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15 恋人の日常
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「さむ」
マンションの自動ドアが開いたら、ピューッて冷たい風が入って来た。いつも暖かい部屋にいるから冬だってことを忘れそうになる。
藤也さんが買ってくれたコートを着て、ふわふわのマフラーを巻いてマンションを出た。目的地は大通りを真っ直ぐ行った先の、大きな公園の隣にある大きな本屋さんだ。
コートのポケットには藤也さんにもらったスマホを入れた。右の手首には桜色のアクセサリーもちゃんと着けてある。朝、藤也さんに本屋さんに行くこともちゃんと話した。
「よし」
外は寒いけど、中がモフモフの靴だから足も寒くない。コートの下も藤也さんが買ってくれた暖かい服を着ているから大丈夫。
大通りを歩き、大きな公園に行くため横断歩道で信号が青になるのを待つ。コートを着ていても立ち止まったらやっぱり寒い。そんなことを思っていたら「ねぇ」と声をかけられた。
「ねぇ、一人?」
「はい」
誰だろう? 顔は見たことがない。声も聞いたことがない。ってことは知らない人だ。
「きみ、可愛いね。高校生? まさか中学生……じゃあないよね」
「中学生でも高校生でもないです」
中学校は一応卒業したし、高校には行ったことがないから高校生じゃない。
「じゃあ大学生かな? 小さくて可愛いから高校生かと思った」
大学にも行っていないから大学生でもない。だから否定しようとしたけど、俺が答える前に「ねぇ」って話し始めたから口を閉じた。
「一人ならカフェ行かない? 今日、寒いよね? あったかいカフェラテ飲もうよ。あ、パンケーキとか好きなの食べてもいいからさ」
たしかに今日は寒い。でも、寒いとどうして知らない人とコーヒーを飲むことになるんだろう。
(変な人だな)
「ね、どう? そこの公園に、おしゃれなカフェがあるんだけどさ」
公園にあるカフェは知っている。藤也さんと一緒に何回か行ったこともある。あのお店のコーヒーは悪くない程度だって藤也さんが話していた。それに、パンケーキよりタルトのほうがおいしい。
(そのこと、教えてあげたほうがいいのかな)
「ねぇ、行こうよ。ここじゃ寒いでしょ」
でも、この人は知らない人だ。わざわざ教えてあげなくてもいいような気がする。
「きみ、可愛いから何でも奢ってあげるよ?」
知らない人に食べ物をもらうのはよくないことだ。変な薬を入れられて眠らされて、そのまま知らないところに連れて行かれるぞって藤也さんが教えてくれた。とくに、俺を可愛いって言う知らない人には気をつけろとも言っていた。
「行きません」
それに俺は本屋さんに行かないといけないんだ。今日は英語の本と料理の本、それから藤也さんの写真が載っている雑誌も買おうと思っている。早く行かないと売り切れてしまうかもしれない。
「もしかして用事ある? ちょっとくらいいいでしょ? ねぇ、何でも奢ってやるからさ。あ、もしかしてカラオケのほうがいい? それともゲーセン行く? どこでも連れてってやるよ?」
「行きません」
「いいじゃん、ちょっとくらい。ほら、行こうよ」
「ちょ、っと」
行かないって言ったのに腕を掴まれた。その瞬間、体がビクッと強張った。
知らない人に触られるのは嫌だ。腕や手を掴まれるのも怖い。他人に触られると気持ち悪くて吐きそうになる。
(嫌だ、離せ、気持ち悪い!)
掴まれた腕を振ろうとしたとき「俺の連れに何か用か?」って声が聞こえてきた。
(藤也さん!)
藤也さんの声が聞こえただけで怖くなくなった。思い切り腕を振って藤也さんのところに走って行く。
「んだよ。俺が先に声かけ、て……」
「俺の連れに用があるのかって聞いてんだが?」
「あ、いえ、何も、ないです」
そう答えた知らない人が、ぴゅーって走って行った。
「ったく、油断も隙もねぇな」
「藤也さん」
「大丈夫か?」
知らな人に握られた腕を藤也さんがゆっくり撫でてくれる。それだけで気持ち悪くなくなった。藤也さんって、やっぱりすごい。
それに今日もすごくかっこいい。朝見たばかりなのに、思わず何回も全身を見てしまった。
いつものかっこいいスーツに、今日は黒くて長いコートを着ている。周りにもそういう人たちはたくさんいるけど、かっこいいからすぐに見分けられる。テレビでいろんな芸能人を見るけど、絶対に藤也さんのほうがかっこいい。
「あー、ポーッと見惚れてくれるのは嬉しいんだが、本屋に行くんだろ?」
「そう、だけど。あの、なんでここにいるの?」
「この時間に本屋に行くって言ってただろ」
「言ったけど、でも、仕事は?」
「高宮なら巻いてきた」
そう言って藤也さんがニヤッて笑った。高宮さんっていうのは藤也さんの秘書って人だ。何回か会ったことがあるけど、眼鏡をしていて俺と同い年の娘がいるって言っていた。
高宮さんは俺には優しいけど、藤也さんにはたまに怖い顔をする。たぶん、こうやって仕事の途中で抜け出すからだ。
(抜け出したら駄目だと思うけど、俺が言うのも変だしな)
それに、後で高宮さんが怒るような気もする。
藤也さんは社長だから秘書よりも偉い。それなのに高宮さんのほうが偉く見えるときがある。高宮さんに怒られている藤也さんを見たことがあるけど、怖い顔をしながらもおとなしく怒られていた。それを見たとき、本当は高宮さんのほうが偉いんじゃないかなって思ったくらいだ。
(同級生だからなのかな)
藤也さんと高宮さんは中学から大学までずっと一緒だったって聞いた。それだけ長く一緒にいるから、高宮さんは藤也さんを怒ることができるのかもしれない。
俺はそんな高宮さんがちょっとだけ羨ましかった。だって、高宮さんは中学生の藤也さんを見ていたってことだ。高校生のときも大学生のときも見ていただろうし、かっこいい藤也さんをずっと見ていたなんて羨ましすぎる。
(でも、高宮さんに怒られるのはちょっと怖いかも)
何回も怒られているっぽいのに、藤也さんは怖くないんだろうか。
「あの、また怒られるよ?」
「あー、それは面倒臭ぇなぁ」
「じゃあ、仕事に戻ったほうが、」
「蒼とデートして、一緒に帰ってからやるさ」
藤也さんが俺の手を握った。そのまま大きなコートのポケットに一緒に手を入れる。ポケットの中は暖かくて、藤也さんの手はもっと温かかった。俺はドキドキしながら藤也さんのポケットに手を入れて本屋さんまで歩いた。
本屋さんでは英語の本と料理の本、最後に雑誌を取った。雑誌を見た藤也さんが「藤生に聞いたのか」ってちょっと怖い声を出した。
もしかして怒られるだろうか。そっと見た顔は怒っているようには見えなかったけど、ちょっとだけ呆れたような顔をしているように見えた。
ほしい本を買って部屋に帰ると、藤也さんに不思議なことを言われた。
「蒼は耳がいいから、語学はいけると思うんだがな」
「耳がいい?」
「おまえ、人の声を聞き分けるのが得意だろ。それに読むより聞くほうが覚えがいい」
そうなんだろうか。自分ではよくわからない。
「一度聞いた声、覚えてるよな?」
「……たぶん」
「それに物音にも敏感っぽいからな。おそらく耳がいいんだろう」
耳がいいって、いいことなんだろうか。もし藤也さんの役に立つなら嬉しいんだけど。
「読み書きは後回しにして、暇なときに聞いてみろ」
「うん」
本屋さんで買った英語の本には英会話が聞けるものがついていた。それを藤也さんが俺のスマホで聞けるようにしてくれた。英語と日本語が順番に聞けるから意味はわかるはずだって藤也さんが言うってことは、たぶんそうなんだろう。明日から毎日聞くことにしよう。
英語の本と料理の本をテーブルの端っこに置いて、買ってきた雑誌を見ることにした。どこかな……あ、あった。藤也さんのかっこいい写真が、今回は五枚もある。
「目の前に本物がいるのに、なんで写真をほしがるんだろうな」
また言われてしまった。
(それは、そうなんだろうけど)
本物もかっこいいけど、写真は本物とちょっと違っていてやっぱりかっこいい。だから何枚でもほしくなる。
隣に座っている藤也さんを見て、雑誌の写真を見る。もう一度隣を見て、また雑誌を見た。どっちもかっこよくて、どっちかだけを見るのは難しい。そんなことをしていたら雑誌を取られてしまった。
「写真は終わりだ。今夜は本物のほうを見とけ」
本物が一番好きだけど写真も見たい。そう思って取り上げられた雑誌を目で追っていたら「蒼」って名前を呼ばれた。顔を上げるとチュウってキスをされる。
「ここからは恋人の時間だ」
(恋人の、時間)
カァッて顔が熱くなった。もう何回も恋人の時間をやっているのに、やっぱり照れくさくなる。前は練習をするぞって言われても平気だったのに、恋人の時間だって言われるだけで顔が熱くなる。
(違う、顔だけじゃない)
体も熱くなるし、ちんこもお尻もジンジンしてきた。
「ここでスるか?」
慌てて首を横に振った。ソファでしたら、ソファに座るたびに思い出してしまう。前にソファでしたときも何回も思い出して大変だったんだ。
「あの、ベッドが、いい」
「仰せのままに」
かっこよく笑った藤也さんが、俺をひょいって抱き上げた。あんまり簡単に抱き上げられると、さすがにちょっと微妙な気持ちになる。
(ちょっとは太ったと思うんだけどな)
藤也さんが作ってくれるご飯をたくさん食べているから、前よりもずっと太った。それなのにこんなに簡単に持ち上げられるなんて、俺はまだ子どもなんだって言われているような気がして複雑な気分になる。
(早く大人になりたいのに)
年齢だけじゃなくて、早く本当の大人になりたい。大人になって藤也さんの役に立ちたい。
「まだまだ軽いな」
藤也さんは俺が思っていることは何でもわかる。だから「軽い」って言ったんだろうけど、やっぱり複雑な気分になった。
「ちょっとは、太ったと思う」
「そうか? たしかに肋は消えたがまだまだだろ」
「……」
「おー、一丁前に膨れっ面か」
「違う、けど」
「おまえ、まだ魚嫌いだからなぁ」
「もう、嫌いじゃない」
「うなぎは好きだな」
「……あなごも食べる」
「どっちもタレが好きなだけじゃねぇか」
そう言って藤也さんが笑った。だって甘辛いタレはおいしいし、あれならたくさん食べられるんだ。
「……そのうち、もっと大きくなる」
「無理はしなくていいさ。俺は小柄で可愛い蒼も好きだしな」
藤也さんに好きって言われて、もっと顔が熱くなった。
「さて、熱々になった蒼を美味しくいただくとするか」
ポフンってベッドに置かれた。かっこいい藤也さんが俺の上に乗ってチュウってキスをする。俺はもっとキスがしたくて、大きな体にぎゅうって抱きついた。
何度もチュッてキスをする。いつもはすごく上を向かないとできないけど、いまは膝の上に座っているから藤也さんの口がちょっとだけ下にある。だから、いつもよりたくさんキスができるのが嬉しい。
一番嬉しいのは、こうやって両手でほっぺたを触りながらキスができることだ。立ったままだと肩にしがみつくのが精一杯で、ほっぺたに触ることなんてできない。
(それに、かっこいい顔にいっぱい触れるし)
藤也さんが好きって思いながら、いっぱいいっぱいキスをする。
「……っ」
急に藤也さんが動いたから口が離れそうになった。それでもキスをしていたくて必死に口をくっつけた。
「……んっ」
また藤也さんが動いた。大きいちんこが奥に当たって、今度こそ口が離れてしまった。
「ふぁ、ぁ」
「蒼はキスが好きだなぁ」
「好き、藤也さんとキス、するの好き」
「キスとペニス、どっちが好きだ?」
「ひゃ、ぁあ!」
腰を掴まれて、奥にドチュンってちんこがぶつかった。そこにぶつかると変な声が勝手に出てしまう。いつもの声と違って高くて掠れて変な声なのに、藤也さんはそんな俺の声も好きだって言ってくれた。そんなことを言われたら、恥ずかしいのに嬉しくて変な声がどんどん出てしまう。
「ほら、キスとペニス、どっちが好きなんだ?」
「ひぁっ、ぁっ、そこ、いぃ、気持ちいい、奥、ごちゅって、気持ちいぃっ」
「ってことは、ペニスが好きか」
「んぁ! キス、キスも好き、好き、す、きぃっ」
「ハハ、本当にエロくなったなぁ」
奥のほうをドチュドチュされると、お腹の奥がジンジンして気持ちがいい。ここよりもっと奥にちんこが入ると、もっと気持ちいいってことも知っている。
前に一回だけ、お仕置きのときにお腹の奥に入れられたことがあった。あのときは気持ちよすぎて途中から怖くなった。だって、頭がおかしくなって爆発するんじゃないかと思ったんだ。体もバカになったみたいにずっとビクビクしていた。俺のちんこからは何も出ていなかったのにずっと気持ちよかった。
あのとき藤也さんは「そのうちシオも吹けそうだな」って言った。シオが何かはわからないけど、シオを吹くともっと気持ちがいいってことは教えてもらった。
(いつ、シオが吹けるのかな)
気持ちよすぎるのは怖い。でも、藤也さんともっと気持ちよくなりたい。藤也さんにもっと気持ちよくなってほしい。俺の体でもっともっと気持ちよくなってほしい。
(綺麗な女の人がいても、俺のほうがいいって思うくらい、気持ちよくなってほしい)
そう思ったら、お腹の奥がきゅううって動いた。
「く……ッ。ほんと、エロくなったもんだ。俺のザーメン搾り取ろうって、一生懸命なところも可愛いじゃねぇか」
「ふや、あ、ぁ……!」
「おーおー、奥がチュウチュウ吸いついてるぞ?」
(だって、藤也さんのザーメン、ほしいって思ったから)
そんなことを思ってしまう俺は変なのかもしれない。でも、こんな俺だって藤也さんは可愛いって言ってくれるんだ。
「藤也さんの、ほしぃ。俺の、んっ、奥に、ぁっ、奥、ほし、」
「こら、無駄に煽るな」
「だって、ほし、からっ。ト、ヤさ、の、ザーメ、ン、おくに、おく、ぁあんっ! んっ、ぉく、きもち、そこ、きもひぃ、いぃ、おく、いぃ……!」
「……ッ、予想以上に、俺好みになったな……っと。ほら、もっとほしがってみせろ」
また奥にドチュンってちんこがぶつかった。ぶつかったところがグニュグニュして、もっともっとって言っているみたいだ。あと少し先っぽが強くぶつかったら、きっとあの怖いくらい気持ちがいいところに入ってしまう。
そう思っただけでどんどん気持ちよくなった。手前のところもゾクゾクして体がヒクヒク震えるくらい気持ちいい。気持ちがよくて、早く藤也さんに出してほしくてたまらなくなる。
俺はぎゅうって抱きつきながら必死にお尻とお腹に力を入れた。そうしたら藤也さんが気持ちよくなるって知っているから。それに俺も気持ちがいい。
「そこ、きもちぃぃ、からぁ! そこに、ほしぃ、いっぱい出し、てっ」
「何がほしいんだ?」
「とぅやさん、のっ、ザーメン、ザーメンっ。いっぱい、ほし、っ」
「どこにほしい?」
「ザーメンっ、ぉれの、おなか、ケツマンコに、ぁっ! ぉまんこ、おくに、ザーメン、いっぱい、ちょうら、ぃ……っ」
「いい子だ。ほらっ、おまえも、イけ……ッ」
奥に勢いよくちんこがぶつかって、グリグリグリってねじ込まれた。すぐに目の前がチカチカしてきて体がぎゅうってなる。ゾクンゾクンするのがお腹から体中に広がって目の前がパチパチしてきた。気持ちがよくて、あっという間に頭がバカになる。
気がついたら倒れそうなくらい背中が反り返っていた。藤也さんが抱きしめてくれなかったら倒れていたかもしれない。
「あ……ぁ……」
お腹の奥で大きなちんこがドクドク動いている。ドクドクしているってことは、いっぱいザーメンが出ているってことだ。でも、それはゴムの中で俺の中じゃない。
いつか俺の中にも出してほしい。そんなことを思ったら、お腹の奥がもっとヒクヒクした。
マンションの自動ドアが開いたら、ピューッて冷たい風が入って来た。いつも暖かい部屋にいるから冬だってことを忘れそうになる。
藤也さんが買ってくれたコートを着て、ふわふわのマフラーを巻いてマンションを出た。目的地は大通りを真っ直ぐ行った先の、大きな公園の隣にある大きな本屋さんだ。
コートのポケットには藤也さんにもらったスマホを入れた。右の手首には桜色のアクセサリーもちゃんと着けてある。朝、藤也さんに本屋さんに行くこともちゃんと話した。
「よし」
外は寒いけど、中がモフモフの靴だから足も寒くない。コートの下も藤也さんが買ってくれた暖かい服を着ているから大丈夫。
大通りを歩き、大きな公園に行くため横断歩道で信号が青になるのを待つ。コートを着ていても立ち止まったらやっぱり寒い。そんなことを思っていたら「ねぇ」と声をかけられた。
「ねぇ、一人?」
「はい」
誰だろう? 顔は見たことがない。声も聞いたことがない。ってことは知らない人だ。
「きみ、可愛いね。高校生? まさか中学生……じゃあないよね」
「中学生でも高校生でもないです」
中学校は一応卒業したし、高校には行ったことがないから高校生じゃない。
「じゃあ大学生かな? 小さくて可愛いから高校生かと思った」
大学にも行っていないから大学生でもない。だから否定しようとしたけど、俺が答える前に「ねぇ」って話し始めたから口を閉じた。
「一人ならカフェ行かない? 今日、寒いよね? あったかいカフェラテ飲もうよ。あ、パンケーキとか好きなの食べてもいいからさ」
たしかに今日は寒い。でも、寒いとどうして知らない人とコーヒーを飲むことになるんだろう。
(変な人だな)
「ね、どう? そこの公園に、おしゃれなカフェがあるんだけどさ」
公園にあるカフェは知っている。藤也さんと一緒に何回か行ったこともある。あのお店のコーヒーは悪くない程度だって藤也さんが話していた。それに、パンケーキよりタルトのほうがおいしい。
(そのこと、教えてあげたほうがいいのかな)
「ねぇ、行こうよ。ここじゃ寒いでしょ」
でも、この人は知らない人だ。わざわざ教えてあげなくてもいいような気がする。
「きみ、可愛いから何でも奢ってあげるよ?」
知らない人に食べ物をもらうのはよくないことだ。変な薬を入れられて眠らされて、そのまま知らないところに連れて行かれるぞって藤也さんが教えてくれた。とくに、俺を可愛いって言う知らない人には気をつけろとも言っていた。
「行きません」
それに俺は本屋さんに行かないといけないんだ。今日は英語の本と料理の本、それから藤也さんの写真が載っている雑誌も買おうと思っている。早く行かないと売り切れてしまうかもしれない。
「もしかして用事ある? ちょっとくらいいいでしょ? ねぇ、何でも奢ってやるからさ。あ、もしかしてカラオケのほうがいい? それともゲーセン行く? どこでも連れてってやるよ?」
「行きません」
「いいじゃん、ちょっとくらい。ほら、行こうよ」
「ちょ、っと」
行かないって言ったのに腕を掴まれた。その瞬間、体がビクッと強張った。
知らない人に触られるのは嫌だ。腕や手を掴まれるのも怖い。他人に触られると気持ち悪くて吐きそうになる。
(嫌だ、離せ、気持ち悪い!)
掴まれた腕を振ろうとしたとき「俺の連れに何か用か?」って声が聞こえてきた。
(藤也さん!)
藤也さんの声が聞こえただけで怖くなくなった。思い切り腕を振って藤也さんのところに走って行く。
「んだよ。俺が先に声かけ、て……」
「俺の連れに用があるのかって聞いてんだが?」
「あ、いえ、何も、ないです」
そう答えた知らない人が、ぴゅーって走って行った。
「ったく、油断も隙もねぇな」
「藤也さん」
「大丈夫か?」
知らな人に握られた腕を藤也さんがゆっくり撫でてくれる。それだけで気持ち悪くなくなった。藤也さんって、やっぱりすごい。
それに今日もすごくかっこいい。朝見たばかりなのに、思わず何回も全身を見てしまった。
いつものかっこいいスーツに、今日は黒くて長いコートを着ている。周りにもそういう人たちはたくさんいるけど、かっこいいからすぐに見分けられる。テレビでいろんな芸能人を見るけど、絶対に藤也さんのほうがかっこいい。
「あー、ポーッと見惚れてくれるのは嬉しいんだが、本屋に行くんだろ?」
「そう、だけど。あの、なんでここにいるの?」
「この時間に本屋に行くって言ってただろ」
「言ったけど、でも、仕事は?」
「高宮なら巻いてきた」
そう言って藤也さんがニヤッて笑った。高宮さんっていうのは藤也さんの秘書って人だ。何回か会ったことがあるけど、眼鏡をしていて俺と同い年の娘がいるって言っていた。
高宮さんは俺には優しいけど、藤也さんにはたまに怖い顔をする。たぶん、こうやって仕事の途中で抜け出すからだ。
(抜け出したら駄目だと思うけど、俺が言うのも変だしな)
それに、後で高宮さんが怒るような気もする。
藤也さんは社長だから秘書よりも偉い。それなのに高宮さんのほうが偉く見えるときがある。高宮さんに怒られている藤也さんを見たことがあるけど、怖い顔をしながらもおとなしく怒られていた。それを見たとき、本当は高宮さんのほうが偉いんじゃないかなって思ったくらいだ。
(同級生だからなのかな)
藤也さんと高宮さんは中学から大学までずっと一緒だったって聞いた。それだけ長く一緒にいるから、高宮さんは藤也さんを怒ることができるのかもしれない。
俺はそんな高宮さんがちょっとだけ羨ましかった。だって、高宮さんは中学生の藤也さんを見ていたってことだ。高校生のときも大学生のときも見ていただろうし、かっこいい藤也さんをずっと見ていたなんて羨ましすぎる。
(でも、高宮さんに怒られるのはちょっと怖いかも)
何回も怒られているっぽいのに、藤也さんは怖くないんだろうか。
「あの、また怒られるよ?」
「あー、それは面倒臭ぇなぁ」
「じゃあ、仕事に戻ったほうが、」
「蒼とデートして、一緒に帰ってからやるさ」
藤也さんが俺の手を握った。そのまま大きなコートのポケットに一緒に手を入れる。ポケットの中は暖かくて、藤也さんの手はもっと温かかった。俺はドキドキしながら藤也さんのポケットに手を入れて本屋さんまで歩いた。
本屋さんでは英語の本と料理の本、最後に雑誌を取った。雑誌を見た藤也さんが「藤生に聞いたのか」ってちょっと怖い声を出した。
もしかして怒られるだろうか。そっと見た顔は怒っているようには見えなかったけど、ちょっとだけ呆れたような顔をしているように見えた。
ほしい本を買って部屋に帰ると、藤也さんに不思議なことを言われた。
「蒼は耳がいいから、語学はいけると思うんだがな」
「耳がいい?」
「おまえ、人の声を聞き分けるのが得意だろ。それに読むより聞くほうが覚えがいい」
そうなんだろうか。自分ではよくわからない。
「一度聞いた声、覚えてるよな?」
「……たぶん」
「それに物音にも敏感っぽいからな。おそらく耳がいいんだろう」
耳がいいって、いいことなんだろうか。もし藤也さんの役に立つなら嬉しいんだけど。
「読み書きは後回しにして、暇なときに聞いてみろ」
「うん」
本屋さんで買った英語の本には英会話が聞けるものがついていた。それを藤也さんが俺のスマホで聞けるようにしてくれた。英語と日本語が順番に聞けるから意味はわかるはずだって藤也さんが言うってことは、たぶんそうなんだろう。明日から毎日聞くことにしよう。
英語の本と料理の本をテーブルの端っこに置いて、買ってきた雑誌を見ることにした。どこかな……あ、あった。藤也さんのかっこいい写真が、今回は五枚もある。
「目の前に本物がいるのに、なんで写真をほしがるんだろうな」
また言われてしまった。
(それは、そうなんだろうけど)
本物もかっこいいけど、写真は本物とちょっと違っていてやっぱりかっこいい。だから何枚でもほしくなる。
隣に座っている藤也さんを見て、雑誌の写真を見る。もう一度隣を見て、また雑誌を見た。どっちもかっこよくて、どっちかだけを見るのは難しい。そんなことをしていたら雑誌を取られてしまった。
「写真は終わりだ。今夜は本物のほうを見とけ」
本物が一番好きだけど写真も見たい。そう思って取り上げられた雑誌を目で追っていたら「蒼」って名前を呼ばれた。顔を上げるとチュウってキスをされる。
「ここからは恋人の時間だ」
(恋人の、時間)
カァッて顔が熱くなった。もう何回も恋人の時間をやっているのに、やっぱり照れくさくなる。前は練習をするぞって言われても平気だったのに、恋人の時間だって言われるだけで顔が熱くなる。
(違う、顔だけじゃない)
体も熱くなるし、ちんこもお尻もジンジンしてきた。
「ここでスるか?」
慌てて首を横に振った。ソファでしたら、ソファに座るたびに思い出してしまう。前にソファでしたときも何回も思い出して大変だったんだ。
「あの、ベッドが、いい」
「仰せのままに」
かっこよく笑った藤也さんが、俺をひょいって抱き上げた。あんまり簡単に抱き上げられると、さすがにちょっと微妙な気持ちになる。
(ちょっとは太ったと思うんだけどな)
藤也さんが作ってくれるご飯をたくさん食べているから、前よりもずっと太った。それなのにこんなに簡単に持ち上げられるなんて、俺はまだ子どもなんだって言われているような気がして複雑な気分になる。
(早く大人になりたいのに)
年齢だけじゃなくて、早く本当の大人になりたい。大人になって藤也さんの役に立ちたい。
「まだまだ軽いな」
藤也さんは俺が思っていることは何でもわかる。だから「軽い」って言ったんだろうけど、やっぱり複雑な気分になった。
「ちょっとは、太ったと思う」
「そうか? たしかに肋は消えたがまだまだだろ」
「……」
「おー、一丁前に膨れっ面か」
「違う、けど」
「おまえ、まだ魚嫌いだからなぁ」
「もう、嫌いじゃない」
「うなぎは好きだな」
「……あなごも食べる」
「どっちもタレが好きなだけじゃねぇか」
そう言って藤也さんが笑った。だって甘辛いタレはおいしいし、あれならたくさん食べられるんだ。
「……そのうち、もっと大きくなる」
「無理はしなくていいさ。俺は小柄で可愛い蒼も好きだしな」
藤也さんに好きって言われて、もっと顔が熱くなった。
「さて、熱々になった蒼を美味しくいただくとするか」
ポフンってベッドに置かれた。かっこいい藤也さんが俺の上に乗ってチュウってキスをする。俺はもっとキスがしたくて、大きな体にぎゅうって抱きついた。
何度もチュッてキスをする。いつもはすごく上を向かないとできないけど、いまは膝の上に座っているから藤也さんの口がちょっとだけ下にある。だから、いつもよりたくさんキスができるのが嬉しい。
一番嬉しいのは、こうやって両手でほっぺたを触りながらキスができることだ。立ったままだと肩にしがみつくのが精一杯で、ほっぺたに触ることなんてできない。
(それに、かっこいい顔にいっぱい触れるし)
藤也さんが好きって思いながら、いっぱいいっぱいキスをする。
「……っ」
急に藤也さんが動いたから口が離れそうになった。それでもキスをしていたくて必死に口をくっつけた。
「……んっ」
また藤也さんが動いた。大きいちんこが奥に当たって、今度こそ口が離れてしまった。
「ふぁ、ぁ」
「蒼はキスが好きだなぁ」
「好き、藤也さんとキス、するの好き」
「キスとペニス、どっちが好きだ?」
「ひゃ、ぁあ!」
腰を掴まれて、奥にドチュンってちんこがぶつかった。そこにぶつかると変な声が勝手に出てしまう。いつもの声と違って高くて掠れて変な声なのに、藤也さんはそんな俺の声も好きだって言ってくれた。そんなことを言われたら、恥ずかしいのに嬉しくて変な声がどんどん出てしまう。
「ほら、キスとペニス、どっちが好きなんだ?」
「ひぁっ、ぁっ、そこ、いぃ、気持ちいい、奥、ごちゅって、気持ちいぃっ」
「ってことは、ペニスが好きか」
「んぁ! キス、キスも好き、好き、す、きぃっ」
「ハハ、本当にエロくなったなぁ」
奥のほうをドチュドチュされると、お腹の奥がジンジンして気持ちがいい。ここよりもっと奥にちんこが入ると、もっと気持ちいいってことも知っている。
前に一回だけ、お仕置きのときにお腹の奥に入れられたことがあった。あのときは気持ちよすぎて途中から怖くなった。だって、頭がおかしくなって爆発するんじゃないかと思ったんだ。体もバカになったみたいにずっとビクビクしていた。俺のちんこからは何も出ていなかったのにずっと気持ちよかった。
あのとき藤也さんは「そのうちシオも吹けそうだな」って言った。シオが何かはわからないけど、シオを吹くともっと気持ちがいいってことは教えてもらった。
(いつ、シオが吹けるのかな)
気持ちよすぎるのは怖い。でも、藤也さんともっと気持ちよくなりたい。藤也さんにもっと気持ちよくなってほしい。俺の体でもっともっと気持ちよくなってほしい。
(綺麗な女の人がいても、俺のほうがいいって思うくらい、気持ちよくなってほしい)
そう思ったら、お腹の奥がきゅううって動いた。
「く……ッ。ほんと、エロくなったもんだ。俺のザーメン搾り取ろうって、一生懸命なところも可愛いじゃねぇか」
「ふや、あ、ぁ……!」
「おーおー、奥がチュウチュウ吸いついてるぞ?」
(だって、藤也さんのザーメン、ほしいって思ったから)
そんなことを思ってしまう俺は変なのかもしれない。でも、こんな俺だって藤也さんは可愛いって言ってくれるんだ。
「藤也さんの、ほしぃ。俺の、んっ、奥に、ぁっ、奥、ほし、」
「こら、無駄に煽るな」
「だって、ほし、からっ。ト、ヤさ、の、ザーメ、ン、おくに、おく、ぁあんっ! んっ、ぉく、きもち、そこ、きもひぃ、いぃ、おく、いぃ……!」
「……ッ、予想以上に、俺好みになったな……っと。ほら、もっとほしがってみせろ」
また奥にドチュンってちんこがぶつかった。ぶつかったところがグニュグニュして、もっともっとって言っているみたいだ。あと少し先っぽが強くぶつかったら、きっとあの怖いくらい気持ちがいいところに入ってしまう。
そう思っただけでどんどん気持ちよくなった。手前のところもゾクゾクして体がヒクヒク震えるくらい気持ちいい。気持ちがよくて、早く藤也さんに出してほしくてたまらなくなる。
俺はぎゅうって抱きつきながら必死にお尻とお腹に力を入れた。そうしたら藤也さんが気持ちよくなるって知っているから。それに俺も気持ちがいい。
「そこ、きもちぃぃ、からぁ! そこに、ほしぃ、いっぱい出し、てっ」
「何がほしいんだ?」
「とぅやさん、のっ、ザーメン、ザーメンっ。いっぱい、ほし、っ」
「どこにほしい?」
「ザーメンっ、ぉれの、おなか、ケツマンコに、ぁっ! ぉまんこ、おくに、ザーメン、いっぱい、ちょうら、ぃ……っ」
「いい子だ。ほらっ、おまえも、イけ……ッ」
奥に勢いよくちんこがぶつかって、グリグリグリってねじ込まれた。すぐに目の前がチカチカしてきて体がぎゅうってなる。ゾクンゾクンするのがお腹から体中に広がって目の前がパチパチしてきた。気持ちがよくて、あっという間に頭がバカになる。
気がついたら倒れそうなくらい背中が反り返っていた。藤也さんが抱きしめてくれなかったら倒れていたかもしれない。
「あ……ぁ……」
お腹の奥で大きなちんこがドクドク動いている。ドクドクしているってことは、いっぱいザーメンが出ているってことだ。でも、それはゴムの中で俺の中じゃない。
いつか俺の中にも出してほしい。そんなことを思ったら、お腹の奥がもっとヒクヒクした。
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