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10.学園
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そうして、あっという間に学園への視察日となった。
到着後は学園長と挨拶やらなんやらして、その後ミセル様は魔法使いオリバーと共に行動している。
……やっぱりあの魔法使い、知っていたわ。ゲームで見た。緑のボサボサ髪のオッサンに見えて実はイケメンでしたという、ありがちなパターンの臨時講師だ。
正体は王室の魔法使い、か。
やっぱり一度はクリアしておくべきだったわね。いえ、こんな世界に来るなんて思わないでしょう、普通。
「ここが占いの館ですよ」
「うわー」
私たちは学園内の占いの館に来た。
「夜には裏の近衛部隊が情報交換をする場の一つとしても使われています。王宮と違って建物が狭いので侵入者を警戒しやすい。王立ですからね、ここ」
「そんな話、私なんかが聞いちゃっていいわけ」
陛下と王妃の裏側の手駒がいるらしいと……それくらいしか分からない。
「どこから言って駄目なのかはミセル様に確認済みです」
「そう……」
その建物の見た目は研究所といった感じなのに、なぜか「占いの館」という看板が立っていた。中に入るとまたもや占いの館と看板がかけられた部屋があり、その中はもう……言わずもがなだ。
金に縁取られた紫のカーテン、飾られた水晶宮、なにもかもそれっぽい。しかし、一室だけなので普段は占いの館という看板自体外されているのかもしれない。
タロット占いに関しては暗殺者ギルドに本が置いてあって覚えただけと言っていた。なんでそんなものをと聞いたら、隠れるところがない場所で待機する時に占い師を装うのも一つの手段としてはあるので気が向いた人は読めばとギルドマスターに勧められたらしい。結局読んだのは当時彼だけのようだ。
「では占い師用の服に着替えてきますね」
「ええ」
今日は一緒に学園長に会ったので、互いに執事服とメイド服だ。でも――。
「戻りました」
「やっぱりそれなのね……」
ゲームで見たことのある服装に変わった。攻略はしていないとはいえ、出会いイベントは当然発生する。ゲームのままだ。
占い師なのか趣味の悪い執事なのか……ジャンジャラギラギラ派手なアクセサリーをつけている。
「それっぽいでしょう?」
「……本当にね」
「あなたにも、お一つどうぞ」
「え」
「夜空の色のペンデュラムです」
ペンデュラム――、振り子だと言ってるにも関わらず、私の首に手を回して後ろで留めてくれた。ネックレスになっているのね、これ。
初めて、アクセサリーをもらった……。
「あ、ありがとう」
「いえ。これで多少は助手に見えるでしょう。それでは時間を潰しましょうか。まだ授業中なので誰も来ませんよ」
助手……。
少しくらい、なんかさ。あればいいのに。贈り物をしたかったとかさ。なんて……無理か。そんなふうに見てくれてないわよね。
「気に入りませんでした?」
「……一生の宝物にするわ」
「ふっ。あなたの一生が長いことを祈りますよ」
顔が熱い。
侯爵家にいた時はたくさんアクセサリーをつけていたのに。他に何もいらないなんて思ってしまう。
他の護衛は、職員のふりをして学園周辺や内部のあちこちを警戒している。暗殺を企てる者――つまり怪しい動きをしている者がいないかパトロール中といった感じだ。
私たちだけ、ここにいる。
まぁ、ゲームでそうだったんだから、そうなるよねと。私はおまけだけど。
「二人きりね」
「ええ、夜と同じに」
イグニスと同じ部屋で寝起きしていることは護衛にだけもう筒抜けだ。突然の殺気に飛び起きる特訓をしていることとセットで広まっているので同情されている。色っぽいことがないことも確信されているのは、イグニスへの信頼なのかなんなのか。
「いや……今は夜ではないですからね」
「え? それはそうね」
「鍛錬でもします?」
これなのよね。
本当に、私のことは全然……。
「しないわよ。しりとりのがマシ」
「では、しりとりでもします?」
「……占いのがマシ」
「では、占いましょうか」
死ぬたびにイグニスの声が聞こえるという話もしてあるけれど、その記憶は彼にはないらしい。あの白い世界はなんなのか。
「ここでは初めてね」
「私はあなたを占うの、完全に初めてなんですけどね。では、未来だけ」
裏向きにして、ぐるぐるとシャッフル。三つの山にわけ、また一つに戻すカット。彼が上から一枚だけ無造作に引いた。
……私が引くのではないのね。
しばらくの沈黙。
「あ……あの、イグニス? よくない結果だった?」
「審判の正位置です。意味は復活。最悪の事態が好転したり、スランプから脱出したり……。蘇っている死者が描かれているでしょう。死からの復活を意味します」
死からの復活。
彼は【未来】を占ったはずだ。
私はまた死んで復活するということ……?
「それは地獄ね」
「全てよい方向へ向かいます」
でもそれは、一度死んでからということ?
「ただの占いです。私の本業ではない、ただの趣味。本を一冊読んだだけにすぎません」
「……ええ」
「あなたは、死にません」
前はその言葉に安心できた。
今は……いいカードが出たはずなのに、怖くて仕方がない。
♠
「ここで占いをしていると聞いたのですが……」
「はい、こちらへどうぞ」
とうとうヒロインがやってきた。
毎回、ループのたびに一度は私も学園で会っている。できればその姿を見たくもなかった。金色の髪に澄み切った空のような青い瞳。ヒロインのパルフィ・ロマンスチカーナ。貧乏貴族のご令嬢で、誰でもいいからお金持ちの男をゲットしてきなさいという使命を親に課されてここにいる。
「占いの館へようこそ」
「あ、はい」
私は控えて立っていたけれど、イグニスの言葉を聞きながら垂れ下がっているカーテンの奥へと引っ込んだ。堂々と占い内容を聞くのは申し訳ないからだ。
彼らがいくつも会話を重ね、イグニスは彼女の運命を占ったようだ。
「占い結果は――、塔の逆位置ですね」
塔の逆位置?
それは、聞いたことがある。
この世界に来た、最初の――。
「全ての努力は無に帰します」
「え……?」
「倒れてしまう塔は崩して建て直した方がいい。慎重に行動し、自らを見つめ直した方がいいかもしれませんね」
違う。
ゲームの最初の出会いイベントの時のカードは塔ではなかった。なんのカードだったのかは覚えていないけど、こんな占い結果をゲームでは絶対に言われていない。
「学園生活。浮かれすぎないように気をつけてくださいね」
「は、はい。ありがとうございました」
――妙な胸騒ぎは収まりそうにない。
何が起きているのだろう。
いったい、何が……。
到着後は学園長と挨拶やらなんやらして、その後ミセル様は魔法使いオリバーと共に行動している。
……やっぱりあの魔法使い、知っていたわ。ゲームで見た。緑のボサボサ髪のオッサンに見えて実はイケメンでしたという、ありがちなパターンの臨時講師だ。
正体は王室の魔法使い、か。
やっぱり一度はクリアしておくべきだったわね。いえ、こんな世界に来るなんて思わないでしょう、普通。
「ここが占いの館ですよ」
「うわー」
私たちは学園内の占いの館に来た。
「夜には裏の近衛部隊が情報交換をする場の一つとしても使われています。王宮と違って建物が狭いので侵入者を警戒しやすい。王立ですからね、ここ」
「そんな話、私なんかが聞いちゃっていいわけ」
陛下と王妃の裏側の手駒がいるらしいと……それくらいしか分からない。
「どこから言って駄目なのかはミセル様に確認済みです」
「そう……」
その建物の見た目は研究所といった感じなのに、なぜか「占いの館」という看板が立っていた。中に入るとまたもや占いの館と看板がかけられた部屋があり、その中はもう……言わずもがなだ。
金に縁取られた紫のカーテン、飾られた水晶宮、なにもかもそれっぽい。しかし、一室だけなので普段は占いの館という看板自体外されているのかもしれない。
タロット占いに関しては暗殺者ギルドに本が置いてあって覚えただけと言っていた。なんでそんなものをと聞いたら、隠れるところがない場所で待機する時に占い師を装うのも一つの手段としてはあるので気が向いた人は読めばとギルドマスターに勧められたらしい。結局読んだのは当時彼だけのようだ。
「では占い師用の服に着替えてきますね」
「ええ」
今日は一緒に学園長に会ったので、互いに執事服とメイド服だ。でも――。
「戻りました」
「やっぱりそれなのね……」
ゲームで見たことのある服装に変わった。攻略はしていないとはいえ、出会いイベントは当然発生する。ゲームのままだ。
占い師なのか趣味の悪い執事なのか……ジャンジャラギラギラ派手なアクセサリーをつけている。
「それっぽいでしょう?」
「……本当にね」
「あなたにも、お一つどうぞ」
「え」
「夜空の色のペンデュラムです」
ペンデュラム――、振り子だと言ってるにも関わらず、私の首に手を回して後ろで留めてくれた。ネックレスになっているのね、これ。
初めて、アクセサリーをもらった……。
「あ、ありがとう」
「いえ。これで多少は助手に見えるでしょう。それでは時間を潰しましょうか。まだ授業中なので誰も来ませんよ」
助手……。
少しくらい、なんかさ。あればいいのに。贈り物をしたかったとかさ。なんて……無理か。そんなふうに見てくれてないわよね。
「気に入りませんでした?」
「……一生の宝物にするわ」
「ふっ。あなたの一生が長いことを祈りますよ」
顔が熱い。
侯爵家にいた時はたくさんアクセサリーをつけていたのに。他に何もいらないなんて思ってしまう。
他の護衛は、職員のふりをして学園周辺や内部のあちこちを警戒している。暗殺を企てる者――つまり怪しい動きをしている者がいないかパトロール中といった感じだ。
私たちだけ、ここにいる。
まぁ、ゲームでそうだったんだから、そうなるよねと。私はおまけだけど。
「二人きりね」
「ええ、夜と同じに」
イグニスと同じ部屋で寝起きしていることは護衛にだけもう筒抜けだ。突然の殺気に飛び起きる特訓をしていることとセットで広まっているので同情されている。色っぽいことがないことも確信されているのは、イグニスへの信頼なのかなんなのか。
「いや……今は夜ではないですからね」
「え? それはそうね」
「鍛錬でもします?」
これなのよね。
本当に、私のことは全然……。
「しないわよ。しりとりのがマシ」
「では、しりとりでもします?」
「……占いのがマシ」
「では、占いましょうか」
死ぬたびにイグニスの声が聞こえるという話もしてあるけれど、その記憶は彼にはないらしい。あの白い世界はなんなのか。
「ここでは初めてね」
「私はあなたを占うの、完全に初めてなんですけどね。では、未来だけ」
裏向きにして、ぐるぐるとシャッフル。三つの山にわけ、また一つに戻すカット。彼が上から一枚だけ無造作に引いた。
……私が引くのではないのね。
しばらくの沈黙。
「あ……あの、イグニス? よくない結果だった?」
「審判の正位置です。意味は復活。最悪の事態が好転したり、スランプから脱出したり……。蘇っている死者が描かれているでしょう。死からの復活を意味します」
死からの復活。
彼は【未来】を占ったはずだ。
私はまた死んで復活するということ……?
「それは地獄ね」
「全てよい方向へ向かいます」
でもそれは、一度死んでからということ?
「ただの占いです。私の本業ではない、ただの趣味。本を一冊読んだだけにすぎません」
「……ええ」
「あなたは、死にません」
前はその言葉に安心できた。
今は……いいカードが出たはずなのに、怖くて仕方がない。
♠
「ここで占いをしていると聞いたのですが……」
「はい、こちらへどうぞ」
とうとうヒロインがやってきた。
毎回、ループのたびに一度は私も学園で会っている。できればその姿を見たくもなかった。金色の髪に澄み切った空のような青い瞳。ヒロインのパルフィ・ロマンスチカーナ。貧乏貴族のご令嬢で、誰でもいいからお金持ちの男をゲットしてきなさいという使命を親に課されてここにいる。
「占いの館へようこそ」
「あ、はい」
私は控えて立っていたけれど、イグニスの言葉を聞きながら垂れ下がっているカーテンの奥へと引っ込んだ。堂々と占い内容を聞くのは申し訳ないからだ。
彼らがいくつも会話を重ね、イグニスは彼女の運命を占ったようだ。
「占い結果は――、塔の逆位置ですね」
塔の逆位置?
それは、聞いたことがある。
この世界に来た、最初の――。
「全ての努力は無に帰します」
「え……?」
「倒れてしまう塔は崩して建て直した方がいい。慎重に行動し、自らを見つめ直した方がいいかもしれませんね」
違う。
ゲームの最初の出会いイベントの時のカードは塔ではなかった。なんのカードだったのかは覚えていないけど、こんな占い結果をゲームでは絶対に言われていない。
「学園生活。浮かれすぎないように気をつけてくださいね」
「は、はい。ありがとうございました」
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いったい、何が……。
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