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後編 魔法学園での日々とそれから
151.皆でプール
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豪勢だ……。
ジェニーの屋敷までは神風車で移動し、衛兵さんに挨拶をしつつ屋敷の一区画に来たけれど……豪勢だ。
白薔薇邸で慣れてはいるけどね。
お城の壁のような白い柱や階段のあるそこには、なみなみと水がたまっている。事前に用意してくれたのだろう。
「着替える場所を案内するわ」
監視員が四隅にいるものの、広さがあるので気にはならない。ダニエル様かジェニーの護衛なのだろう。
ジェニーの案内ですぐ脇にある建物内で男女に分かれて着替える。
「よぉっし。変身だね、ジェニー」
「そうね。勇気はいるけど……」
「やっぱりアリスさんの水着はそれになりましたか」
「うん、誰が勧めたのかもその理由もバレバレだったかなー」
「分かりやすいものね」
やっぱりそう思ってたんだ。
寮で既に中に水着は着ていたので、上着などをパッと脱ぐだけだ。すぐに水着だけになり戻ると、もう既に彼らも着替え終わっていた。男は早いよねー。
「男性陣! 私たち可愛いでしょ!」
テンション高く言い放つ。
男子の水着はつまんないな。派手なハーフパンツのジャージって感じ。
でも……三人ともいい筋肉だ。ダニエル様、さすがにガタイがいい……。
「うん。可愛いよ、アリス」
「そうだな……」
「皆さん似合ってますね」
ダニエル様……ジェニーとのエロティック展開まで想像してしまいそうなムキムキ具合だ。さすがに私の思考が駄目すぎる。違うことを考えよう。
「それじゃ、泳ごうかなぁ」
「アリス、泳ぎたがっていたものね」
「そうそう……あ!」
何事かと皆がこちらを見る。
ここって何泳ぎが存在するの……。
「レイモンド……」
「え、何かな」
「悪いけど泳ぐ前に隅に来て」
「なんで!?」
聞かないでよ……。
「私への褒め言葉が足りない。もっと聞いたら泳ぐ」
「えぇー!?」
皆の視線は無視してグイグイと彼を柱の横に連れ込み……。
「いつもと違って髪を上にあげているのも可愛いよね。うなじとか触りたくなるよね」
「そーゆーのはいらない」
「意味が分かんないけど、アリス……」
うなじとか好きだったのかな。たまにポニテとか寮でしちゃおうかなぁ。
「ここ、クロールとか平泳ぎとか背泳ぎとかあるの」
「ああ……なんだ。皆が知らなくても体がなぜか覚えてましたでよかったと思うけど」
「な!?」
早く言ってよ。
無駄に痛い女になっちゃったじゃん。
「バタフライはないよ。あとはある」
「分かった。じゃ、泳ぐ」
やっぱり広いプールを見ると泳ぎたくてうずうずする。遊びだけで終わってしまったら、次はいつになるか分からないしね。
苦笑している皆は、早速プールの中に入っている。
「それじゃ、体が泳ぎたいって言ってるから泳ぐねー」
笑顔でそう言ってザブンと中に入ると、向こうの端までクロールで進んでいく。大きく腕を回し、手の平で水をかいていく。
さすがに久しぶりだと気持ちがいいけど疲れるな……。
端までいったらクイックターンをしてドルフィンキック。グイグイと進んでいく。皆の元へ戻るとザバァと顔を出して足をついた。
「速いわね、アリス……」
「鍛えが足りなかった。既に疲れてお腹すいてきたし、あとは遊ぶー」
「もう、アリスったら」
久しぶりだと泳ぎたくなるけど……いざ泳ぐと、ゼーハーしてもういいかって気になるなぁ。やっぱり水泳は体力を使う。
さて、遊ぶって言っても滑り台とかはさすがにないか……プールは魔法の練習場所も兼ねているんだっけ。
「スイカ割りとか……?」
「なんですか、それ」
カルロスからキョトンと聞かれる。
スイカ割りのない世界なのか、ここ!
さっきレイモンドにそれを聞けばよかった!
「一緒に遊んだことがあるよね。説明してよ、アリス」
……ないけどね。
レイモンドのフォローを受けて話す。
「目隠しして、ぐるぐるその場で回って、皆のアドバイスを元に棒でスイカを叩き割るの」
「そう……面白そうだけど、スイカがないわね」
「魔法でつくった水の球はどうでしょう?」
「集中すれば場所が分かっちゃうわよ」
「小さな球を生み出しておけばいいよ」
レイモンドがパッと無数に小さな球体を宙に生み出してから、すぐに消した。
水の球だらけの中で大きな水の球を割る。なんというファンタジー!
「そうね。ダニー、それで遊んでもいいかしら」
「ああ、構わない」
ジェニーが合図を送ると監視員の一人が飛んできた。目隠し用の長いタオルと杖のような木の棒を頼み、あっという間に持ってきてもらう。
「それじゃ、言い出したアリスからね」
「やっぱりそうなるよねー」
この日は夕方までここにいた。
振り上げた棒が皆の生み出した水の球に当たってバシャバシャ水が降ってくるのも、バシャリと叩き割って歓声があがるのも楽しかった。
全員が水球割りをしたあとは、魔法でスライダーをつくって順番に滑った。水を生み出して空中を流しながら風魔法で浮かせて滑らせていく。滑ってる感よりも操られてる感の方が強いけれど、それも楽しい。ジェニーとレイモンドにはダニエル様が魔法を使い、他の皆にはレイモンドが担当した。
皆と過ごす初めての夏。たくさんはしゃいで仲を深めて――、前期が終わった。
ジェニーの屋敷までは神風車で移動し、衛兵さんに挨拶をしつつ屋敷の一区画に来たけれど……豪勢だ。
白薔薇邸で慣れてはいるけどね。
お城の壁のような白い柱や階段のあるそこには、なみなみと水がたまっている。事前に用意してくれたのだろう。
「着替える場所を案内するわ」
監視員が四隅にいるものの、広さがあるので気にはならない。ダニエル様かジェニーの護衛なのだろう。
ジェニーの案内ですぐ脇にある建物内で男女に分かれて着替える。
「よぉっし。変身だね、ジェニー」
「そうね。勇気はいるけど……」
「やっぱりアリスさんの水着はそれになりましたか」
「うん、誰が勧めたのかもその理由もバレバレだったかなー」
「分かりやすいものね」
やっぱりそう思ってたんだ。
寮で既に中に水着は着ていたので、上着などをパッと脱ぐだけだ。すぐに水着だけになり戻ると、もう既に彼らも着替え終わっていた。男は早いよねー。
「男性陣! 私たち可愛いでしょ!」
テンション高く言い放つ。
男子の水着はつまんないな。派手なハーフパンツのジャージって感じ。
でも……三人ともいい筋肉だ。ダニエル様、さすがにガタイがいい……。
「うん。可愛いよ、アリス」
「そうだな……」
「皆さん似合ってますね」
ダニエル様……ジェニーとのエロティック展開まで想像してしまいそうなムキムキ具合だ。さすがに私の思考が駄目すぎる。違うことを考えよう。
「それじゃ、泳ごうかなぁ」
「アリス、泳ぎたがっていたものね」
「そうそう……あ!」
何事かと皆がこちらを見る。
ここって何泳ぎが存在するの……。
「レイモンド……」
「え、何かな」
「悪いけど泳ぐ前に隅に来て」
「なんで!?」
聞かないでよ……。
「私への褒め言葉が足りない。もっと聞いたら泳ぐ」
「えぇー!?」
皆の視線は無視してグイグイと彼を柱の横に連れ込み……。
「いつもと違って髪を上にあげているのも可愛いよね。うなじとか触りたくなるよね」
「そーゆーのはいらない」
「意味が分かんないけど、アリス……」
うなじとか好きだったのかな。たまにポニテとか寮でしちゃおうかなぁ。
「ここ、クロールとか平泳ぎとか背泳ぎとかあるの」
「ああ……なんだ。皆が知らなくても体がなぜか覚えてましたでよかったと思うけど」
「な!?」
早く言ってよ。
無駄に痛い女になっちゃったじゃん。
「バタフライはないよ。あとはある」
「分かった。じゃ、泳ぐ」
やっぱり広いプールを見ると泳ぎたくてうずうずする。遊びだけで終わってしまったら、次はいつになるか分からないしね。
苦笑している皆は、早速プールの中に入っている。
「それじゃ、体が泳ぎたいって言ってるから泳ぐねー」
笑顔でそう言ってザブンと中に入ると、向こうの端までクロールで進んでいく。大きく腕を回し、手の平で水をかいていく。
さすがに久しぶりだと気持ちがいいけど疲れるな……。
端までいったらクイックターンをしてドルフィンキック。グイグイと進んでいく。皆の元へ戻るとザバァと顔を出して足をついた。
「速いわね、アリス……」
「鍛えが足りなかった。既に疲れてお腹すいてきたし、あとは遊ぶー」
「もう、アリスったら」
久しぶりだと泳ぎたくなるけど……いざ泳ぐと、ゼーハーしてもういいかって気になるなぁ。やっぱり水泳は体力を使う。
さて、遊ぶって言っても滑り台とかはさすがにないか……プールは魔法の練習場所も兼ねているんだっけ。
「スイカ割りとか……?」
「なんですか、それ」
カルロスからキョトンと聞かれる。
スイカ割りのない世界なのか、ここ!
さっきレイモンドにそれを聞けばよかった!
「一緒に遊んだことがあるよね。説明してよ、アリス」
……ないけどね。
レイモンドのフォローを受けて話す。
「目隠しして、ぐるぐるその場で回って、皆のアドバイスを元に棒でスイカを叩き割るの」
「そう……面白そうだけど、スイカがないわね」
「魔法でつくった水の球はどうでしょう?」
「集中すれば場所が分かっちゃうわよ」
「小さな球を生み出しておけばいいよ」
レイモンドがパッと無数に小さな球体を宙に生み出してから、すぐに消した。
水の球だらけの中で大きな水の球を割る。なんというファンタジー!
「そうね。ダニー、それで遊んでもいいかしら」
「ああ、構わない」
ジェニーが合図を送ると監視員の一人が飛んできた。目隠し用の長いタオルと杖のような木の棒を頼み、あっという間に持ってきてもらう。
「それじゃ、言い出したアリスからね」
「やっぱりそうなるよねー」
この日は夕方までここにいた。
振り上げた棒が皆の生み出した水の球に当たってバシャバシャ水が降ってくるのも、バシャリと叩き割って歓声があがるのも楽しかった。
全員が水球割りをしたあとは、魔法でスライダーをつくって順番に滑った。水を生み出して空中を流しながら風魔法で浮かせて滑らせていく。滑ってる感よりも操られてる感の方が強いけれど、それも楽しい。ジェニーとレイモンドにはダニエル様が魔法を使い、他の皆にはレイモンドが担当した。
皆と過ごす初めての夏。たくさんはしゃいで仲を深めて――、前期が終わった。
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