が混じっていく。それはゾクッとするような奇妙な感覚で、奥のほうでじわじわと広がり始める。

(なに……これは、何が……)

 怖くなり、思わず逃げようと足を動かした。しかし膝をついた状態の足は震えるだけで、代わりに腰がみっともなく揺れてしまう。張り型が抜けるときには腰を支えることすらできなくなり、崩れるようにベッドに体を横たえることになってしまった。


 ・・・・


 婚礼式から七日が過ぎようとしていた。
 貴族や王族が結婚した場合、互いをよく知るための蜜月という期間が設けられる。おおよそ七日から十日だと言われているが、その間はどんな立場の人も休暇を取ることを促されるため、ウィラクリフ殿下も王太子の仕事をすることなく、ほとんどの時間をわたしと一緒に過ごされていた。

 だから、ということではないのだろうけれど、わたしが何かしようとすると必ず殿下が手を差し伸べてくださる。移動するときは、支えてくださるどころか抱き上げてくださることもあった。まるで自分が子どもになったような気持ちがしていたけれど、キルトに「さすが新婚ですねー」と言われ、ハタと気づいた。

(たしかに、横抱きというのはご令嬢方がされることのような……)

 そう思うと、途端に恥ずかしくなった。

(そもそも、毎晩のように殿下がされるから……)

 婚礼式の夜から毎晩、それこそ夜中近くになるまで殿下は張り型を使われる。そのせいで元からあまりなかったわたしの体力はごっそり削られてしまい、足が震えて歩くのも覚束ないくらいだ。
 そんなわたしをご覧になった殿下は、「入浴も手伝おうか」とおっしゃられるようになった。当然わたしは、そのたびに丁重にお断りした。戯れだろうと思ってはいるけれど、殿下の緑眼がそう見えないときもあって気が気ではない。

(いくら伴侶とはいえ、殿下に入浴を手伝っていただくなんて……無理だ)

 ただでさえ恐れ多いことなのに、恥ずかしすぎて落ち着かないに違いない。
 今夜も冗談のように「わたしが手伝ってあげるのに」とおっしゃる殿下をなんとか押し留めたものの、「残念だね」と微笑まれた顔はやはり戯れのようには見えなかった。

 そんなやり取りを見ていたキルトが、どうしてか「愛されてますねー」とニヤニヤ笑っている。

「そういえば、もう張り型には慣れました?」
「あー……、うん、たぶん……。圧迫感はすごいけど……」
「ということは、最後のまで?」
「……うん」
「そうですかー。じゃあ今夜はさらに念入りな事前準備、しておきましょうか」

 こういう話題は恥ずかしいけれど、キルトが至って普通に話してくれるから、かろうじて答えることができる。それに事前準備を一人でするにはまだ難しく、最初のほうはいまだにキルトに手伝ってもらっている状態だ。そういう状況なら、いまがどういう段階か知っておいてもらうほうがいいのかもしれない。
 しかし「さらに念入りな事前準備」とは、どういうことだろう。

「上の兄に確認したんですけど、殿下のは結構奥のほうまで届いちゃうと思うんですよねー。あ、上の兄は剣や馬の稽古のあとに殿下と一緒に着替えたりしてたんで、いろいろ見ているんじゃないかと思って念のため聞いておいたんですよ。聞いた限りじゃあ、ギリギリ限界まで洗浄しておいたほうがいいんじゃないかなって感じなんですよねー」
「限界……」
「最後の張り型までいけたのなら大丈夫ですよー」

 そう言って始まった事前準備は、いつもよりもずっと体力を使うものだった。

(まさか、あんな奥まで入れるなんて……)

 しかし、キルトはそのくらいまで洗浄しておいたほうがいいのだと言っていた。ということはつまり、……そういうことなのだろう。

 その後はいつもどおりメリアンに全身をくまなく手入れされ、殿下がいらっしゃるまでの間に落ち着くためのお茶を少しだけ口にした。
 あまり水分を取っては、あとが大変だと最初にキルトが教えてくれたけれど、たしかにそうだと実感したのは初日に張り型を入れられたときだった。あんな場所に異物が入ってくるのだから、きっとお腹のあちこちを刺激するのだろう。まさか殿下の前で粗相をするわけにはいかないから、水分はあまり取らないほうがいい。
 そんなことを思っているとカチャリと音を立ててドアが開き、夜着をお召しになった殿下が入って来られた。

「おや、思ったより落ち着いているね」
「……そんなことは、ありません」
「あぁ、たしかにほんのり頬が赤くなっている。ルナはどんなときも、とても愛らしい」
「殿下……」
「さぁ、ベッドへ行こうか。……今夜、ルナのすべてをわたしのものにするからね?」

 横抱きに抱きかかえられ耳元で囁かれた言葉に、やっぱりふるりと全身が震えた。




 これまでと同じように夜着を脱いだわたしは、殿下に促されるままベッドの上でうつ伏せになった。「今夜は張り型を使わず、わたしだけを感じてほしい」とおっしゃった殿下は、あらぬところに潤滑剤と一緒に指を差し込み、その指を張り型のようにゆっくりと出し入れし始めた。あまりのことに驚き身をよじると、「ルナ」と耳元で名を呼ばれて動けなくなってしまう。

「そう、いい子だ」

 殿下の声よりも、ヌチュヌチュとした音のほうが気になってどうしようもなくなってきた。最初は出切り口のあたりで動いていた指が、気がつけばビリビリするところを何度も擦るように中のほうへと入っていた。張り型よりもずっと細いはずなのに、それが殿下の指だと思うだけで体中に力が入る。そのたびに「まだ食い締める必要はないよ」と殿下がお笑いになった。
 しばらく中のあちこちを擦っていた指が、羞恥を煽るようなチュプンという音を立てて抜けたのがわかった。長くも短くも感じた恥ずかしい時間が終わり、緊張で強張っていた体から少しだけ力が抜ける。ふぅと小さく息を吐いていると、尻たぶに殿下の手が触れたことに気がついた。

「そのまま、力を抜いていて」

「え?」と思ったときには尻たぶを大きく割られ、先ほどまで指が出入りしていたところに熱いものがあてがわれるのを感じた。ぬるりとした感触のそれは指とも張り型とも違う。そうして「いくよ」と殿下の声が聞こえた瞬間、とんでもない質量のものが出入り口を押し広げ始めた。

「う、ぁ……ぁ……っ」
「大丈夫、上手に入っている」

 とてつもない圧迫感にグワッと広げられたあと、出入り口がグウッと引っ張られるような感覚に思わず声が漏れた。張り型を使っていたときも、こんな感覚は一度も感じたことがなかった。火傷しそうな熱さや脈打つようなかすかな痺れもあり、すべてが鮮烈に感じられる。
「息を吐いて」と言われ、必死に口で呼吸をした。鼻ではまったく息ができず、まるで溺れているような錯覚さえ覚えた。

「ふぁ、ぅ、ぅ……っ」
「大丈夫だから、……そう、いい子だね」
「ぅ、ぁ……。ぅ、ふぁ、ぁ……」
「……っ、ふぅ。結構入った、かな」

(熱い何かが……腰を、撫でている……)

 これは殿下の手……だろうか。熱い感触が腰を撫で、そのまま前側へと移る。臍の辺りをくるりと撫でた熱は、ゆっくりと何かを確かめるように臍から下腹部へと移動した。

「ふふ、ルナの愛らしいここも喜んでいるようだ」
「ひ……っ」

 急にとんでもないところに熱を感じて、思わず腰を動かしてしまった。

(そこは、そこはいけない……!)

 そこは不浄なところで、触れている熱が殿下の手であったならとんでもないことだ。早くこの熱を、手を離していただかなければと思っているのに、その熱が不浄の場所を撫でて、握って……!

「本当は張り型のときにここも愛でたほうが早く快感を得られたのだろうけど、どうしても嫌だったんだ。ルナが全身で感じるのはわたしだけであってほしくてね」

「わたしの我が儘に付き合わせてしまったな」という殿下の言葉は、混乱したわたしの耳をすべり落ちていく。
 わたしの全神経は不浄の部分へと集まっていた。熱に包み込まれ、上下に擦られるたびに下腹部が震える。そうするとお腹全体に力が入り、とてつもない圧迫感の元を強烈に締めつける結果になった。

「ひ……っ!」

 締めつけた瞬間、ぞくりとした何かが下腹部の奥を刺激した。自分の体が生み出した感覚に悲鳴が漏れる。あまりしてこなかった自慰をはるかに上回る感覚に、下腹がうねるように動いた。そのたびに、張り型よりもずっと太く熱いものをギュッギュッと締め上げてしまった。
 それは苦しいはずなのに、それとは違う感覚が下半身を覆っていく。逃げたいのに逃げられない状態が怖くなり、気がつけば口からはみっともない声がひっきりなしに漏れていた。

「ぃや……、ぁ、や……っ。やめ、ぁぅっ! ひ……っ、やめ、て……っ」
「大丈夫、怖くない。……中がうねってきたね。そのまま身を委ねて……。そう、いい子だ」
「や、ぁ……っ! 手、離し、て、ぃや、や……! ぁ、ぁ……っ」
「怖くないから……。そう、ほら、先のほうも愛でてあげよう。ここは敏感なぶん、とても気持ちがいいはずだ」
「いやぁ……! や、やだ、はなし、先は、いやぁ……」
「大丈夫。……ほら、もうそろそろかな。睾丸もこんなに迫り上がって……。ふぅ、中もすごいことになっているね」
「や、やめ、さわらな、で……っ。ひ、ひぃっ、やだ、こすらな、や、ぃや、やぁ……!」
「……大丈夫、いってごらん」

 耳元で「いってごらん」と囁かれたわたしの体は、自分でも驚くくらい一際大きくブルッと震えた。同時に信じられないほど強烈な明滅を瞼の裏に感じ、腰がガクガクと震え出す。
 耳の中では、恐ろしく感じるほどドクドクとした血流の音が響いていた。気がつけば額を枕に必死に押しつけ、両腕までもがブルブルと震え始める。どこか遠くでヌチャヌチャと粘着質な音が聞こえるけれど、殿下の手に握られたままの不浄の場所からだろうか。

「ひぅ……っ」

 全身を震わせ続けるわたしの中から、圧迫していたものがズルリと抜けた。ゾクゾクとしたものが背中を痺れさせ、肘をついていた両腕から力が抜けて上半身が崩れ落ちる。

「……ルナの体液は甘いね」

(え……?)

 ぼんやりした頭に殿下の声が聞こえた気がした。聞き返そうとしたものの頭はクラクラと酸欠状態で、体どころか指一本でさえ動かすことができない。

「さぁ、続きをしようか」

 再び殿下の声が耳元で聞こえ、柔らかく暖かなものが耳たぶに触れた。もしかして殿下の唇だろうかと思ったとき、再び尻たぶを熱いものに撫でられる。
 あぁ、これはきっと殿下の手に違いない……。ぼんやりとそう思い、なんとか目を開いた瞬間――。

「……っ!」

 再び強烈な圧迫感に襲われて声にならない悲鳴が漏れた。熱く太く硬いものがグイグイと内臓を押し広げ、途中クチュ、ヌチャという粘度の高い音を立てる。

「ぅ、ぁ……っ」
「……ふう、さっきよりも、もう少し奥まで入ったかな」
「ふ、ぅ……。ふ、ふ……」
「ルナはこんなところまで物覚えがいいね……。あぁ、泣かないで。意地悪をしているわけじゃないんだ」

 殿下の手を頭に感じ、押しつけていた枕から少しだけ顔をずらす。すると濡れた目元に指が触れた。

「早くルナをわたしだけのものにしたい欲と、ようやくこの手に抱ける喜びで、どうにも興奮が抑えられそうにないんだ。ルナ、わたしの愛しいルナ……」

 ぼんやりとした頭に聞こえてきたのは、聞いたことがないほど高揚した殿下の声だった。それなのに、なぜか泣いているようにも聞こえる。

(どう、されたのだろう……)

 こんな殿下の声を聞くのは初めてだった。もしや本当に泣いていらっしゃるのかと気になったけれど、うつ伏せのわたしには確かめようがない。それどころか背後から殿下を受け入れている状態では、振り返ることすら難しかった。

「さぁ、奥の奥までわたしのものになって」
「……!」

 圧迫感がグウッと深くなる。何度か揺すられ、擦るように何度も出し入れされた。そうしてさらに奥を開かれ、強烈な存在感がどんどん奥へと進んでいく。
 それはとんでもなく苦しいのに、どうしてか先ほどと同じような腰の震えを感じて怖くなった。閉じた目蓋の奥が明滅して、口からは意味のない音が漏れ続ける。

「ひ、ぁ、ぁぅ、ぅ、ふ、ぅ……!」
「そう、そのまま身を委ねて……。あぁ、ルナの中はとても気持ちがいいね……」
「う、ぁ……っ!」
「ルナ、わたしのルナ……、ようやくだ。なんて長かったんだろう……。しかし、これでルナはわたしのものになった。未来永劫、きみはわたしだけのものだ」
「ふぁ、ぁ……っ! や、もぅ、やぁ……!」
「誰にも渡さないし、わたし以外の誰にも触れさせない。ルナ、エルニース……。わたしだけのエルニース……」
「ぁ、あ――――!」

 内臓が迫り上がるような圧迫感のあと、これまで感じたことのない感覚に襲われた。まるで大量の潤滑剤を奥に注がれているような、それを内臓に擦りつけられているような違和感にも近い。
 そのまま奥のほうを、何度も熱いものでグッグッと開かれ続けた。頭の奥がチカチカと明滅するのを感じながら、わたしの意識はすうっと遠のいていった。
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