28 / 39
28 再会2
しおりを挟む
「大丈夫、イシューが考えているようなことではないよ」
エメウスがにこりと微笑んだ。その顔にホッとしつつ、では説明とはなんのことだろうかとやはり不安になる。
(そもそもなぜエメウス兄上がアトレテスの王城に……?)
まずはそれを確認すべきだった。まさか捕らわれているということだろうか。そう思ったもののすぐに否定した。もしそうだとしたらこのような豪華な部屋にいるはずがない。この部屋が王城のどのあたりに位置するのかはわからないが、少なくとも牢部屋には見えなかった。
不安が表情に出ていたのか、エメウスが「そんな顔をしないでくれ」と笑った。
「うーん、話す前からこんな表情を見せられたら話しづらいなぁ」
「殿下」
「わかっているよ、将軍。自分で説明したいと我が儘を言ったのはわたしだからね」
笑顔が困ったような笑みに変わり、「さて、どこから話そうかな」と口を開いた。
「イシューが神殿に送られた後、すぐにわたしがメレキアを出たことは知っているね?」
「はい。その際、王位継承権を返上したと聞いています」
「あぁ、そういう話になっていたのか」
「違うのですか?」
「大きくは違わないかな。まぁ、返上せざるを得なくなったから返上したんだけれどね」
「えっ?」
それはどういう意味だろうか。
「そもそも国を出ようと思ったのにはいくつか理由があったんだ。一つはアレクィードの姑息な嫌がらせにうんざりしていたことかな。加えて王妃が面倒だったのもある」
やはり王太子に何かしらされていたのだ。そうしたことは予想していたが、王妃が面倒とはどういうことだろうか。
「陛下と王妃はそれなりに年が離れている。王妃はどちらかといえばわたしと年齢が近いことは知っているかい?」
「はい」
「王妃は上昇志向の強い人でね。元は小貴族だったが兄が神殿で頭角を現し、その力で後宮に入って見事陛下の目に留まった。というよりほかの妃たちを追い落としたというのが正しいだろう」
「そうだったのですか」
自分だけでなく周囲への態度も厳しかったが、そうした性格の人だったからなのだろう。王宮を出る日に見た王妃を思い出した。大地の娘と呼ばれていた母ほどではなかったものの、それなりに美しい人だった気がする。だからこそ睨みつけられるだけで背筋がゾッとし、子ども心にも逆らってはいけない人だと感じていた。
「王妃はわたしと懇ろになろうとしていたのだよ」
とんでもない言葉に一瞬理解できなかった。「は?」と漏れた声は掠れていて、どういうことかと尋ねることすらできない。
「十八になったわたしは立太子される可能性があった。むしろそうした動きのほうが大きかった。あの頃はまだ陛下が王宮のすべてを掌握していたわけじゃなくてね。亡き我が父を慕って動く人たちも多かったのだろう。だから王妃はわたしに近づいた。陛下の妃でいるよりそのほうが得だと踏んだのだろうね」
「まさか……」
初めて知る内容に言葉が詰まった。まさか王宮でそんなことが起きていたとは想像したことすらなかった。
「おかげで陛下から命を狙われてしまってねぇ」
「えっ!?」
「このままメレキアにいては危ないと思い、まずは王妃を遠ざけるために王位継承権を返上した。ところがそれが逆に王宮内の分裂を引き起こしてしまってね。それで出奔しようと考えたんだ。玉座を巡るあれこれや足の引っ張り合い、神殿との関係、とにかくすべてが煩わしかったのもある。今ならうまく立ち回れるかもしれないけれど、わたしも若かったということかな」
王宮での駆け引きがどれほど大変かは想像に難くない。そんな中で自分の相手をしてくれていたのかと思うと胸が苦しくなった。口には出さないが、自分との関わりもエメウスの置かれた状況に少なからず影響を与えていたに違いない。
「あぁほら、またそんな顔をする。イシューを困らせたくて話したわけじゃないんだけどなぁ」
「ですが……」
「過去のことでイシューが気に病むことは何もない。陛下のこともアレクィードのことも、もちろん王妃のことももう終わったことだ。それにね、じつは旅に出てよかったと心から思っているんだ。旅先での貴重な体験はメレキアにいたんじゃ想像することすら難しかっただろうからね」
笑顔からは無理をしているようには見えない。もし本当にそう思っているのなら、それだけが救いだ。
「そうそう、この二年ほどはアトレテスの辺境にいたんだよ」
「まさか、戦争の間もですか?」
「ははは、そのとおり。さすがに戦争が始まった当時は驚いたけれどねぇ。まさか友好国だったメレキアとアトレテスが戦争するなんて二年前は想像すらしていなかったからね。しかもメレキアが女神の左手を将軍として送り込むなんて話まで聞こえてくるし、あのときはイシューのことをどれだけ心配したことか」
「わたしのことより兄上のほうが大変じゃないですか。いくら王位継承権を返上したとはいえ兄上は王族です。身分が露呈すればどうなっていたか」
「わたしがそんなヘマをすると思うかい?」
「それにね」と微笑みながらエメウスが言葉を続けた。
「戦争が始まっても辺境の地は意外と平和でね。メレキアがアトレテスの深くにまで攻め入ることはないとわかっていたのだろう。実際、メレキアは国境近くで大敗した。王族としてそんなことを思ってはいけないのだろうが、わたしもそうなると予想していた」
「では、なぜこうして王城に? ……やはり捕らえられたのではないのですか?」
「まぁ、当たらずも遠からずといったところかな。ははは、大丈夫。行動に制限はあるもののこうして快適に過ごさせてもらっている。食事はおいしいし本や絵画を愛でることもできる。たまには音楽を聴くことだってできる。二年以上アトレテスにいるからか、何もかもすっかり快適に感じているよ」
「兄上、わたしは本気で心配しているのですよ」
「大丈夫。イシューが心配するようなことは何もない」
本当だろうか。微笑む顔からは本心を読み取ることができない。それでも心配でじっと見つめていると「これは参ったな」とエメウスが苦笑した。
「いやはや、そうして見つめられると思わず心の内をさらけ出してしまいそうになる。まさかここまでになっているとはなぁ。これも将軍のせいかな?」
こげ茶色の目が傍らに向いた。将軍の表情は変わることなく、ただじっとエメウスの視線を受け止めている。
「まぁいい。たとえイシューが傾国の美女になったとしても将軍なら守りきれるだろうからね」
「当然です」
「心強い言葉だ。さて、イシューの身の安全はたしかに確認できた。これならわたしも心置きなくメレキア王になれるということだ」
「待ってください。兄上、今なんと……?」
聞こえてきた言葉が耳からこぼれ落ちた。意味がわからずエメウスをポカンと見つめる。いや、意味はわかるが理解できないといったほうが正しい。
「じつはメレキアの王にならないかという話が持ち上がっていてね。どうしたものかなと考えていたんだけれど、イシューに会ってよしと腹を括ることができた。まぁ、王といっても傀儡の王という立場だけれどね」
「傀儡……」
「聞こえは悪いが、わたしもそれでいいと思っている。わたしがその立場に立てばアトレテスはこれ以上メレキアに介入しないと約束してくれた。それなら民たちがこれ以上傷つくこともないだろう」
「ですが、」
「もちろんすべてが丸く収まるわけじゃない。神殿は改革を迫られるだろうし、少なからず抵抗されることになるだろう。それでも現状の神殿よりはよくなる。神官の身でありながら私利私欲に溺れ、利権を貪っていた一部の高位神官を排除できるからね」
「排除、ですか」
「今回の戦争には欲深い神官たちの影響も少なからずあった。わたしはそうした神官たちは神殿に必要ないと考えている。あぁ、大地の娘はそうした神官たちとは関わりがないから安心していい」
自分を見ることのなかった母の顔が浮かんだ。大地の娘と呼ばれる母は高位神官の中でも特殊な立場で、神殿での大きな祭事に姿を現すことはあっても民たちと直接触れ合うことはない。戦争の間も王都にある神殿の奥深くで祈りを捧げていただろうことは想像がつく。
「とまぁ、そういうわけなんだけれど、傀儡の王というのも案外悪くない提案でね。この話を受ければ、愛しい人との婚姻を許してもらえ約束になっているんだ」
「えっ? もしや、どなたかと結婚されるのですか?」
「じつはグレモンティ将軍の妹君に求婚をしている真っ最中でね。敗戦国の王族との婚姻なんて普通は許されないが、わたしがメレキア王になれば身分的にも問題がなくなる」
「将軍の妹に求婚……」
「話が無事にまとまればイシューとは義理の兄弟にもなるわけだ。……そうか、そうなると将軍は義理の兄になるのか。これはまたとんでもない義兄だな」
エメウスの眉間に盛大な皺が寄った。「魔獣のような男と義理の兄弟か」とつぶやくエメウスを茫然と見つめる。あまりの内容に理解が追いつかない。
「殿下、大丈夫ですか?」
将軍の声にハッとした。「は、はい」と答えながら額を押さえる。
「少し混乱していますが……いえ、大丈夫です」
「少し休まれますか?」
「問題ありません。少し驚いただけですから」
「無理をされないほうがよろしいかと」
「いえ、本当に大丈夫ですから」
心配そうに眉尻を下げる将軍に微笑みかけた。正直にいえば少し時間がほしいが、そうも言っていられない。メレキアのこと、それに将軍の妹のことなど考えなくてはいけないことがたくさんある。
「ご無理はなさいませんように」
「ありがとうございます。ですが本当に大丈夫ですから」
「ははは、これはいい!」
突然笑い出したエメウスにギョッとした。今日は驚かされることばかりだ。今度はどうしたのだろうと向かい側を見るとエメウスが満面の笑みでこちらを見ている。
「将軍はイシューの尻に敷かれているとみた。それならより一層安心できる」
「兄上、その言葉は失礼すぎます」
「別に悪いことではないよ。夫人のほうが強い夫婦は生涯幸せに暮らせる。わたしが旅してきたどの国でも言われている言葉だ」
くったくのないエメウスの笑顔に目眩がした。あれこれ考えなくてはいけないのに頭がうまく動かない。それに気づいたのか将軍が「今日のところは失礼しましょう」と提案した。
「そう、ですね」
「わたしはしばらく王城に滞在する予定だから、また遊びに来るといい」
「……わかりました」
さすがに今の言葉は呑気過ぎやしないだろうか。若干の目眩を感じながら立ち上がると支えるように将軍の手が背中に触れた。「ありがとうございます」と言うと「いえ」と言いながら右手を取られる。
「仲睦まじいのはなによりだ。将軍、イシューはメレキアの至宝だ。今後もしっかりと守ってくれ」
「承知しています」
至宝だなどと大袈裟すぎる。いろいろ思うところはあるものの、二十年前と変わらないエメウスの笑顔を見るとやはり安堵せずにはいられなかった。
屋敷に戻り、将軍が淹れてくれたハーブティーを飲みながら王城でのことを思い返した。驚かされることばかりだったが、まずはエメウスが無事だったことがなにより嬉しい。そう思っていてもやはり言われたことが気になって仕方がない。
「エメウス殿下のことをお考えですか?」
「え?」
「兄上と呼ぶほど慕っている方が今後どうなるか心配されているのではと思いまして」
「そう……ですね。今日は驚かされることばかりで、正直どこまで理解できているかわかりません」
「わたしでよければお答えしますが」
将軍の言葉にカップをテーブルに戻した。聞きたいことはいろいろあるが、まずはエメウスが玉座に就いても本当に安全なのか知りたい。
「エメウス兄上がメレキア王になる、これは取引ということですか?」
「そう考えていただいてよろしいかと。エメウス殿下が玉座に就くならアトレテスはこれ以上メレキアの内政に干渉することはありません。もちろんエメウス殿下をどうこうするつもりもありません」
「兄上が将軍の妹君に求婚しているというのは……」
「本当です」
内政干渉はしないと言いつつ、将軍の妹が伴侶になれば妹を通して口を挟むことができるということだ。グレモンティ家は世襲でない公爵位だと聞いたが、王弟と正妻の間に生まれた妹は正統な貴族ということになる。しかも現国王の姪だ。いかようにも口を出すことはできるだろう。
「心配はご無用です。妹は自分の意に沿わないことで首を縦に振ることはありません。そして妹は姑息な政治を嫌っています。たとえ陛下の言葉であっても従うことはないでしょう。妹を通じてアトレテスが何事かを企むことはできないとお考えください」
「それは……なんというか、逞しい姫君なのですね」
「ドレスより剣を選ぶような妹ですからね。それでもアトレテスは今回の婚姻話を進めたいと考えています。我が国は他国から戦争を仕掛けられることが多く、できれば東方にはおとなしくしておいてほしいのが本音です。エメウス殿下は我が国の宰相ともじっこんの間柄で話をまとめやすい。完全な独立国とはいかないかもしれませんが、それなりの独立性は保てるでしょう。我が国にとってもメレキアにとっても悪い話ではないかと」
なるほど、エメウスはそうしたことを踏まえたうえで決断したということだ。
「それにしても兄上とアトレテスの宰相が懇意にしていたとは知りませんでした」
「エメウス殿下が話されていた辺境の地とは宰相の領地のことです」
「えっ?」
「わたしも詳細は知りませんが、偶然領地で出会い意気投合したそうですよ」
「そうだったのですか。ということは宰相殿はもしやお若いのですか?」
昔から周囲を驚かせていたエメウスと気が合う年寄りがいるとは思えない。アトレテス王は六十ほどに見えたが、武人王を支える宰相はいったいどのような人物なのだろうか。
「殿下もご存じかと」
「わたしが?」
「砦で陛下の隣に立っていたのが宰相です」
冷たい男の声を思い出した。自分を女神の左手だと告げた声に背中がゾクッと震えたのが蘇る。
「あの方が……」
「エメウス殿下のことを高く評価しているようですよ」
「そうですか」
高い評価とは、つまり“エメウスはアトレテスの害になるようなことはしない”と見ているということだ。だが、そうではないと判断したときは手を下すということでもある。エメウスはそれさえもわかったうえでこの話に乗ったのだろう。
「兄上こそ望む人生を歩めないではないか。いや、それでも兄上なら、」
思わず漏れた言葉にハッとした。慌てて口をつぐむが、今の言葉は将軍にも聞こえたに違いない。だが、将軍は静かにカップを傾けているだけだ。
「政治のことに興味はありません。ですが、できれば戦争は避けたいと考えています。エメウス殿下は賢明なお方とお見受けしました。二度と同じ過ちは犯さないでしょう」
「わたしもそう願っていますし、兄上なら愚かな選択はしないと思います」
「同感です。わたしは武人ではありますが戦争が好きなわけではない。母が聞けば『軟弱者が』と一撃を食らいそうですが」
「わたしも戦争は嫌いです。……それなのに止めることができなかった」
「殿下に責任はありません。エメウス殿下がおっしゃったとおり殿下が動かれたとしても避けられなかったことです」
「そうかもしれませんが」
「すべて終わったことです。この先のことはエメウス殿下にお任せしましょう。あの方なら再び以前のような平らかな関係を築かれると思っています。そのために我が妹を差し出すことくらい容易いことです」
「まさか、」
「ものの例えですよ。どうやらエメウス殿下は本気で求婚されているようですし、妹もまんざらでもない様子です。このままでは嫁のもらい手がないままでしたでしょうから、義母も大いに喜んでいると思います」
「本当ですか?」
「わたしが殿下に嘘をつくとでも?」
「そんなことは思っていませんが……合意のうえでの話なら幸いだと思います」
そう告げるとはしばみ色の目が優しく微笑んだ。
「エメウス殿下は妹が剣を携えたままでも何もおっしゃらなかったと聞いています。それどころか妹の武勇伝を聞いて大笑いされたとか。見た目は温和でいらっしゃいますが、アトレテスの武人に勝ると劣らない胆力をお持ちの方なのでしょう」
たしかに胆力があったからこそ十八になるまで王宮で無事に過ごせたのだろう。異母兄や王妃をうまく躱し、国王やその周辺からの圧力にも耐え、さらに自分のことも守ってくれていたに違いない。
「おかげで殿下を差し出さずに済みました」
「えっ?」
「いえ。ところで仕立て上がった服はいかがでしたか?」
服と言われ、王城に行く前に届いたメレキア服のことを思い出した。女神の前で誓うのなら神官の衣装がよいのではと提案したのは将軍で、そこまでしなくてもと断ったものの密かに用意してくれていたらしい。
「ありがとうございます。神殿で着ていたものにそっくりで驚きました」
「殿下が望まれる姿で女神の前に立つのがよいのではと思ったのですが、喜んでいただけたようで幸いでした」
「お気遣い感謝します。その、本当に心から感謝しています」
女神に許しを乞うなら神官服であるべきではと心のどこかで思っていた。だが、神官服はアトレテスの公爵夫人としてはふさわしくない。そもそも敗戦国の神官服を着たと知られれば将軍の婚姻を喜ばない者たちの格好の餌食になるだろう。
(それでもと考えていたわたしの気持ちに気づいたのだろう)
やはり将軍は優しい。捕虜として屋敷に連れて来られたときから変わらない気遣いと優しさに胸が熱くなった。
(誓いの日は間もなくだ。それを終えたらわたしは将軍と……)
体の奥がジンと痺れた。先ほどまでエメウスから聞かされた話のことでいっぱいだった頭は、気がつけば将軍とのことに綺麗に塗り替えられていた。
エメウスがにこりと微笑んだ。その顔にホッとしつつ、では説明とはなんのことだろうかとやはり不安になる。
(そもそもなぜエメウス兄上がアトレテスの王城に……?)
まずはそれを確認すべきだった。まさか捕らわれているということだろうか。そう思ったもののすぐに否定した。もしそうだとしたらこのような豪華な部屋にいるはずがない。この部屋が王城のどのあたりに位置するのかはわからないが、少なくとも牢部屋には見えなかった。
不安が表情に出ていたのか、エメウスが「そんな顔をしないでくれ」と笑った。
「うーん、話す前からこんな表情を見せられたら話しづらいなぁ」
「殿下」
「わかっているよ、将軍。自分で説明したいと我が儘を言ったのはわたしだからね」
笑顔が困ったような笑みに変わり、「さて、どこから話そうかな」と口を開いた。
「イシューが神殿に送られた後、すぐにわたしがメレキアを出たことは知っているね?」
「はい。その際、王位継承権を返上したと聞いています」
「あぁ、そういう話になっていたのか」
「違うのですか?」
「大きくは違わないかな。まぁ、返上せざるを得なくなったから返上したんだけれどね」
「えっ?」
それはどういう意味だろうか。
「そもそも国を出ようと思ったのにはいくつか理由があったんだ。一つはアレクィードの姑息な嫌がらせにうんざりしていたことかな。加えて王妃が面倒だったのもある」
やはり王太子に何かしらされていたのだ。そうしたことは予想していたが、王妃が面倒とはどういうことだろうか。
「陛下と王妃はそれなりに年が離れている。王妃はどちらかといえばわたしと年齢が近いことは知っているかい?」
「はい」
「王妃は上昇志向の強い人でね。元は小貴族だったが兄が神殿で頭角を現し、その力で後宮に入って見事陛下の目に留まった。というよりほかの妃たちを追い落としたというのが正しいだろう」
「そうだったのですか」
自分だけでなく周囲への態度も厳しかったが、そうした性格の人だったからなのだろう。王宮を出る日に見た王妃を思い出した。大地の娘と呼ばれていた母ほどではなかったものの、それなりに美しい人だった気がする。だからこそ睨みつけられるだけで背筋がゾッとし、子ども心にも逆らってはいけない人だと感じていた。
「王妃はわたしと懇ろになろうとしていたのだよ」
とんでもない言葉に一瞬理解できなかった。「は?」と漏れた声は掠れていて、どういうことかと尋ねることすらできない。
「十八になったわたしは立太子される可能性があった。むしろそうした動きのほうが大きかった。あの頃はまだ陛下が王宮のすべてを掌握していたわけじゃなくてね。亡き我が父を慕って動く人たちも多かったのだろう。だから王妃はわたしに近づいた。陛下の妃でいるよりそのほうが得だと踏んだのだろうね」
「まさか……」
初めて知る内容に言葉が詰まった。まさか王宮でそんなことが起きていたとは想像したことすらなかった。
「おかげで陛下から命を狙われてしまってねぇ」
「えっ!?」
「このままメレキアにいては危ないと思い、まずは王妃を遠ざけるために王位継承権を返上した。ところがそれが逆に王宮内の分裂を引き起こしてしまってね。それで出奔しようと考えたんだ。玉座を巡るあれこれや足の引っ張り合い、神殿との関係、とにかくすべてが煩わしかったのもある。今ならうまく立ち回れるかもしれないけれど、わたしも若かったということかな」
王宮での駆け引きがどれほど大変かは想像に難くない。そんな中で自分の相手をしてくれていたのかと思うと胸が苦しくなった。口には出さないが、自分との関わりもエメウスの置かれた状況に少なからず影響を与えていたに違いない。
「あぁほら、またそんな顔をする。イシューを困らせたくて話したわけじゃないんだけどなぁ」
「ですが……」
「過去のことでイシューが気に病むことは何もない。陛下のこともアレクィードのことも、もちろん王妃のことももう終わったことだ。それにね、じつは旅に出てよかったと心から思っているんだ。旅先での貴重な体験はメレキアにいたんじゃ想像することすら難しかっただろうからね」
笑顔からは無理をしているようには見えない。もし本当にそう思っているのなら、それだけが救いだ。
「そうそう、この二年ほどはアトレテスの辺境にいたんだよ」
「まさか、戦争の間もですか?」
「ははは、そのとおり。さすがに戦争が始まった当時は驚いたけれどねぇ。まさか友好国だったメレキアとアトレテスが戦争するなんて二年前は想像すらしていなかったからね。しかもメレキアが女神の左手を将軍として送り込むなんて話まで聞こえてくるし、あのときはイシューのことをどれだけ心配したことか」
「わたしのことより兄上のほうが大変じゃないですか。いくら王位継承権を返上したとはいえ兄上は王族です。身分が露呈すればどうなっていたか」
「わたしがそんなヘマをすると思うかい?」
「それにね」と微笑みながらエメウスが言葉を続けた。
「戦争が始まっても辺境の地は意外と平和でね。メレキアがアトレテスの深くにまで攻め入ることはないとわかっていたのだろう。実際、メレキアは国境近くで大敗した。王族としてそんなことを思ってはいけないのだろうが、わたしもそうなると予想していた」
「では、なぜこうして王城に? ……やはり捕らえられたのではないのですか?」
「まぁ、当たらずも遠からずといったところかな。ははは、大丈夫。行動に制限はあるもののこうして快適に過ごさせてもらっている。食事はおいしいし本や絵画を愛でることもできる。たまには音楽を聴くことだってできる。二年以上アトレテスにいるからか、何もかもすっかり快適に感じているよ」
「兄上、わたしは本気で心配しているのですよ」
「大丈夫。イシューが心配するようなことは何もない」
本当だろうか。微笑む顔からは本心を読み取ることができない。それでも心配でじっと見つめていると「これは参ったな」とエメウスが苦笑した。
「いやはや、そうして見つめられると思わず心の内をさらけ出してしまいそうになる。まさかここまでになっているとはなぁ。これも将軍のせいかな?」
こげ茶色の目が傍らに向いた。将軍の表情は変わることなく、ただじっとエメウスの視線を受け止めている。
「まぁいい。たとえイシューが傾国の美女になったとしても将軍なら守りきれるだろうからね」
「当然です」
「心強い言葉だ。さて、イシューの身の安全はたしかに確認できた。これならわたしも心置きなくメレキア王になれるということだ」
「待ってください。兄上、今なんと……?」
聞こえてきた言葉が耳からこぼれ落ちた。意味がわからずエメウスをポカンと見つめる。いや、意味はわかるが理解できないといったほうが正しい。
「じつはメレキアの王にならないかという話が持ち上がっていてね。どうしたものかなと考えていたんだけれど、イシューに会ってよしと腹を括ることができた。まぁ、王といっても傀儡の王という立場だけれどね」
「傀儡……」
「聞こえは悪いが、わたしもそれでいいと思っている。わたしがその立場に立てばアトレテスはこれ以上メレキアに介入しないと約束してくれた。それなら民たちがこれ以上傷つくこともないだろう」
「ですが、」
「もちろんすべてが丸く収まるわけじゃない。神殿は改革を迫られるだろうし、少なからず抵抗されることになるだろう。それでも現状の神殿よりはよくなる。神官の身でありながら私利私欲に溺れ、利権を貪っていた一部の高位神官を排除できるからね」
「排除、ですか」
「今回の戦争には欲深い神官たちの影響も少なからずあった。わたしはそうした神官たちは神殿に必要ないと考えている。あぁ、大地の娘はそうした神官たちとは関わりがないから安心していい」
自分を見ることのなかった母の顔が浮かんだ。大地の娘と呼ばれる母は高位神官の中でも特殊な立場で、神殿での大きな祭事に姿を現すことはあっても民たちと直接触れ合うことはない。戦争の間も王都にある神殿の奥深くで祈りを捧げていただろうことは想像がつく。
「とまぁ、そういうわけなんだけれど、傀儡の王というのも案外悪くない提案でね。この話を受ければ、愛しい人との婚姻を許してもらえ約束になっているんだ」
「えっ? もしや、どなたかと結婚されるのですか?」
「じつはグレモンティ将軍の妹君に求婚をしている真っ最中でね。敗戦国の王族との婚姻なんて普通は許されないが、わたしがメレキア王になれば身分的にも問題がなくなる」
「将軍の妹に求婚……」
「話が無事にまとまればイシューとは義理の兄弟にもなるわけだ。……そうか、そうなると将軍は義理の兄になるのか。これはまたとんでもない義兄だな」
エメウスの眉間に盛大な皺が寄った。「魔獣のような男と義理の兄弟か」とつぶやくエメウスを茫然と見つめる。あまりの内容に理解が追いつかない。
「殿下、大丈夫ですか?」
将軍の声にハッとした。「は、はい」と答えながら額を押さえる。
「少し混乱していますが……いえ、大丈夫です」
「少し休まれますか?」
「問題ありません。少し驚いただけですから」
「無理をされないほうがよろしいかと」
「いえ、本当に大丈夫ですから」
心配そうに眉尻を下げる将軍に微笑みかけた。正直にいえば少し時間がほしいが、そうも言っていられない。メレキアのこと、それに将軍の妹のことなど考えなくてはいけないことがたくさんある。
「ご無理はなさいませんように」
「ありがとうございます。ですが本当に大丈夫ですから」
「ははは、これはいい!」
突然笑い出したエメウスにギョッとした。今日は驚かされることばかりだ。今度はどうしたのだろうと向かい側を見るとエメウスが満面の笑みでこちらを見ている。
「将軍はイシューの尻に敷かれているとみた。それならより一層安心できる」
「兄上、その言葉は失礼すぎます」
「別に悪いことではないよ。夫人のほうが強い夫婦は生涯幸せに暮らせる。わたしが旅してきたどの国でも言われている言葉だ」
くったくのないエメウスの笑顔に目眩がした。あれこれ考えなくてはいけないのに頭がうまく動かない。それに気づいたのか将軍が「今日のところは失礼しましょう」と提案した。
「そう、ですね」
「わたしはしばらく王城に滞在する予定だから、また遊びに来るといい」
「……わかりました」
さすがに今の言葉は呑気過ぎやしないだろうか。若干の目眩を感じながら立ち上がると支えるように将軍の手が背中に触れた。「ありがとうございます」と言うと「いえ」と言いながら右手を取られる。
「仲睦まじいのはなによりだ。将軍、イシューはメレキアの至宝だ。今後もしっかりと守ってくれ」
「承知しています」
至宝だなどと大袈裟すぎる。いろいろ思うところはあるものの、二十年前と変わらないエメウスの笑顔を見るとやはり安堵せずにはいられなかった。
屋敷に戻り、将軍が淹れてくれたハーブティーを飲みながら王城でのことを思い返した。驚かされることばかりだったが、まずはエメウスが無事だったことがなにより嬉しい。そう思っていてもやはり言われたことが気になって仕方がない。
「エメウス殿下のことをお考えですか?」
「え?」
「兄上と呼ぶほど慕っている方が今後どうなるか心配されているのではと思いまして」
「そう……ですね。今日は驚かされることばかりで、正直どこまで理解できているかわかりません」
「わたしでよければお答えしますが」
将軍の言葉にカップをテーブルに戻した。聞きたいことはいろいろあるが、まずはエメウスが玉座に就いても本当に安全なのか知りたい。
「エメウス兄上がメレキア王になる、これは取引ということですか?」
「そう考えていただいてよろしいかと。エメウス殿下が玉座に就くならアトレテスはこれ以上メレキアの内政に干渉することはありません。もちろんエメウス殿下をどうこうするつもりもありません」
「兄上が将軍の妹君に求婚しているというのは……」
「本当です」
内政干渉はしないと言いつつ、将軍の妹が伴侶になれば妹を通して口を挟むことができるということだ。グレモンティ家は世襲でない公爵位だと聞いたが、王弟と正妻の間に生まれた妹は正統な貴族ということになる。しかも現国王の姪だ。いかようにも口を出すことはできるだろう。
「心配はご無用です。妹は自分の意に沿わないことで首を縦に振ることはありません。そして妹は姑息な政治を嫌っています。たとえ陛下の言葉であっても従うことはないでしょう。妹を通じてアトレテスが何事かを企むことはできないとお考えください」
「それは……なんというか、逞しい姫君なのですね」
「ドレスより剣を選ぶような妹ですからね。それでもアトレテスは今回の婚姻話を進めたいと考えています。我が国は他国から戦争を仕掛けられることが多く、できれば東方にはおとなしくしておいてほしいのが本音です。エメウス殿下は我が国の宰相ともじっこんの間柄で話をまとめやすい。完全な独立国とはいかないかもしれませんが、それなりの独立性は保てるでしょう。我が国にとってもメレキアにとっても悪い話ではないかと」
なるほど、エメウスはそうしたことを踏まえたうえで決断したということだ。
「それにしても兄上とアトレテスの宰相が懇意にしていたとは知りませんでした」
「エメウス殿下が話されていた辺境の地とは宰相の領地のことです」
「えっ?」
「わたしも詳細は知りませんが、偶然領地で出会い意気投合したそうですよ」
「そうだったのですか。ということは宰相殿はもしやお若いのですか?」
昔から周囲を驚かせていたエメウスと気が合う年寄りがいるとは思えない。アトレテス王は六十ほどに見えたが、武人王を支える宰相はいったいどのような人物なのだろうか。
「殿下もご存じかと」
「わたしが?」
「砦で陛下の隣に立っていたのが宰相です」
冷たい男の声を思い出した。自分を女神の左手だと告げた声に背中がゾクッと震えたのが蘇る。
「あの方が……」
「エメウス殿下のことを高く評価しているようですよ」
「そうですか」
高い評価とは、つまり“エメウスはアトレテスの害になるようなことはしない”と見ているということだ。だが、そうではないと判断したときは手を下すということでもある。エメウスはそれさえもわかったうえでこの話に乗ったのだろう。
「兄上こそ望む人生を歩めないではないか。いや、それでも兄上なら、」
思わず漏れた言葉にハッとした。慌てて口をつぐむが、今の言葉は将軍にも聞こえたに違いない。だが、将軍は静かにカップを傾けているだけだ。
「政治のことに興味はありません。ですが、できれば戦争は避けたいと考えています。エメウス殿下は賢明なお方とお見受けしました。二度と同じ過ちは犯さないでしょう」
「わたしもそう願っていますし、兄上なら愚かな選択はしないと思います」
「同感です。わたしは武人ではありますが戦争が好きなわけではない。母が聞けば『軟弱者が』と一撃を食らいそうですが」
「わたしも戦争は嫌いです。……それなのに止めることができなかった」
「殿下に責任はありません。エメウス殿下がおっしゃったとおり殿下が動かれたとしても避けられなかったことです」
「そうかもしれませんが」
「すべて終わったことです。この先のことはエメウス殿下にお任せしましょう。あの方なら再び以前のような平らかな関係を築かれると思っています。そのために我が妹を差し出すことくらい容易いことです」
「まさか、」
「ものの例えですよ。どうやらエメウス殿下は本気で求婚されているようですし、妹もまんざらでもない様子です。このままでは嫁のもらい手がないままでしたでしょうから、義母も大いに喜んでいると思います」
「本当ですか?」
「わたしが殿下に嘘をつくとでも?」
「そんなことは思っていませんが……合意のうえでの話なら幸いだと思います」
そう告げるとはしばみ色の目が優しく微笑んだ。
「エメウス殿下は妹が剣を携えたままでも何もおっしゃらなかったと聞いています。それどころか妹の武勇伝を聞いて大笑いされたとか。見た目は温和でいらっしゃいますが、アトレテスの武人に勝ると劣らない胆力をお持ちの方なのでしょう」
たしかに胆力があったからこそ十八になるまで王宮で無事に過ごせたのだろう。異母兄や王妃をうまく躱し、国王やその周辺からの圧力にも耐え、さらに自分のことも守ってくれていたに違いない。
「おかげで殿下を差し出さずに済みました」
「えっ?」
「いえ。ところで仕立て上がった服はいかがでしたか?」
服と言われ、王城に行く前に届いたメレキア服のことを思い出した。女神の前で誓うのなら神官の衣装がよいのではと提案したのは将軍で、そこまでしなくてもと断ったものの密かに用意してくれていたらしい。
「ありがとうございます。神殿で着ていたものにそっくりで驚きました」
「殿下が望まれる姿で女神の前に立つのがよいのではと思ったのですが、喜んでいただけたようで幸いでした」
「お気遣い感謝します。その、本当に心から感謝しています」
女神に許しを乞うなら神官服であるべきではと心のどこかで思っていた。だが、神官服はアトレテスの公爵夫人としてはふさわしくない。そもそも敗戦国の神官服を着たと知られれば将軍の婚姻を喜ばない者たちの格好の餌食になるだろう。
(それでもと考えていたわたしの気持ちに気づいたのだろう)
やはり将軍は優しい。捕虜として屋敷に連れて来られたときから変わらない気遣いと優しさに胸が熱くなった。
(誓いの日は間もなくだ。それを終えたらわたしは将軍と……)
体の奥がジンと痺れた。先ほどまでエメウスから聞かされた話のことでいっぱいだった頭は、気がつけば将軍とのことに綺麗に塗り替えられていた。
108
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
別れたはずの元彼に口説かれています
水無月にいち
BL
高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。
なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。
キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。
だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?
「やっぱりアレがだめだった?」
アレってなに?
別れてから始まる二人の物語。
氷の公爵様と身代わりパティシエ~「味覚なし」の旦那様が、僕のお菓子でトロトロに溶かされています!?~
水凪しおん
BL
【2月14日はバレンタインデー】
「お前の菓子だけが、私の心を溶かすのだ」
実家で「魔力なしの役立たず」と虐げられてきたオメガのリウ。
義弟の身代わりとして、北の果てに住む恐ろしい「氷血公爵」ジークハルトのもとへ嫁ぐことになる。
冷酷無慈悲と噂される公爵だったが、リウが作ったカカオのお菓子を食べた途端、その態度は激変!?
リウの持つ「祝福のパティシエ」の力が、公爵の凍りついた呪いを溶かしていき――。
拾ったもふもふ聖獣と一緒に、甘いお菓子で冷たい旦那様を餌付け(?)する、身代わり花嫁のシンデレラストーリー!
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ぽて と むーちゃんの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
紳士オークの保護的な溺愛
flour7g
BL
■ 世界と舞台の概要
ここはオークの国「トールキン」。
魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。
トールキンのオークたちは、
灰色がかった緑や青の肌
鋭く澄んだ眼差し
鍛え上げられた筋骨隆々の体躯
を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。
異世界から来る存在は非常に珍しい。
しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。
⸻
■ ガスパールというオーク
ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。
薄く灰を帯びた緑の肌、
赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。
分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、
銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。
ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、
貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。
● 彼の性格
• 極めて面倒見がよく、観察力が高い
• 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い
• 責任を引き受けることを当然のように思っている
• 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手
どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。
⸻
■ 過去と喪失 ――愛したオーク
ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。
家柄も立場も違う相手だったが、
彼はその伴侶の、
不器用な優しさ
朝食を焦がしてしまうところ
眠る前に必ず手を探してくる癖
を、何よりも大切にしていた。
しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。
現在ガスパールが暮らしているのは、
貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。
華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。
彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。
それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。
⸻
■ 現在の生活
ガスパールは現在、
街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。
多忙な職務の合間にも、
洗濯、掃除、料理
帳簿の整理
屋敷の修繕
をすべて自分でこなす。
仕事、家事、墓参り。
規則正しく、静かな日々。
――あなたが現れるまでは。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる