美しき神官は戦神の宝珠となる

朏猫(ミカヅキネコ)

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番外編 美しき宝珠の正体2

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 将軍が王城内にある軍の施設から戻ってきたのは随分遅くになってからだった。就寝の準備を済ませ、それでも気になって待っていると将軍が寝室に入ってきた。髪が濡れているということは湯殿に寄って来たのだろう。

「あの男性は何か話しましたか?」

 本を閉じながらそう尋ねた。ここまで遅くなったのは自分たちを襲った男を尋問していたからに違いない。濡れている前髪を掻き上げながら将軍が「全部ではないようですが」と答えた。

「王太子派ではないようですが、メレキアの貴族の名を口にしていました。ですが本当の依頼人は別でしょうね」
「黒幕が別にいると?」
「暗殺を生業にする者が爪を全部剥がされた程度で口を割ることはありません」

 どうやって尋問したのかわかり眉間に皺が寄った。尋問の類いはメレキアでも行われていたのは知っている。だが直接耳にするとやはり抵抗感が芽生えた。

「お耳を汚してしまいました」
「いえ、大丈夫です。わたしも武人になると覚悟を決めた身、この程度で眉をひそめているようではいけないと心得ています」
「殿下はお優しい。どうかそのお心を大切になさってください」

 優しいと言われて悪い気はしない。だが、それだけではディエイガー将軍の隣には立てないとわかっている。優しさだけでは将軍の背中を任される日は来ないと焦燥感にも似た気持ちがわき上がった。

「ところで殿下、何をなさっているのでしょうか」
「髪が濡れたままでは風邪を引くかと思いまして」

 部屋に入ってきた将軍を見て、まず濡れた髪が気になった。額や首筋を流れ落ちる雫をどうにかしたくて、洗面器の横に用意してある手拭いを取り将軍に近づいた。額や首を拭っている間に濡れたままの襟足も気になり、やや爪先立ちになりながら手を後ろに回してうなじの辺りも拭う。

「そのようなことをなさらずとも」
「わたしがしたいのです」

 手合わせの後、いまでも将軍は手拭いで額や首の汗を拭ってくれる。世話係のようなことをさせてはいけないと思っているのに止められないのは、どことなく将軍の顔が楽しそうに見えるからだ。

(こうしてやってみると確かに楽しいかもしれない)

 想う相手の世話を焼けるのは心地がいい。同時に、自分は神殿でもこうしたことをしてもらう側だったのだと気がついた。「もう王族ではないと思ったはずなんだが」と情けない気持ちになる。
 神殿では小さな私室を選び、できるだけ身の回りのことは自分でしようと心がけた。だが実際に自分でしていたことはほんのわずかなことだけで、食事も着替えも世話係の神官見習いたちがしてくれていたから生活できていたのだ。

(それに比べて将軍は大抵のことを自分でやっている)

 お茶を淹れることには驚かされたが、なんと食事を作ることもできるのだという。

(わたしも将軍のようになりたい。いや、ならなければ)

 メレキア人であることはやめられないが、アトレテスに骨を埋める覚悟はできている。武人として生きる覚悟もだ。そのためにも王族としての感覚を捨て、武人としての生き方を学ばねばと考えていた。

「なにやら決意されているように見受けられますが、無理はされませんように」
「無理などしていません。それともわたしに世話を焼かれるのは嫌ですか?」

 少し意地悪な言い方をしてしまった。

「そうではありませんが……この状態は少々困ります」
「この状態? ……あ、」

 指摘されてようやく自分が将軍に抱きつくような姿勢でいることに気がついた。慌てて離れようとするが、腰を抱かれて身動きが取れなくなる。

「このように密着されては我慢できそうにありません」
「っ」

 耳元で囁かれて手拭いを持つ手が震えた。薄い夜着越しに将軍の逞しい体つきを感じて鼓動が跳ねる。

「殿下も興奮しておいでか?」

 グッと体を引き寄せられて下腹部に猛々しいものが触れた。そこに自分の昂ぶりが重なる。布越しだというのに脈打つような熱を感じて体が一気に熱くなった。

「よろしいですか?」

 何が、とは言わなかった。もちろん言われなくてもなんのことかわかっている。将軍の首に両手を回しながらもう一度背伸びをし、「もちろんです」と囁き返した。
 返事をするとすぐさま抱き上げられた尻の下にあるのは将軍の逞しい腕で、まるで幼子のように抱きかかえられている状況に苦笑しそうになる。
 アトレテスの武人ほどではないものの自分もそれなりの体つきだ。それなのに将軍は苦もなくこうして抱き上げた。これが将軍以外にされたのなら傷つきもするだろうが、相手が愛しい将軍だと思うと胸がこそばゆい。
 まるで壊れ物のようにベッドに横たえられた。少しくらい乱暴にしてもよいのに……そう思いながら将軍の頬を両手で包み込む。
 将軍が左手の手のひらに口づけた。そうしながら片手で腰紐をほどき始める。夜着の前はあっという間にはだけ、胸を太い指で擦られて「んっ」と声が出た。

「触れる前から膨らむようになりましたね」

 自分を跨いだ将軍にじっと見下ろされ鼓動が忙しなくなった。指だけでは物足りない。焦れったくて腰が揺れそうだ。なんとか我慢しながら両手で将軍の腰紐をほどく。その様子を目を細めながら見ている将軍の表情に色気を感じ、下穿きの中で屹立がグンと頭を持ち上げた。

「このままでは苦しいでしょう」

 そう言って将軍が下穿きを緩め始めた。「将軍こそ苦しいだろうに」と、これでもかと膨らんでいる将軍の下穿きを両手で包み込む。それだけで手の中の熱がググッと力を持ち、たまらない気持ちになった。

「熱くて硬い……」

 形を確かめるように手を動かしながら将軍を見た。顔を途端に手が止まり、体がギュッとこわばる。ギラギラとしたはしばみ色の目に腹の奥がきゅううと鳴くように締まった。下腹が何度も震え、尻の奥が切なく疼く。

「殿下は煽るのが上手でいらっしゃる」
「別に煽ったわけでは、」
「無意識だからこそタチが悪いとも言えますね」

 将軍の手が枕の先に伸びた。そこには交わるために必要な潤滑剤が置いてある。
 ふわりと花の蜜のような香りが漂い始めた。潤滑剤にはいくつか香りがあり、花の蜜以外に柑橘や菓子のような甘い香りがするものもある。どういう基準で使い分けているのかわからないが今夜は花の蜜の気分なのだろう。

「ん……」

 とろりとした液体を腹の上に垂らされて肌がフルフルと小刻みに震えた。瓶から滴り落ちているのは淡い金色に光る液体で、肌に触れたからか蜜の香りがグッと濃くなる。その香りを嗅いだ途端に「あぁ」とため息のような吐息が漏れた。これから将軍に抱かれるのだと体もわかっているのか下腹部がヒクヒクと波打つ。

「殿下の体はどこを見ても美しくていらっしゃる」
「そんなことは……」
「いいえ、鍛錬の成果がしっかりと現れています」
「んんっ」

 体つきを確かめるように将軍の指が動いた。へそから脇腹へと動いた指が再びへそに戻り、今度は胸のほうへと上がっていく。いつもより感じてしまうのは潤滑剤で滑っているからだろうか。

「こうした胸の形は剣を扱うのによいとされています。腕の形も悪くありません。胸と腹の間の肉の付き方も理想的といえるでしょう。腰はまだ細いと言わざるを得ませんが、殿下の場合は速度が重要ですからこのくらいでも十分かと」

 説明しながら将軍の手がその場所を丁寧に撫でていく。内容は真面目なものだというのに手つきがあまりにも淫らで腰が揺れてしまった。そのせいでちょうど腹を撫でていた将軍の手に屹立の先端が触れた。

「んぅっ」

 予想外の刺激に腰がブルッと震えた。それが呼び水となってしまい、将軍の手に先端を擦りつけてしまう。自分がどれだけ淫らなことをしているのかわかっていても止めることができない。

「殿下の淫らな姿に興奮しない者はいないでしょう。ですが、こうした姿は誰にも見せませんように」
「当然、です……んっ。あなただから、こんなにも興奮、するのです、っ」

 駄目だ、息が上がってうまく話せない。夢中で手を伸ばし将軍の屹立をしごいた。すでにたっぷり濡れているのか下穿きがグチュグチュと音を立てる。

「あぁ、そんなにされては果ててしまいます」
「早く、早くわたしの中に」
「ではうつ伏せに」

 促されてうつ伏せになった。早くと疼く体をどうにかしてほしくて自ら尻を上げる。こんな姿を自分がするようになるとは思わなかったが、将軍にならどんな姿を見られてもかまわない。昂ぶる気持ちのまま左手を尻に伸ばし、ぐぅっと尻たぶを割り開いた。

「早く……っ」

 将軍が下穿きを外す音が聞こえてきた。羽織ったままの夜着も脱いでいるのだろう。もうすぐだ、そう思うだけでたまらない気持ちになった。

「背中も理想的な肉付きでいらっしゃる」

 まだ説明が続くのだろうか。腹や胸と同じように指で撫でられるのかと思ったが、触れたのは指よりずっと柔らかいものだった。すぐに将軍の唇だとわかり顔がカッと熱くなる。

「この傷も美しくていらっしゃる」
「んあっ」
「ですが、今後はこのような傷を御身に付けることは決してないでしょう」
「んふ、ふぅっ」

 背中に残る傷を舌で舐められ肩が震えた。傷のことは少し前に話をした。鍛錬中の事故とはいえ武人を目指す者が背中に傷を負うなど恥だというのに、将軍は「殿下の傷なら愛おしいだけです」と言ってくれた。

(そういえば、あのとき少し険しい目をしていたような……)

 もしかして思っていたより醜悪な傷痕だったのだろうか。自分で治療していたときは鏡で見ることもあったが、傷が塞がってからは恥だと思い見ないようにしてきた。

「もう少し腰を上げられますか?」

 促されてさらに尻を上げた。手が届かなくなったが、割り開かなくてもはしたない場所が見えているはず。そのことに羞恥心を覚えるのと同時にひどく興奮した。

「少し腫れていますが痛くはありませんか?」
「大丈夫、です」
「少し頻度を落としたほうがよいかもしれませんね。このままでは腫れが引く間もなさそうです」
「かまいません。痛くはないので、その、気遣ってもらわなくても……」

 自分の言葉にますます顔が熱くなる。自分はこんなにも性欲が強かっただろうか。将軍と体を重ねるようになって段々と歯止めが利かなくなってきた気がしてきた。

「では、せめて労ることにしましょうか」
「えっ? んっ、なに、……っ」

 窄まりに熱いものを感じて背中が跳ねた。この感覚はいつもの指とは違う。それよりずっと熱く柔らかい感触に「まさか」と慌てて視線を向けた。

「しょうぐ、なにを、ひぅっ」

 縁を柔らかく擦られて屹立が震えた。先端からはしたなくもポタポタと雫をこぼしているのがわかる。

「指で触れるのとはまったく違いますね」
「そんなところを、んあっ」
「ここは殿下とわたしが繋がるための大事な場所です。こうして見ると、よく入るものだと驚くばかりです」

 窄まりに吐息のようなものを感じた。慌てて腰を引こうとしたが許さないとばかりに大きな手に掴まれ、そのまま吸いつくように舐められる。とんでもない出来事に全身が羞恥に震えた。ジュルッと吸いつく音や舐める感触に居たたまれない気持ちになる。
 縁を何度も舐められ吸いつかれ、さらには内側まで舐められて力が抜けてしまった。指とは違うものが浅いところでグニグニと動くたびに腰が震えて目尻が濡れる。

「あぁ、すっかり濡れて……これなら潤滑剤は必要ないかもしれませんが、念のためわたしのものには付けておきましょう」

 クチュクチュと滑った音が聞こえる。そうかと思えばヌルッとした硬いものが縁を擦った。あぁ、いよいよだ。将軍が中に入ってくる。

「指でほぐしてはいませんが、いつもより柔らかく拡がる気がします」
「い、わないで、」
「柔らかいながらもよく吸いついて……それほどわたしが欲しかったのですか?」
「んんっ!」

 大きな部分が縁をヌクッと通過し、下腹部にじわっと痺れが走った。そのまま奥に来る……そう思ったが熱はなかなか先に進もうとしない。焦れったい感覚に思わずねだるように尻を突き出してしまった。

「フッ、なんと淫らで美しいことか……殿下のこうした姿をわたししか知らないのかと思うとたまらない気持ちになります」
「っぁん……ぁっ、んぁ……っ」
「武人のごとき強さと肉体を持ち、それでいて女神のような美しさと魔女のような淫らな顔を持っていらっしゃる」
「しょ……、ぐん……っ、あっ!」

 ズン! と深い場所を擦られて顎が上がった。そのまま浅い場所から奥深くまで何度も行き来する熱塊に快感が一気に膨らむ。

「そんな魅力的な方が我が伴侶になったこと、いまだに夢ではと思うことがあります」
「ああぁぁ!」

 最奥をズンと突き上げられて太ももが震えた。上半身を支えていた腕は崩れ落ち、それでも腰を突き上げた状態で将軍を受け入れ続ける。先ほどから何かがピチャピチャと肌を濡らすのは、もしかして自分は精を吐き出しているのだろうか。

「殿下はわたしのものです」

 背中を覆うようにのし掛かられた。体内を抉る熱がさらに奥へと入り込み、あまりの刺激に「んんっ」と目の前の布に噛みつく。

「殿下」

 耳元で囁かれて背中が震えた。

「殿下がわたしそっくりの剣気を纏う姿を見るたびに心が悦びに震えているのですよ」
「――……っ!」

 強烈な快感が背中を駆け上がった。腹の奥をグーッと押し上げている熱をこれでもかと腹の奥が食い締めている。苦しいまでの快感に体中が震え、そうしてうちに内側が弾けるような鮮烈な感覚が体を突き抜けた。
 体が何度も跳ねた。それを抑え込むように将軍が抱きしめている。息苦しく思いながらも全身をがんじがらめにされているのが嬉しくて涙が滲んだ。

「どうか……離さないで……」

 いつの間にか布を握り締めていた手に大きな手が重なった。何もかも包み込まれているような感覚に興奮とは違う熱いものを感じる。

(将軍はわたしのものだ)

 誰にも渡さない。将軍の体も命も自分だけのものだ。そう思ったからか再び強烈なまでの欲が膨らんだ。抱きしめられたまま小刻みに腰を揺らす。すると果てたばかりとは思えない圧迫感が再び内側を擦り始めた。

「んんっ、あっ、ああぁぁ!」
「殿下の求めには何度でも応えましょう」
「しょ、ぐん! もっと、わたしの中に……ッ」
「では、次はもっと奥に……」

 熱に浮かされたかのように何度も将軍と交わった。狂おしいほどの感情に訳がわからなくなる。夢うつつを行き来するような状態のなか、外側も内側も将軍の熱を感じられることに心の底から安堵した。
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