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18 最後の夜
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その日の夜は久しぶりに出された食事を残さず食べた。これで将軍との約束を一応果たしたことになる。一人での食事はいつもどおりだが、違ったのは監視するように自分を見ていたヨシュアの姿がないことだろうか。
(もう監視する必要がなくなったということか)
価値のなくなった存在を監視しても仕方がないのだろう。その後、食事を終えてもヨシュアが寝室から出て来ることはなかった。しばらくして侍女たちが片付けに来たが、並べたときと同じ状態のヨシュアの皿もてきぱきとワゴンに載せて部屋を出て行く。
いつもなら食後の読書をしてから湯を使っていた。だが本を手に取る気分にはなれず、それならと早々に水回りの部屋に入って湯を使うことにした。
(神殿では十日に一度蒸し風呂に入っていたが、懐かしいな)
ついそんなことを思い出したのは、ここに来てから布で体を拭うことくらいしかできないからかもしれない。手合わせの後に水を被ることもあったが、やはり体の芯から汗を掻く爽快感とは違っていた。
(最後くらいは湯を余分に使ってもいいだろうか)
大きな甕のような容器から熱湯のような湯を手桶に少し入れ、それを水で薄めてざぶんと頭から被った。贅沢な湯の使い方に気が咎めるものの、こうしてしっかり身を清めておきたい。ざぶん、ざぶんと続けざまに二度湯を浴びてから髪を絞り、濡らした布で丁寧に体を拭った。女神に許しを乞うように何度も何度も拭い清める。
最後に乾いた手拭いで全身を拭ってから裸のまま寝室に戻った。クローゼットを開け、端に寄せていた服を手に取る。捕虜となってからはアトレテス風の服しか着ないようにしていたが最期はメレキア風の服がいいだろう。やはり女神の元へ行くならこちらのほうがよい。
「懐かしいな」
思わずそんな言葉が口を突いて出た。袖を通すと神殿で着ていた神官服を思い出す。一時期は着るたびに苦い気持ちになったものだが、やはりこのほうが落ち着く。これも二十年間神殿にいたからだろうか。
「誇り高き女神の左手であれ、か」
最初にそう言われたのはいくつのときだっただろうか。民に教えを説く正式な神官になった場で高位神官からそう告げられた。集まっていた大勢の神官たちがどよめいていたが、あの中に母もいたに違いない。
そういえば一度だけ国王が神殿に来たことがあった。とくに言葉を交わすことはなく、次に顔を合わせたのは将軍として王都を発つ前だった。あのときも直接言葉を聞くことはなかった。
(最期が近づくと昔のことを思い出すというが本当だったのだな)
その思い出もよいものではない。それに比べれば囚われの身となってからのほうがよい思い出ばかりのような気がする。憧れていた将軍とは手合わせが叶い、しかも手ほどきまでしてもらえた。名を呼び合い、言葉を交わし、抱きしめられもした。
(捕虜となったおかげで悪くない人生だと思えるようになった)
そんなことを思う自分に笑いたくなった。敗戦の将になったことを嬉しく感じるとは、これでは女神にそっぽを向かれても仕方がない。それでもこの屋敷で過ごした時間は自分にとって濃密で鮮やかな日々だった。
(やはりこれは女神の祝福だったのだ)
身支度を整え、両膝を床につけて背を伸ばした。右手を胸に当ててそっと目を閉じる。まずは祖国と民のことを祈り、死者への思いを祈り、最後に教えに背くことへの許しを乞うた。
目を開け窓の外を見る。暗い夜空には星が瞬き、遠くで鳥の鳴く声がした。静かな夜だからか思っていたよりも落ち着いている。ベッドに横になり目を閉じた。眠れるか少し不安だったが、まどろみはすぐに訪れすぅっと意識が遠のくのを感じた。
(これは夢だ)
すぐにそう思ったのは周囲の景色が違っていたからだ。一見すると手合わせしていた中庭に見えるが、自分を照らしているのは夏を感じる日差しではなく柔らかな春の光だ。そのことからしてまず違う。
目の前にはこれでもかと咲き誇る真っ白な薔薇があった。だが、本物の中庭に薔薇はない。これも夢だと判断した一つだった。
(それにしても白薔薇とは……)
神殿で使っていた部屋の前に白薔薇があったのを思い出す。もとから庭にあったものではなく、貴族の誰かが寄進という名目で植えたのだと聞いた。しかも「女神の愛し子の目に留まる場所に」とわざわざ指定してきたのだという。
おかげで一部の貴族から「白薔薇の神官」などと呼ばれるようになってしまった。自分がどう呼ばれようと気にはならないが、陰で「白薔薇を手折りたい」だの「純白を赤く染めてみたい」だと言われればいい気分はしない。そのことを思い出し、つい眉間に皺を寄せてしまった。
「まるで殿下のように美しい花ですね」
突然聞こえてきた声にドキッとした。振り返るとすっかり見慣れたディエイガー将軍が立っている。まさか最後の夢にまで現れるとはと苦笑せずにはいられなかった。
「真っ白な薔薇は、まるで穢れを知らない殿下のようです」
「何を言って、……っ」
離れた場所にいたというのに、一瞬にして背後に立たれてしまった。これも夢だからだろうか。慌てて体ごと振り向こうとするが、それより先に背中から抱きしめられてギョッとする。
「あの、」
なんとか顔だけ振り向こうとするが、腹に腕を回されて身動きが取れなくなった。背中に感じる逞しい胸板に顔がカッと熱くなる。
最後の最後に自分はなんと破廉恥な夢を見ているのだろう。女神に許しを乞いながら眠りに就いたはずだというのに、あっという間に淫らな欲に全身が染まってしまった。
「離してください」
これは夢だとわかっているのに声が震えてしまう。「離して」と言いながら縋りつくように腹に回った腕を掴んでしまった。
「どうか離して……」
つぶやくような訴えに答える声はない。代わりにこれが答えだというようにグッと腰を引き寄せられて耳まで燃えるように熱くなった。
「将軍!」
「しぃっ、お静かに」
耳元で囁かれて鼓動が跳ねた。将軍の吐息まで感じてうなじがゾクッと粟立つ。そこで初めて自分が髪を結んでいることに気がついた。寝るときは結んでいないというのに、なぜ夢では結んでいるのだろうか。
(将軍もらった紐にさえ思いを寄せているということか)
まるで恋に焦がれる少女のようではないか。初心な自分が恥ずかしくて仕方がなかった。なによりこのままでは目覚めたときに未練が残ってしまう。そう思い逃れようと身をよじったものの、夢の中でさえ将軍の力には敵わず腕から逃れることはできなかった。
「どうかお静かに」
「っ」
さらにグッと腰を引き寄せられて目眩がした。将軍の股間が尻たぶに当たっているのを感じてドクドクと鼓動が速くなる。このままではとんでもないことになってしまう。将軍を想いながら自慰をしたのは一度や二度ではなく、そのことを思い出したからか下腹部に熱が集まるのを感じ、慌てて「離してください」と腕を引き剥がそうとした。
「もしや興奮しておいでですか?」
「!」
低く艶やかな声に背中がぶるりと震えた。ゾクゾクとした寒気にも似たものが背中をすべり落ち、それが腰を刺激して下腹部をさらに熱くさせる。
「わたしに興奮しておいでか?」
「そ、そんなことは、」
「嘘はよくありません。どうかお心を隠さずに……あぁ、こんなにも興奮されているではないですか」
「なにを、っ」
突然股間を撫でられて悲鳴を上げそうになった。慌てて唇を噛み締めたものの、大きな手はなおも形を探るように股間を撫で回し、それが刺激になって腰がググゥと重くなる。
「あぁ、こちらだけ可愛がるのは不公平ですね」
「待て、待……ッ」
いつの間にか上着の前がはだけていた。夏でもシャツを一枚で着ることはないというのになぜか上着の下は素肌で、股間を撫でていた手がゆっくりと腹へと移動する。
「待て、」
「しぃっ、じっとして」
腹から胸、鎖骨、そして首筋へと大きな手が上がっていく。そうして耳たぶを摘んだかと思えば、たどった場所を戻っていくようにまた手が動き出した。
「んっ」
先ほどとは違い、なぜか胸のあたりをしつこく撫で回し始めた。そうかと思えば尖った部分を摘まれて肩が跳ねる。無骨な指に何度も尖りを摘まれて、手合わせをした直後のように段々と息が上がっていく。
「殿下のここはとても愛らしい。いつまででも愛でていたくなります。ですがここばかり可愛がるのは不公平というもの。それにこちらのほうが触ってほしそうに見える」
「ひっ」
股間への強烈な感覚に今度こそ悲鳴が漏れた。驚いて視線を落とすと、いつの間に脱がされたのか下穿きは足元に落ちいて股間が剥き出しになっている。
「黒髪と同じ、こちらも黒ですか」
「やめ、」
「ですがここはこんなにも白い。まるで白薔薇のようですね」
そう言いながらこれでもかと昂ぶっている屹立を大きな手に掴まれた。それだけで腰が跳ね、ビクンと震えた先端からはトロトロと淫らな蜜を漏らしてしまう。
「恥ずかしがるように先端が色づいてきた。それにあふれる喜びの涙も多い」
「い、うな……ッ」
分厚くゴツゴツした手のひらに扱かれ、すぐに濡れた音がし始める。将軍にこんなことをさせては駄目だ。たとえ夢であっても将軍を穢してしまうことになる。そう思っているのに止めようと将軍の腕を掴んだ手に力が入らない。それならと早く目を覚ますんだと自分に言い聞かせるが目が覚める気配はなく、下肢からはますます湿った音が聞こえてきた。
「もぅ、手を、離して……っ」
両足がブルブルと震えて立っていられなくなった。せり上がってくる感覚に息が上がり、腰を抱いている将軍の腕に爪を立てる。
「……っ、ぁああ……っ!」
悲鳴のような甲高い声とともに欲望が一気に弾けた。下腹部がブルッと震え、それに合わせるかのように屹立からビュクビュクと欲望が噴き出す。吐き出している最中も腰がビクンビクンと跳ねるのを止めることができない。そのたびに将軍の股間が尻に当たりあらぬ想像をしてしまった。
「殿下は精までも美しくていらっしゃる」
将軍の熱っぽい声に閉じていた目を開いた。視線を落とすと、まだ将軍の手の中にある屹立の先に白薔薇と生い茂る葉が見える。真っ白な花びらからとろりとした雫が滴った。それがすぐ下にある濃い緑色の葉を汚していく。
(なんてひどい夢だ)
欲望を吐き出してもなお将軍の手は屹立を扱き続けていた。続けざまに強烈な快感が下腹部を駆け抜け、またビュクッと欲望を吐き出してしまう。
ほとんど将軍の胸に寄りかかりながら目を閉じた。そうして目尻から流れ落ちる涙に「あぁ」と掠れた声を漏らした。
(もう監視する必要がなくなったということか)
価値のなくなった存在を監視しても仕方がないのだろう。その後、食事を終えてもヨシュアが寝室から出て来ることはなかった。しばらくして侍女たちが片付けに来たが、並べたときと同じ状態のヨシュアの皿もてきぱきとワゴンに載せて部屋を出て行く。
いつもなら食後の読書をしてから湯を使っていた。だが本を手に取る気分にはなれず、それならと早々に水回りの部屋に入って湯を使うことにした。
(神殿では十日に一度蒸し風呂に入っていたが、懐かしいな)
ついそんなことを思い出したのは、ここに来てから布で体を拭うことくらいしかできないからかもしれない。手合わせの後に水を被ることもあったが、やはり体の芯から汗を掻く爽快感とは違っていた。
(最後くらいは湯を余分に使ってもいいだろうか)
大きな甕のような容器から熱湯のような湯を手桶に少し入れ、それを水で薄めてざぶんと頭から被った。贅沢な湯の使い方に気が咎めるものの、こうしてしっかり身を清めておきたい。ざぶん、ざぶんと続けざまに二度湯を浴びてから髪を絞り、濡らした布で丁寧に体を拭った。女神に許しを乞うように何度も何度も拭い清める。
最後に乾いた手拭いで全身を拭ってから裸のまま寝室に戻った。クローゼットを開け、端に寄せていた服を手に取る。捕虜となってからはアトレテス風の服しか着ないようにしていたが最期はメレキア風の服がいいだろう。やはり女神の元へ行くならこちらのほうがよい。
「懐かしいな」
思わずそんな言葉が口を突いて出た。袖を通すと神殿で着ていた神官服を思い出す。一時期は着るたびに苦い気持ちになったものだが、やはりこのほうが落ち着く。これも二十年間神殿にいたからだろうか。
「誇り高き女神の左手であれ、か」
最初にそう言われたのはいくつのときだっただろうか。民に教えを説く正式な神官になった場で高位神官からそう告げられた。集まっていた大勢の神官たちがどよめいていたが、あの中に母もいたに違いない。
そういえば一度だけ国王が神殿に来たことがあった。とくに言葉を交わすことはなく、次に顔を合わせたのは将軍として王都を発つ前だった。あのときも直接言葉を聞くことはなかった。
(最期が近づくと昔のことを思い出すというが本当だったのだな)
その思い出もよいものではない。それに比べれば囚われの身となってからのほうがよい思い出ばかりのような気がする。憧れていた将軍とは手合わせが叶い、しかも手ほどきまでしてもらえた。名を呼び合い、言葉を交わし、抱きしめられもした。
(捕虜となったおかげで悪くない人生だと思えるようになった)
そんなことを思う自分に笑いたくなった。敗戦の将になったことを嬉しく感じるとは、これでは女神にそっぽを向かれても仕方がない。それでもこの屋敷で過ごした時間は自分にとって濃密で鮮やかな日々だった。
(やはりこれは女神の祝福だったのだ)
身支度を整え、両膝を床につけて背を伸ばした。右手を胸に当ててそっと目を閉じる。まずは祖国と民のことを祈り、死者への思いを祈り、最後に教えに背くことへの許しを乞うた。
目を開け窓の外を見る。暗い夜空には星が瞬き、遠くで鳥の鳴く声がした。静かな夜だからか思っていたよりも落ち着いている。ベッドに横になり目を閉じた。眠れるか少し不安だったが、まどろみはすぐに訪れすぅっと意識が遠のくのを感じた。
(これは夢だ)
すぐにそう思ったのは周囲の景色が違っていたからだ。一見すると手合わせしていた中庭に見えるが、自分を照らしているのは夏を感じる日差しではなく柔らかな春の光だ。そのことからしてまず違う。
目の前にはこれでもかと咲き誇る真っ白な薔薇があった。だが、本物の中庭に薔薇はない。これも夢だと判断した一つだった。
(それにしても白薔薇とは……)
神殿で使っていた部屋の前に白薔薇があったのを思い出す。もとから庭にあったものではなく、貴族の誰かが寄進という名目で植えたのだと聞いた。しかも「女神の愛し子の目に留まる場所に」とわざわざ指定してきたのだという。
おかげで一部の貴族から「白薔薇の神官」などと呼ばれるようになってしまった。自分がどう呼ばれようと気にはならないが、陰で「白薔薇を手折りたい」だの「純白を赤く染めてみたい」だと言われればいい気分はしない。そのことを思い出し、つい眉間に皺を寄せてしまった。
「まるで殿下のように美しい花ですね」
突然聞こえてきた声にドキッとした。振り返るとすっかり見慣れたディエイガー将軍が立っている。まさか最後の夢にまで現れるとはと苦笑せずにはいられなかった。
「真っ白な薔薇は、まるで穢れを知らない殿下のようです」
「何を言って、……っ」
離れた場所にいたというのに、一瞬にして背後に立たれてしまった。これも夢だからだろうか。慌てて体ごと振り向こうとするが、それより先に背中から抱きしめられてギョッとする。
「あの、」
なんとか顔だけ振り向こうとするが、腹に腕を回されて身動きが取れなくなった。背中に感じる逞しい胸板に顔がカッと熱くなる。
最後の最後に自分はなんと破廉恥な夢を見ているのだろう。女神に許しを乞いながら眠りに就いたはずだというのに、あっという間に淫らな欲に全身が染まってしまった。
「離してください」
これは夢だとわかっているのに声が震えてしまう。「離して」と言いながら縋りつくように腹に回った腕を掴んでしまった。
「どうか離して……」
つぶやくような訴えに答える声はない。代わりにこれが答えだというようにグッと腰を引き寄せられて耳まで燃えるように熱くなった。
「将軍!」
「しぃっ、お静かに」
耳元で囁かれて鼓動が跳ねた。将軍の吐息まで感じてうなじがゾクッと粟立つ。そこで初めて自分が髪を結んでいることに気がついた。寝るときは結んでいないというのに、なぜ夢では結んでいるのだろうか。
(将軍もらった紐にさえ思いを寄せているということか)
まるで恋に焦がれる少女のようではないか。初心な自分が恥ずかしくて仕方がなかった。なによりこのままでは目覚めたときに未練が残ってしまう。そう思い逃れようと身をよじったものの、夢の中でさえ将軍の力には敵わず腕から逃れることはできなかった。
「どうかお静かに」
「っ」
さらにグッと腰を引き寄せられて目眩がした。将軍の股間が尻たぶに当たっているのを感じてドクドクと鼓動が速くなる。このままではとんでもないことになってしまう。将軍を想いながら自慰をしたのは一度や二度ではなく、そのことを思い出したからか下腹部に熱が集まるのを感じ、慌てて「離してください」と腕を引き剥がそうとした。
「もしや興奮しておいでですか?」
「!」
低く艶やかな声に背中がぶるりと震えた。ゾクゾクとした寒気にも似たものが背中をすべり落ち、それが腰を刺激して下腹部をさらに熱くさせる。
「わたしに興奮しておいでか?」
「そ、そんなことは、」
「嘘はよくありません。どうかお心を隠さずに……あぁ、こんなにも興奮されているではないですか」
「なにを、っ」
突然股間を撫でられて悲鳴を上げそうになった。慌てて唇を噛み締めたものの、大きな手はなおも形を探るように股間を撫で回し、それが刺激になって腰がググゥと重くなる。
「あぁ、こちらだけ可愛がるのは不公平ですね」
「待て、待……ッ」
いつの間にか上着の前がはだけていた。夏でもシャツを一枚で着ることはないというのになぜか上着の下は素肌で、股間を撫でていた手がゆっくりと腹へと移動する。
「待て、」
「しぃっ、じっとして」
腹から胸、鎖骨、そして首筋へと大きな手が上がっていく。そうして耳たぶを摘んだかと思えば、たどった場所を戻っていくようにまた手が動き出した。
「んっ」
先ほどとは違い、なぜか胸のあたりをしつこく撫で回し始めた。そうかと思えば尖った部分を摘まれて肩が跳ねる。無骨な指に何度も尖りを摘まれて、手合わせをした直後のように段々と息が上がっていく。
「殿下のここはとても愛らしい。いつまででも愛でていたくなります。ですがここばかり可愛がるのは不公平というもの。それにこちらのほうが触ってほしそうに見える」
「ひっ」
股間への強烈な感覚に今度こそ悲鳴が漏れた。驚いて視線を落とすと、いつの間に脱がされたのか下穿きは足元に落ちいて股間が剥き出しになっている。
「黒髪と同じ、こちらも黒ですか」
「やめ、」
「ですがここはこんなにも白い。まるで白薔薇のようですね」
そう言いながらこれでもかと昂ぶっている屹立を大きな手に掴まれた。それだけで腰が跳ね、ビクンと震えた先端からはトロトロと淫らな蜜を漏らしてしまう。
「恥ずかしがるように先端が色づいてきた。それにあふれる喜びの涙も多い」
「い、うな……ッ」
分厚くゴツゴツした手のひらに扱かれ、すぐに濡れた音がし始める。将軍にこんなことをさせては駄目だ。たとえ夢であっても将軍を穢してしまうことになる。そう思っているのに止めようと将軍の腕を掴んだ手に力が入らない。それならと早く目を覚ますんだと自分に言い聞かせるが目が覚める気配はなく、下肢からはますます湿った音が聞こえてきた。
「もぅ、手を、離して……っ」
両足がブルブルと震えて立っていられなくなった。せり上がってくる感覚に息が上がり、腰を抱いている将軍の腕に爪を立てる。
「……っ、ぁああ……っ!」
悲鳴のような甲高い声とともに欲望が一気に弾けた。下腹部がブルッと震え、それに合わせるかのように屹立からビュクビュクと欲望が噴き出す。吐き出している最中も腰がビクンビクンと跳ねるのを止めることができない。そのたびに将軍の股間が尻に当たりあらぬ想像をしてしまった。
「殿下は精までも美しくていらっしゃる」
将軍の熱っぽい声に閉じていた目を開いた。視線を落とすと、まだ将軍の手の中にある屹立の先に白薔薇と生い茂る葉が見える。真っ白な花びらからとろりとした雫が滴った。それがすぐ下にある濃い緑色の葉を汚していく。
(なんてひどい夢だ)
欲望を吐き出してもなお将軍の手は屹立を扱き続けていた。続けざまに強烈な快感が下腹部を駆け抜け、またビュクッと欲望を吐き出してしまう。
ほとんど将軍の胸に寄りかかりながら目を閉じた。そうして目尻から流れ落ちる涙に「あぁ」と掠れた声を漏らした。
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