いじめられっ子たち

星磨よった

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その後の結果

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 お昼からのテレビのニュース番組では、このことが大々的に取り扱われ、事件が起きた学校の名前も報道された。出演者達は事件を起こした彼らを非難しながらも、この事件が起きた背景を見ていく必要があると口を揃えて語った。


 しかし、事件を扱ったニュース番組には抗議の電話やメールが殺到した。


 なぜなら、今までいじめの報道は被害者名を出すだけで、加害者の名前やいじめが起きた学校名は一切出して来なかったからだ。そうしたことで、いじめが減らずにこうした事件が起きたのだと抗議した者達は考えたのだ。


 こういう事件が起きてようやく学校名を出すということなら彼らの起こした行動には意味があったと考えた人から、同情の声が数多く寄せられた。


 やがて、政府が厳正に対処するという旨の声明を出した。これにも国民から対処するのが遅過ぎるとの批判の声が上がった。世論は事件を起こした子どもたちに同情する声が多数を占めた。


 しかし、重体であった子供の1人が死亡したというニュースが流れ出すと今度はやり方が間違っていたとして加害者に重罰を求める声が多くなって行った。やがて裁判が行われ、多くの子供が心神耗弱状態にあったとして、保護観察や更生保護施設に入るという処分となった。


 しかし、被害者を死亡させてしまった15歳の少年と17歳の少年はそれぞれ、少年院での不定期刑となった。それでも、情状酌量の余地が認められたため、最短で7年で出てくることが可能な刑となった。


 また、最初に呼びかけ、いじめを受ける子供を集めた少年は結局、人に軽い打撲を与えただけであったし、精神疾患を患っているとされたため、これまた保護観察処分となった。


 この事件では、結局2人の命が失われる結果となったが、その遺族は表立ってメディアの前に立つことはなかった。亡くなった2人共、いじめを行っていた事実を教育委員会や学校側が認めたからである。遺族が民事裁判を起こして、加害者家族に賠償金を求めることもなかった。


 事件が起きたクラスの担任は子供達の親やメディア、世間からいじめに適切に対処していなかったとしてやり玉に上げられ、多くの担任教師が懲戒解雇処分となった。また、事件が起きた学校の校長も同じくやり玉に上がり、皆自ら辞任を申し出た。


 この事件で学校の状況は大きく変わった。それまで積極的にいじめを手動していた子供達が、今度はいじめのターゲットとなったのだ。


 彼らは、それまでいじめを止めず、ときどきいじめに参加していた者達によって、責任を押し付けられた。責任を押し付けた彼らは、今までの穴埋めのつもりか、いじめを受けていた子供にいじめの指示をさせた。


 いじめをそれまで受けていた子供は、報復という大義名分によって、いじめを行うことによる罪悪感を捨て、それを快楽へと変えて行った。


 このようないじめをメディアはまたもや取り上げようとはしなかった。そういった話題より明るいものを取り扱うようスポンサー側に要請を受けていたためだ。スポンサーがついていない公共放送などでも、こういったいじめを報道することは無かった。こちらは政府に報道しないよう圧力を受けていたのだ。政府としてはこの問題にしっかり対処したという事を国民に見せたかった。


 だから、あまり今までの状況が変わったということは無かった。ただ、それまでいじめを受けていた者にとっては大きな変化だった。


 事件を起こした者達はいじめの現場から開放され、ネットでは英雄視する声が多く上がった。彼らは当然それを見て自分の起こした行動を誇らしく感じ、死亡者が出た事実に対する罪悪感など忘れ去っていた。今までいじめを受けていた者達は、今度はいじめを行う側に周り、自分が誰をどういじめるのか決められるようになった。


 子供の善悪の判断は大人と比べ、未熟なのだからいじめを行う側といじめを受ける側など、簡単に入れ替わることが往々にしてあるはずだ。いじめを行う者は明日にはいじめを受けているかもしれないし、いじめを受ける側は何か反撃をすれば、今度はいじめを行う側に回るかもしれない。結局、いじめをすれば自分もそれをされるかもしれないのだ。いじめを行うということは、もし自分がそれをされたとき、受け入れなければならないということだ。
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