美しき神官は戦神の宝珠となる

朏猫(ミカヅキネコ)

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30 美しき神官は戦神の宝珠となる・終

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 湯を使い終わって部屋に戻ったが将軍の姿はなかった。夕食後に少し書き物をすると言っていたからまだ書斎だろうか。

(寝室で待つか)

 先に寝る用意が終わった夜は寝室で本を読みながら待つのが定番になってきた。いつものように寝室に入るが、大きなベッドが視界に入った途端に足が止まる。思わず視線を逸らしたのは今夜すべてを将軍にさらけ出すのだと考えてしまったからだ。
 どうにか落ち着こうといつも使っている椅子に座った。そうして読みかけの本を手に取ったものの開く気にならない。それでもとページをめくるが一文字も頭に入ってこなかった。

(駄目だ、落ち着かない)

 ページをめくる指に視線が留まった。不意に指先に口づけられたことを思い出した。礼拝堂での行為は誓いを示すためのもので性的なものではない。それなのにあの唇が今夜自分のどこに触れるのかと考えて体がカッと熱くなった。

(唇でも手のように触れてくれるのだろうか)

 皮の硬い手のひらの感触を思い出し腰がゾクッとした。大きく無骨な手は想像以上に器用で、ただ撫でられるだけで身悶える夜もあった。準備のためだと体の内側に入ってくる感触を思い出して下腹部がじわりと熱を帯びる。

「わたしはこんなにもいやらしくなってしまった」
「そうした殿下もよろしいかと」
「!」

 急に将軍の声が聞こえてきて驚いた。顔を上げると目の前に将軍が立っている。いつの間に部屋に入ってきたのだろうか。

「湯、は、終わったのですか」
「書斎から直接湯殿へ行きましたので。ところでいやらしいこととは今夜のことをお考えになっていたということですか?」
「……言わないでください」
「恥ずかしがる必要はありません。殿下とわたしは伴侶なのですから、そうした気持ちになるのは自然なことです。愛を説くという大地の女神エレツィーアもそうおっしゃっているのでは?」
「それは、そうですけど」

 女神の愛には性愛も含まれる。神官として民にそうした教えを説くことはあったが、いざ自分のこととなるとどうしても気恥ずかしかった。

「照れていらっしゃる殿下も美しい」

 頬を撫でられてさらに熱が上がった。硬い皮膚の感触にうなじがぞくりと震える。「この手が今から……」と考えるだけで鼓動が怖いくらい激しくなる。

「あの、将軍はわたしのどこを気に入ってくれたのでしょうか」
「はい?」

 思わずそんなことを口走っていた。照れ隠しとはいえ突拍子もないことを尋ねてしまったと思い、慌てて「ええと」と視線を逸らす。

「その、メレキアでは同性の婚姻も珍しくありませんが、アトレテスがそうだとは聞いたことがなかったので……。エルドに尋ねてもあまりないと言っていました。それなのになぜ反対を押し切ってまでわたしとの婚姻を望んだのかと……そもそもわたしは捕虜ですし」

 ちろっと見上げると将軍が渋い顔をした。「エルドは余計なことばかり話しているようですね」とため息をつく。

「すみません。答えにくいことでしたら無理には、」
「いえ、かまいません。ただ、本人を前に惚気るのはどうかと思っただけですので」
「の、惚気」
「はい。お聞きになる覚悟はありますか?」
「それは……少し恥ずかしいです」
「少しなら大丈夫でしょう」
「……それなりに恥ずかしいです」

 そう答え直すと「はは」と将軍が笑った。手を引かれ椅子から立ち上がる。そのままベッドに促されて端に腰かけた。隣に将軍も座った。

「いつから、というのははっきりしません。殿下と接するうちにかけがえのない存在だと考えるようになりました。わたしは殿下のほんの一面しか存じ上げませんが、それでもこのお方だと感じたのです」
「感じた?」
「はい。わたしが生涯をとおして守るのは殿下なのだと。頭で考えたわけではありませんから言葉にするのは難しいですが」

 顔がじわじわと熱くなってきた。自分から尋ねたことだというのに居たたまれない気持ちになる。尻のあたりがソワソワして将軍の顔を見ることができない。

「そうして照れていらっしゃる姿も美しい」
「う、美しいなんて、」
「小さい頃から言われ慣れていらっしゃるでしょうから今さらかと思いますが」
「そんなこと……! そんなことはありません。いえ、たしかに言われることはありましたが、皆わたしにすり寄りたくてそう言っていただけです。美辞麗句を並べ立て、あわよくば神殿の助力を得ようと考えたのでしょう」

 下心を隠そうとしない貴族たちの顔が蘇る。

「それに、こんな顔でなければ母に見捨てられることはなかったのではないかと思うこともありました。母そっくりの顔でなければ嫌われなかったのではないかと、もっと男らしい姿であれば息子だと受け入れることができたのではないかと……黒髪でなければと……」

 少しずつ視線が下がっていく。こんな話をしたいわけではなかったのに、つい余計なことを口にしてしまった。

「すみません、今の話は忘れてください」

 努めて明るくそう言いながら顔を上げると優しい瞳とぶつかった。

「わたしでよければ、どうぞ胸の内をお話ください。それで殿下のお心が晴れるのであれば願ってもないことです」
「将軍……」

 心をも守るという将軍の声が聞こえた気がした。それほど深く想われているのかと胸が甘く苦しくなる。

「どのような殿下もわたしには美しく眩しく見えます。神官として祈る姿も、武人として腕を磨く姿もたまらなく美しい。わたしにとって殿下はなにものにも代え難い存在なのですよ」

 不意に太い指が目尻を撫でた。二、三度ゆっくりと撫でてから頬に移り、そのまま唇へと移動する。下唇を優しく撫でる仕草になぜか涙がこみ上げてきた。

「将軍と伴侶になれたこと……これほどの喜びはありません」
「わたしのほうこそ殿下を伴侶に迎えることができたことは人生最大の喜びです」

 顔が近づいてきた。口づけられるのだとわかり、ゆっくりと目を閉じる。触れた唇は熱く、それが将軍の気持ちのような気がして目眩がした。今夜はこの唇がほかにも触れてくれるに違いないと考えるだけで陶然とした感覚になる。

「今宵はすばらしい初夜になることでしょう。……そしてわたしから二度と離れられなくなる」
「え……?」

 何か聞こえた気がして目を開けた。ところがすぐに押し倒されて目が回る。こんなふうに扱われたのは初めてで、やや強引な仕草に驚いたものの準備ではないのだ言われた気がして胸が昂ぶった。
 将軍の手は荒々しいほど性急に動いた。上着はすぐにはだけられ、首筋や鎖骨に口づけられている間に下穿きまで剥ぎ取られる。

「しょ、ぐん……っ」

 すでに緩く兆していた屹立を抜かれて腰が砕けた。あっという間にビュクビュクと精を吐き出す。将軍の手に擦られたのは数回で、こんなに早く吐精したのは初めてだった。「ハッハッ」と荒い息を吐きながら、のし掛かる将軍を見た。

「っ」

 思わず息を呑んだ。見たことがないほど強い眼差しに肌が粟立つ。なぜかはしばみ色の目が黄金に輝いているように見えた。枕元のランプのせいだろうが、夏の日差しのようなギラギラとした強さに背筋がゾクッと震える。

「今宵は準備ではありません。どうか覚悟してください」
「覚悟など……わたしのほうこそ、今宵をどれだけ待ちわびたか」

 将軍がグッと唇を真一文字に結んだ。

「あなたという人は……」
「しょう、……っ」

 いつもより乱暴に左足を押し広げられた。そうかと思えばすぐに滑った指が屹立の根元を撫でる。そのまま双玉を撫で、さらに奥へと進む感触に太ももが震えた。

「殿下はこちらも覚えがよくていらっしゃる。これならそれほどほぐさなくてもよさそうです」

 そう言いながら指が入ってきた。すっかり馴染んだ感覚だというのに、今夜はこの先があるのだと思うだけで力が入ってしまう。将軍もそのことに気づいたのか「力を抜いてください」と耳元で囁いた。

「んっ」

 低い声が耳の奥に響いてうなじがゾクゾクした。力を抜かなければと思っているのにうまくできない。どうにもできないもどかしさに太い腕を掴むと、フッと笑ったような吐息を感じた。
 耳に触れていた唇が頬をかすめた。そのまま唇に触れ、がぶりと噛みつかれた。

「っ!」

 こんな口づけをされたのは初めてだった。上唇を噛まれ、そうかと思えば下唇に吸いつかれる。どうしていいのかわからず口を開くとヌルンと舌が入ってきた。肉厚な将軍の舌が我が物顔で口の中を動き回っている。喉が震えるような刺激に戸惑っていると腹の奥をゴリュッと押されて腰が跳ねた。

「っ、っ、っ」

 準備のときでさえ泣きたくなるほど感じた場所を何度も指が抉った。同時に口の中では舌がこれでもかというほど動き回っている。上と下の両方を刺激されて全身がビクビクと何度も跳ねた。

「……!」

 感じたことがないほど鋭いものが背中を駆け上がり、塞がれたままの唇から悲鳴が漏れた。こんな感覚は初めてで目を見開いた。

「そろそろよろしいようですね」

 何か言わなくてはと思っているのに唇が痺れてうまく動かない。擦られすぎた口の中がぞわぞわして自分の舌が触れるだけで喉がひくついた。

「そのまま力を抜いていてください。そのほうが殿下もおつらくないでしょう」

 散々中を蹂躙していた指がヌポッと音を立てて抜けた。いつもの状態に戻っただけだというのに切なくて縁がヒクヒクと動くのがわかる。そこに熱くて硬いものが触れた。何度か縁を擦るように動き、そうしてゆっくりと押しつけられる。

「あ……ぁ……」

 一度閉じた縁が一気に押し広げられる感覚に声が漏れた。準備のときには感じなかった強烈な圧迫感に息が詰まる。
 浅い場所を硬いものがこれでもかと拡げている。息ができないほど苦しいのは最初だけで、次第に腰が疼くような感覚が広がり始めた。苦しいのに切ないような不思議な状態がつらくて目の前にある逞しい腕に縋りつく。するとじっと動かなかった圧迫感がググッと奥へと進み始めた。

「あ、あ、あ、ぁぁ、あ、あ、」

 掠れた声が止まらない。せり上がってくるのは恐怖だろうか。経験したことのない感覚に腕を掴む手に力が入る。

「殿下もすぐに気持ちよくなりますよ」

 将軍の声に「あぁ、そうか」と力が抜けた。自分は今、将軍と一つになろうとしている。圧迫感はその証拠で、夢にまで見た将軍の存在をこうして体の中で感じている。
 いつの間にか閉じていた目をゆっくりと開いた。滲んではいるが、たしかに自分を組み敷いているのは将軍だ。いつも以上に色気を感じるのは目元が上気しているからだろうか。

「しょ、ぐん」

 どうしても触れたくて手を伸ばした。左頬に残る傷痕を指先でそろりと撫でる。

「ようやく一つに、なれる」

 そう囁くと、将軍の表情がグッと奥歯を噛み締めるような険しいものに変わった。すぐにフーッと大きく息を吐くが、それが振動として中に伝わり圧迫感が増す。

「殿下は少々ご自分のことを知る必要があるかと」

 どういうことか尋ねようと開いた口から「あぁっ!」と悲鳴のような声が出た。勢いよく奥を突かれて背中がしなる。準備のときにも触れられたことのない場所がカッと燃えるように熱くなった。そこをこれでもかと押し上げられ「ああぁぁぁ!」とあられもない声が止まらなくなる。
 これが自分の声かと思うと頭が焼き切れそうだった。こんな声を上げては将軍に呆れられるに違いない。それとも萎えてしまうだろうか。目が回るような状態だというのに頭ではそのことが気になって仕方がなかった。

「んっ! んんっ、んん!」

 渾身の力を込めて唇を噛み締めた。それでも漏れそうな声に慌てて手の甲を当てる。

「声を我慢する必要は、ありませんよ」
「でも、っ! んあぁ!」
「ほら、もっと声を出して、ッ」
「ああぁぁぁぁ!」

 奥にあった圧迫感がズルンと動き、ひどく感じる浅い場所を押し上げた。たまらず声を上げながら何度も頭を左右に振る。

「声を聞くだけでわたしは、このように、興奮してしまうのですよ」
「あぁっ! そこはもう、っ」
「わかっています。ここは準備のときから、ハッ、殿下が悦ぶ場所でしたから」
「やめっ、これ以上、はっ、苦し、っ」
「問題、ありません。御身のことは、殿下よりよく存じ上げて、おりますので」
「しょ、ぐんっ、そこばかり、されては、っ」
「今宵はまず、ここで一度果てて、フッ、いただきます」
「……!」

 浅い場所をこれでもかと擦られ、押し上げられ、目の前がチカチカと光り出した。ランプの明かりがまるで星のように瞬きぐるりと回っている。体の奥から何かがせり上がってきた。準備のときとは違う、自慰のときとも違う得体の知れない感覚に背中がブルブルと震え出す。

「さぁ、絶頂しいって」

 耳元で囁かれて腹の奥で何かがドクンと弾けた。鋭い快感が背中を駆け上がり脳天を貫く。下腹がビクビクと震えているのはわかるが、自分が果てたのかどうかはわからなかった。尻たぶが小刻みに震え、将軍を食い締めるように縁に力が入っていることはなんとなく感じる。

「後ろだけで果てることができましたね」

 額にかかる髪を掻き上げられた。それだけで肌がぞくりと震える。

「わたしの手でこうなったのかと思うとたまりません。殿下はもやは男の証だけでは果てることができないでしょう。そして強烈な快感を与えたわたしを忘れることは決してできなくなった。愛しい殿下、あなたはわたしだけの宝になったのですよ」
「しょ、ぐん……」

 将軍の言葉がうまく聞き取れない。全身の肌がピリピリと震えて鼓動も激しいままだ。吐精した後はすぐに落ち着くはずなのに、いつまで経っても熱が引く様子はなく腹の奥でジクジクとくすぶっていた。

「今度は体の深い場所でわたしを感じてください」

 浅い場所にあった圧迫感がググッと奥に進み始めた。敏感な内側を熱い塊に擦られ強烈な熱がぶり返す。

「ああぁぁ!」
「真っ赤な顔も、フッ、涙が滲む目も、なんと美しいことか」
「あっ、あっ、んっ、んんっ」
「奥の奥まで、ッ、わたしを覚えてください」

 奥をググッと押し上げられて顎が上がった。全身の震えが止まらない。体の内側から何かが押し上げられ、それが表面で弾け飛んでいくような感覚に目が回った。体の奥を貫く凶暴なまでの熱は将軍の自分への想いなのだとわかり、体中が歓喜に震えた。
 滲む目で必死に将軍を見た。まるで戦場に立っているかのような表情に鳥肌が立つ。手合わせのときでさえ滅多に見せない荒い息を吐く姿に体の深い場所がゾクゾクと総毛立った。

(こんなにも求められている)

 腹の奥がぞくりとした。これでもかと拡げられている場所にきゅううと力が入る。体の芯を貫く将軍の逞しさと猛々しさに何かがパン! と弾け飛んだ。

「全部、将軍のものに、っ。わたしの全部を、将軍だけの、ものにして、くれ……っ」

 奥を穿っていた動きが止まった。フーッと大きく息を吐きながら将軍が上半身を起こす。すっかり乱れた銀色の前髪を掻き上げたかと思えば、そのままはしばみ色の目がじっと自分を見下ろしている。

「高潔な女神の化身である殿下のそのようなお言葉、たがが外れてしまいそうです」

 前髪を掻き上げていた手が腹に触れた。それだけでビクッと震えてしまい、その振動が逞しいものに貫かれたままの内側を刺激して声が漏れる。

「ここにわたしのものが入っているのかと思うとたまりませんね」
「んっ」
「随分深い場所まで入っているというのに、まだ足りないとおっしゃるとは」
「んふ、」
「それとも早く注いでほしいということでしょうか」
「ふあ!」

 指先でゆっくりと撫でていたかと思えば、へその下あたりをグッと押されて鋭い快感が走り抜けた。縁がギュッと窄まり、ねだるように内側が動く。

「クッ。そうねだられずとも注いで差し上げます。こぼれないほど、深い場所に」

 将軍の瞳が黄金色に煌めいた。将軍は自分を女神のようだと言うが、将軍こそ戦神のように見える。そう思ったからか礼拝堂で感じた畏怖のようなものが蘇った。

(あぁ、わたしは神に抱かれているのだ)

 なぜかそう思った。再びヌクヌクと動き出した圧迫感に顎が上がる。「ハッハッ」を荒い息を吐きながら自分を押さえつける逞しい腕を掴んだ。これまで感じたことのない陶酔めいた恍惚感に目尻から涙がこぼれ落ちる。

「なんと美しいことか」
「はや、く……っ。また、果てて、しまう、……っ」

 音にならない声で「一緒に」と囁いた。唇の動きでわかったのか、「仰せのままに」と答えた将軍がズン! と最奥を押し上げる。強烈な突き上げに目を見開いた。反射的に口が開いたものの声は出ない。気がつけば逞しい背中に回した手で必死にしがみついていた。

「ぁぁああっ……――っ」

 何度もズンズンと奥を突き上げられ悲鳴のような声が出た。快感かどうかわからないが、それでも乱暴なまでにぶつけられる行為と熱に全身が悦び震えた。
 将軍の動きが止まった。そうかと思えばグッと腰を押しつけられる。次の瞬間、体の深い場所でドクンと弾けるのがわかった。続けて脈打つような感覚が内側に広がり、それが将軍の吐精だと気づきたまらない気持ちになった。

(将軍が、わたしの中で果てている)

 これまで感じたことのない充足感に頬が緩んだ。内側を濡らされながら「これで将軍はわたしのものだ」と強く感じた。

「殿下も果てましたか」
「……?」
「ほら、ここに小さな水たまりが」

 下腹を撫でられて「んっ」と掠れた声が漏れた。将軍が指を動かすたびにヌチヌチと濡れた音がする。吐精した感覚はなかったが濡れているということはそういうことなのだろう。

(だが、まだ足りない)

 たった今満たされたはずなのに「もっと」と欲深い声が聞こえる。気がつけば両足を太い腰に絡みつけ、ねだるように腰を揺らしていた。

「わたしもまだ落ち着けそうにありません」
「んっ」
「果てたばかりだというのにこの有り様です」
「あぁっ」

 中でビクビクと震えていた熱が再び動き出した。敏感になった内側を擦られ、ゾクゾクとしたものが背中を駆け上がる。腹が動くのにつられたのか中がぐにゅりとうねった。

「そのようにねだっては注いだものがあふれてしまいますよ」
「……また、注いでくれる、のだろう……?」
「お望みとあれば」

 将軍の顔が近づいてくる。触れた唇は燃えるように熱く、夢中になって吸いついた。深い口づけを交わしながら将軍に腹の中を擦られ、たまらず背中に爪を立てる。

(ついに将軍と結ばれたのだ)

 恋い焦がれた存在を手にした悦びと高揚に肌が震えた。その後も興奮のまま何度も交わり、そうして朝日が昇る頃ようやく眠りに就いた。



 武人の国として名高いアトレテス王国には戦神の剣クフォースと呼ばれる武人がいる。神の剣と呼ぶには余りある剣の才と体格に、誰もが「彼こそが戦神だ」と口にした。
 そんな武人の傍らには常に美しき武人がいた。かつて女神の愛し子と呼ばれていた神官は、いまや戦神の宝珠と呼ばれ戦神さながらの剣気を纏うのだという。

 戦神は女神を手にしたのだ。

 いつしかそうした話が大陸中に広がり、まるで神話の物語のように語られるようになった。
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