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前編 恋の自覚と両思い
27.魔法の特訓
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なぜなのか食器の入った籠もぷかぷか浮かせながら一緒に移動させつつ、森の中の開けた川辺まで二人でやって来た。
おかしい……手を繋ぐのが普通になってる……いやでも、足元が不安定だから転んだ時のためとも言ってたし……それにしても昨日の今日で距離が近くなりすぎなんじゃ……。
ごちゃごちゃ考えていると、レイモンドが手を離した。
「それじゃ、水を止めるのからいこっか」
「ま、待って。平和そうな世界なのに攻撃とかされるの?」
「んー……、攻撃というか、タライから水が落ちてきた時に止められた方がいいじゃん?」
ドリフか!
いや……あれはタライが落ちてきたんだっけ……昔懐かし名作コントとかで一度テレビで見たことがある。面白かったから、少しだけ動画も見た。
「そんなことがあるの……」
「さぁ……すぐに思いつかなかっただけだけど……幼児ちゃんにぶっかけられ続けたら嫌でしょ? 防げなかったら水鉄砲され続けちゃうよ」
ああ……嬉々としてやりそう。
例えが平和だな。
「うーん、他にはすぐに思いつかないけど……川や防火水槽の中に落ちて溺死しそうな人がいても、水を操れたら助けられるし。溺死するくらいの水の量だとコントロールできない人は多いしね。水の中から上に押し上げるのに、風魔法は使えない。水以外のどの属性でも止めたり防いだりっていうのは結構使うよ」
最初からその例えでよかったのに。
というか、防火水槽なんてあるの。
「じゃ、ふわーっと君に水を向かわせるから止まれって願って。風魔法でも止まっちゃうから、水に働きかける意識でね」
「わ、分かった」
レイモンドが水の球をつくる。
スライムみたいになるかと思ったけど、雫が大きくなったようで、かなり綺麗だ。周囲の景色が映り込んでいて宝石みたい。
ふわふわとこちらに向かってくる。
「止まって」
お願いした瞬間に水がバシャっと落ちた。
「うわ!」
「アリス……形を留めたままにすることを意識してなかったでしょ」
面倒だな……魔法。
「はい、もう一回ね」
次はなんとか目の前で止めることができた。
何度か繰り返し、次の練習に移る。
「今のは俺が何かしらの障害があった時に、自分の魔法が切れるようにしていたから。次は単純な水ね」
そう言って、籠の中からコップを取り出して中に水を生み出した。
……ここでそれを使うんだ。
「バシャって向こう側にかけるから止めて」
「う、うん」
そしてどうなったかと言えば……当然ながら……。
「全然間に合ってないね」
「止まってって言う前に、全部こぼれるじゃん……」
「そうなるよね。杖よりも最初は手の方がなじみやすいかな。ってわけで、俺が動作をする前に手でアクションして止めて。俺がわざと水をあっちにかけようとする子供になったと思って、動きを察知した瞬間に止めてみて」
今も子供じゃん。
地味だな……魔法特訓……。
コップに水を入れてバシャッとやろうとする寸前で水の動き止める……のをひたすら繰り返す。できるようになったら、銀の蓋を使って多めの水を止めるのを繰り返した。
地味すぎる……でも失敗しまくる……。多少はやっぱりこぼれてしまう。
「まぁ、最初はこんなものかな。じゃ、次はアリスにぶっかけるから、止めてね」
「え、やだやだ。濡れたくない」
「防げばいいだけだよ。自分にかかる水を止められないことにはね。濡れても乾かしてあげるから大丈夫」
「そっか……それなら……」
「じゃ、いくよ~」
レイモンドが、銀の皿をぶっかける体勢になる。すかさず手を前にかざし……。
バシャァァァァァァァ!!!
……首から下が全部ずぶ濡れだ……。
「な、なんで~……止められなかったぁぁ」
「だよねー」
案の定という顔で笑っているレイモンドを睨みつける。
絶対絶対、分かっててやってた、コイツ!!!
おかしい……手を繋ぐのが普通になってる……いやでも、足元が不安定だから転んだ時のためとも言ってたし……それにしても昨日の今日で距離が近くなりすぎなんじゃ……。
ごちゃごちゃ考えていると、レイモンドが手を離した。
「それじゃ、水を止めるのからいこっか」
「ま、待って。平和そうな世界なのに攻撃とかされるの?」
「んー……、攻撃というか、タライから水が落ちてきた時に止められた方がいいじゃん?」
ドリフか!
いや……あれはタライが落ちてきたんだっけ……昔懐かし名作コントとかで一度テレビで見たことがある。面白かったから、少しだけ動画も見た。
「そんなことがあるの……」
「さぁ……すぐに思いつかなかっただけだけど……幼児ちゃんにぶっかけられ続けたら嫌でしょ? 防げなかったら水鉄砲され続けちゃうよ」
ああ……嬉々としてやりそう。
例えが平和だな。
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最初からその例えでよかったのに。
というか、防火水槽なんてあるの。
「じゃ、ふわーっと君に水を向かわせるから止まれって願って。風魔法でも止まっちゃうから、水に働きかける意識でね」
「わ、分かった」
レイモンドが水の球をつくる。
スライムみたいになるかと思ったけど、雫が大きくなったようで、かなり綺麗だ。周囲の景色が映り込んでいて宝石みたい。
ふわふわとこちらに向かってくる。
「止まって」
お願いした瞬間に水がバシャっと落ちた。
「うわ!」
「アリス……形を留めたままにすることを意識してなかったでしょ」
面倒だな……魔法。
「はい、もう一回ね」
次はなんとか目の前で止めることができた。
何度か繰り返し、次の練習に移る。
「今のは俺が何かしらの障害があった時に、自分の魔法が切れるようにしていたから。次は単純な水ね」
そう言って、籠の中からコップを取り出して中に水を生み出した。
……ここでそれを使うんだ。
「バシャって向こう側にかけるから止めて」
「う、うん」
そしてどうなったかと言えば……当然ながら……。
「全然間に合ってないね」
「止まってって言う前に、全部こぼれるじゃん……」
「そうなるよね。杖よりも最初は手の方がなじみやすいかな。ってわけで、俺が動作をする前に手でアクションして止めて。俺がわざと水をあっちにかけようとする子供になったと思って、動きを察知した瞬間に止めてみて」
今も子供じゃん。
地味だな……魔法特訓……。
コップに水を入れてバシャッとやろうとする寸前で水の動き止める……のをひたすら繰り返す。できるようになったら、銀の蓋を使って多めの水を止めるのを繰り返した。
地味すぎる……でも失敗しまくる……。多少はやっぱりこぼれてしまう。
「まぁ、最初はこんなものかな。じゃ、次はアリスにぶっかけるから、止めてね」
「え、やだやだ。濡れたくない」
「防げばいいだけだよ。自分にかかる水を止められないことにはね。濡れても乾かしてあげるから大丈夫」
「そっか……それなら……」
「じゃ、いくよ~」
レイモンドが、銀の皿をぶっかける体勢になる。すかさず手を前にかざし……。
バシャァァァァァァァ!!!
……首から下が全部ずぶ濡れだ……。
「な、なんで~……止められなかったぁぁ」
「だよねー」
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絶対絶対、分かっててやってた、コイツ!!!
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